「やるべき」が「やりたい」に変わった瞬間、仕事は一気に楽しくなる|小さな達成感の積み重ねを意識しよう

ジオコード 代表取締役社長 原口 大輔さん

ジオコード 代表取締役社長 原口 大輔さん

Daisuke Haraguchi・ 1976年生まれ、千葉県野田市出身。数々のアルバイト経験を経た後、通信、IT業界での勤務を経て、2005年にジオコードを設立。2020年に東証JASDAQに上場し、設立以来17期連続で増収中。新宿ミライナタワーとグランフロント大阪にオフィスを構え、117名の社員とともに成長中

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働くことを続けられなかった10代、「ようやく3年辞めずに働けた」の達成感が仕事の原点に

私が社会で働きはじめたのは16歳のときです。その後26歳までは1つの仕事に打ち込めず、実は起業するまでに14回も職を点々としてきました

正直に言ってしまうと、26歳までの10年間、仕事にやる気を出したことは一度もなかったです(笑)。いかにさぼろうか、いかに効率良く働こうかということしか考えていなかったと思います。

高校を中退してからの2年間に、まずガソリンスタンドや印刷会社、建設会社や内装業者など次々と経験しましたが、どれも長くは続きません。ようやく続いたのが、コンビニの物流センターの仕事。21歳で(ちょうど、周りが大学4年生のころです)その仕事と出会い、はじめて24歳まで3年間辞めずに働き続けることができました。

3年経ったときには、我ながら感動しました。達成感のようなものをたしかに感じましたし、「自分もできるんだ! 」と自信もつきましたね。今振り返って考えても、この小さな成功体験が、その後私が働いていくうえでの土台となったなと感じています。

原口さんのキャリアの変遷

しかし、残念ながら、その仕事にやりがいを感じて働いていたわけではなかったので、26歳でようやく仕事に本気で向き合うまで、「稼ぎたい」とか「出世したい」というような気持ちがわいてきたことは一度もありませんでした

ですから、感動を味わったのも束の間、次にはじめたことは、いつか挑戦してみたいと思っていた音楽活動です。楽器に触れた体験はまったくないにもかかわらず、「自分で楽曲制作をしたい! 」との一心で、24歳ではじめてピアノ教室に通うことを決意。2年間で20曲ほどの曲を制作しました。

途中、貯金も底をついたので、ピアノ教室の母体であった楽器屋さんでアルバイトをさせてもらうことにもなりました。これまで14社働いた内の1社はその楽器屋さんです。

今思い出しても、アルバイトをしながら楽曲制作を楽しんでいたあの頃は夢のような生活でした。 ところが、人生の転機がやってきます。当時お付き合いしていた彼女の妊娠がわかり、結婚することになったのです。人生ではじめて、「さすがにこのままではまずい」「本気で働かなくては」と激しい想いに突き動かされたのでした

ただ働くのではなく「一生懸命仕事に打ち込みたい」と奮起し、起業へとつながる

思えば小さいころから、納得がいかないことは絶対にやらず、一方で自分がやると決めたことは必ずやってきた経験があります。

26歳になってようやく仕事に本気で向き合おうと奮起した私が思ったのは、「どうせやるのであれば、ただ働くだけは嫌だ」ということ。やる気もなく仕事をしても面白くないことは、16歳からの社会経験で十分に学んでいました。

「たくさん稼ぎたい」「出世したい」といった願望があったわけではありませんが、できることなら都会のキラキラした世界で「一生懸命仕事に打ち込んでみたい」と強く思っていましたね。

そんな想いを胸に秘め、東京の営業会社で正社員として働くことを決意。しかし、働く環境はとても過酷で、1日10時間勤務、子どもが生まれた日まで出勤しろと言われるほどで、休みは月に3日ほどでした。1年間は頑張りましたが、結局退職を決意することに……。

でも、ここで元の生活に戻るわけにはいきません。今度は人に頼らず自力で就職先を見つけようと決意し、すぐに転職活動を始めました。ところが現実は、30社応募してもほぼ全滅。たった1社「アルバイトならば」と雇ってくれた会社との出会いがまた、私のキャリアにおける大きな転機となりました。

