2つの大学、6つの会社を経て起業|キャリアの選択に迷った末に学んだ「120%の力でやり切る」という教訓

Vitalize(ヴァイタライズ) 代表取締役社長 道畑 健輔さん

Kensuke Michihata・東京大学法学部卒業。ケーティーコンサルティングに入社し、戦略立案・業務改善コンサルティングを経験。退職後、ディー・エヌ・エーに入社しソーシャルゲームの企画・開発・分析・コンサルティングなど、山田ビジネスコンサルティングで事業再生コンサルティングを、ベアーズでは開発責任者として基幹システム開発などを経験。その後、リブセンスで分析基盤の開発、地方支店の立ち上げ、事業責任者などに携わる。グリーベンチャーズで投資先ベンチャーのハンズオンを経験した後、Vitalize(ヴァイタライズ)を設立し、現職

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壁を乗り越えるために、目の前のことに120%の力で挑もう

これまでいろいろな壁にぶつかりました。振り返って今はっきりと言えることは、目の前のことにしっかり向き合い頑張ることでしか道は開けないということです

私は現在、Vitalizeという会社の代表取締役としてシステム開発事業をおこないながら、「日本の少子化を食い止める」ことを目指して地方創生や婚活支援などに取り組んでいます。

起業したのは35歳のとき。それまで2つの大学に通い、6つの会社で働きました。国家資格を取得したり司法試験の勉強をした時期もありました。 これがいいかなと思って進んでも、やっぱり違う。ではこっちはどうかなと思ってもやはり違う。何度となく道に迷い、七転び八起きの人生でした。

しかし、今やっとここに行き着いて、自分の想い、やりたいことを一歩一歩実現できています。

思考を停止してしまったり、誰かのせいにして止まってしまったらそこで終わりです。仮に抵抗勢力が邪魔をするなら、そこにどう立ち向かっていくか、どう巻き込んでいくかを考えることは自分の成長を加速させる最高のトレーニング。

「絶対に乗り越えてやろう」と強い気持ちで挑めば、確実に成長につながります。必ず力がつくという気持ちで臨めば、壁は自分を成長させてくれる大きなチャンスなのです。そして、その頑張り一つひとつが最終的に大きな力となって自分に返ってくることになります。

目の前のことに真摯に向き合っていれば本当に不思議なことに、別の道が見えてきたり、声がけをしてくれる人が必ずといっていいほど現れます。どの道に進んでも、どんな会社に入っても、言われたことの120%を返すことが大切です。

ただ、ああでもない、こうでもないと、もがき苦しいんでいたときには、こんなことはわかっていなかった話です。経験者だからこその言葉として、どんな場所でも120%の力を発揮することをぜひ意識してほしいと思います。

そして、私がこれまでの人生で意思決定をするときに常に心掛けてきたことは「間違ってもいいから早く決める」こと

早く決めれば、軌道修正もすぐにできます。もう一つは「人としっかりと向き合う」ことです。とりあえずこの2つを守っていれば、どんな決断をしても大きな失敗には至らないと信じています。

大きくまわり道をしたものの、自分にとって正しい道へと導かれたと実感

和歌山県の小さな町で育った私が高校卒業後に進んだのは、東京の大学、サッカーが強い大学、教職をとれる大学という3つの条件と合致した東京学芸大学です。父が中学校の教師だったこともあり、学生時代から「教育に関わりたい」という気持ちが根底にありました。

大学入学後1年間はサッカーに明け暮れ、できればどこかのプロチームへと淡い期待をもっていたのですが、現実は厳しく、夢見ていたサッカー以外の道を真剣に考えなくてはいけなくなりました。

「教師として生きていくのか? 」。初めて現実的に考えたとき、一生教師として生きていく覚悟は自分にはありませんでした。

では、どういう道に進むべきか? 教育に関わりたいとの想いから考えたのは、「官僚になって文科省に行って日本の教育を変えたい」ということ。そうと決まればすぐに大学を退学することを決意し、そこから1年間猛勉強をして東京大学に入り直しました。

