挑戦し続ける「諦めの悪さ」を持とう! 信頼の積み重ねが大きな成果を生む

ビーグリー 代表取締役社長 吉田仁平さん

Jimpei Yoshida・1994年早稲田大学理工学部卒業。日商岩井(現双日)に入社。シリコンバレーへの駐在や事業会社社長を経験した後、2007年ビービーエムエフ(現ビーグリー)に入社。2013年に同社代表取締役社長に就任し、2017年3月に東証マザーズ上場。翌年3月に東証第一部への市場変更

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どんな環境でもひたむきに取り組んできた

これまでどんな環境でも「やってみるか」で飛び込んでみて、そこでひたむきに取り組んで結果を出すことで信頼を積み重ねてきました。それが自身のキャリアの形成にも、そして電子コミック業界の成長への貢献にもつながったと思います。

せっかく働くのであれば規模の大きな仕事に携わりたい」と考えていた大学時代。実家が自営業だったこともあり、商売を極めたいという思いがありました。商売を極めるのであれば商社で働きたいと考え、就活をスタートさせました。

数ある商社の中でもなぜ日商岩井(現双日)を選んだのかというと、いってしまえば第一志望群のうちの一つ、という選び方でエントリーをしていました。

当時6大商社は全て受けていて、日商岩井は面接で出会った人が良かったので、そのまま悩まず入社を決意。

最初は商社らしくプラント管理など、いかにも大仕掛けな仕事をしてみたかったのですが、携帯端末の販売やサービスの構築などを扱う情報産業本部に配属されました。

それでも、自分がやりたいことと違う部署に配属されることへの葛藤はありませんでした。商社の場合は配属ガチャとでも言いますか、配属先はかなりランダムに決められるので、とにかく入った先の環境でがんばるぞという意識も強かったからです。

さらにいえば、当時はまさに携帯端末の普及など情報産業系が盛り上がる真っ只中。時代の流れに乗りつつ携帯端末やインターネットに関わることができた経験は、今のビジネスや物事の考え方に活きています。

皆さんのなかには、「配属先によっては自分がやりたくない仕事を任されてしまうのではないか」と不安を抱えている人もいると思います。

不安を残したまま入社したくないのであれば、面接の際に「入社後はどういった仕事を任されるのか」と面接官に確認してみましょう。

面接は相互理解の場。後悔のない就活をするためにも、なるべく事前に期待値のギャップを埋めておくことをおすすめします。

吉田さんからのメッセージ

時代の変化を肌で感じたターニングポイント

日商岩井で働くなかでは、アメリカのベンチャー企業のネットワーク機器を輸入するビジネスに携わることもありました。そこで取引をしていた企業が、最初は60人くらいの規模だったのに対し、3年後には500人の規模にまで成長。

急成長するベンチャー企業を間近に見て、スタートアップやネットワークビジネスのダイナミズムを肌で感じる経験をしました。

ここでの経験があってアメリカでの仕事に興味を抱き、シリコンバレーに駐在することにもなります。

さらには、その後のスタートアップへの興味にもつながっているので、この経験は私のキャリアにおける一つのターニングポイントともいえます。

日商岩井では管理職を若いうちから任せてもらえることも多くありました。次々新しいプロダクトやサービスが拡大していたので、人的リソースが足りない、人の成長が追い付かないという環境だったことが要因の一つだと思います。

より大きな裁量で仕事を任されるチャンスが多かったですし、さらにいえば、私自身そのチャンスを求めて行動もしていました。

その環境下で実力を発揮し、結果を出し続けてきたことで、早い段階から役員などの上流のポジションを経験することができたのだと思います。

当時の反省としては若さゆえに冷静に判断できていなかったことなどもありますが、そのときの反省や、めげずにひたむきに頑張ってきた経験は、間違いなく今に活きています。

「やってみるか」で飛び込んだゼロからのスタート

商社で順調にキャリアを築いたなかで、新たな興味が生まれてきたのもこの頃。これまで関わってきたのは通信回線や通信環境で、いわばインターネットの基盤です。

そこにずっと携わる中で、利用者が求めているのは、インターネットというよりも「インターネットを使ってできること」だと気づいたのです。

ネットワークという土管に何を通すか」という視点を持ち始めたとき、そのサービスの一つである「コンテンツ」に惹かれるようになりました。

コンテンツに興味を持ち始めていたタイミングで、当時はスタートアップ企業だったビービーエムエフ(現ビーグリー)からの誘いを受けました。

携帯でのコンテンツ制作を主軸とする事業が自身の興味ともマッチしていたので、「よし、やってみるか」と飛び込んで今に至ります。

自分から転職先やキャリアを求めてたどり着いたというよりも、自然と今の環境にたどり着いたように思います。

吉田さんのキャリアの変遷

6大商社からスタートアップへの転職というと、一般的には大きな挑戦に思えるかもしれません。しかし、自身にとっては一大決心といった意気込みで移ったわけでもなく、ほんとに軽い気持ちで飛び込んだのが正直なところです。

