「尖った人」を目指して挑戦し続けたキャリア|経験から好きや得意を見つけよう
シーイーシー 代表取締役社長 姫野 貴さん
Takashi Himeno・ 大分県出身。1992年、北九州大学(現:北九州市立大)商学部卒業後、シーイーシー入社。プラットフォームサービス事業部長を経て、2014年に執行役員に、2020年に取締役に就任。2023年2月から代表取締役社長に就任
興味と向き不向きを軸にして選んだファーストキャリア
大学生のときに、当時ではまだ珍しかったプログラミング(情報処理)をおこなうゼミに入っていたことが、IT関連の職に就きたいなと思ったきっかけでした。ここで人生の方向性がぼんやりと見えてきたような気がします。
学生時代を振り返ると、勉強とアルバイトに明け暮れていた日々でした。多種多様なアルバイトをしていたので、さまざまな考えをもつ人と話をする機会があり、「世の中にはこんな人もいるのか」と学びや発見の連続でした。このときの経験は今でも大切な財産となっていますね。自分の向き・不向きのようなものを知る手掛かりとしても、アルバイトはとても有効だったなと思います。
アルバイトのなかでも、最も世の中の仕組みが分かったのはコンビニの仕事です。レジ打ちや品出しだけでなく、在庫管理や仕入れという普段目にしない部分にまで携わり、流通の一連の仕事を経験できたのは大きかったと感じています。
このような学生時代を過ごしていて、就職活動時にはゼミで興味を持ったIT関連のなかでも「SE(システムエンジニア)職」で働くことを第一志望として探しました。当時は、バブル崩壊後で就職は厳しい時期。採用を控える企業が多いなか、まだまだ活発に採用していたのがシーイーシーでした。入社の決め手となったのは、前社長がちょうど人事の採用担当で、その人柄や会社の雰囲気に大きな魅力を感じたからです。
3度の転勤を経験。環境を変えた先の人間関係がキャリアの土台になった
シーイーシーに入社して30年以上経ち、今年から代表取締役社長になりましたが、実はこれまでの道のりで辞めたいと思ったこと、転職を考えたことは何度もありました。
新入社員当時を思い返してみても、先輩の人柄や社風に魅かれて入社したものの、いざ入ってみると想像していたイメージと違う部分も少なからずありました。
一口にSEといっても、さまざまな製品やサービスがあり、それに伴う役割があります。入社早々自分が希望する仕事にすぐに就けたわけではありません。配属された部門で、与えられた仕事をただただやらされていたように感じたこともあります。
数年頑張って自信がついてきても、希望する仕事にはなかなか異動できずもやもやしたことや、仕事の成果を上司に評価されずに悔しい思いをしたこともありました。そのたびに「転職」が頭をよぎっていたことをよく覚えています。
しかし、今思えば、さまざまな仕事を経験させてもらったのも良かったなと感じます。自分が好きなこと、やりたいといえる仕事に行き着いたのは、入社して7、8年目となる30歳前後で、そこからやっと本当にやりたいと思ったシステム開発に軸足を置いてキャリアを積めるようになりました。
そんな私がここまでやってこられたのは、3回の転勤があったからです。東京から再び東京に戻ってくるまでに、九州、関西、九州と3度の転勤を経験しました。会社都合もありましたが、環境を変えるために自分から転勤希望を出したこともあります。どの転勤も私のキャリアにおけるターニングポイントでした。
転勤すると、それまでやってきたことがすべてリセットされて、一からのスタートになります。新しい環境に慣れるためには新天地で出会う人とたくさんコミュニケーションをとらなければいけないので、その度に謙虚な気持ちになりますし、気持ちだけでなく発想までもが新たなものへと変わっていく感覚でした。
さらに不思議なことに、知らない土地に赴任した際に出会った人たちこそが(それは社内の人脈のみならず、パートナー企業さんなどさまざまですが)、私自身の考え方や仕事への取り組み姿勢などに大きな影響を与えてくれました。
私のキャリアプランは、ライフプランに当てはめて考えてきました。何歳くらいには結婚していたい、子どもがほしい、マイホームがほしいと考えて、そのときどきに自分がどのポジションにいてどの程度の年収を手にしていたいかなどを軸にしていました。
キャリアプランを具体的に描かなくても、ライフプランからの逆算でも良いと思います。ライフプランの方が考えやすいなら、そこからキャリアに落とし込んでみてくださいね。
社内で1番になること、尖った存在になることを常に意識
仕事においては、技術的な面では「(少なくとも)社内で1番になる! 」という目標を立て、ただ知識や知見を身に付けるだけでなくて、やはり尖っていないと駄目だという心意気でやっていました。社内で資格取得をバックアップしてくれる体制があったことにも後押しされて、仕事が終わった後も資格の勉強に励み、多くの資格を取得しました。
東京以外にも拠点がある会社なので、全社に自分の名前を知らしめるのは簡単なことではありませんでしたが、技術的な知見が増えれば増えるほど、知らない社員から「〇〇について教えてほしい」と問い合わせがくることも増え、知名度が上がっていくのを実感しました。