進学後は国Ⅰを受験し、いざ官庁訪問へ。4次か5次面接くらいではっきりと言われたのが「事務次官に近いポジションになるまでずっと下積みが続きますよ、〇〇庁に出向とかありますけど大丈夫ですか? 」ということです。それを聞いて「たしかに厳しいかも、これは無理だ」と思った私は辞退することを決めました。

そこから、また「どのように今後進むべきか」と、キャリアの選択に迷いました。すでに大学4年の夏休み前という時期でした。

さてどうすべきか、ゼロベースで考えて思ったのは、「一旦、教師の道に進もう」と判断しました。そして、即行動に移し、後期授業で60単位くらい詰め込み教員免許を取得。さらに、せっかくなら数学の教師になりたいと思ったことから、卒業後1年間通信大学の教職課程を取りながら塾講師のアルバイトをして暮らしました。

塾講師のアルバイトは楽しく、大変やりがいを感じました。「教育に携わりたい」という想いも実現できる仕事であるし、好きな仕事であったことは間違いありません。一方で、再び「一生教師として生きていく覚悟はあるか? 」と自分に問い直したとき、やはり無理だなと思ったのです。

いつかは教育に関わる仕事がしたい。でも、まずは社会人として経験を積もう。そう考え、民間企業への就職へと大きく舵を切ることを決めました。

教師という職業を前に行ったり来たりして迷い、官僚になって日本の教育を変えたいという野望からは大きくかけ離れた民間就職という道です。かなり回り道をしたことになりますが、「今改めてもう一度進路を選ぶとしたら、どういう進路を進みますか? 」と聞かれたら、最終的に選んだ東京大学へ行き民間企業への就職という道を選びます。

回り道をしてやっと「これだ」という道がはっきりとしたのだと思っています。かつての私のように、今人生の選択で悩んでいる人がいるとしたら、まわり道しても大丈夫と伝えたいです

いつか「起業」してやりたいことを。そのためにやり切る経験を重ねる

周りと比べて3年も遅れて就職活動というスタートラインに立ちました。業界研究などしたこともなければ何の情報も持っていなかったので、人づてに「コンサルはいいらしい」と聞いたことからほぼコンサル一本に絞ることに。総合商社を少し周った程度で、他の業界は一切検討しませんでした。

入社を決めたのは中小規模のコンサルタント会社です。決め手は社長に魅力を感じたことに尽きます。話をしていてレベルの差のようなものを感じましたし、この人についていけば絶対に成長スピードが早いはずだと確信しました

その後、ディー・エヌ・エーでソーシャルゲームの企画、事業再生会社でコンサルタント、家事代行のベアーズでエンジニア、リブセンスで人材紹介事業のグロース等を担当した後、ベンチャーキャピタル会社を経て起業に踏み切りました。

約10年ほどの間に6社を渡り歩いたことになりますが、周りのレベルが高く思ったように成果をあげられなかったり、支援していたクライアント先が倒産してひどく落ち込んだこともあります。人の役に立ちたいという想いだけは思っても、そもそも人を動かす力が伴っていないからうまくいかない。悔しい経験も数多くしました。

一方で、いつか自分のやりたいことをやりたいと「起業」はずっと意識していました

ようやく「自分も経営者としてやっていけるかも」と自信をもてるようになったのが、リブセンスで一事業を任せてもらい、気づけば100人を超えるメンバーをまとめることができるようになったころです。

