就職活動は早めに周到な準備を進めよう! 希望通りに進まなくても別の道がある。「こだわりすぎない」も大切に

シェルパ・アンド・カンパニー 代表取締役CEO 杉本 淳 さん

シェルパ・アンド・カンパニー 代表取締役CEO 杉本 淳さん

Jun Sugimoto・慶応義塾大学卒業後、証券会社の投資銀行部門で国内外の大型M&A・資金調達案件や、IR・コーポレートガバナンス周りでのアドバイザリー業務に従事。2019年9月にシェルパ・アンド・カンパニーを創業し、現職

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30歳までにスキルを身に付けることを目標設定に。ファーストキャリアは投資銀行へ

サラリーマン家庭に育ったのですが、逆にそれを見ていたからでしょうか、自分自身のキャリアを考えたときに、40年間同じ会社で働き続けることはまったくイメージできませんでした。

大学に進学した当初から、まずは30歳にマイルストーンを置いて、それまでにさまざまなビジネススキルを身に付けて次のステージを見つめ直したいと考えていました。ぼんやりではありますが、その頃から「起業」についても意識していたのもたしかです。

幅広いスキルを身に付けられるファーストキャリアとして選んだのが、投資銀行です。当時読んだ小説に、黒木亮さんの『獅子のごとく』があって、その本がまさに、外資系の大手投資銀行を舞台にした小説でした。「こんなダイナミックな世界があるんだ」と知り、同時に「この世界であれば短期間に確実に実力をつけられるだろう」と考えるようになりました

身近に投資銀行に就職する先輩が多かったこともあり、入社後のリアルな話を聞かせてもらうチャンスがあったのも幸運だったと思います。当然、先輩方は皆さんものすごい量の仕事をこなしているのですが、それ以上に同年代と比較して報酬も良く、何よりもスケールの大きな仕事に携わっているところが魅力的で、投資銀行で働けばその後のキャリアの選択肢の幅が広がるに違いないと考えました。

進むべき道がはっきりしたことで、「投資銀行に絶対に就職するために」から逆算したのが私流の就職活動であったと思います。

杉本さんが投資銀行を選ぶまで

ダイナミックな世界に憧れ、早めの準備で就活に備えた

先に就職活動を経験した1つ上の親しい先輩からアドバイスされたのは、「できるだけ早く準備をスタートしておいた方が良い」ということです。この先輩からの助言のおかげで、先手を打って就職活動に備えることができました。

なぜ就職活動を早くからスタートすべきなのか。1番の理由は、早期に多くの会社をまわることで、助走期間ができて、第一志望の会社を一発目、二発目で受けるのではなく、練習した上で面接等に挑むことができるからです。さらに、私が希望していた投資銀行の場合、とくに早期にインターンを募集して早めに内定を出すという実態がありました。

インターンのチャンスを見逃さないようにしつつ、一方でコンサル業界なども受けて手応えを探りながら早めの就職活動を進めることで、無事、念願の投資銀行から内定を獲得。予定していた通り、早く始めた分、就職活動は早々に終了となりました。

今はまた就活の流れが変わっているかと思いますが「早めの備えあれば憂いなし」には変わりはないと思います。とくに行きたい業種が明確になっている人は、ぜひ先輩等から貴重な情報をもらいながら、早い段階から準備をスタートしてほしいと思います。

キャリアの軸は「自分にとって難しい方を選ぶ」。30歳を前に「起業」を決意

投資銀行に入社後は、想像通りのハードワークが続きました。当時のことは、正直はっきりと思い出せないくらいです。連日夜中まで、土日も含めて働いていたので、今思えばまったくサステナブルな働き方ではないですし、体力があったからできたともいえます。

ただ一方で、自分がやりたいと思っていた仕事でした。興味をもって取り組んでいたのはたしかなので、過酷な環境ではありましたが今思えば良い思い出です。

新卒で入社した投資銀行でM&A業務に2年従事した後、ファイナンスの知識をはじめより幅広いプロダクトの知識を身に付けたいと考え、外資系の投資会社に転職。よりグローバルな仕事に携わるようになりました。

一方で、マイルストーンとして置いていた30歳が迫りつつあったので、この先のキャリアについても考え始めました。投資銀行出身の先輩は皆、培ったスキルを活かして幅広い分野でキャリアアップを実現していました。さまざまな選択肢があったので、色々な道に進んだ先輩に話を聞きに行き、この先どういうキャリアを築いていくべきか迷う日々でした。

