価値観の違う相手に認めてもらうためプラスαの価値を提供しよう|日常の五心を忘れず、成功も失敗も糧にすれば成長できる

出前館 経営企画本部 人事部長 戸田 順哉さん

Junya Toda・1997年に新卒としてフォーバルへ入社。2007年10月に楽天に転職し、国内外の事業や子会社とのHRBPを経験したのち、経営管理部門の責任者を務める。2019年2月には再生可能エネルギー事業をおこなうLooopへ、人事総務部門の責任者として着任。2022年8月から出前館に入社し、現職

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「任されたことプラスα」の仕事を心掛けていると、存在感のある社員になれる

キャリアにおける最初のターニングポイントは、小さい頃の家庭環境がきっかけでした。あまり裕福ではなかったことで将来について考えさせられる機会も多く、「将来子どもを不安にさせる親には絶対にならないぞ」と決意。自分の人生では最低でもこれを達成する、というラインを決めました。

以降は経済的な自立を中心に考えていたので、就職活動も比較的早い時期から始めました。いろいろな業界や企業を見るなかで、次第に「若い頃にしかできない働き方をしてみよう」と思うように。そこで、当時「激務」といわれていた会社にあえて飛び込んでみることにしました。

そこからは、入社式でも社長に駆け寄って名刺交換をするなど、前のめりな社会人生活がスタート。「10年経ったら、どんなに評価されていても別の会社でまた一から自分を試してみよう」と決めて、コツコツと成果を積み上げていきました。

当時から意識していたのは、任された仕事にプラスαの付加価値をつけること。「人と同じことをやっても評価はされない」と考えていたので、自分がやるからこその意義を示すことを常に心がけていました。

そのようなスタンスで仕事をしていると、結果的に業務改善につながるので、3〜6ヵ月スパンであちこちの部署に異動を命じられていましたね。会社も私をうまく使ってくれていたのだと思います。

付加価値のある仕事をする意識が身に付いたのは、学生時代のアルバイト経験が大きかったです。アルバイトだからこそ経験できる業界をたくさん覗いておこうと思い、建設現場やテーマパークの従業員など、複数の仕事を掛け持ちしていました。

いろいろな世界を見るなかで痛感したのは「世の中は価値観が違う人ばかりである」という事実です。価値観が合う人は多くても1割程度で、自分と真逆の価値観を持っている人も、世の中に3割くらいはいると気づきました。

そこから「価値観が違う人たちに認められるためには、自分にとっての100点では足りない」「プラスαのことをしなければ評価はされない」とわかり、付加価値のある成果を出すことにこだわって仕事に取り組むように。結果、あちこちの現場で表彰などの評価をいただくことができ、複数の仕事を掛け持ちすることでマルチタスクを磨く訓練にもなりました。

2社目で初めての挫折を経験。不要なプライドを捨て去ることで成長できた

10年間で1社目を卒業しようと決めていましたが、7年半くらいで自身が目標としていたラインをクリア。その後は「お世話になった会社に恩返しをしよう」と考えて過ごし、ちょうど10年の区切りとなる時期に、2社目となる楽天に転職をしました

当時は楽天市場が少しずつ盛り上がり始めていた時期ですが、ECの世界はまだまだ混沌としていたように感じました。ただ社内を見渡してみると国内外の有名大学出身者がゴロゴロいて、入社当初は驚いたことを覚えています。

私も負けじと仕事をこなし、3年スパンでいろいろなチャンスをいただきながら、実績・経験・スキル・人脈などが広く身に付いてきた手応えを得ていました。そうして「大体のことはできるようになってきたかな」と思った頃に、私のキャリアのなかで最大の壁が立ちはだかったのです。

2014年、海外グループ会社との連携を任されてシンガポールに赴任したときのこと。初めての海外勤務に伴う不安や、慣れない環境に適応することで精一杯で、最初の3ヵ月間はまったくといっていいほど成果をあげることができませんでした

15年間日本で積み上げてきた自信が一気に崩れ去り、「自分は会社の負債だな」とまで落ち込みました。今まで人の期待に応えられないと感じたことがなかったため、かつて経験したことのない大きな挫折感を味わいました。

しかしこうなったからこそ、「自分のプライドが障害になっている」と気づくことができました。自分よりも優れている人はごまんといるという前提に立ち「ちっぽけなプライドなど捨てて一からやり直そう」と決意。謙虚な気持ちを取り戻せたことは、私にとって2つ目のターニングポイントとなりました。

思うにプライドには2種類あり、「自分をよく見せよう」という類のプライドはおよそ何の役にも立ちません。しかし、自分が選んだことや「自分が属すると決めた組織や仲間を信じよう」という類のプライドは、自分を奮い立たせてくれるものになります