環境を変えてもう一勝負」といいますか。新しいことにチャレンジしたいという思いが昔から強かったからかもしれません。

日商岩井からビービーエムエフ(現ビーグリー)に移ったことは、私のキャリアにおけるもう一つのターニングポイントともいえます。

信頼の積み重ねが業界を成り立たせてきた

当時の仕事は、漫画を電子配信するもの。漫画ビジネスというよりも、携帯電話のコンテンツビジネスという面で捉えれば、前職とそこまでかけ離れた分野ではありませんでしたので、自身の経験が活かせる部分はありました。

ビジネスモデルとしては、ライセンサーから許諾をもらい、漫画を『まんが王国』で配信し、お客様に購入してもらい収益を得ています。しかし、その頃はスマホではなくガラケーの時代。

「漫画を電子配信する」といったサービスなどはほとんどなく、「漫画は紙媒体で読むもの」というのが当たり前でした。

当時の当社はまだ知名度のない業界素人同然の外資系ベンチャー企業であったため、まずは出版社や漫画作者との信頼関係を作るところから始まりました。

しかし、出版社は「電子配信したら本が売れなくなるのではないか」という懸念を抱き、なかなか信頼は得られない。

何年もかけて「本屋に並べられていない本が電子で売れるようになる」という電子配信の魅力を伝え、信頼関係を築いてきたからこそ今があります。

漫画の電子配信によるメリットの提示

前例がなく信頼もない状況のなかでの、作品のライセンスを持っている出版社や作者とのやり取りは新鮮なことばかりで、多くの学びが得られました。

漫画の電子配信は、自社、出版社、作者のそれぞれにメリットがある。そうした事実を十年以上のトライ&エラーで積み重ね、信頼を築いていきました。

その結果、大手出版社からも許諾を得られるようになり、取り扱い作品数が各段に増え現在に至るまで事業を拡大させてきました。

今後はグローバルで通用する「コンテンツプロデュースカンパニー」として、海外にも事業展開を進めていきたいです。

吉田さんの行動の軸

就活は自分を見つめなおす絶好の機会

「企業選びの正解はこれ」というような、決まった答えはないと思います。だからこそ、企業選びは当人の個性によるものが大きい。

捉えようによっては、就活は自分を見つめなおす良い機会ともいえるので、ここで自分をしっかりと分析してみてほしいです。

どういうことに一生懸命になれて、どういうことに一生懸命になれないのか。自分のやりたいことをやれるのが幸せなのか、他人に感謝されることが幸せなのかなど、「自分が充実感を感じる軸」がどこにあるのかを意識的に確かめてみてください。それが就活の軸につながるはずです。

就活を通して見つめなおしておくべき部分

その会社で働きたいからと自分を取り繕うのではなく、ありのままの自分を企業にさらけ出してみましょう。企業も自社に合う人を探しているので、自然と自分に合う企業とマッチングすると思います。

そうはいっても、なかなか興味のある業界や企業が見つからず、志望業界すら絞り切れない場合もあるでしょう。そんなときは、製品やブランド、ビジネスなどから直感的に良いなと思うものを幅広く選んでみてください。

たとえば、大手かベンチャーかで悩んでいるような場合は、一旦どちらも受けてみて、そこから自分に合っている方を選ぶと良いと思います。

また、ファーストキャリアを選択する際に、「新卒偏重傾向にある企業」を選ぶのも一つの手だと思います。新卒が有利な企業を選ぶことも、新卒ブランドを最大限に活かす方法なのではないでしょうか。

吉田さんの教える企業選択のコツ

スキルや能力よりもまずはマインドを身に付けるべし

諦めの悪い人と一緒に働きたいと考えています。「諦めが悪い」と聞くと、頑固であったり、融通がきかない人を想像してしまうのではないでしょうか。

しかし、私が定義する「諦めの悪さ」は単に目標にしがみつくだけ、ということではありません。目標を達成するまで諦めずにしがみついて、その達成のために手段やアプローチの仕方を柔軟に変えられるマインドを指します。

頼みごとが断られたとしても、「次はこうしよう」「手段を変えてみよう」と、柔軟に手段を変えつつ、諦めずに挑戦し続けられる「諦めの悪さ」。

それは、物事の本質を捉えて惜しみなく努力ができるマインドセットともいえ、今後も求められていく人材となるでしょう。

スキルや能力を磨くのはいつからでもできますが、マインドというのは意識して何十年も積み重ねていかなければ身につきません。学生のうちから習得できるように意識してみるのが良いでしょう。

諦めの悪さ、つまり目標達成のために柔軟に挑戦し続けるマインドは、学生のうちから身に付けられます。あえて大変な環境に飛び込んで、可能な限り逃げない。

学生という身分は社会人に比べれば良い意味で無責任ですから、その身分を活かして、とりあえず飛び込んでみてください。自分で考えて自分で対応していく経験が、諦めずに柔軟に挑戦し続けられるマインドにつながります

柔軟さを持つというのは、若手キャリアの選択にも同じ。安易に「嫌だから」と会社をやめてしまうことには注意が必要ですが、一方で自分を痛めつけてしまうような環境に身を置く必要はまったくありません。

深く悩んでしまって結果的に現状のパフォーマンスが落ちてしまうのであれば、悩まない方の選択肢を取るなど、自分が楽になれる選択肢を取っても良いかと思います。

大切なのは、自分が心地いいと感じる方向を前向きに、柔軟に選んでいく、ということです。

吉田さんが贈るキャリアの指針

取材・執筆:小林駿平

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