出会った仕事とキャリアに意味づけをしていくのは自分自身|経験から自分なりの「選択基準」を見つけ出そう

揚羽 取締役 管理担当 松浦 泰介さん

揚羽 取締役 管理担当 松浦 泰介さん

Taisuke Matsuura・ 北海道大学卒業後、2004年リクルートに入社。HR領域の営業、人事を経験。2012年よりプルデンシャル生命保険でライフプランナー、営業所長を経験。2015年、人事を中心としたコンサルティング業務で独立。2016年より、揚羽に参画。2018年1月より現職

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独立を前提に就職活動。昔ながらの体制への違和感から合う環境に気付けた

今は社長を支える立場にいますが、大学入学時点は「自分の力で起業して生きていこう」と考えていました。

こう思ったのは父の影響が大きいと思います。父が会社を経営していたことで、幼い頃から経営者への憧れのようなものがありました。ただ、当時は絵を描くことや工作も大好きだったので、実は高校進学のタイミングでは美術系の高等専門学校に進みたいと考えていました。

親からは「美術系に進みたいのであれば、大学からでいいんじゃないの? 」と言われた程度で、強く反対されたわけでもありませんが、結局地元の進学校に進みました。

幼い頃から人に言われて何かをやるのが好きではなく、自分で考えて実行していくことにやる気が出るタイプだった私は、漠然と「サラリーマンは向いていないだろうな」と思っていました。美術系の道に進まなかった時点で、普通に働いて生きていくのであれば、将来は何か自分でやっていこうと考えていたのです。

そうした思いで、大学入学を機に起業に向けて動くようになります。社会経験を積みたい、いろいろな人に出会いたいという想いが強くあったので、できるだけ幅のあるお客さんがやってくるようなバーで働くことを決意。すぐに探してアルバイトをはじめました。

連日深夜までアルバイトに明け暮れていた私が、飲食店での経験だけでは起業は難しいことをようやく思い知ったのは本当に遅く、大学4年になろうかという頃。周りではすでに、内定をもらったという友人が出始めていました。

「そろそろ卒業後のことを考えなくては」と、起業を現実的に考え始めますが、いざビジネスアイデアを考えようにも良いアイデアが浮かぶはずもありません。ようやく現実はそう甘くはないと気づき「まずは企業に入って経験を積まなくては」と思うようになりました。

かなりの遅れをとって就職活動をスタートしたときには、すでにエントリーできる会社も限られている状態。業界問わず、まだ応募できるところに片っ端からエントリーして選考会に足を運びました。

いろいろな会社の面接を受けてわかってきたのは、いわゆる大手企業特有の年功序列はどうも肌に合わないということです。内定をいただいた会社もあったのですがなにか違和感がありました。

「人に何か言われて行動をすることが好きではない」という自分の性格を考えれば違和感があるのは当たり前なのですが、当時は自分のことをそこまで分析できていなかったので、人生を振り返ってやっと違和感の正体を見つけることができました。

このことで、年功序列や終身雇用といった、当時の日本の大企業特有の体質は馴染まないし、もとめるものとは違うことが自分自身の中ではっきりしてきました。

松浦さんがリクルートへの入社を決めるまで

偶然にも、そのタイミングではじめて存在を知った会社がリクルートです。友人が「ビジネス誌でリクルートOBは独立する人が多いという記事を見たよ、受けてみたら?」と教えてくれたのです。

早速エントリーし、結果的にそのリクルートで私の社会人生活がスタートすることとなりました。若い世代が事業責任者として生き生きと活躍している姿を目の当たりにし、素直に魅力的だと感じましたし、「この会社なら力を付けることができる」と信じられたことが入社の決め手でした。

あくまでも起業を前提に「3年働いたら辞めよう」と考えていたので、まさかリクルートで10年も働くとは想像もしていませんでした。

就職活動のヒントはこれまでの自分にある

リクルートに出会えたのは、自分の人生を振り返る、いわゆる自己分析をしっかりしたからだと思いますが、やはり自分にとってのモチベーションの源泉を知ることは人生においてとても重要だと感じます

たとえば、合唱コンクールでみんなで力を合わせて取り組んだときにやる気がわいたのであれば、1人でやる仕事よりもチームで協力してやる仕事の方が向いていると考えることができます。

一方で、個人スポーツに打ち込んできて、とにかく順位を上げるための努力をしてきた人であれば、個人での実績が正当に評価される仕事が向いている可能性が高いといえそうです。

このようにモチベーションの源泉がわかれば、チームワークが大事な仕事はどういう仕事か、成績によって正当に評価されやすい仕事はどういう仕事か、と考えていくことができますよね。業界や職種を絞り込んでいくためのヒントは、実はこれまでの自分にあるのです。

あとは、自分が納得する選択基準で決めること。ここでもやはり、これまで何らかの決断をするときにどのような点を軸に選んできたのか、自分自身の過去の選択基準を思い返してみることが大切です

部活動やアルバイト、仲良くなった友達でもいいと思います。なぜそれを選んだのか、なぜその人を選んだのかを思い返して、選んだ基準を明らかにすれば、自ずと選ぶべき選択肢が見えてきます。自分の中で納得して決めることができる軸さえわかれば、後は直感を信じて決めるのみ。選択基準さえはっきりしていれば、後悔することはないと思いますよ。

自己分析のおすすめポイント

  • 自分にとっての「モチベーションの源泉」はどこにあるか?

