「前に進めている」その実感がキャリアを充実させる|混沌とした環境にこそ飛び込んでいけ!

ジールス 執行役員 渡邊 大介さん

Daisuke Watanabe・青山学院大学卒業後、2006年にサイバーエージェントに入社。アカウントプランナーとして大手ナショナルクライアントの戦略立案に従事。複数の新規事業立ち上げにも参画し、2014年から同社の新卒採用・育成責任者に就任。マーケティング思考を取り入れた新規軸の採用戦略を構築。2017年リクルートとサイバーエージェントのジョイントベンチャーで、HRテクノロジー『Geppo』を提供するヒューマンキャピタルテクノロジーを設立し、取締役に就任。2020年より現職

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若手時代を塗り替えたのは「会社を代表する」という自覚

就職活動に対する意識は大学入学当時から高く、大学2年生の後半には就活をスタートし、憧れの気持ちから外資系企業やコンサルティングファームなどから受け始めました。

様々な企業を受ける中で一度は「キャリア迷子」になるのですが、ふと立ち寄った本屋でとある本と出会ったんです。東京ディズニーランドの立役者である堀貞一郎氏に関する著書で、その内容は東京ディズニーランドがどのような経緯で開業に至ったのか、という創業ストーリーでした。

ディズニーというと「夢の国」というキラキラしたイメージが強いのですが、日本誘致のためには各国との激しい競合プレゼン合戦があったんですよ。その戦いを制するための日本チームの奮闘がこの本には描かれているんですが、それが当時の僕のやりたい仕事像とぴったりで。「こんな熱い仕事をしたい! 」って思ったんです。

大学生ながら「なんてかっこいいんだ……」と衝撃を受け、自分もそういうキャリアを歩んでいきたいと強く思うようになりました。どうすれば堀さんのような仕事を成し遂げることができるのか、どのようなキャリアを歩むと良いのかが知りたくて、彼の経歴を調べると、ファーストキャリアは広告業界の大手企業だったんです。

広告業界は全く見ていなかったし、広告クリエイティブのような右脳的な仕事に興味はなかったんですが、「こんなダイナミックな仕事の素養を育てることができるのか」と考えを変え、広告業界に絞って就職活動を再始動しました。その中で当時急成長中だったサイバーエージェントとも出会いました。

渡邊さんのキャリアの始まり

就職活動は結果的にうまく行き、複数の大手企業の内定を辞退してサイバーエージェントに入社したこともあって、勝手に自分のことを「大物ルーキー」だと思っていました(笑)

相当生意気な新人だったと思います。確かに広告業界やマーケティングについてはめちゃくちゃ勉強していたので知識はあったと思うのですが、その知識を逆手に取って、先輩を先輩と思わず失礼な物言いをしていました。可愛げのない生意気=無礼だったんですよね……。

そのため、周囲からの協力が得られなかったり、成長のサポートを受ける機会も減ってしまい、結果的に同期と比べても「中の下」くらいの結果しかついてこなかった。これが自称「大物ルーキー」を標榜していた僕の1年目です。

2年目に入ってもその傾向は続いていたのですが、2年目の終わり頃転機が訪れます。

大手通信系の大型コンペの責任者に抜擢され、「このチャンスを無駄にはしないぞ」と必死に取り組んで、無事に勝ち取ることができました。その後このクライアントとは良好な取引関係になっていくのですが、ある時現場責任者が「今後もっと大きな仕事を任せていきたいと思っているから、上司を紹介するよ」と言ってくれたんです。

その言葉を額面通りに受け取ってしまった私は、その上司の方とのアポイントも自分一人で参加してしまいました。するとそのアポイントでその上司の方から「会社の戦略は? 売上は? 人数はどれくらいいるの? どのくらい採用してるの? 強みは何? 何に投資してるの? 」と質問攻めを受けることに……。

当時の僕は「渡邊大介個人」としての意識が高く、「サイバーエージェントの渡邊大介」という意識が薄かったんですよね。全く質問に答えることができませんでした。

その時の僕の姿をみて、先方の上司の方からは「僕らは会社対会社の取引をしている。だからこそお互いにどんな会社なのかを理解することは大事だし、それを理解している人と取引したいと思っている」とお叱りを受けました。ぐうの音も出なかったですね。

それ以来、個人事業主のような働き方から、組織やチームとして働くという意識が芽生えました。必要な場面では上司に頼り、自社理解を深めてあくまでも会社の代表としてクライアントと接するようにしたんです。すると、面白いように実績がついてくるようになった。その結果として、全社MVPに2期連続で選ばれ、周りからも評価を得て様々な挑戦の機会を得ることができるようになったんです。

渡邊さんからのメッセージ

世間の価値観ではなく、自分の思いに従ってキャリアを選択

ジールス 執行役員 渡邊 大介さん

MVPを取ってからは新しいテクノロジーパートナーの視察をしにアメリカへ出張に活かせてもらったり、新規事業の立ち上げやサイバーエージェント全体の採用責任者なども経験させてもらい、キャリアとしては順調だったと思います。

広告営業、マーケティング、新規事業、人事と経験してきた自分の経験値を総動員して30代半ば、大勝負をしたいと思い、リクルートとのジョイントベンチャーを自ら起案。HRテクノロジー『Geppo』を提供するヒューマンキャピタルテクノロジー社を設立しました。

日本のメガベンチャーの二大巨頭によるジョイントベンチャー、テーマはHRテック、B2B SaaSというホットな領域ということもあり、事業は垂直立ち上げに成功。業界認知度も確実に積み上げていくことができました。ジョイントベンチャーならではの難しさも味わわせてもらえましたし、サイバーエージェント以外の文化や仕組みを知ることができたのも良い経験になったなと思ってます。