27歳で入社したのは、社員1000人規模の光通信系の会社。代理店に行ってモデム(ケーブルテレビなどを利用するときに使用する機器)を配り、当時全盛だったヤフーBBの契約を取るという仕事でした。

私からすれば土日しっかり休めましたし、夢の週休2日制の会社で天国のような場所。世間的にはきつい営業会社として有名な会社でしたが、常に結果をもとめて一生懸命働き、成果を出すことで達成感を感じる日々でした

一方で、仕事をしながら見えてきたのは、日々やり取りをしていた代理店の社長の多くは、当時の私の年齢と同じか少し上ということです。次第に、彼らがやっている代理店の仕事は「自分にもできるのではないか」と感じるようになりました。

さらに、大規模で人事制度もしっかりとしている会社だからこそ見えてきたのは、課長、課長代理、部長という大きな組織ならではのキャリアパスです。「ここでこの先10年頑張って一段ずつ階段を上がっていくより、自分でやった方が絶対に早い」と確信したことで、将来的には独立することを意識するようになりました

原口さんが起業を志すまで

楽しく働くための秘訣は目標をもって働くこと。仕事の楽しさは「達成感」にある

独立を視野に、人一倍営業を頑張っていた私は、その後直属の上司が独立するタイミングで新しい会社に誘われました。そして、新たな会社で営業促進のためのホームページの作成に携わり、SEOやリスティング広告の研究までやって作り上げたことが現在の仕事へとつながっています。

当時、ホームページ制作の知識をもっていたわけではありません。使わない知識を勉強しても何も身に付かないわけで、「知識」と「経験」は表裏一体だと私は思っています。これまで特別な勉強をしたことはなく、すべて現場で覚えながらやってきました。

独立したのは、29歳のとき。準備も十分にできないまま、ある晩、居酒屋で上司と喧嘩別れしたことで起業に踏み切りました。仕事に真剣に向き合いはじめた26歳からわずか3年で起業を実現できたのは、常に結果をもとめて達成することを繰り返し、自分の中で小さな成功体験を積み重ねながら仕事をしてきたからこそだと思います。

仕事の楽しさは「達成感」であると思っています。楽しく仕事をするためにやるべきことは、楽しい仕事を探すのではなくて、目標をもって働くことです。

たとえ、周りから憧れるような華やかに見える仕事に就いても、仕事となった以上きっと楽しいだけではないはずなんですよ。楽しい・楽しくないは、結果をもとめてそれを達成できたかどうかで決まってくるもの。小さなことでも良いので、日々の仕事を通して自分の中で達成していけば良いのです。

これがわかっていれば、どんな仕事でも楽しく働くことができますよ。

「やるべき」仕事をこなしていれば、「やりたい」に変化する

ジオコード 代表取締役社長 原口 大輔さん

紆余曲折ありましたが、本気で働いてからは与えられた仕事を必死にやってきた自負があります。頑張ってきた理由は、決して楽しい仕事と巡り合えたからではありません。仕事を「やりたいから」ではなくて「やるべき」だと思ったからです。

今までさまざまな仕事をしてきてわかったことは、やるからには頑張って成果を出した方が絶対に楽しいということです。皆さんにはぜひこれを伝えたいです。

今まで見てきた社会人にも、少し嫌なことがあるからといって仕事から逃げたり、「こんな仕事はやる意味がない」などと言ってくる人もたくさんいます。でも、やっている仕事に意味なんかなくていいんですよ。そこにお客様がいるからやるんです。相手は待ってくれませんから、「やりたいから」ではなく「やるべき」なのです。

どんなに嫌でも、仕事からは逃げられない。同じ時間働くなら、その時間だけでも頑張って、成果を出して給与が上がったり、必要とされた方がいいですよね。倍働くわけではありませんし。楽しめるかどうかは自分次第だし、意識だけで結果は変わります。このことをぜひ知っておいてほしいと思っています。

