選択を迷わないコツは「自分なりのロジック」を持つこと|まずは先入観を持たずに広い世界に触れよう

アイランド・ブレイン 代表取締役社長 鈴木 徹さん

アイランド・ブレイン 代表取締役社長 鈴木 徹さん

Toru Suzuki・ 2004年、横浜国立大学大学院卒業後、大手自動車部品メーカーに入社。2005年にアイランド・ブレインに入社。現場で営業経験を積んだ後取締役を経て、2017年より現職

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グローバルな出会いやチャンスを排除せず、海外と触れ合う機会を作る努力をしてほしい

まず就活生のみなさんに伝えたいのは、どんな業界で活躍するにせよ、これからはグローバルに仕事をすることを当然としてもとめられる時代だということです。皆さんにはぜひ、日本という狭い枠組みではなく、広い世界で働くことをイメージして準備してほしいと思います

日本の人口は減少の一途を辿ることが予想される一方で、世界人口は増加を続け、すでに80億人に達しています。日本人の割合はわずか1%ちょっとですから、長い目で見ると、日本だけで仕事をしようと考えている人の需要はなくなってくると考えています。

知らない世界にどんどん触れて、世界にはこんな国もあるんだ、こんな人もいるんだとたくさんの気づきを得ることが大事です。そうやって経験を重ねることで、グローバルに仕事をすることに抵抗がなくなります。これから社会で活躍する皆さんは、ぜひグローバルに仕事をすることを当然として将来を描いてほしいです。

私自身、学生時代に海外に触れる機会はほとんどありませんでした。ただ、今振り返ってみて「あの経験があったから視野が広がった」と思うことが1つあります。それは、さまざまな自己啓発セミナーに参加したことです。

経営者やトップセールスマンなど、さまざまな肩書きを持つ方の話を聞いて知見を得て、積極的に会話をしてみることで「こんな人もいるのか」「こんな仕事もあるんだ」と感じたことは今でもはっきりと覚えています。結果、当時の体験が生きて、理系学部で学んできた私が「営業」という仕事に巡り合うことができたのです。

大切なのは、先入観を持たずにどんどん世界に触れてみることです。海外旅行に行ってみる、短期留学にチャレンジするなど、積極的に海外に出て行ってほしいです。 コロナの影響でそれが難しいこともあったと思いますが、日本にいてもさまざまな国の人と交流の機会を持つなど、できることはあるはず。グローバルな出会いやチャンスを排除せず、果敢に挑戦してほしいと心から願っています。

鈴木さんからメッセージ

就職先を選ぶロジックを自分なりに持つことで、その後の転機で迷いなく前に進める

就職活動の話をする前に、少し学生時代の話をすると、高校から大学までは卓球に打ち込んでいました。高校時代、ずっと目標に掲げていたインターハイ出場には後一歩届きませんでしたが、「大学でも卓球を一生懸命やりたい」という想いが強くあったので、当時の私のレべルに対しては卓球部が強かった横浜国立大学の工学部に進みました。

大学時代も卓球漬けの毎日を過ごしましたが、工学部の学生は4年生からはどこかの研究室に所属しなければいけません。当時の成績で入れる研究室は限られていましたが、その中から選んだのは自動車部品の研究をおこなう研究室でした。4年生の1年間と、大学院の2年間の合計3年間、まだまだ研究段階にあった電気自動車の研究を続けました。

その頃はトヨタのプリウスに代表されるハイブリッド車のブーム真っ只中。まだ製品化に至っていない電気自動車の研究を続けているうちに自然と湧き上がってきたのは、「地球環境に貢献できる仕事がしたい」という想いでした。

地球温暖化という世界規模の課題を解決していくには、化石燃料を使わない電気自動車が重要な役割を果たすだろうという期待感も大きく、仕事として電気自動車の開発に携わりたいと考えるようになりました。

そこで、就職活動は、大手自動車メーカーや自動車関連部品メーカーをターゲットにしてスタートすることに。どの企業の面接でも「電気自動車の開発に携わって、地球環境に貢献できる仕事がしたい」とその想いを伝えました。結果、ご縁をいただいたのが愛知県にある大手自動車部品メーカーです。