自分が選んだ会社の、自分を活かしてくれる上司たちが、この案件を任せてみようと決めてくれたわけです。自分以上に自分のことを知ってくれているはずの彼らが、です。何より行くと決めたのは他ならぬ自分。自分で決めた以上、やるのみだという結論に至りました。

気持ちも新たに出社したところ、周りの人からはすぐに「顔つきが変わった」と言われました。「あのときの顔を見て、もう大丈夫だと思った」なんて後から言ってくれた上司もいましたね。

以降は海外支社の社員や、初めて仕事をする駐在員たちとの関係構築に専念し、次の3ヵ月で期待されていた成果に到達。帰国前にはアジアの複数の子会社の現地サポート対応も担い、トラブルなく完遂することができました。

会社からは「シンガポールに残っても良いよ」と言われていたのですが、日本が好きでしたし、子どもが小さかったこともあって帰国することに。ただその後も、日本からアジア地域の子会社との仲介役は担当していました。

キャリアにおけるターニングポイント

このときもそうでしたが、私は「ひとつの案件が終わる毎に、必ず振り返りをする」ことを習慣にしています。失敗しても成功しても、必ず振り返るのです。

会社のお金でチャレンジを任せてもらったなら、その結果はきちんと報告し、次に活かしていく義務がある。もし失敗して怒られたとしても、次で取り返せばいいだけです。100万円のミスをしたなら、きちんと振り返りをして、次のチャンスで150万円を取り返せばいい。150万円を取り返せたら、次は200万円のチャンスがやってきます。そうしてリターンを出すうちに、自分のやりたいことも任せてもらえる人材に成長していけます。

逆に失敗を隠したり、やりっぱなしで終わらせてしまったりするのは、一番良くないスタンスです。100万円のミスを放っておけば、次に任される予算は50万円になってしまうかもしれません。やりぬいた結果としての失敗は経験として蓄積されますが、自分のやったことの結果や過程から逃げていると逃げ癖がついてしまい、将来のキャリアも良い結果にならない気がします

失敗も成功も必ず「振り返り」をしてみよう
やりっぱなしにしていると、次のチャンスが来ないかも?

「ラブコールを受けた会社」よりも「自分で選んだ会社」のほうが後悔は少ない

就職活動についてアドバイスしたいのは、「内定を取れる会社が、“自分が行くべき会社”とは限らない」ということです。

近年はどこも人材不足なので学生優位の就職活動ができますが、一方でいろいろな企業から内定が出るからこそ迷ってしまい、自分が行きたい会社を見つけることが昔より難しくなっている気がします。

しかし「ラブコールを受けた会社」と「自分が選んだ会社」であれば、絶対に後者を選んだほうがいいと私は思います。「内定をもらったから」というだけの理由で入社をすると、うまくいかなかったときに他責的になり、強い後悔が残ることが多いからです。

そして、自分が行きたい会社を見つけるためには、企業ブランドや職種のイメージに左右されないことが肝心。仕事内容や企業の理解を深め、自分に合った環境なのかを自分の目と耳で確かめておきましょう。

「自分の意思で決める」というとハードル高く聞こえてしまうかもしれませんが、実は日常の行動はすべて自分の意思で決めているもので、誰もが日々当たり前にやっていることです。人に意見を聞くことも、周りに流されそうになるのも、意思決定に至るプロセスでしかありません。周りの意見を聞いて「最終的にどうするか」を決めているのはあくまで自分自身で、おのずと誰もがやっていることです。

また日本では、企業に入社するための「就社活動」になってしまっている人も少なからず見受けられます。自らが働く環境を選ぶための就職活動をする、という意識はぜひ持っていてほしいですね。

ファーストキャリアは社会人としての基礎を身に付けるために大切な場所ですが、内定や入社をゴールにせず、少し先の人生を想像しながら、自分が笑って働いている姿をイメージできる企業や職種をぜひ探して、見つけてほしいと思います

深く考えずに就職したとしても、3年後、5年後には自分の進むべき方向を考えなければならないタイミングが必ずやってきます。どうせ自分と向き合わなければならない時期が来るなら、後回しにする必要はないはず。就職活動のタイミングで「自分と真剣に対話し、自分の意思で決める」ということに挑戦してみてほしいです。

最終決断をしているのは、いつも自分。
就職活動でもイメージや他社の意見に流されず、「自分で決めること」にこだわろう

謙虚さや感謝など「日常の五心」を忘れないことが、社会で活躍する秘訣

今後の社会で活躍できると思うのは、常に謙虚に学び続けることができる人です。勉強熱心な人はもちろんですし、必要な情報を自ら取捨選択しながら、新しいことをインプットしたり、アップデートしたりできる人も強いと思います。