  • 何らかの決断をするときの「選択基準」は何だったか?

さまざまな体験や人とのかかわりを通して、レジリエンスを高めよう

リクルートに入社して最初の配属は香川県の高松で、求人誌の飛び込み営業でした。営業成績はランキング形式で出るので、何百人の中の何位にいるか自分のポジションは一目瞭然です。当時は、営業エリアやテリトリーも決まっていなかったので、同じクライアントに何人もの営業が訪問するようなことも普通にあって、クライアントから怒られることも多々ありました。

そんなきつい環境も、私は全然平気でした。数字のプレッシャーも、飛び込みで初対面の人と会って話をするのも楽しかったですし、怒られるのも実際こちらが悪いんだから、と素直に受け止めることができました。

それはなぜだろう? と今改めて考えると、学生時代にアルバイト、スポーツ、バッグパッカーの旅など、これ以上できないというほど十分にやり尽くした状態で社会人になれたことがポイントかなと思っています。

実際、楽しいことはもう沢山した! 早くこれまでとは違う新たな刺激を受けたい! と思って就職したので、一見つらく思える経験もすべて前向きに受け止めることができました。

やりたいことを存分にやり切って社会人へのスタートを切れたのは、社会人人生を豊かにしてくれたと思います。そして、さまざまな経験をしたことでメンタルが鍛えられていたことも良かったです。

最近の言葉でいうと、レジリエンスを高めること。幅広くさまざまな人と接する機会をもつ、たくさんの体験を積んでおくことを心がけて、少々のことではへこたれない心のゆとり、自分の逃げ場をつくっておくことが社会人になって大きく生きてくると思っています。

松浦さん流のレジリエンスを高める方法

リクルートは、とにかく仕事の絶対量が圧倒的に多い会社でした。多くのクライアントを抱えて結果を出しながら、仕事をこなすためのスケジューリング力、事務処理能力まで必然的に高めていくことにつながりました。

社会人としての基礎力を20代で一気に鍛えてもらい、結果として「レジリエンス」も鍛えられました。この基礎力が今につながっていると実感しています。

30歳を目前にして、やっと起業への道筋が見えた

「3年で辞める」と決めてリクルートに入社したにもかかわらず、目標の「起業」までには想像以上に時間がかかりました。「そろそろ次を考えなければ」と思っていたころに、人事部への異動が決まったからです。

ただ、その後人事部で4年間リクルートの採用の仕事に携わったことが、結果的には人事コンサルティングの仕事で独立というキャリアにつながることとなりました。

一方で、目標としている起業が実現できる見通しが立たず、30歳を前にした当時の私は「いつまでサラリーマンを続けているんだ」と焦燥感しかありませんでした。しかし実際は、先立つ資金も社外人脈もなければ営業先すらもっていない状態です。

そこから脱することになったきっかけは、「個人事業主としての契約で、報酬はやっただけもらえる、仕事を通じて人脈も広がる」という生命保険の営業のお誘いを知人から受けたことでした。

実際やってみると、保険を通じてお客様と一生お付き合いするような仕事で、とても夢がある仕事でした。1年ほどでマネジメント側の立場も経験しました。

企業経営者と保険の話をさせてもらう機会も多くなり、その延長で人事面の相談などを受けることが多くなってきたことで、「人事コンサルティングの仕事で独立しよう」とようやく起業への道筋が見えてきたのでした。

起業を果たしたからこそ、トップにこだわらないキャリアを選択

揚羽 取締役 管理担当 松浦 泰介さん

人事コンサルティングの仕事で起業を果たしたのは33歳のときです。ようやく目標を達成し、事業も軌道に乗り大きなやりがいを感じていました。一方で、コンサルティングした施策が1回ごとにぶつ切りになってしまい、企業の人材戦略全体にかかわることが難しいところにもどかしさを感じることもありました。

そんなときに、同じリクルートOBである揚羽の代表から、「人事採用のポジションでうちに来ないか? 」とのお誘いをいただきました。ビジョンに共感したことからジョインすることを決め、現在は管理担当役員として働いています。

ずっと「自分の力でやっていきたい」と起業を目指してきたにもかかわらず「社長ではなくては」とトップにこだわらなくなったのは、自分より優秀な人がたくさんいることを知ったからです

自分のエゴで「何が何でも社長をやる」というより、自分が優秀だと思う人と同じ想いで事業を進めるなら、あえてトップの座にこだわらず、支える立場に回ってもいいだろうと思うようになりました。