大きな転機がやってきたのは、昇進が決まり、昇進のタイミングでもらえるサバティカル・リーブ(1カ月休暇)をとったときです。

杉本さんのキャリア変遷

突然長い休暇が与えられたものの、やることが見つかりません。そこで、最も親しくしていた先輩が立ち上げたFinteck企業(金融とテクノロジーを融合したサービスを展開する企業)で3週間働かせてもらうことにしたのです。

実際にスタートアップ企業で働かせてもらって感じた熱気は、強烈でした。世の中に大きなインパクトを与えることにチャレンジし、ゼロから事業を作り上げていくその様子を目の当たりにしたとき、これまで感じたことのない情熱やワクワクする気持ちを感じたことを今でも覚えています

投資銀行でもスケールの超大きな仕事をしていましたから、大きな達成感はいつも感じていたんです。でも、ワクワク感の種類が違いました。

これまでは、言うならばアドバイザー業務が主で、顧客の意思決定を手助けするのが私のミッションでした。ところが、「起業」とは当然のことですがまったくのゼロから新たな価値を生み出し、世の中に影響を与えることを目指しています。

そんな仕事を体験させてもらって、「自分が生み出した先に何かが残ったり、世の中に大きな影響を与えられるようなことがしてみたい」「チャレンジしたい」と強く思いました。

それまでの自分自身の過去を振り返っても、最も辛い選択肢を選んできたという感覚がありました。そういう観点からも「中途半端なキャリアよりは、自分が一番成長できるキャリアを選びたい」と進むべき道がはっきりしたのです。「辛い道、難しい方の道を選ぼう」と決意したと同時に、自分で自分を奮起させるパワーがわいてきました

休暇が終了するタイミングで「起業します! 」と伝え、なんの事業プランもないまま退職することに。「具体的なことはすべて辞めてから考えよう」と勢いだけで新たな道を選択しました。

進むべきキャリアを考えるとき、何を軸に選択していくかは人それぞれ基準が違うはずです。ただ、「楽な方より難しい方を」という選択を続けることで得られるものはやはり大きい。私はそう思っています。

シェルパ・アンド・カンパニー 代表取締役CEO 杉本 淳 さん

「こだわりすぎない」ことが大切! 視野を広く持ち別の選択肢も用意しておこう

事業プランも一切考えていない状況で会社を辞め、「世の中に大きな影響を与えたい」との想いを胸にスタートを切った私ですが、事業アイデアの検証を繰り返すも残念ながらまったくうまく進みませんでした。

起業後、2度にわたって事業プランの変更を余儀なくされ、3回目にようやく「ESG」(環境・社会・企業統治を考慮した活動)をキーワードにした事業の立ち上げが実現し、世界的な大きな波にも乗ることができて今があります。

事業がうまく立ち上がらずつらい時期もありましたが、今振り返って大きかったと思うのは、最初から「2回くらいは失敗するだろう」とあらかじめ考えていたことが大きかったと思います。ある程度の失敗を許容できるようにしておくと、人間ってそれほど追い込まれることはないものなんですよ

自分自身の心が完全に追い込まれてしまう前に、それに備えて心に余裕をもっておくこと。「これくらいの期間やってみて無理だったら次を考えよう」と選択の幅をもっておくことは大事だと思います。

新たなことにチャレンジしようとするなら、誰でも壁に当たることがあるはずです。でも、壁に正面から当たって潰れてしまわないように工夫することはできると思っています。「何が何でもこれを達成しなければいけない」と一つのことにこだわり過ぎないこと。「失敗もあり得るだろう」「失敗したら違う方法を考えよう」と余裕をもって捉えておくだけで、心が病んでしまうほど追い詰められることは防げるだろうと私は考えています。

たとえば、就職活動においても、私の場合は投資銀行に絞って活動してきたのですが、一つのキャリアにこだわりすぎると不幸になる可能性もあると今改めて思います

「この会社に行きたい」がはっきりしているのは良いことだと思うのですが、一方で「何が何でも絶対に行かなくては」と考え過ぎないことも大事であることが今はわかります。少し視野を広く持って、別の選択肢も合わせて用意しておくだけで心に余裕が生まれますよ。

実際、今は新卒でスタートアップ企業を選ぶ人もいますし、国としても新しい産業を生み出すことを支援する流れが加速しています。起業を含め、ぜひ幅広いことに意識を向けていってほしいなと願っています。

