「とりあえずやってみる」「期待以上のものを返す」|この2つを継続すれば、自分に向いた仕事で花を咲かせることができる!

エデュビジョン 【ビジヴォ】代表 教室運営責任者 秋竹 朋子さん

エデュビジョン 【ビジヴォ】代表 教室運営責任者 秋竹 朋子さん

Tomoko Akitake・東京音楽大学ピアノ演奏家コースを経て、聖徳大学大学院音楽文化研究科・修士課程卒。ウィーン国際音楽コンクール及び国内の受賞歴多数。ビジヴォの代表として「声」「話し 方」に問題を抱えるビジネスパーソンの指導を実施。日本初 「超絶対音感」によるボイストレーニングが話題を呼び、ビジネス各紙からの取材、TV番組にも多数出演。開校16年の東京スクールを拠点に大手企業や個人のクライアントを多数持ち、現在は、経済産業省のグローバル人材派遣として「ビジネスボイス」が選ばれフィリピンに赴任、日本にとどまらずアジアにて「声」の指導をして活躍中

この記事をシェアする

 人とのつながりが演奏家以外の選択肢を見つけるきっかけとなった

キャリアにおける最初のターニングポイントは、音楽大学に通っていた19歳の頃、自分で音楽教室を立ち上げたことです。

当時は「音楽で食べていくには『教える仕事』しかない」と思い込んでいたので、他の音楽教室にも勤めてみたのですが、「私ならもっとこうするのに」と思う場面が多く、それなら自分でやってみよう、と思い立ったのがきっかけです。

住んでいたマンションのお祭りで演奏したり、近隣のお宅にチラシを配布したりと、積極的に営業活動をおこなったことが功を奏し、大学を卒業する頃には40人弱の生徒さんを自力で集めることができました。未熟ながら教室をそれなりに大きくできた手応えは大きく、「黙っていても仕事は入ってこない」という確信を得ることもできました

私はいろいろな仕事をしていますが、現在に至るまで22年間、子どもの音楽教室だけは続けているので、この出来事がキャリアの第一歩目だったと言えるかと思います。

とはいえ、音楽家はとても不安定な職業。周りの同級生たちと同じく「将来はセレブ婚をして、養ってもらいながら演奏家として音楽を続けよう」といった甘い未来を、頭のどこかで想像していたのも事実です。音楽に対してはものすごく本気だったので、大学院にも進学し、ウィーン留学も経験しましたが、コンクールで結果を出せない日々が続きました。つらい出来事のほうが多く、今の自分のキャラクターからはほど遠い、シリアスな雰囲気をまとっていたと思います。

秋竹さんのキャリアにおけるターニングポイント

芸術の道はエンドレスなので、自分で納得できない限り、諦めることはなかなか難しかったです。しかし23〜24歳の頃、演奏家への道を自然と諦めることができました。今の仕事の主軸である、ビジネスパーソンのボイストレーニングを始めたことがきっかけです。

上述したように「待っていても仕事はやってこない」という営業魂があったので、大学院生の頃は、アルバイトとしてクラブバーで演奏をさせてもらい、そこで知り合った経営者に企業のパーティーに呼んでいただく……といった形で仕事を得ていました

「コンサートで使ってくれそうな企業との人脈を作らなくては」と思い、経営者の会などにも参加していたのですが、ある経営者の方から「声が通らない」という悩みを相談されたのです。軽くボイストレーニングの方法を伝えてみたところ、「音楽の人はやっぱり耳がいいね。ビジネスパーソンのボイストレーニングをやったらどう? 」「一緒にやってみる? 」といった提案とお誘いをいただきました。

オバマ大統領がボイストレーニングをしていることも話題になった時期で、こんなところにビジネスの種があったのだな、と目から鱗が落ちた気分でした。そこからはボイストレーニングについて勉強し直し、ものすごい勢いでテキストを作り上げ、半年ほどでスクールを立ち上げました。

「ビジネスボイス」という謳い文句の珍しさもあり、お客様の輪は紹介でどんどん広がっていきました。当初は「演奏家と並行してやっていこう」と考えていたのですが、お客様のニーズに応えるやりがいを見出すなかで、自然に「こっちの道(演奏家)は違うな」とストンと腑に落ちて、キャリアの方向を変えることができました。

仕事で大切な心構えの一つ「TY」とは?

