成果を出すコツは相手ファーストの「正の循環」|誰でもできる“未来予測”をする習慣で仕事の質を高められる
TERASS(テラス) 代表取締役社長 江口 亮介さん
Ryosuke Eguchi・慶應義塾大学経済学部を卒業後、リクルートに入社。SUUMO(スーモ)の営業や企画に携わり、不動産領域の知見を深める。2017年にマッキンゼーアンドカンパニーに転職し、経営コンサルティングに従事。2019年にTERASS(テラス)を創業し、現職
やみくもに営業していた負の循環から、相手ファーストの正の循環へ
若手の頃は成果を出せず躓きながらも、先輩の助言でスランプを抜け出したことが印象に残っています。
大学時代はイベントやメディアに関心があり、イベント運営やフリーペーパーの発刊などをおこなっていました。社会人になったら早くいろいろな経験をして成長したいという気持ちが強く、テレビ局や広告代理店にエントリーするなかで、自分に合っていると感じたリクルートへ入社を決意。
まずは不動産関連事業をおこなうSUUMO(スーモ)の営業を担当し、新人賞を狙うほどやる気に満ちていたのですが、1年くらい経ってもまったく成果が上がらず、1度も売上目標を達成できなかったんです。どちらかというと放任主義の職場環境だったので、受け身のままではずっと成長できないと思い、自分から先輩に「結果を出すために本気で仕事を教わりたいです」とお願いしました。
そして、営業に同行するようになり、見様見真似で自分の仕事にも反映してみますが全然ダメで……。その様子を見かねた先輩が「とにかくお客さんに売り込みすぎだ」と。まずは売ろうとしなくて良いから、お客さんに「ありがとう」と言われることを目指すように言われたんです。
営業は売ってなんぼだと思っていたので、そのアドバイスは目から鱗でした。最初は半信半疑でしたが、お客さんのことを考えて、喜んでくれそうな情報をお伝えすると、みるみるうちに結果が出るように。2年目からは売上目標を達成し続けることができました。
先にお客さんに喜んでもらえると、気持ちよく良い情報を与えてくれるんですよね。良い情報というのは、お客さんの悩みや相談、強みや弱みだったりするので、リアルなニーズを知ることができるんです。すると、それに対して的確な提案ができるので、結果が出て、また喜んでもらえて……。という正の循環が生まれていったのです。
一方で今までやっていたのは、先に営業をして不快な気持ちにさせてしまい、良い情報をもらえないから良い提案ができず、結果も付いてこないという負の循環でした。この大きな気付きはとても本質的なもので、あらゆる仕事に活かすことができました。
知らない世界を知りたい。好奇心でキャリアを積み重ねる
営業から企画担当になって視野が広がり、もっと上流の経営や組織のことも知りたい! と思うようになりました。
自分の知らない領域があるというのが嫌だったんですよね。さらに、日本以外の多くの国では英語でビジネスが回っていると思うと、自分もその領域にチャレンジする必要性があると感じ、外資系のコンサルティングファームに転職を決意しました。
今までとは大きく異なる環境でしたが、意外と仕事の本質は変わらないものだなと思いました。
入社当初はほとんど英語が話せませんでしたが、想像以上に活躍することができたんです。前職で培ってきた営業力や企画力、仕事の進め方などはすべて、コンサルティングにも通ずるものばかりでした。プロのビジネスパーソンとしての土台があるうえで、この会社ならではの問題解決およびチームビルディングの手法などを学ばせてもらうことができました。
しかし、コンサルティング業界での働きは刺激的でしたが、一方もどかしさもありました。それは、数カ月スパンでお客さんやプロジェクトがどんどん変わるため、長期的にサポートができないことでした。
加えて、自分で事業を作って社員を率いるという働き方の方が、社会にとっても強いインパクトを与えられるのではないかという考えも芽生えていました。
そのような背景もあり、当時から勢いのあったグローバル展開を視野に入れたクラウドサービスに目を付け、CTO(最高技術責任者)と共にTERASSを創業し、サービス開発を進めていきました。
世界観が実現された時、何よりも喜びを感じる
