変化を楽しんでチャンスをつかむ|解決すべき課題を定義して軽やかに乗り越えよう

イーブックイニシアティブジャパン 代表取締役社長 社長執行役員 最高経営責任者 高橋 将峰さん

Masamine Takahashi・2006年ヤフー入社。オセニック代表取締役、Game Bank(ゲームバンク)取締役、ヤフーコマースカンパニー事業推進室デジタルコンテンツ事業本部本部長などを経て、2019年イーブックイニシアティブジャパン代表取締役社長。2022年より、日本電子書店連合(JEBA)理事長、LINE Digital Frontier(ライン デジタルフロンティア)の代表取締役も務める

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少しでも興味のある分野に飛び込み、やりたいことを見つけてみよう

私は学生時代、形あるもの、世の役に立つものを作りたく「ものづくり」を仕事にしたいと思っていました。橋を造るというような物理的なものづくりにも興味があった中、たまたま受かったのがSI (システムインテグレーター)企業で、システムエンジニアとして働き始めました。

最初はとにかく一生懸命仕事をし、徐々にシステム企画やコンサルも任せてもらえるようになりました。ある時、クライアントと一緒にシステムを作り上げたことに大きな喜びを感じ、委託事業ではない自社サービスを立ち上げたいと思いました。

そこで社内ベンチャー制度を作ってもらい、自社のモバイル通信サービス開発を始めました。元々社内ベンチャー制度はなかったので、制度を作るところからはじめました。与えられたサービスではなく、自分たちで新しいサービスを生み出すことが出来て、とても嬉しかったのを覚えています

やりたいことを見つけたら挑戦してみよう

仕事を一生懸命する中で、パソコンのインターネットよりさらに生活に溶け込んでいるモバイルインターネットに興味が湧いてきました。2006年3月、ソフトバンクの孫正義さんがイギリスの携帯電話会社Vodafone(ボーダフォン)を買収し、「Yahoo! JAPANを誰でも使えるインターネットにする」と宣言された記者会見をニュースで見ました。

モバイルの可能性が広がり、ユーザーがもとめる多彩なサービスを提供できそうだとワクワクしました。いてもたってもいられなくなり、記者会見を見てすぐに転職を決意し、4か月後の2006年7月にヤフー株式会社へ入社しました。

その後現在に至るまで、一貫してモバイルサービスやインターネットコンテンツに携わってきました。ユーザーニーズがあるものを提供したいと思っているので、特にユーザー満足度を大切にしています。

ユーザー満足度の向上には終わりがありません。私自身も、ユーザー目線で自分たちのサービスを見ています。毎日2時間以上ebookjapanを使い倒し、このUI(ユーザーインターフェース)で良いのか、このボタンをもっと押しやすくできないのかなどを考えています。BtoCビジネスにおいて、自社サービスを使い倒すこと、ユーザーニーズを捉えて対応することはとても大事だと思います。

顧客満足度を上げ続ける方法

そもそも私がIT・モバイル業界に足を踏み入れたのは、今まで世になかったとしても必要とされるものを作りたかったからです。かつて情報端末を開発したときに、友人は私が開発しているとは知らずに、「最近いい端末見つけたんだけど、これ知ってる? 」と言われたことがありました。そのときはガッツポーズが出るくらい嬉しかったです。

当社でも、ユーザーの反響はもちろん気にしています。速報で分かる反応は数字。数字とは、取扱高、閲覧者数、購入者数、平均購入単価などです。

数字が思った以上であるかそうでないかには、いまだに一喜一憂します。定性的には、街を歩いているときにebookjapanを利用している人を見つけると、ダイレクトに反応が見えるのが面白いです。もっとワクワクするものを作りたいというモチベーションになっています。

まずは気になる分野で、ファーストキャリアを始めてみよう

ものづくりへの憧れやモバイルの可能性への挑戦を経て、今は経営者となりましたが、振り返っても新卒就活ですべてが決まるわけではないと思います。

新卒就活は初めて「選ばれる側」になるので、ストレスや迷い、大変さを感じ、ときには自己否定をすることもあるかもしれません。でも就活は1つのゲームだと思って楽しんでほしいと私は思っています。仮にどこかの企業からお祈りメールがきたとしても、あなたの何かが悪かったわけではないので、自己嫌悪する必要はありません。もちろん成長の余力があるなら成長させたら良いですが、落ち込む必要はありません。

ただ、少しでも興味のある分野の近くにいることは大切だと思います。やりたいことのど真ん中でなくても良いです。マーケットの中心は時代とともに動くので、近い業界にいることでチャンスを掴みやすくなります。

また、ふわっとでも成長曲線にいることは大事だと思います。成長市場であれば、成長機会も得やすいです。縮小傾向の市場では革新や進歩が起こりづらく、効率化だけが勝負になってしまうことも多いです。

新卒就活で一か八かの就活をする必要はありません。入った会社で成長するかのほうが大事です。ぜひ、新卒就活を楽しんでください。

変化を楽しんでチャンスをつかむ

会社に入れば、上司が変わる、親会社が変わる、技術が変わる、トレンドが変わることもあるでしょう。それらの変化の波を軽やかに超えてほしいと思っています。私たちの会社の若手社員は、物怖じせず挑戦する人が多く、感心します。例えば入社2年目で大きなクライアントを担当しても、肩肘張っている雰囲気もないんですよね。新卒社員や若手社員が変化を起こすことも、多々あります。

新卒就活面接や内定後に「入社までに何を準備すれば良いですか」と学生さんから聞かれることがありますが、「学生生活は、もういいやと言えるくらい、学生を満喫してほしい」と答えています。今を楽しむ方法を忘れずにいれば、社会人になっても変化を楽しめると思います。先のことを恐れず、変化を積極的に味わって面白がるメンタリティを培ってほしいですね。

変化を恐れる人と楽しめる人の違い

解決すべき課題を定義し、軽やかに乗り越える

仕事のことで悩むことはあまりないです。悩みではなく「解決すべき課題は何か」を定義することが大事です。それが定義できない課題なら「解決しなくて良い課題」だと思っています。

当社で言えば、たとえば「紙コミック雑誌の成長」という課題です。

紙のコミック雑誌の存在は、デジタルの媒体である当社サービスにも波及効果がある大事な課題です。しかし、そこは私たちが手を付けられる範疇ではありません。さまざまなパートナーと連携して市場は作られていますので、自分たちのサービスで解決できる課題に集中することがもっとも大事です

課題を軽やかに乗り越えてゲームのように次々とこなせる人には、きっと新たなチャンスが来ますよ。

壁を乗り越える方法

これからも日本のコミック文化とともに成長し続けたい

日本の素晴らしいマンガ文化は、国内では発達し、多様性もあります。しかし海外に目を向けると、右から読むか左から読むかも含めて、まだ浸透の余地があると感じています。

今はWEBTOON Entertainment(ウェブトゥーン エンターテインメント)と連携し、世界中にコミック文化を広げることに挑戦しています。今の目標であり、達成出来たら嬉しいです。

私の個人的なビジョンというものはあまりないです。実は将来のビジョンを考えたことはあまりなく、「今、今、今」というタイプです。目の前のことを追っているうちに、今の状態になりました。一足飛びに何かを実現できるわけでもないです。

私もそうですが、人は成功ではなく成長に喜びを感じると考えています。社長というポジションに就いて、幸せということはありません。そこからどう成長を作るか、去年の自分より成長したかを意識しています。私自身も、私たちの会社も社員と共に、これからも成長し続けたいです。

高橋さんのキャリアの指針

取材・執筆:鈴木満優子

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