20代はスキルを身に付けられる会社に入ってほしい。先輩からの情報収集は念入りに

起業を考える人やスタートアップへの就職を目指そうと考えている人は、自身の中の強い想いを大切にして、迷わずその道に進んでほしいと思います。

一方で、「これをやりたい」というのものがとくにない人は、20代のうちに、それもできるだけ早くしっかりとスキルを身に付けられる会社に入るべきだと私は考えています。

しっかりとスキルを身に付けられる会社かどうかを見定めるためには、やはり「たくさんの人に人に会う」ことではないでしょうか。OB・OG訪問をどんどんする、インターンに参加してみるなど、とにかく働いている人の声を聞いてみることです。さらに、具体的なアドバイスをくれる先輩と出会えるかどうかも大きいですよ。ぜひ、色々な人に会いに行ってください。

また、10年後、20年後にその会社がどうなっているか、も真剣に考えてみてください。今は、会社の目指している未来の姿をパーパスとして掲げている企業も増えています。将来に向けたビジョンやストーリーをしっかりと描いている会社を選ぶという視点も大事です。

私の仕事柄、サステナブルな経営を進めている会社はおすすめしたいと思っています。今の学生さんのような若い世代の方が、SDGsやESGについて真剣に考えている人が多いと感じています。会社選びの際にも、ぜひそのような視点も合わせて選んでいくのは素晴らしいことだと伝えたいですね。

杉本さんが考える、会社を選ぶの視点

  • できるだけ早くしっかりとスキルを身に付けられる会社か?

  • 10年後、20年後にその会社はどうなっているか?

  • サステナブルな経営を進めている会社か?

これからはアンラーンできる人、セルフマネジメント力がもとめられる

会社の中にいると、会社の看板の力で生かされていることになかなか気づく機会がありません。しかし、これからは一人ひとりが手に職をつける必要性が高まっていくと考えます。周りと替えがきかないスキルをもっている人が強い時代になっていくと思います。

投資銀行で働いていた当時の私も、同年代と比べて高い給料をもらっていましたし、自分の市場価値を周りより高く見積もっていた経験があります。ところが、いざ外に出て一人でやるとなると、何か人より特別なものをもっているわけでもないことを痛感しました

そこからは、ガラリと意識を変えました。自分だけの力で生きていける力を身に付けなければ生きてはいけない。そう認識してここまでやってきました。

違う領域の仕事をすることとなったとき、「今までのスキルでは足りない」と自覚してゼロから学び直そうとする力があるかどうか。言うなれば「アンラーンできる力」が大事になってくると思っています。

現状で易々と過ごしているのはあまりにももったいない。世の中にはもっとすごい人がいる、もっと行動している人がいると知った上で、アンラーンできる人になってほしいです。

学生時代にもできることはたくさんあります。ぜひ色々な活動に参加して体験の幅を広げてください。自分の可能性を限定せず、空いている時間を使って勉強以外にもさまざまな世界を見てみましょう。  

そして社会人となってからも、会社の教育だけに頼るのではなく、社会で通用する人材となるためのセルフマネジメントがもとめられることを知っておいてください。今の職場環境では過去と比較すると労働時間はかなり制限されているので、業務時間以外の時間に学びに向かう姿勢が必要となってきます。

杉本さんからの大切なメッセージ

自分で学ぶか学ばないか。毎日の差はわずかでも、それが後々大きな差となってきます。早い段階からどこにいっても通用するスキルを自力で学んでいく力も大切になってくると思っています。

「ワクワクする仕事かどうか? 」というシンプルな視点も覚えていてほしい

就職先が決まっていざ入社しても、その先のキャリアについて迷うようなことはたびたび出てくるでしょう。

私が起業を決意したのは、スタートアップ企業で数週間働いたときに感じた‟ワクワク感”がきっかけです。そして実際に起業に踏み切って事業を模索しているときにも、「この事業を10年、20年飽きずに続けられるか」「社会に大きなインパクトを与えたいと心から思えるか」「自分の心が踊るか、ワクワクするか」といった視点で考えてきました。

最後にお伝えしたいのは、この先もし「今の仕事がうまくいかない」「この会社は向いていないんではないか」などと思うことがあるなら、一度、上記のような視点で考えてみるのもいいよ、ということです。

誰もが難しく考えがちですが、情熱やワクワク感といったシンプルな想いって実はとても重要です。自分自身の心にシンプルに問うてみると、やりたい仕事、やるべき仕事が意外と見えてくることもあるのではないかと思っています。

こだわりを持ち過ぎず、少し高い視点から「どんな仕事をしていきたいか」を考えてみると見えてくるものもあります。皆さんの就職活動、そして20代という大切な時期にしっかりとスキルを身に付けてキャリアアップしていけるよう応援しています。

杉本さんが贈るキャリアの指針

  取材・執筆 小内三奈

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