誰かのためではなく、自分のための人生の目的を考えよう|挑戦し続けること、思考を止めないこと
トレンダーズ 取締役CFO 田中 隼人さん
Hayato Tanaka・小学校から高校までサッカーに打ち込む。高校から大学院までを関西学院で過ごし、大学ではサッカーサークルの立ち上げや、公認会計士の資格取得に励む。大学院では会計基準について研究。新卒でトレンダーズに入社し、現職
周りの価値観や意見を抜きにして、自分の人生の目的を考えよう
大学は商学部で、そこで初めて会計という領域に触れ、それ以降「会計」というものがどんどん身近な存在になっていきました。そうして、せっかく大学で勉強するなら、将来的にも役立つ資格を取っておこうと思い、公認会計士の資格を取得することに。
また、両親からよく言われていたのが、「お金さえあれば幸せというわけではないけれど、お金があることで得られる幸せはある」ということ。
幸いにもある程度生活に余裕がある家庭環境だったので、バイトをせずに勉強に打ち込むことができ、最終的には大学院まで卒業させてもらいました。そういった経験があったことに加えて、当時いた、比較的裕福な家庭環境で育ってきた友人たちを見ていると、選択肢の多い人生を送っているように感じました。そのような実感を通して、資本主義社会において、「お金」というものがどれほど重要なものかというのはことさら強く認識していましたね。
就活においては特に自己分析に力を入れていて、よく人生の「目的」について考えていました。そこで見出したのが「幸せになること」。そして幸せになる確率を高めるには経済的・時間的余裕が必要だとして、それこそが唯一の就活軸となりました。
就活軸を見出すポイントは、自分ではない誰かの価値観や意見をすべて取っ払い、“自分の”人生の目的を徹底的に考えることです。今までの人生のなかで、いつの間にか「周りから言われて大切な気がしているけど、自分にとっては大切でないもの」がたくさんあると思うんです。それらを一旦捨てて、フラットな視点で考えてみてください。
たとえば企業の知名度や社員数、年収、福利厚生、事業内容などはとても大切な要素ですが、そこで「なぜ大切に思うのか」をあらためて己に問いかけてみる。そうして自分にとって譲れないポイント、そうでないポイントを精査してみると良いでしょう。
「経済的・時間的余裕を得ること」を重視して就活を進めていて、そのためには仕事を通して稼ぐ力を身につける必要があると考えていました。1時間あたりの価値を数千円単位で上げていくのではなく、1時間10万円、20万の価値提供ができる人材になる。そして、それをできるだけ短期間で実現するためには、自分の得意な領域で突き抜けるのがベストであるとも思っていました。
そこで、相対的に自分の強みを考えてみることに。周りよりも努力せずに上手くやってきたこと、なぜか頑張らなくてもできていることなどを思い浮かべると、俯瞰して考える力やロジカルシンキング、モチベーションの安定性などに長けていると気付きました。反対に、初対面の人とのコミュニケーションや、営業活動、クリエイティビティなどは苦手としています。
そして、そういった自分の強みをもとめているチームに所属したら、足りない部分を補うことができる人材として重宝される、抜きん出ることができるのではないか、という考えが頭のなかに浮かんだのです。これはトレンダーズに入社した理由の1つでもあります。
もう1つの入社理由は、企業のケイパビリティ、すなわち組織としての能力があるということ。当社は当時から女性社員比率が高く、性別や年齢・年次に関わらず、個人の感性を積極的に活用して事業を展開していました。女性活躍推進という社会課題に本気で向き合っていて、かつ、デジタルマーケティングという今後伸び代のあるマーケットで事業展開をしていた。それに加え、上場企業であり、きちんと利益を上げていたので、短期的に倒産することはなく、少なくとも数年間は企業として成長するだろうと判断していました。
そして、最終的には「人」が入社の決め手になりました。人間関係のストレスがあると、仕事のパフォーマンスが下がりますよね。「ちょっと言い方が嫌だな」「人間的に尊敬できないな」といった違和感があると働きにくいと思ったので、自分の感覚を大切に、自分に合う企業を探していたんです。
今の時代は昔よりも企業情報がオープンに公開されていることが多いですから、いろいろな情報をもとに判断しやすいと思います。就活を進めていくうえでは「今後伸びる市場かどうか」「企業としての力はあるか」、そして「そこで働く人たちはどんな人なのか」をぜひ見極めてみてくださいね。
田中さん流 仕事選びのポイント
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自分の強みを考えて、強みを発揮できる環境を選ぼう
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あらゆる情報から企業のケイパビリティを判断しよう
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最終的には「人」で自分に合うかどうかを決めよう
積極的に挑戦する。期待を超え続ける。その意識によって、仕事で成長を遂げられる
2014年4月、トレンダーズに新卒入社して以来一貫して管理部門に所属しています。最初は経理を担当しIRやM&Aなどにも携わりました。