その後、ベンチャーキャピタルに移ったときには、「今の自分ならいける」と確信できたので、もうチャレンジするしかない。半年後、35歳のときに「起業」を果たしました。

これまで幾度となく道に迷い、挫折を繰り返してきました。そこから学んだことが3つあると思っています。

1つは、やり切ること。営業だろうか開発だろうか好き嫌いせずに、自分が最後の砦となってやり切るという経験を積めば、人より圧倒的に強くなります

2つ目は、人をよく観察すること。相手がなぜそういう発言をしているのか、何を考えているのか、人の深い部分まで掘り下げて観察することが大切です

3つ目は、最後は背中を見せること。相手の深い部分を理解できていれば、後はこちらが背中を見せれば付いてきてくれます

仕事は楽しいときばかりではありませんが、この3つがあれば仲間も共に頑張ってくれると感じています。

「外せない条件」と「あったらいいな」条件をしっかりと切り分けよう

やりたいことが最初からはっきりしている人は少数派だと思います。就職活動では、やりたいことを探すより、まず「やりたくないこと」を明確にすることをおすすめします

自分にとって外せない条件(やりたくないこと)と、あったらいいなという条件はしっかりと分けて、外せない条件を軸に絞り込んでみましょう。その上で、最後は人間関係が良好かどうかで選ぶのが良いと思います。

転職も視野にどんどんキャリアアップしていこうと考えている人の場合は、大手企業か今流行りの業界に入るのが一番です。大手企業はそのネームバリューから第二新卒で転職する際にやはり圧倒的に有利ですし、ITのベンチャー企業などで尖ったことをやってきた実績のある人はどんな会社からももとめられる人材となるでしょう。

加えて、成長志向の強い人にぜひ伝えたいのは、事業を助ける立場(SIerやコンサル会社など)と、事業の実行者(事業会社)の両方を経験した方がよいということ

それぞれの立場を経験することで、事業の当事者でありたいと思いながらずっと一つの事業に携わると飽きがくることもわかり、結局自分にはどちらが合っているのかがはっきりしてきます。さらに、本当に熱中できる事業を考える上でも大きな意味があると考えます。

「入社7年目にどんな顔で働いているか」が企業を見極めるポイント

最終的に入社する企業を決める際は、ぜひ入社して5年、6年、7年と働いている先輩社員の働く姿を確認してほしいと思います。生き生きと働いているかに着目すれば、その会社の変化の様子や対応力がわかるはずです。

ベンチャー企業であれば、社長との相性が何よりも重要です。馬が合うと感じられる社長であれば問題ないと思います。

色々なタイプの社長がいますから一概には言えませんが、見極めるべきポイントは人を育てようという雰囲気、環境があるかどうか。社員の成長をどこまで考えてくれる社長なのか、会社なのかを良く見定めてほしいと思います。

これからは変化対応力で勝負! 新たな価値を創造しよう

単純作業は価値がなくなる時代となります。そんな時代に必須となってくるスキルが「変化対応力」です。それをベースに「人の心を掴めるか」、「新たな価値を創造して売上を作り出せるか」のどちらかのスキルをもっておく必要があると考えます

それらの力を磨くために学生時代どのようなことを頑張っておくのがよいかですが、たとえば学生時代に部活動を頑張ってきた人は企業で重宝されるイメージがありますが、「変化対応力」があるかと言われると疑問を感じることも多いです。組織のルール下ではうまく行動できても、自由な環境下で一歩を踏み出すのは逆に苦手なイメージがあります。

私からは、自分がやったことがないことに挑戦してみるような体験をしてほしいとアドバイスしたいです。

これまでやったことがないことに熱中してみて、自分一人でできることの限界を知る、仲間を巻き込んでみる、仲間の中でどういう役割を果たすのが自分に合っているのかを知っていく、そういう経験がもとめられているのかなと思います

途上国で学校をつくるボランティアに参加した、地方創生のプロジェクトに参加したというような体験は非常におすすめです。

道畑さんがすすめる、学生時代にやっておくべきこと

  • これまで経験したことがないことに挑戦してみる

  • 論理的に思考する力をつける

もう一つのアドバイスは、地頭を鍛えておくこと。面接の場で話す内容や日頃の仕事の組み立てでも、論理的に思考できるかどうかで大きな差が出てくると感じています。

最近、ロジカルシンキング、デザイン思考などの言葉がよく聞かれますが、論理的に考える力は必須となると思います。数学を勉強するのもおすすめですし、ぜひ色々なケーススタディを通して論理的思考という考え方に触れる時間をとってほしいと思っています。

取材・執筆:小内三奈

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