世の中にアンテナを張り“ワクワク”しながら挑戦するとキャリアは拓ける|就活は目標設定からスタートしよう

トヨクモ 代表取締役社長/CEO 山本 裕次さん

トヨクモ 代表取締役社長/CEO 山本 裕次さん

Yuji Yamamoto・関西大学工学部卒業後、野村證券に入社。2002年、サイボウズに転職し取締役に就任。2010年より現職

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いろいろな人との出会いを通して「理想の姿」が見えてくる

家庭環境の影響で、幼少期からお金持ちになりたいと漠然と思っていたんです。就活でも、自分がそうなるにはどうすれば良いのかを考えた結果、まずはお金持ちに会って話ができる仕事を選ぼうと思い、保険会社や商社、証券会社などが頭に浮かびました。なかでも多くの経営者に会うことができたら、自分にも何かチャンスが巡ってくるのではと思い、経営者に会いやすい証券会社を選びました。

実際にいろいろな経営者に話を聞くなかで、成功するための明確な道筋を発見しました。それは、資本主義社会のなかで生きている以上、お金持ちになるためには資本主義について学び、活用するしかないということ。当たり前かもしれませんが、若手のうちに身をもって気付くことができて良かったと思います。

さらに、単にお金を持つだけではあまり意味がないということも知りました。年収数千万円だったとしても、家系的に資産家だったとしても、心から幸せに生きている人だけではなかったのです。そういったケースを間近で見て、「自分の理想はどんな姿なのか」「本当に豊かなのはどういう人なのか」などと考えるきっかけにもなりました。

まずは自分が目指しているような人に会える環境に身を置き、そこから学んだり、吸収していくというのはとても大事だと思います。

山本さんからのメッセージ

目の前の人に与えたいのか、世の中に届けたいのかを考えてみよう

そんななかで、1996年頃からインターネットが台頭し、「これからもっとインターネットが主流になる」と確信。情報の価値も大きく変わり、一人ひとりにとって最適な情報を得られるサービスや技術がもとめられるだろうとも思いました。

そして、その領域で自分で事業をやるのか、まずはIT系の企業に転職して学んでいくのかを考えるようになり、友人に話をしたところ、「そのアイデアに近いことをやっている会社があるよ」とサイボウズを紹介してもらい転職を決めました。

入社後は、主に新規事業や海外販売をおこないました。証券会社とはビジネスモデルや仕事のやり方などがまったく違っていて、特に衝撃的だったのは「メーカー」という概念です。前職では目の前の人に価値提供をして感謝されていましたが、メーカーでは世の中の多くの人にサービスを届けるため、自分が知らないところまで価値提供できるんですよね

普段出会う人たちに「サイボウズで働いています」と話しただけで、「うちも利用していて便利で助かっています。ありがとうございます」などと、意図せずお礼を言われることもあって。そういう瞬間は本当に気持ちが盛り上がりますし、いつの間にか世の中を変えることができているというのは、メーカーならではの醍醐味だと思います。

世の中にアンテナを張り、新しいことに挑戦する生き方

トヨクモ 代表取締役社長/CEO 山本 裕次さん

その後、日本でもモバイル化やクラウドサービスが流行っていきました。今までの時代から移り変わるような転換期だったので、ここでビジネスをしないわけにはいかないと思ったのです。社内でもその動きはありましたが、やはりどうしてもスピード感が足りないと感じ、「自分で事業をさせてください」と直談判。子会社を立ち上げ、いろいろなクラウドサービスを作りました。

普段からアンテナを張っておき、目の前にやってきたチャンスを逃さないこと。これは仕事においても、事業においても大切なことです。

その後、子会社名をトヨクモに変更し、さらにクラウドサービスに力を入れていきます。というのも、東日本大震災を機に、企業のクラウドサービスに対する認識が大きく変わったからです。

