周りに流されない「自分軸」と変化に打ち勝つ「チャレンジ精神」を大切に|ファーストキャリアは業界選びが肝心

バルテス 代表取締役社長 田中 真史さん 

Shinji Tanaka・大阪府生まれ。高校卒業後、中小のソフトハウスでエンジニアに就職。2年間フリーランスとして活動した後、ソフトウェア会社を設立。1990年に2社目を設立し、15年間の経営を経て事業譲渡。2004年にバルテスを設立し、現職

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エンジニア業界の課題を解決するべく、3度の起業に挑戦

学生時代から起業を視野に入れており、フリーランスを経て3度の起業を経験しました。

工業高校の情報処理科に進み、そこで学んだことを活かせそうだったので、卒業後は中小のソフトハウスに就職。システムエンジニアやプログラマーとしてキャリアをスタートしました。当時は社会全体で長時間労働が当たり前だったので、なかなか大変な日々でした。その一方で、祖父と父親が起業家として成功していたため、自分で事業をやることに興味があり、ゆくゆくは起業したいと思っていました

4年後には、起業資金を貯めるためにフリーランスに転身。そんななかたまたま現場で前職の先輩に出会い、「一緒に会社を作らないか」と声を掛けられ、共同経営でソフトウェア会社を設立しました。

しかし、途中から経営方針の違いが生まれてしまいます。私は今で言うPCがこれからもっと広がるだろうと考えていましたが、先輩は当時すでに伸びていた企業向けのオフィスコンピュータを軸足に置きたいという考えでした。お互いに譲れないところだったので、それぞれ別の道に進み、後輩と共にPCを活用したシステム会社を設立しました。

15年にわたって経営をするなかで、ある課題に直面しました。それは、エンジニアの多くはシステム開発の「テスト」を不得意としていること

一生懸命システム開発をしても、最後にソフトウェアや製品に不具合がないかをチェックし、品質を高めるという工程を蔑ろにしている場合があると気付いたのです。それによって納品後にエラーやトラブルが起こりやすく、お客様に迷惑を掛けてしまうという事態に陥っていました。

社内だけでなく業界全体の課題でもあると気付き、それを解決するために「テストのプロ集団」を作っていくことを決意。さらには「テストはプロ集団に任せるもの」という業界の文化も創っていきたいと思い、後輩に事業譲渡し、2004年にバルテスを起業しました。

バルテス 代表取締役社長 田中 真史さん

「テストはプロに頼るもの」という文化を創り、業界から認められる存在に

起業後は、お客様から直接感謝されることもあり、それが喜びややりがいにつながっています。

今まであらゆる企業様のソフトウェアの品質サポートをおこなってきました。お客様からは「バルテスさんのお陰で重大なリスクを見つけることができました」「第三者視点によるテストで、開発全体の流れまで変わりました」などと、うれしいお声を数多くいただいています。

ほかにも、物流倉庫システムのテスト工程を担当した際には、わざわざ私を会社に招いていただき「バルテスさんにテストしてもらったからこそ、大きなトラブルもなく進んでいます」と感謝の気持ちをお伝えいただきました。実際にテストを担当した社員を表彰してくれる企業様もあり、社員の活躍を認めていただけると、よりうれしい気持ちになります

今後はますますデジタル化の流れが強くなり、我々としてもさらに貢献できる領域が広がっていくと思います。特にこれからは、どの業界でも人手不足が課題になるので、それを解決するためのソリューション開発を進めていきたいです。また、今後はサブスクリプション型のサービスを増やし、安定的な収益を生み出せる仕組みづくりに力を入れています。

3度の起業を経験して思うのは、世の中の流れに目を向けておくことの重要性です。社会に出たばかりの頃から「世の中では今何が起きているのか」「これから何がもとめられていくのか」と常にアンテナを張っていました。だからこそ、時流に合わせて柔軟に変化しながら、経営を続けてこられたのだと思います。

皆さんもぜひ、これからの社会がどうなっていくのかを自分なりに考えながら、「こんな仕事に就くのが良いかもしれない」「次はこれにチャレンジしてみよう」などと、周りではなく自分の意志で決めていってくださいね。