私が仕事のなかで心がけていることは、2つあります。ひとつは「TY(とりあえずやってみる)」そして「期待以上のことを返す」という姿勢です。

新しいチャンスが来たら、まずは深く考えずにやってみる。やってみて向いていなければ、それでも構わないと思っています。たとえば司会業などは、2〜3回やってみて「自分にはあまり向いていないかも」と思った仕事です。一方で、タレントとしてのTV出演は現在まで10年以上、続いている仕事です。なんでもとりあえずやってみた(TY)結果、得意なことや自分に向いた仕事が結果的に残っているのだろうと思います。

会社に勤める場合も有効な姿勢だと思いますね。「どんな仕事でもやってみて、得意なことを見つけていこう」という前向きな姿勢の新入社員がいたら、上司もきっと好感を持ってくれ、いろいろなチャンスに引き立ててくれるはず。チャンスの芽を潰さないためには、自分で「これは向いていない」と決めつけないことが大切です

そしてチャンスを次の仕事につなげるためには、「期待以上のことを返そう」という意識も重要だと思います。

私がこの姿勢を身に付けたのは、母親から「人の役に立つ人になってね」と言われて育ったことが背景にあります。どんな仕事でも、常に「相手がもとめるニーズ以上のプラスαの価値を返そう」「目の前の人に幸せになってほしい」という意識を持ち、相手にメリットをもたらせることを先駆けて考えていることが、キャリアに好影響をもたらしてくれている実感があります。

たとえば、ビジネスパーソン向けのボイストレーニングでは「受講生の仕事の成果につながるように」と強く意識しています。「営業先で自信を持ってプレゼンができるようになった」といった嬉しい声をいただくなかで口コミや紹介で生徒が拡大し、経営者や著名人の方に多く通っていただけるようになりました。今では企業研修も300社以上、累計約4万人の方々に声の指導をさせてもらっています。

多くのメディアにも取り上げていただけるようになり、2011〜2012年には、経済産業省のグローバル人材派遣事業にも選ばれ、アジアで声の指導をするために海外赴任の機会もいただきました。

また同時期には、フジテレビ『ホンマでっか!?TV』にモテ声講師として出演。仕事の幅が広がったという点で、この番組出演はキャリアのなかでも大きなターニングポイントとなりました。現在も、MXテレビ『5時に夢中!』に月1回レギュラー出演をさせてもらっています。

タレント活動も「何につながるかわからないけれど、もとめていただけるなら、やってみよう!」と真剣にやっているうちに、ノウハウが溜まってきた感覚がありますね。

秋竹さんがキャリアの中で心掛けてきた2つのこと

「ちゃんと考えて、行動をする」を実践するだけで、未来は大きく変わる

これからの時代に活躍すると思うのは、「共感力がある人」「自分の頭を使ってしっかりと考えている人」です。

想像力を使って人の気持ちを想像でき、それを言葉にも表せる人、相手に共感を寄せながら自分の考えもしっかり伝えられる人は、どんな仕事でも活躍できるように思います。

そして「自分は10年後にどんな人生を歩んでいたいのか」「どういう気持ちで生きていたいのか」について自分の頭を使って考えているかどうか、も非常に重要だと思います。

自分がどうなりたいかが見つかっていない人は、視野を狭くせずに行動してみることを心がけてみてください。思考停止して行動をやめてしまうと、自分を取り巻く状況はなかなか変わりません。ぜひいろいろなことに興味を持って、さまざまな業界・業種の人に会ってみてください。自分の世界を広げていくなかで、興味を持てるものが見つかってくると思います。

社会に出てからも、「どうすれば物事がうまくいくか」を考え続けることが必要です。仕事がうまくいかないときには必ず理由があり、その原因をちゃんと分析して、行動に移すことが肝心です。

行動するためには「やる」と決めること。行動力があるかないかは、気持ち次第だというのが私の持論です。 行動を億劫がる人は多いですが、行動し始めると意外とたいしたことなかったな、と思えることは多いもの。やらなきゃいけないことはさっさとやる、という姿勢は日頃から大切にしています

仕事柄、経営者の方には非常に多くお会いしますが、成功している方々は必ずといっていいほど、ものすごく考えていて、かつ行動をされています。仮説を立てて常にトライ&エラーを繰り返しており、ご自身で「やる」と決めたことに根気強く取り組んでいる印象です。

やりたいことが見つかっている人は、少なくとも3年は続けてみることが大切だと思います。結果が出ないとすぐに辞める人は少なくないですが、経験上、根気強くやらなければ理想には近づけない実感がありますね。

やりたいことを実現するためのステップ

他人に惑わされず「自分は自分」を心がけて。つらい経験は成功や楽しさにつながる

エデュビジョン 【ビジヴォ】代表 教室運営責任者 秋竹 朋子さん

キャリアを切り開くためには、‟自分大好き人間”になることも大切な要素だと思います。若い頃は「周りがこうだから」といったことにとらわれがちですが、「自分がどう思うか」だけが重要なので、人と比べる必要は一切ない、と思っていてほしいですね。