今までは社内でデータを保存しておくのが安心だといわれていましたが、津波によって社内のPCなどが失われてしまい、「クラウド上でデータを保存しておくことの重要性」が高まっていったのです。世の中で急速にクラウドサービスが広まり、当社の事業もどんどん発展していきました。

今までのキャリアを振り返ると、世の中の波に乗りながら、常に新しいことに挑戦してきたなと思います。最初は資本主義社会という土台に目を向けて知識を得ながら、インターネットの台頭や、クラウドサービスの流行などを早い段階でキャッチアップ。それができたからこそ、ある程度順調にキャリアを歩んでこれたのだと思います。これからも人生を楽しむためにも、世の中にとっての新しい領域、自分にとっての新しい挑戦に取り組んでいけたらと思っています

皆さんも「これからこの波が来るのではないか」「世の中はどのように変化するだろう」などと、普段から新しい風に意識を向けておき、自分自身でしっかりと見極められると良いですね。

そのコツとしては、新しいことへの興味と挑戦です。チャレンジして成功するか、失敗するかはどちらでも良くて、新しい可能性を見出して、そこに対して挑戦していくこと自体を楽しんでみてください。新しいことをするので思い通りにならないこともありますが、少なくとも世の中の時流を読みやすくなると思います。

山本さんのキャリアにおけるターニングポイント

就活も仕事も、目標設定からスタートすると順調に進みやすい

就活では最初に「どんな自分になりたいのか」を考えてみましょう。恥ずかしい気持ちもあるかもしれませんが、周りの声や他人からどう思われるのかなどは気にせず、自分基準で言語化してみてください。

目標設定さえできれば、そういう自分になるにはどんな会社が良いのか、どんな仕事が良いのかを考えて選択していくのみ。少しでも実現可能性を高められるキャリアを選んでいきましょう

とはいえ、就活中から社会人としての理想像をイメージするのは難しいこともありますよね。そう感じる人も、実際に仕事をはじめてみると「もっとこういうことがしたい」「ああいう先輩みたいになりたい」など、自ずとイメージできるようになっていくはずです。

仕事においても、目標設定が最も重要なところです。明確な目標があってこそ、やるべきことや課題が見えてきて行動できるもの。目標設定をした時点で、ほとんど達成したようなものだと言っても良いでしょう。

目標設定のコツは、自分なりに仮説を立てること。特に知識や経験の少ない若手の頃こそ、まずは何でも構わないので目標を立て、実際に行動しながら、少しずつ目標を調整すると良いと思います。仮説と行動を繰り返すことで、より自分らしく精度の高い目標になっていくのではないでしょうか。

そして、目標ができたら積極的に口に出すようにしましょう。周りに伝わると協力者が現れたり、情報が回ってきたりして、実現できる可能性が高まっていきます。

目標設定のコツ

入社時の初心を忘れず、プロフェッショナルを目指そう

社会や組織で活躍できるのは、新しいことに興味を持ち、好奇心をもって専門領域を深められる人です。

特にこれからはプロフェッショナルな人材がもとめられる時代。何のプロになるのかを明確にしたうえで、専門領域で新しい知識や経験を深めていけると良いですね。最初に1つに絞るのは勇気がいるかもしれませんが、違うなと思ったら途中で切り替えることもできますし、まずは決めてみると良いのではないでしょうか。

最後に就活生の方に伝えたいのは、社会に出てからも、入社したときの初心や目標に立ち返ること。どうしても忘れがちだと思いますが、普段から心掛けながら仕事に励むべきだと思っています。

もしそれが今の会社では実現できないと感じたのなら、自分に合わなくなった、もしくは最大限まで成長できたというサインなので、転職を視野に入れることになるかもしれません。最初の思いや目標というのは、仕事やキャリアの選択肢にも役立つので、ぜひ心に留めておいていただければと思います。

就活でも仕事でも、ワクワクする気持ち、胸が高まるような気持ちを大切にしながら、まずは目標設定をし、行動に移していってくださいね!

山本さんが贈るキャリアの指針

取材・執筆:志摩若奈

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