ところが、期待や希望にあふれていたのも束の間、厳しい現実に直面しました。配属に向けた面談をしたときに、「この会社には電気自動車にかかわる仕事はない」とはっきりと伝えられたのです。入社して2、3カ月のことでした。

「やりたい仕事を実現できる部門は本当にないのか? 」と社内の組織図を何度も眺めましたが、思い描いた電気自動車に携わることができる部門はなさそうだとわかってきました。 「この会社にいても、やりたいことはできない」とはっきりしたことから、半年間の新人研修が終わる日に、退職したい旨を伝えました

鈴木さんの就職活動の経緯

私自身のこの苦い経験を踏まえて皆さんにアドバイスできることは、企業を選ぶ際の情報はすべて真実とは限らないということです。このことを忘れないでほしいと思っています。

学生の段階で知り得る情報は圧倒的に少ないです。さらに、知っているつもりの情報も正しいとは限らない、どちらかというと間違っていることの方が多いかもしれません。

今ではインターンなどが活発になっていますから会社のことを理解できるケースもあるとは思いますが、それでも他社のことがわからなければ比較して考えることはできません。つまり、学生時代の就職活動は、限られた情報で大きな決断が必要となります。

わずか半年で退職してしまった経験を踏まえて思うのは、「親が言ったから」「友達がそういったから」を理由に意思決定するのではなく、自分自身がその選択をするロジックを持っておいてほしいということ。

自分なりのロジックさえしっかりあれば、その後また違った選択をする転機がやってきたとき、「あのときはこういうロジックだった」「だから、次はこういうロジックにしよう」と前向きに発展させることができます。ぜひ周りの人の意見を鵜呑みにせず、一度自分で考える時間を取って意思決定をしてみてくださいね。

セミナー参加を機に、「エンジニア」から「営業」へと大きくキャリアチェンジ

わずか半年で自動車部品メーカーを退職してしまった私ですが、実のところ次に何をしようかについてはまったく何も考えていませんでした。

それでも前を向いて一歩を踏み出せたのは、大学院卒業までの1年間に、さまざまな自己啓発セミナーに積極的に足を運んでいたからです。「エンジニアだけでなく、世の中にはいろいろな仕事がある」という視点が根底にあったのが大きかったなと思います。 「新たなキャリアを築くために、何らかのスキルを身に付けなければいけない」。そう考えたときに頭に浮かんできたのが、自己啓発セミナーで出会った、生き生きと働くトップセールスの方々の姿でした。

鈴木さんがキャリアチェンジできたポイント

  • 自己啓発セミナーに積極的に足を運び、幅広い社会人の話を聞いていた

  • 「エンジニアだけでなく、世の中には色々な仕事がある」という視点があった

そして実際に営業スキルを身に付けるため、個人向けの営業研修に参加したのが現在の会社との出会いです。生徒として参加して数カ月勉強したころ、勉強会の講師から「うちで働いてみませんか? 」と声をかけられたことが、営業の仕事を始めることになったきっかけです。

とにかくお金を稼がなくてはいけない状況でもありました。そのため転職活動はすることなく、声をかけてもらったアイランド・ブレインで新たなキャリアをスタートさせることを決めました。

今では、代表取締役の立場になって6年目です。エンジニアとして社会人をスタートしたはずの私が、まさか営業支援事業一筋でキャリアを築いていくとは想像もしていなかったことです

大切なのは「逃げないこと」。一度は壁と正面から向き合うことも必要

アイランド・ブレイン 代表取締役社長 鈴木 徹さん

これからどのようにキャリアを築いていこうか、キャリアアップしていこうかと考えられるようになったのは、実はごく最近になってからです。それまでは、正直、将来を見通して先のキャリアを描く余裕はまったくありませんでした。

営業の仕事ですから、契約を取ればお金がもらえる世界です。逆に言うと、契約を取らなければ明日食べられるかもわからない。毎日とにかく、今日、明日食べていくためにがむしゃらに働いてきました。