人と比べないことの大切さは、音楽の世界で学んだことです。私も高校生くらいの頃は才能のある同級生にひたすら嫉妬をしていましたが(笑)、若いうちにとことんそれをやったからか、年齢を重ねるうちに「自分は自分」と思えるようになりました。「自分が自分を一番好きになってあげよう、一番大切にしてあげよう」と決めてからは、毎日を幸せな気持ちで過ごせるようになりました。周囲への感謝の気持ちも大切にしています。

自分は自分、と思えるようになるまでには、いろいろとつらいこともあると思いますが、つらかった経験は決して無駄にはなりません。

私は学生時代にクラブバーで演奏をしていた頃、ゲストやオーナーから「クラシックより、ジャズとか弾けないの? 」と言われることが多くありました。「クラシックの演奏家にそんなこと言われても……」という複雑な思いがなかったわけではありません。しかし「どんな仕事でも1年間は絶対に続けよう」と決めていたので、「得意ジャンルではないから辞める」のではなく、「ジャズを勉強して弾いてみる」という選択をしました。

楽しんで勉強してみれば自分のプラスになるかもね、と発想の転換をした形です。今でもジャズは得意ではありませんが、弾けるようにはなりましたし、結果的にそのお店での仕事を続けたことで、ビジネスボイスにつながる出会いも得られたので、無駄な努力ではなかったな、と心から思えています。

これはほんの一例ですが、大変なことやつらいことを含め、経験してきたことはすべて、今の仕事の楽しさや充実感につながっている気がします。若い頃は悩みやしんどいことも多いとは思いますが、「これは先々のための成長痛かも? 」と思っておいてほしいですね。

とはいえ「苦しい、つらい、悲しい」などのネガティブな感情がエンドレスに続くならば、その場所から離れる、という選択肢も持っておいて良いと思います。前向きな気持ちで「この仕事を楽しもう」とできる限りの努力をしてみて、それでも嫌な感情が勝ったときは、違う世界を探しに出かけてみてください。

秋竹さんからのメッセージ

自分の特技や経験を生かし「若い人が自信を持てるための活動」を続けたい

「自分に自信を持てる若い人を増やしたい」これが、私がこれからのキャリアで実現させたいことです。

ボイストレーニングのレッスンは、それができる仕事だと感じています。受講してくださる方が、自分の声や話すこと、そして自分自身を好きになるためのお手伝いをしていて、その取っ掛かりとして声がある、というイメージです。

滑舌や声に悩んでいた人が、声が良くなることで自信が増していくケースをたくさん見てきましたが、そうした姿を見られると「この仕事をやってよかったな」と心から思いますし、自分を好きになってくれる瞬間に一番の充実感を感じます

最後に、キャリア志向の若い女性からよく質問されるテーマですが、家庭も仕事も諦めたくない人は、絶対に自分を犠牲にしないこと。女性は頑張り屋さんが多いので「家のことは自分がやらなければ」と背負い込んでしまう人が多いですが、「家事や育児は女性がやるべき」という価値観の人とは高い確率でうまくいきません。今は外注の家事サービスもありますし、苦手なことは人に任せて、自分が好きな仕事を思いきりやって家の中ではニコニコしているほうが、家庭はうまく回ります。 

また「子どもを産んだら、キャリアがストップしてしまうのでは」という不安を抱えている女性も少なくないかと思います。私も二人の子どもを産む前には、そうした不安を感じていました。

でも実際に産んでみると、まったく動けないのは半年〜1年程度。未経験のことには何でも魅力を感じる性分なので「人生は長いから焦る必要はない、一度キャリアがストップするのもひとつの経験だ」とも思えました。子どもがいることで新しい世界もたくさん体験できていますし、若い世代のトレンドも自然に耳に入ってきて、仕事にも良い影響をもたらしています。

キャリアを共に歩むパートナーを探している人は、「この人だ! 」と自分が決められる相手を探してください。モテ声講師として結婚相談などもよく受けるのですが、いつも「迷っているうちは違うと思うよ」とアドバイスしています。

行動の大切さは、先に挙げたとおり。別の相手は世の中にいくらでもいるので、自分が理想とする充実したキャリアを歩むためにも、面倒がらずに行動をして「この人だ! と自分が決断できる相手」をぜひ探し出してほしいなと思います。

秋竹さんが贈るキャリアの指針

取材・執筆:外山ゆひら

この記事をシェアする