謙虚さの重要性は、海外での失敗経験の際に改めて学んだことです。子どもの頃から、実家の壁に「日常の五心(「はい」という素直な心・「すみません」という反省の心・「私がします」という奉仕の心・「おかげさま」という謙虚な心・「ありがとう」という感謝の心)」という言葉が貼られていたのですが、海外駐在していたときは、まさにこれを忘れていた結果の失敗だな、と当時強く思いました。

どんな仕事であれ「日常の五心」を忘れないでいることは、プロとして活躍する近道になります。壁に直面したときも「自分の選択の結果だな」と反省しながら受け止めることができますし、壁を越えた先の未来をイメージし、ときには他人の力も素直に借りながら、解決方法を模索することができますから。感謝の気持ちを忘れなければ、いざというときに周りの力を借りられる人間にもなれます。

謙虚さや感謝の心を持って働いている社員が多い会社かどうかは、些細なことからも見えてくると思います。オフィスの玄関で困っているときに、通りがかった社員が見て見ぬ振りをせず声をかけてくれるかや、学生にも挨拶をしてくれるか、など。面接などでオフィスに訪れる際は、そうした部分もよく見ておくといいと思います。

また、社長や人事担当者以外の社員に会わせてもらえるかどうか、ということにも注目してみてください。現場の社員たちが新卒採用に意欲的に関わってくれるかどうかは、実際の社内の雰囲気とリンクしているからです。

どの会社も優秀な人材の獲得に必死なので、話を鵜呑みにしないことも大切ですし、企業訪問や面接においても「こういうこと聞いたら落とされる」といった気遣いは無用です。「聞きにくいことを聞いたから」という理由で落とすような企業なら、相性が良くなかったと割り切ってしまいましょう。

就職活動で会社の雰囲気をチェックできるポイント

  • オフィスの入り口などで、困っている学生に声をかけてくれるか?

  • 社長や人事担当者以外の社員にも会わせてくれるか?

  • 面接で答えにくいことを聞いてもきちんと答えてくれるか?

異業種を経験したことで気が付いた、「未来の当たり前を作りたい」という使命

最後に、当社に来るまでのキャリアや今後についてお話しさせてください。

2社目となる楽天も「10年勤めたらまた次に移ろう」と決めていましたが、転職を考え始めていた時期に、当時の上司の仕事に対する姿勢や考え方から学ばせてもらえることが多く、「もう少し勉強させてもらおう」と決めてプラス1年間在籍しました。

20年ほどIT企業にいたので、3社目では「新しい業界に行ってみるのも面白そうだな」と思い、再生エネルギー事業を手がける企業に入社。人事総務部門の責任者として着任していろいろと勉強させてもらいましたが、結果的に2年半しか在籍しませんでした。新しい環境をもとめて別業界に飛び込んだものの「ITのように今までになかったものをガンガン普及させていく画期的な業界のほうが、やはり自分の肌には合っている」と改めて気づくきっかけとなりました。

自分がやるべき使命に気づけた点では、ここもターニングポイントといえるかもしれません。未来の「当たり前」になる可能性のある仕事をしているときに、自分は充実感を覚える人間なのだなと自覚したうえで、現在の出前館に移って来ました

人事の統括者として、「こういうビジョン達成のために、こういう人に集まってもらい、こういう集団にしたい」といった組織ブランドを明確に作り上げていくことが、現在の目標です。

出前館のサービスは認知度が高いですが、「どんな組織か? 社風か?」と言われるとまだまだ共通認識は持たれていない状況です。明確なカラーを打ち出し、社員たちが同じ方向を向いて頑張れるようにしたいですし、「出前館はこういう組織だから、キャリアのなかで一回通ってみよう」と選んでもらえる会社に育てていきたいと考えています。

私の働くモチベーションは、とてもシンプルです。「家族がしあわせであること」、それのみです。物欲もないですし、頑張る理由が自分の外にあるので、仕事に対しての気持ちもブレないですね。「自分の子どもに話しても恥ずかしくない仕事ができているか? 」という判断軸も常に意識しています。

チャンスがフェアに与えられない社会は正しくない」という考えなので、公正さや公平さのある組織を作っていきたい、という思いも強く持っています。

10年前に業界トップだった会社がこれからも1位であり続ける必要はないと思っていますし、新しいものを受け入れてアップデートしなければ、世の中は退化していくばかり。未来に確かなバトンをつないでいけるよう、今後も次の世の中の「当たり前」になるようなサービスを発信できる会社や仕事に関わっていきたいですね

戸田さんが贈るキャリアの指針

取材・執筆:外山ゆひら

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