就活も仕事もねばり強さが重要|困難があっても夢中になれる道を探そう
音元出版 代表取締役 風間 雄介さん
Yusuke Kazama・同志社大学を卒業。音元出版に編集者として新卒入社。2021年より現職
言葉にすることが、巡り巡って自分を助けることもある
学生時代に多くのアルバイトを経験しましたが、「自分には向いていないな」「全然ダメだな」と思うことばかりでした。当時の趣味は本や雑誌を読んだり映画を観たりすることで、なかでも雑誌に興味があり、自分が好きな雑誌の編集者なら頑張れるのではないかと、いつしか出版社への就職を目指すようになりました。
そうして大手出版社を中心に選考を受けますが、もとより採用人数が少ない業界であることや、就職氷河期であったことなどが重なり、なかなか上手くはいきませんでした。結果が出ず諦めかけていた時、音元出版が新卒採用をしていることを知り、選考を受けて入社することができました。
音元出版の採用を知ることができたのは、実は周りの人に「出版業界に入社したい」という話をよくしていたから。「この会社ならまだ募集してるよ」と採用状況を教えてもらうことが多かったのです。
自身の経験をふまえても、大々的に情報が出回りにくい中小企業の場合は、自分から積極的に発信をしたり、人づてに情報を得ていくことも大切だと思います。皆さんも目指す目標や、やりたいことがあるなら、まずは口に出して周りに伝えることを意識してみてほしいですね。
雑誌編集者からWeb事業の責任者へ。地道な努力で事業をかたちづくる
入社して強く感じたのは、雑誌編集者の仕事は1人で黙々と作業する一面もありながら、チームワークがなければ完結しない仕事であるということ。
原稿の入稿日に向けて作業をするなかで、追い込まれながらも、先輩に手伝ってもらってなんとか完成させる。周りと助け合いながら一冊の本を作り上げる過程がとても楽しかったですね。
編集者の仕事は大変なことも多かったですが、何よりも自分で書いた文章が活字になり、それが書店に並ぶという喜びはとても大きくて。少しずつできることが増えていくにしたがって、特集記事も任されるようになり、雑誌作りがどんどん面白くなっていきました。
そんななか、青天の霹靂とでもいいますか、入社1年半後にWeb事業が立ち上がることになり、そこに異動することになったのです。雑誌の編集職はとても楽しくようやく仕事に芽が出てきた時期だったので、正直なところ残念に思う気持ちもありました。
さらに当時、Web事業は世間的にも新しく、効果が未知数だと捉えられていました。ですので、編集するのも営業をするのもひと苦労。たとえば「Webサイトに広告を出しませんか」と声をかけても、そもそもWeb上に広告を出すという概念が浸透していないために理解を示してもらえない。なかなか結果を出すことができない日々が続きました。
そうした苦しい期間がとても長く続きましたが、自身を含めた編集者たちも、当時の経営者も諦めることは一切なく、試行錯誤しながらいろいろな施策を試し続けた結果、ついにはWeb事業が黒字化。現在では、会社の売上の大きな柱になるまでに成長しました。
そのような中で、Web事業ならではの仕事のやりがいを感じられるようになっていきました。Webの場合は、自分の考えた企画や記事が、どれだけの読者に見られたかが数値で分かるので、記事のクオリティを高めて大きな反響を得られたときにはとても達成感を感じます。
同じ業界の人から感想をもらうこともあって、業界や世間に影響を与えているという実感を持てたときは純粋に嬉しくも思いますね。
風間さん流 仕事のポイント
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大変なときは、周りの力を借りよう
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かんたんにあきらめず、粘り強く続けよう
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周りからの反響が仕事の喜びになる
モチベーションアップのカギは「ベンチマーク設定」と「真似ること」
その後は編集者としてキャリアを重ねていき、2021年からは代表取締役に就任。今後は安定的な会社経営を展開しつつ、常に成長し続けていくことを重視していきたいと考えています。
情報を扱っている会社として、正しい情報、面白い情報をいち早く出し、読者の方々に喜んでいただくのが我々のミッションです。購読料や広告料などを収益源とし、事業を展開し成長させていく体制を、ますます充実させていければと考えています。社内の編集者に対しては、仕事の喜びを味わってもらえる環境作りに力を入れたいですね。
改善する余地は常にあると思っていますので、「これで良いのか」と問い続けながら、日々見直していければと思います。
また、仕事のモチベーションを高めるために皆さんにおすすめしたいのは、自らの位置を知るための基準、つまりベンチマークを明確にすることです。
私の場合は、健全に運営されていると思われる業界内外のサイトをベンチマークに設定し、「まずは記事を出すスピードで勝負しよう」「次は記事のクオリティを上げよう」「企画力を上げよう」など、そのときの状況や規模、成長速度などに応じて目標を設定し、それに向けて細かな戦術に落とし込み、実行していました。それを続けることで、徐々に担当媒体の存在感が高まっていったのです。
また、先輩や同僚のやり方で参考になる部分があれば、どんどん真似をすべきだと思います。最初はやっていることの意図が分からなくても、少しずつ「このためにやっているんだな」と本質を掴めるようになるので、そうすると、単に真似をするだけでなく、自分なりに工夫してさらに成長を加速させることができますよ。
それと、企業や業界選びで大切なのは「大変なことがあった時、頑張りたいと思えるか」という視点をもつことだと思います。最初から何でもできる人はいませんし、誰でも壁にぶつかったり、失敗や苦労をすることもあります。だからこそ、その企業や業界に身を置いた自分をイメージして、困難な状況になったとき、それを乗り越えようと思えるかどうかを想像してみてください。
就活中はいろいろな企業や業界が魅力的に映ると思いますが、あまりにも広く見すぎると中途半端になってしまうので、なるべく早い段階である程度業界を絞ってみるのもおすすめです。そのためには、インターンなどを活用して実際の空気感を味わってから判断するのも良いですね。
「今」と「未来」を見極めながら就活を進めよう
今後は世間的にも言われているように、AIがますます発展していく時代。メディア業界においても、簡単な記事であれば、AIを使って自動生成されるようにもなっています。
あらゆる業界でそのような革新が起きていくと、反対に「人間にしかできないこと」、たとえば人と人とのコミュニケーションなどが重視されていくと思います。そこで得られる気づきや体験が求められるので、そのような認識を持ち、仕事をする人の需要がどんどん伸びていくでしょう。
AIなどの最新の研究成果を直接ビジネスに結びつけられる人材の需要も高まっていくと思いますが、その業界に身を置かない場合は、逆にそういったテクノロジーを活用し、どうやってビジネスに結びつけられるかを考えるべきです。そのために、最新テクノロジーの情報に定期的に目を通し、ある程度の知識を得ておくことをオススメします。
就活においては、「その企業や業界はこれからどうなるだろうか」という視点も重要です。今人気の業界や企業に目がいくかもしれませんが、時代は移り変わるもの。現状だけではなく、未来のことも考えて選択してみてください。
また、就活では名の通った大企業に目が行きがちかもしれませんが、中小企業には、頑張りが直接業績に反映したり、自分の働きを見てもらいやすいなど、少人数ならではの良さもあります。
皆さんがそういった企業それぞれに違った魅力があることを理解したうえで、企業や業界の実態に目を向け、自身に合った環境と出会えることを願っています。
取材・執筆:志摩若奈