その当時、何か行動する際に常に考えていたのは、「何もせずに後悔するよりは、失敗してでも挑戦しよう」ということ。立ち止まらずにとにかく前に進むことを意識してきました。
会社の中で突出した存在になろう、そのためにはどんどん挑戦しようと常に前に進んできたことが今につながっていると感じています。皆さんにはぜひ挑戦する気持ち、人より前に出ようという気持ちを大切にしてほしいですね。
「その業界・仕事が好きか+働いている自分をイメージできるか」で企業を選ぼう
業界や仕事を選ぶには、好きか否かで決めるのが一番だと思っています。その企業の製品やサービスが好きかどうかで判断するというのも、実は最も納得感がある方法だと思います。もう一つ、働いている自分がイメージできるかも重要なポイントになるので、その会社で働く自分の姿をリアルにイメージしてみてください。
今は情報が大量にありますから、溢れる情報に混乱したり迷ったりすることも多いはずです。そのため、自分の目で見たこと、耳で聞いたことを大切にしてほしいです。例えば、会社説明会やインターンシップに参加してみる、先輩社員に積極的に会いに行くなど、生の声を聞きにいくための活動を意識的に増やしてみてくださいね。
ただ、どの会社に入っても、ほとんどの人はすぐにやりたい仕事はできないと思いますし、自分に何が合っているかも正確にはわからないと思います。私が新入社員に伝えているのは、「まずは3年頑張っていろいろなことを勉強・経験してみよう」ということです。
好きなことかもしれないし嫌いなことかもしれませんが、与えられた仕事を3年は頑張ってみる。すべてが勉強だと思って、しっかりと取り組んでほしいと伝えています。これは、どの組織に属しても同じことだと思います。
3年経てば、きっと何かしら見えてきます。会社の良いところも悪いところも、自分に合っているか合っていないかも、この間にしっかりと見極めたらよいというのが私の考えです。与えられたどんな仕事も決して無駄にはなりません。逆に幅広い仕事を経験したことが後々きっと役に立ちますよ。
入社後の心構えとして意識しておくべきこと
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やりたい仕事はすぐにできないと思っておくべし
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まずは3年いろいろな勉強・経験を積んで、会社の良いところ・悪いところ、自分に合っているか合っていないかをしっかりと見極めるべし
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与えられたどんな仕事も無駄にはならないと心して取り組むべし
転職を考えている当社の社員には、私自身の経験から「転職せずとも環境は変えられる」ということを伝えています。知らない土地、新たな人間関係という環境に置かれ、そこで何とか生きていかなくてはいけないという状況だからこそ、貴重なご縁や出会いがありました。
当社のように全国に拠点がある会社であれば、転勤を機に新たな環境でキャリアアップを目指す方法もあることを知っておいてほしいですね。
もとめられるのは「環境変化に対応できる人」。多様な人との出会いを大切に
IT業界などはとくに、日進月歩をはるかに超えたハイパースピ―ドで進化していく業界です。技術の変化、進歩とともに、プレイヤーも次々と変わっていく業界なので、大きな環境変化にも柔軟に対応できる人が求められていると考えます。
環境変化に柔軟に対応するための資質として大事なのが、能動的に動く力や積極性と、レジリエンスといわれる耐性力や回復力です。
偉そうなことはいえませんが、私のこれまでのキャリアには、学生時代の部活動やたくさんのアルバイト経験を通していろいろな人と触れ合ってきた経験が大きかったと思います。それが、柔軟性をはじめとする力につながっているのではないかと今振り返って思うのです。
自分が生きてきた世界は限られていますが、世の中には思いもよらない発想や考えをもっている人がたくさんいます。多くの人と出会えば出会うほど視野は拡がるので、とにかくたくさんの人と触れ合って会話してみてほしいと思います。シンプルな方法ですが、これが皆さんを能動的で柔軟性のある人へと成長させる近道だと考えています。
学生の皆さんからよく「入社までに何をしておけばよいでしょうか?」と入社への準備について聞かれるケースが多いのですが、残り少ない学生生活はご自身の好きなことを目一杯やってほしいと毎回お伝えしています。
いざ働きはじめたら、贅沢に時間を使える機会などそうそうありません。勉強することよりもむしろ、時間にたっぷりと余裕がある今を大切に、趣味でもアルバイトでもサークル活動でも旅行でも、やりたいこと、好きなことに大いに時間を使ってほしいと思っています。 そうやってエネルギーをたっぷりと貯めた状態で、皆さんが4月を迎えてくれることを願っています。
取材・執筆:小内三奈