田中さんのキャリアにおけるターニングポイント

素直さをベースに、チャレンジ精神をもって経験値を高めよう

社会人になって意識してほしいと思うのは、「何事も誤魔化さないこと」と「変化しながらチャレンジし続けること」です。

仕事をしていると、どうしても嘘をついたり、誤魔化したくなる瞬間が出てくるもの。周りの同期と比べて作業が遅かった時、なかなか言い出せずついつい「大丈夫です」と言ってしまい、最終的に納期に間に合わなくなったり……。

小さな嘘でも積み重なると大きなミスになりかねません。遅れているときは遅れている、できないことはできないと言う。正直に伝えることさえできれば、周りの上司がフォローしてくれるはず。特に若手の頃はできないことが多くて当然なので、素直に報告することを大切にしてくださいね

素直さに加えて、変化しながらチャレンジし続けるのも大切です。たとえばエンジニアなら、どんどん開発言語は変わっていくので、柔軟に適応していかないとついていけなくなってしまいます。今までの仕事内容ややり方に慣れたとしても、それに固執せずに「さらに効率化するにはどうすれば良いのか」「新しいツールを導入してみてはどうか」などと、どんどん工夫していけると良いですね。思い切って変えるのはなかなか難しいかもしれませんが、1つでも2つでも、より良くするために工夫するという意識をもっておきましょう

さらに、変化に対して前向きな人には何かを任せたくなるので、新しく挑戦する機会にも恵まれていきます。「これやってみる? 」と提案されたときに、分からないからと言って断るのではなく、自分なりにリサーチをして「やってみます! 」と挑戦することで一歩踏み出せると思うのです。最初に手を挙げなかったら、その時点で未来が閉ざされてしまいもったいないですよね。いろいろな経験を積んでいけるよう、変化への柔軟性や積極性は忘れないようにしましょう。

社会人として大切な「在り方」

長く続けられそうな業界で「自分にフィットする先輩がいる企業」を選ぼう

就活では「自分が長く続けられそうな業界」を選ぶと良いと思います。短期間で業界を転々としてしまうと、広く浅くしか学ぶことができず、専門性が培われないからです。業界さえ定まっていたら、将来的に企業や仕事を変えたとしても、深みのあるキャリアを積んでいくことができます。「今流行っているからこの業界」といった軽い気持ちではなく、一度立ち止まって「10年、20年後も続けていきたいか」というのを考えてみてくださいね

具体的には、気になる業界に関する本を読んだりインターネットで調べてみたりして、自分がどう思うのかを観察してみましょう。

たとえばエンジニアの仕事が気になったら、開発言語の入門編を学んでみて、「なんとなく分かりそうだから向いているのかも」と思えるなら、長く続けられる可能性が高いかもしれません。反対に「何も理解できないけど、就職したら教えてくれるだろう」という感じだったら、その業界は控えておいたほうが良いと思います。

そして、最後の企業選びの決め手としては、「どういう先輩と働くのか」が大切です。企業の選考で会いやすい人事や役員ではなく、実際に一緒に働くことになる「現場の先輩」と言うのがポイント。当社でもお互いにとってフィットする採用になるよう、面接で現場の先輩に参加してもらうようにしています。大手企業は選考の仕組み上難しいかもしれませんが、中小企業であればお願いしてみるのもおすすめです。

田中さんからのメッセージ

自分軸を定めて就活を。人望の厚い人はチャンスや成長に恵まれる

社会人になって目指すべきなのは、人望の厚い人です。自分から積極的に周りのことを気に掛けたり、手が空いたら手伝ってあげたりすると、周りから信頼される存在になっていきます。そして、自然といろいろな人や情報、チャンスに恵まれていきます。自らそういう環境づくりをしていけると、周りから感謝されてやりがいを感じられたり、自分も成長しやすくなったりするのです。

最後に伝えたいのは、自分軸で就活をすることの重要性です。友人がどの業界に行くとか、親が反対しているからとか、周りの状況や意見が気になる場面もあるかもしれませんが、それを最優先にして仕事を選んだらワクワクしませんよね。

また、むやみに会社説明会に参加したり、沢山の選考を受けたりしても、時間の無駄になってしまうと思います。「結局自分は何をやりたいんだろう」「どんな仕事に魅力を感じているんだろう」と分からなくなってしまうことも。だからこそ、最初の段階で業界を絞り込んだり、大手や中小などの事業規模を決めたりと、自分軸を定めたうえで行動を重ねていきましょう。

田中さんが贈るキャリアの指針

取材・執筆:志摩若奈

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