そのなかで、もちろん困難も多々ありました。経験から言えるのは、壁にぶつかったときに大切なのは「逃げないこと」だということです

人によってそれぞれ、立ちはだかる壁や解決すべき課題は違います。たとえば、「就職した会社で働き続けるかどうか」という問題に直面したとき、「簡単に辞めずに頑張って続けた方が良い」という選択肢もあれば「すぐに転職した方が良い」という全く反対の考え方があります。

さらに、「あのときに辞めないで続けたからこそ今がある」と成功事例を語る人もいれば、「転職したからこそ、本当にやりたい仕事に出会えた」と伝える成功事例もあるのです。

どちらが正しくて、どちらが間違っているかではなくて、そのときどきによってどちらを選ぶべきかは変わってくるはずだと思うのです。一つ言えるのは、どの組織に属していようが、自分で起業しようが、自分自身の課題に正面から向き合って解決しない限り、その課題はまた形を変えて出てくるということ

仮に仕事内容が同じでも、会社を変えれば環境が変わるので、一見課題は解決したように思えるかもしれません。しかし、根本的な課題が解決していない限り、いずれまた壁として立ちはだかるはずです。

つまり、どの組織に所属するのか、どういう環境で、誰を味方につけて勝負するのかは選択肢としてあっても、立ちはだかる壁、解決すべき課題を直視して、正面から向き合うことが一番必要なことなのです。最後は正面きってやっつけない限り、壁はまた現れることは覚えておいてほしいですね。

鈴木さんからのメッセージ

業界・企業選びに迷ったら「何となく好き」から選んでみよう

ここ数年、コロナの影響で就職活動もオンラインで進行する機会が増えたことで、積極的にOB・OG訪問などをするのが億劫に感じてしまっている人もいるかもしれません。しかし、可能な限り、オンラインではない生の声を聞きに行ってください

社会人としてのスタートを切るためにとても大切な会社選びです。耳で聞いた情報だけでなく、ぜひその場に行って直接見て、感じた雰囲気や生の情報を大事にしてください。そして、最後は自分自身のロジックを持って、自分で決めることが大切です。

どのような業界に進むべきか、どういう仕事が合っているのかと迷っている人も多いと思いますが、最初は「ちょっと面白そう」「何となく好き」といったわずかな興味から候補を出していく方法で良いと思います。あとは、先ほども言ったように、先入観を持たずにいろいろな世界を見てみることが大事なのではないでしょうか。

私のように、経営者が登壇するセミナーなどに積極的に足を運んでみるのもおすすめです。当時「起業」を意識していたわけではありませんが、世の中にはさまざまな仕事や考えがあることを知る大きなきっかけになったことは間違いないと思っています。

一日一日の積み重ねが自分をつくる。今やるべきことに一生懸命になろう

就職活動中に得られる情報は少ないながらも、自分で決断して企業を選べたなら、最後は面接の場でのアピールを頑張るのみです。

しかし、面接の場で実力を出そうと思っても、その日突然すごい力がわいてくるはずがないのもまた事実です。戦うのは、これまでの結果である「あなた自身」です。学生生活を一日一日どのように過ごしてきたかが、結局は今のあなた自身であって、面接ではその力をフルに発揮して戦うしかない。最後は開き直って挑むべきだと思います。

私は学生時代に卓球を頑張っていたので、卓球のことを話せば絶対に負けないという自信だけはありました。今では新卒の面接に立ち会うこともありますが、少し話をすればその人のことはなんとなくわかるものです。

「サークル活動を頑張りました! 」「ゼミを頑張りました! 」といくらアピールしようとも、本当に頑張っていたのかどうかはその人自身を見ればわかる。だからこそ、一日一日を大切に、何でもよいので何か一つ頑張ってほしいです

シンプルに、今やるべきことを一生懸命やること。ぜひそれを積み重ねていってほしいと思います。皆さんの活躍を応援しています。

鈴木さんが贈るキャリアの指針

取材・執筆:小内三奈

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