もちろん、自分が社長をやった方が良いと思うときには、社長として行動を起こすでしょう。常に自信をもって社長ができる状態でありたいなと思っています。

ファーストキャリアでは「信じられる事業であるか」「魅力的な人がいるか」を視点に

できれば大手企業に就職したいと思っている人が多いかもしれませんが、ファーストキャリアで大事な視点は、自分自身が真っ当だと思える事業をやっている会社を選ぶことです

真っ当な事業をやっている会社には真っ当な人が集まっていて、真っ当な働き方をしている可能性が高いです。ファーストキャリアで身に付けるビジネスの基礎は、後々につながる「仕事の型」となるので、大手であろうがベンチャーであろうが、その企業の事業や目指していることを信じられるか、魅力的に感じられるかという軸で決めるのが良いと考えています。

あとは魅力的だなと感じる人が働いているかという視点も大切。真っ当な事業をやっている会社には、当然しっかりとした人が集まっているはずです。社会人としての基礎を身に付ける時期ですから、ぜひ魅力があり、正しく導いてくれると思える人と一緒に仕事をしてほしいと思います。

ファーストキャリアで重要な視点

  • その企業の事業や目指していることを信じられるか?

  • 魅力がある人が多く働いているか?

そこで得た人脈は、たとえその人が転職したり、逆に自分自身が転職してもつながっていきます。とくに新卒の出会いは非常に大きなもので、その後の人生の財産となります

望みどおりの企業に必ずしも入れるとは限りませんが、ぜひ「この会社がやっていることは信じられる」「魅力的な人が働いている」と思える会社を探してほしいと願っています。

今後もとめられるのは「進取の気質に富む人」

50年前も50年後も、社会でもとめられる資質は大きく変わらないものだと考えています。これまでも、そしてこれから先ももとめられているのは、「進取の気質」がある人。どんな変化、変容にも興味関心をもって情報をキャッチしにいき、それを生かしていこうとする主体性がある人は、どれだけ社会が変化してもテクノロジーが進化しても活躍できると思います

「進取の気質」を身につけるには、未知なるものにたくさん触れることが大切。日頃からアンテナを立てて、今流行っているものにはとりあえず触れてみましょう。新しいことに鈍感にならずに、「一度は体験しておくか」というマインドで毎日を過ごしてほしいです。

新型コロナウイルス感染症も落ち着いてきたので、旅行もどんどんした方が良いと思います。知らない地域、国に行ってみることはまさに未知との出会いです。たとえ旅行が難しい状況でも、おすすめとして紹介されている本はとりあえず読んでみる、友達が面白かったというドラマもまずは見てみるなど、すぐに実践できることはたくさんあるはずです。未知なるものに触れたときのその感覚が、実は働いてからすごく活きてくるのです。

普段属しているコミュニティから一歩踏み出してみるのもおすすめです。気の合う人ばかりのコミュニティで過ごすのは安心で楽ですが、あえて目線を上げて、普段出会うことのないような人が集うコミュニティ、目標設定が高い組織にも属してみてください。

もちろん、楽なコミュニティで過ごすときと違って、ストレスも感じるし、ダメ出しされることも多々あるはずです。それでも、あえて飛び込んで失敗する経験が大切。

失敗を経験するという意味では、たとえば恋愛でも良いと思います。自分の素を出して相手と向き合って、ときにはそれを否定される経験をしておくと、きっとレジリエンスが強くなります。

と同時に、失敗したとき、ピンチに陥ったときの対処法や逃げ道、それはたとえば家族の存在だったり、リラックスして過ごせる趣味であったりすると思いますが、これらを大学時代に見出しておくと強いです。それは失敗から這い上がる経験をしたからこそ見出せるものだと思うので、恐れずに失敗体験を重ねてくださいね。

松浦さんからのメッセージ

キャリアに意味づけしていくのは自分自身、結果がどうあれ悲観しないでほしい

就職活動をはじめようとする皆さんに、最後に伝えたいことがあります。

行きたかった会社にご縁がなかったり、そもそも明確な意思がないままに就職先が決まった、たまたまここしか受からなかったなど、いろいろあると思います。

どの会社に入るにせよ、そこからがスタートです。自分のキャリアに意味づけをしていくのは自分自身です。悲観する必要など絶対にありません。そもそも、希望した通りの会社に入れる人の方がめずらしいのですから、合う合わないを決めるのも自分。決まった会社で楽しもう! と楽観的に考えてほしいなと思っています。

「こうなりたい」「これがしたい」とやりたいことが明確になっている人は、とにかくたくさん考えて、たくさん動いて、全力で頑張ってください。できることはすべてやって、それで駄目であれば悲観せず、別の道を大いに楽しんでください。応援しています!

松浦さんが贈るキャリアの指針

取材・執筆:小内三奈

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