今でも覚えている印象的な出来事があります。入社半年くらいでIRを担当し始めた頃、株主や投資家向けの決算説明資料を作成していた前任の方が異動になり、その重要な役割を誰かが担う必要がありました。
チャンスがあれば積極的に挑戦しようという意識をもっていたので、今思うと怖いもの知らずだったと思いますが、そこで「私にやらせてください」と手を挙げたんです。思った以上に大変でしたが、他社の決算説明資料を参考にしたり、事業部の先輩に自社の強みを聞きつつ、軌道修正がしやすいようできるだけ早く仕上げて提出することを意識して取り組み、なんとか成し遂げることができました。
勇気をもって一歩踏み出したことで大きな機会を得て、成長しながら結果を残すことができたんです。それを入社半年というかなり早い段階で実現することができて良かったと今でも思っています。
いってしまえば、仕事上の挑戦というのはどれだけミスをしても失うものはほとんどありません。むしろ、挑戦することで経験値が上がりますし、成功したら評価につながり、新しいチャンスが巡ってきやすくなります。そのことはぜひ覚えておいて欲しいです。
仕事で大切にしているのは、期待を超え続けることです。世の中には期待に応えられない人はたくさんいて、期待に応えられる人も結構いますが、そうではない「期待を超え続ける人」は、思うに世の中で1%くらいじゃないかなと。だからこそ、常にその意識をもって仕事に取り組んでいけば自分自身の価値を高めていけるはずです。
自身としての今後のビジョンは、「社会課題を解決したい」という想いのある人や企業にとっての強力な推進者・実行者で在ること。今のところそういった社会課題に対する解決欲が強く湧いてくるタイプではないからこそ、そういう人や企業の手助けをすることで、結果的に社会貢献できればと考えています。「自分が生きてきたことで、社会がどう変わったか」というのが生きた功績だと思うので、今後もそれを体現していきたいですね。
ファーストキャリアはキャリアの「土台」を作る場所
就活で企業選びをする時、どうしても実現したい未来がある人は迷わずそれを第一優先にして、少しでもその未来にたどり着ける可能性を高められるような企業選びをして欲しいです。
一方で、特にやりたいことがない人は、できるだけ多くの企業を見るようにしましょう。多くの就活生の目につきやすい人気企業だけでなく、知名度はそこまでであっても実際は世の中に大きな価値を提供している企業はとても多いです。最初の印象で好き嫌いをせずにいろいろな企業に目を向けてみるのが大切です。
その後で、自分はどこが気になったのか、何を基準にしたいのか、抽象度を上げて企業選びの基準を作ってみてください。たとえば事業内容や一緒に働く人、企業の雰囲気など、人によって大切にしている要素は違うと思います。表面的なものではなく、自分で考えた結果見えてくる本当の基準を見出しましょう。
ただ正直なところ、どの業界に就職するかはあまり関係ないと思っています。業界を意識しながら企業を選ぶのは違和感があるような気がするんです。もちろん、特定の業界で働きたいという強い思いがある場合や、いろいろな企業を見た結果同じ業界を見ていたなど自然な流れもあると思いますが、最初からあえて分ける必要はないと思います。
特にファーストキャリアの就活で意識して欲しいのは、そこが社会人としての土台作りをする環境であるということ。たとえば、「何よりも効率性を重視する」「自ら行動することをもとめられる」「言われたことを正確におこなう」など、企業によってそれぞれ特徴がありますよね。それが自身のキャリアに大きく影響する可能性が高いのです。
その企業に勤めることでどのような自分になっているのか、自分が理想とするような社会人としての基礎を作ることができるのかというのをよく考えておきましょう。
自らの思考を止めずに、目の前の仕事を工夫していこう
これから求められる人物像は、どのような環境においてもモチベーションを保ちながら成果を残していける人です。変化の多い世の中なので、周りがどれだけ変わっていっても、自分自身が発揮できる力をそのまま維持できる人は、今までもこれからも必要とされ続けるでしょう。
それに加えて、自分で課題を見つけられる人はさらに重要になってくると思います。日本の市場は成熟しきっておりこれからは下降気味だと言われているので、「現状維持でいいや」という意識でいると下りエスカレーターに乗り続けているような状態になってしまいます。
だからこそより良くしていくためにできること、状況を打破するために工夫できることなどを考えるのが大切なんです。
これはなにも大きなことでなくたっていいんです。社内の会議の進め方に意見を出してみたり、事務作業で新たなツールを活用してみたりと、目の前の仕事においても、自分のアイデアで行動に移してみてくださいね。
このような人物像を目指していくためには、日常的に感じている違和感や疑問をできるだけ言語化することが重要になってきます。普段はいろいろな課題や「もっとこうしたい」と思うようなことがあったとしても、それらをすべて解決しようとしたらキリがありませんよね。
だからと言って思考を止めてしまうと、考えないことが当たり前になってしまいます。「この会議で1つは意見を言おう」「週末にチームの課題を見つけよう」など、できることから自ら考える機会を設けることをぜひ意識してみましょう。
最後に。キャリアを考えていくうえで何よりも大切なのは、自分の人生を幸せに生きることです。自分の人生は誰も幸せにしてくれないので、自らが責任を持って自らを幸せにしていくんだという気概を持って、本気でキャリア選択をしていきましょう。
取材・執筆:志摩若菜