自責思考&アウトプットで乗り越えられる|就活は「ビジョン型」か「バリュー型」で進めよう
アディッシュ 代表取締役 江戸 浩樹さん
Hiroki Edo・東京大学卒業後、2004年にガイアックスに入社。Webサイトの企画開発業務や新規事業開発に従事。そこで立ち上げた事業を分社化してアディッシュを設立し、現職
バイオ研究者の道からベンチャー企業に挑戦!
高校時代からバイオ研究者になるつもりで東京大学の農学部に進学し、バイオ系の研究をおこなっていました。そのまま研究者になるつもりでしたが、就活で自分の人生について考えたときに、ビジネスの道に進むという選択肢も浮かんできました。そして、もしその道を選ぶのであれば、自分で事業を作るのが一番楽しいのではないかと思ったのです。
進路を決めるにあたり、自分の中で3択ありました。
江戸さんが考えた、進路の選択肢
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研究職に進む
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事業を作れる人になるために商社や戦略系コンサルティング会社へ進み経験と実績を積む
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事業を作っているベンチャー企業に進む
事業を作れる人になりたいと思ったきっかけは、大学時代に数百人規模の学生イベントを主催するなど、0からプロジェクトを企画することが多く、それがすごく面白くて。ビジネスも同じようなことだと思い、自分で事業を作りたいという気持ちが増していったのです。
そこで、各方面で実際に活躍されている方に会いにいきました。
研究職は、身近に研究者がいたので想像がつきました。大企業やコンサルティング会社には先輩がいたので会って話を聞き、ベンチャー企業の知り合いはいなかったため、インターンを斡旋しているNPO法人に相談しました。そこで最初に紹介されたのが、前職のガイアックスでした。
インターン時は、ガイアックスに行くと決めてはいませんでしたが、各分野でどんな方が活躍されているのかということは大体想像することができました。
最終的にガイアックスに入社を決めたのは、周りの人にキャリアについて相談するなかで、自分が尊敬する人たちが口をそろえて「江戸はベンチャーに行ったほうが良い」と言われたことが、意思決定に影響したと思います。
入社後すぐに挫折を経験。自責思考&アウトプットで結果を出せるように
実は就活ではあらゆる企業から内定をもらい、ほとんど落ちることがなかったので、割と仕事もできるだろうなと思いながら、まずはセールスの仕事をはじめました。でも、実際には全然仕事ができなくて……。顧客から信頼を得られず、チームや個人の目標を達成することができない。仕事の進め方など基本的なところもままならなかったと思います。
そこで、いろいろな人に相談しました。尊敬している人にも「お前とは一緒に仕事がしたいと思えない」などと、厳しい言葉をたくさん言われてしまって。本当にどん底まで突き落とされたからこそ、「本気で自分を変えていかなければ」とスイッチが入りました。
何事も周りのせいにした瞬間、成長が止まってしまうと思ったので、他責ではなく自責で向き合っていくことを決意。今までの行動を振り返り、自分の行動を変えていくことにしました。自分の至らないところや、どのように変えていくのかをノートに書き出し、可視化していきました。
自責にし、自分の考え方や行動を変えていくと、少しずつですが苦戦していたセールスの仕事でも結果が出るようになったのです。その後、時間はかかりましたが、トップセールスの結果を出せるようにもなりました。頭で考えているだけにならないよう、きちんと目に見える形でアウトプットすることはとてもおすすめです。
そうこうしている中、会社の状況的に、既存事業だけでは成長が難しく、新規事業をスピーディに立ち上げていかなければならない社内状況に直面しました。
会社の状況としては、ある意味、危機ではありましたが、自分個人としては、実は非常にラッキーだったと思っています。なぜなら、当時は人材が入れ替わっていたような時期でもあり、「やる気があるなら実績がなくてもいい」状況だったため、自分のように未経験でも挑戦できたためです。