当社が実現したいことは、「いい取引は、いい不動産エージェントから」という世界観です。
「不動産エージェント」とは、不動産営業担当者のことですが、最近では不動産仲介の中でも、会社員としてではなく、“個人”で活躍する不動産エージェントが増えています。個人で活躍する不動産エージェントのサポートや教育、自由に活躍できる環境を提供することにより、お客様が個人エージェントと安心してお取引いただける体制を整えています。
実際に教育を受けてくれたエージェントが急成長し、お客さんにとても喜んでもらったと聞きました。通常、エージェントはお客さんから仲介手数料をもらう仕組みですが、お客さんから「こんなに良い提案をしてもらって……本当に仲介手数料だけで構わないのですか? 」と言われたのだとか。
業界では仲介手数料を下げるという動きが進んでいるなかで、お客さん側からそんな言葉をいただき、エージェントはもちろん、それ以上に私たちが感動していたかもしれません。この出来事は、私たちの世界観が実現された瞬間のひとつでもありましたから。
これからも、より多くのエージェントと接点を持ち、良い不動産取引を増やしていければと思っています。そして、個人としても会社としても、社会に対する影響力を高めていきたいです。
「なりたい姿」を叶えられる業界や企業選びをしよう
就活で重要なのは、したいことではなく、なりたい姿を考えることです。どんな社会人、どんな大人になりたいのか。そこを設定してから、どんな仕事をしたいのかを考えるようにしましょう。すると、自ずとなりたい姿に近付ける業界や会社が浮かんでくると思います。
最終的な企業の決め手としておすすめなのは、業界トップクラスの企業であること。基本的には利益率が高いと、社員の給料や研修制度にお金を使えるので、社員にとって成長しやすい環境であることが多いと思います。
反対に、「採用担当者が良い人だったから」といった基準で選ぶのはやめておきましょう。その人の近くで働けるかどうかも分かりませんし、辞めてしまう可能性もあるからです。また、会社のホームページや社員インタビューを参考にするのは良いと思いますが、それよりもできるだけ社員から直接話を聞き、リアルな情報を優先的に取り入れてみてください。
また、就活にとても役立つ本があります。ドラゴン桜でお馴染みの三田紀房さんが書いた『銀のアンカー』です。OB訪問や面接対策などに役立つ具体的な内容がたくさん盛り込まれているので、ぜひ読んでおいたほうが良いと思います。
「未来予測」で周りから抜きん出る存在へ
社会人になったら意識してほしいのは、未来を予測するという習慣です。特に若手のうちは経験やスキルが浅いからこそ、いかに先を読めるかによって仕事の質が変わっていきます。
それは何も難しいことではありません。たとえば、1週間後に重要な会議があるとします。その会議では、誰がどこに座って、手元には何を持っていて、誰から話し出すのか。どんな会話が繰り広げられて、どんな質問が出てくるのか……。
細かくイメージしてみると、当日までにどんな資料を作るべきか、会話や質問に備えて何をリサーチするべきかなど、今やるべきことが見えてくるはず。空に雲がかかっているとしたら、雲があるから傘を持っていこうという発想になるように、まずは具体的に描けるぐらい、とことんイメージしてみましょう。
どうしても目の前のことに集中しがちですが、準備で8割が決まるとも言われているので、まずは未来を予測する意識をもってみてくださいね。
また、これからの社会でもとめられる人は、人間力が養われている人です。人間力というのは意外とシンプルで、相手の気持ちを考えられるとか、先ほどお話ししたような未来を予測できるとか、学生時代でも身に付けられるようなことです。細かいスキルは後から身に付けられるので、まずは人間力を高めていくことを心掛けてみてくださいね。
最後に伝えたいのは、大学時代は就活はほどほどに、いろいろな人とのかかわりを楽しみましょう。さらに、社会という答えのない世界に出る前に、困ったときに相談できる人を作っておけると良いですね。
特に自分に自信がないかもしれないという人は、相談できる素直さやつながりさえあれば、納得のいく就活ができると思います。時には周りの人に頼り、情報をもらいながら、就活や社会を楽しんでいってくださいね!
取材・執筆:志摩若奈