原口さんからのメッセージ

やりたい仕事が見つからなくても大丈夫。異なる業種、職種、規模の会社を見て当たりをつけてみよう

就職活動の段階では、向いている仕事、やりたい仕事なんて見つからないものだと思っています。まだ働いた経験がないのですから、見つからなくて当然であって、決め切る必要はないのではないでしょうか。

何十社もの会社を見て回るという方法もありますが、どんな仕事があるのかを知るために、5〜6社程度回るので十分ではないかというのが私の考えです。

ポイントは、違う業種、違う職種、規模が大きい会社とベンチャー企業など、特徴の違う会社を見て回ることです。さまざまな種類の会社を見れば、自分の立ち位置でいけそうな会社、少し厳しそうな会社、人事担当者に好感がもてる会社、もてない会社など、何となく見えてくるものがあると思います。

説明会に社長が出てくる会社であれば、社長をよく見ること。社長が出てこなくても担当者は会社の顔なので、その会社の姿勢や雰囲気は必ず伝わってきます。そうやってバリエーションのある会社を見て回る中で、自分にマッチする会社を決めていけば良いと考えています。

そして最後は、結局フィーリングではないでしょうか。恋愛と同じで、いくら理想の条件を掲げていても、最後はフィーリングが決め手となると思っています。

正しい意見が通り、トップの考えや会社の方針が伝わる、本当の意味での風通しの良い会社であるかどうかも重視しましょう。仕事からはみんな逃げられないので、このポイントも大事です。

会社にいる時間は長いですよ。月曜日から金曜まで、ずっと週末を目指して働いているという人生はつまらないはずですから、ぜひ居心地の良い会社を選んでください。

変化に対応できる柔軟性のある人がもとめられる

社会でもとめられているのは、当たり前のことを当たり前にできる人だと考えています。ただその当たり前は、時代、相手によって変わってくるものだと思うのです。

ですから、必要なのはやはり「変化に対応できる人」。仕事ができるなと思う人が共通してもっているのは、柔軟性です。柔軟性があるから人は成長できます。逆に、頑固な人は成長するのに時間がかかってしまうのです。

気持ちでは嫌だと思うようなことも、柔軟性がある人はうまく対応していきます。わかりやすいイメージでいうと、苦手なもの、何となく見た目が悪く食べたいとは思えないような食べ物でも進んで口にできるか、できないか。たとえばですが、「パクチーが嫌い」とか堂々と人前で言わない方が良いのではと思います。そりゃ癖はありますし、当たり前すぎて。

柔軟性がある人と頑固な人の違いはこんなイメージだと思っています。

柔軟性がある人、頑固な人の違い

今の時代にあった考え方かはわからないですが、柔軟性をもつために、少々理不尽な部活に入って頑張ってみることや、営業でテレアポなどの厳しい環境に身を置いてみるのも1つの手ですね。

強い上昇志向がなくても問題ない、小さくても目標をもって働こう

採用面接に立ち会うときにいつも思うのは、「これから頑張ります」と言われても心には響かないということです。これは、新卒でも中途でも一緒ですが、そこを一生懸命アピールされても、本当に頑張れるかどうかの確証はないですよね。

それよりも私は、「過去何をやってきたのか」を知りたいですし、そこを見ます。転職を繰り返してきた私が言うのもなんですが、過去にやってきたことがその人の結果だと思っています。

面接では多くの人が「頑張ります! 」とやる気がある発言をするのですが、やる気のある人って実際は少ないんですよ。口では言っても、みんなそんなにやる気がないなというのは多くの人を見てきて思うことです。

ですから、強い上昇志向はもたなくても良いと思っています。それでもやはり、仕事からは逃れられないのだから、小さくても目標を持って働くことを頭に入れておいてください。

そして、今現在、将来自分が何になりたいのか、向いている仕事は何なのか? と思い悩んでいる皆さんには、「今決める必要はない」というメッセージを送りたいです。実際に働いてみなければわからないので、どうか最後は恋人選びのようにフィーリングを大事に企業選びを進めていってください!

原口さんが贈るキャリアの指針

取材・執筆 小内三奈

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