初の新規事業立ち上げで事業拡大を成功させ、アディッシュ設立へ
事業のアイデアとしては、セールスの他にWebサイトの開発や運営もおこなっていたため、インターネットの価値や課題について関心を寄せていました。当時はSNSや掲示板などのユーザーコンテンツが流行しはじめた頃。その一方で、ネット上での出会いによる犯罪や誹謗中傷などが大きな社会問題になり、全国的にニュースでも取り上げられていました。
新しいテクノロジーやサービスというのは、価値があるもの。一方で、どうしても新しい課題を生んでしまうもの。でも、そういう社会のままでは嫌だなと思っていたので、それを解消できるようなサービスやプロダクトを提供していくことを決めました。
前職で立ち上げた事業が大きくなって分社化したのが、現在代表を務めるアディッシュです。「つながりを常によろこびに」をミッションに、デジタルエコノミーに特化した、カスタマーサクセスによるスタートアップの成長支援サービスと、テクノロジーの発展により生まれたインターネット上で発生している課題を解決するサービスを提供しています。
特にスタートアップやベンチャーは、予期しない出来事がたくさん起きるので、代表の立場としてはとにかく大変なことばかりです。でも、社会人になったばかりの頃に苦難を乗り越えられたように、結局はなんとかなるというマインドでいます。
あとは、日頃から自身のミッションやビジョンに立ち返り、「何のためにやっているのか」という目的を大切にしています。それは文章化していますし、20、30年分くらいまでスケジュールシートに落とすことをやっています。軌道修正しながら、なんとか進んでいます。今後のキャリアについても52歳までは作っていて、それが実現できる自分でいたいと思っています。
「ビジョン型」か「バリュー型」を判断して就活を進めよう
就活で最初にやってほしいのは、自分が「ビジョン型」か「バリュー型」かを判断することです。ビジョンを優先するタイプの人は、先ほどお話ししたようにビジョンやミッション、あるいは数十年後のなりたい自分像を定めて、それに向かって行動するというやり方がおすすめです。
これは仕事にも就活にも役立つ考え方で、私も就活では「自分で事業を作りたい」という思いを実現するために企業を選びましたし、仕事でもビジョンやミッションを軸にして先々まで計画を立てています。
その一方、価値観、つまり「どんな考え方、あるいは仕事のやり方を大事にして日々のキャリアを積みたいか」の方が「自分が数十年後にどうなりたいか」よりも大事という方もいると思います。実は日本人はこの「バリュー型」の方が多いと言われてるんですが、そういう方はぜひ価値観を大切にして、企業を選ぶといいと思います。
どんな考え方でどんな仕事がしたいのか。どういうチームに所属して、どんな関係性をチームで築いていきたいか。築いていけそうなのか。そういったバリューが一致するような企業選びをしましょう。
ただし、いずれの場合であっても、自分よがりなものではなく、会社やチーム、社会に貢献できる選択をすることが何より大事だと思います。というのも、仕事は自分のためではなく、誰かのためにやることです。そこがズレると幸せなキャリアにならないと私自身は思います。
自分の幸せを考えても、「最も貢献できる会社や仕事を選ぶ」というのは本質的な考え方だと思うんです。自分は会社やチームに貢献できている。顧客に喜んでもらえている。周りからきちんと評価されている……そんな風に思えたほうが、お互いにとって良い状態ではないでしょうか。
最後に伝えたいのは、これからの日本社会は人口が減っていきますし、縮小することが予測されています。そのため、たとえば海外に目を向けざるを得ないこともあるかもしれません。だからこそ、視座を高くする意識を持っておくと良いと思います。
社会人になるにあたって不安なこともあるかもしれませんが、自分の可能性を信じてみてください。全然仕事ができないなとか、あまり上手くいかないなと思っても、その現実に向き合いながらも、未来の自分を信じて前に進んでいってくださいね!
取材・執筆:志摩若奈