ではなぜ今の会社、ジールスに転職を決意したのか。様々な理由があるのですが、一番大きかったのは「変化の渦中にあるスタートアップで新卒のように馬車馬のごとく働きたかった」からです。人生100年時代と言われますが、これからの時代は1つのキャリア、1つの専門性で一生を過ごすようなことはおそらく難しく、仕事人生の中で何度か新卒のようにディープダイブ(深掘り)して働く必要があるなと感じていました

一方で自分自身はメガベンチャー、デジタルマーケティングの領域でキャリアを重ねてきているわけで、それをゼロリセットしようと思えるような理由も必要で、それがまさにビジョンだと思ってます。自分が心の底から納得でき、今までのキャリアをかなぐり捨ててでもコミットできるビジョンがあるかどうか。その視点で出会ったのが当社でした。

代表の清水は「日本から世界をぶち上げる」という大きなビジョンを掲げ、それに対して日本の接客・おもてなしの体験をデジタル化したチャットコマースで世界に届ける挑戦に本気で取り組んでおり、一緒に働いたら、きっと大変だろうけど絶対に成長できると確信したんです。

業界や社会を率いるアイデアや推進力は若手の集まる組織から生まれていくと考えているので、代表が自分よりも10歳下で若手の多いスタートアップであることも決め手になりました。

渡邊さんからのメッセージ

「自分は前に進んでいる」。その実感さえあれば、充実したキャリアになる

2020年11月に執行役員として入社してからのこの2年間を振り返って思うのは、当社にとって黎明期となる重要な日々を過ごしてきたということ。代表をはじめボードメンバーは一緒に会社を大きくしてきた仲間であり同志です。自身がもとめていた激しく流動する混沌とした環境で、スピーディーに成長させてもらっていると感じています。

普段の仕事で大切にしているのは、自身が歩んでいるキャリアを日記のように書き留めること。どのような学びがあり、どのようなことを反省し、どのように成長したのか。そのときの感情や気付きを忘れないように残しているんです。この習慣を身につけると、成長していることを認識できますし、キャリアのオリジナリティが増していきますよ。

加えてジールスに来て改めて気づいたことがあります。それは「自分が成長している」という実感は、どんなものにもまさる精神安定剤だということ。キャリアの悩みはいろいろあると思いますが、自分自身への成長実感さえあれば悩みの大半は解決することができます。逆に成長を実感できない時にこそ、キャリアの選択肢が狭まったり、やりたいことができないと感じたりして、悲観的になっていくと思うんです。

ここでポイントなのは、いくら周りから評価されたとしても、自分で自分を認められていないと、なかなか気持ちは満たされないということ

これは過去の経験からも言えることで、特に自分で事業をしていた頃は市場価値が高まり、数千万円でのオファーをもらうこともありました。そう聞くと一見華やかなキャリアに思えますが、心の中では「その評価に応えられるような仕事ができるのだろうか」「自分にそこまでの経験や知見があるとは思えない」ととにかく自信がなかった。自身での成長実感を得るというのは本当に大切です。

充実したキャリアは自分次第!

また、今後のキャリアにおいては、“イノベーションの発信地”に居続けたいと思っています。いくつになっても社会の最先端、変化の渦中でバリバリ働けたらなと思っているんですそして変化のほとんどは若手によってもたらされる。だからこそ、優秀な若手から頼られるようなプロフェッショナルでいることが重要だと思っています。

いざというときに「渡邊がいたらなんとかなる」と思われる存在でいること。ずっとそんな自分を貫いていきたいですね。

「混沌とした成長環境」にこそ飛び込んでいけ!

就活で企業を選ぶときにおすすめなのは、やはり“混沌とした成長環境があるかどうか”が大切です

混沌環境から安定環境へ移行することはたやすいですが、安定環境から混沌環境へ移行することは非常に困難です。長い職業人生を考えた時に、常に「自分の選択肢が増えているかどうか」が大切で、そのためにも新卒で成長したいと思っている皆さんは「混沌とした成長環境」から始めるのが選択肢を広げてくれると思います。

さらに、混沌とした成長環境は必然的に変化のスピードが早いため、変化に対応できる能力も得られます。これは今後の社会で必ずもとめられていく部分ですが、年齢を重ねてから身につけるのは難しいので、こうした成長のために必要な「思考のOS」(オペレーションシステム)は若いうちに獲得しておいたほうが良いでしょう。

最後に皆さんにお伝えしたいのは、「自己分析の旅をしすぎないこと」です。一定の自己理解は重要だと思いますが、どんな経験をしているのか? がやはり重要です。多くの就活アドバイスでは、「どんな経験をしたかよりも、そこから何を学んだかが大事」という事が言われますが、私は半分本当で半分嘘だと思っています。採用する側から見たら、当然「学んでいない」人は採用したくないが、より希少性の高い経験をしている学生を採用したいと思うものです。

これを聞いて「もう就活をはじめたけど何も経験がない……」と諦めるのはまだ早い。経験が足りないと気付いたのなら、今からでも経験を足しにいったらいいんです。1カ月でも時間があれば、必ず何かを成し遂げることができるはず。諦めて何もしないのではなく、「今自分にできる最大のことは何だろう」とできる理由を探し、前に進んでみてください。きっと就活や今後のキャリアでも役立つ経験になっていくはずです。

渡邊さんが贈るキャリアの指針

取材・執筆:志摩若奈

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