若い感性を信じて突き進め! 常に「次の面」に進みたくなる仕事や、休日も考えたくなるようなキャリアのテーマを見つけよう

MIKAWAYA21(ミカワヤ21) 代表取締役社長 青木 慶哉さん

MIKAWAYA21(ミカワヤ21) 代表取締役社長 青木 慶哉さん

Yoshiya Aoki・読売新聞販売店の営業担当として活躍後、20歳でリフォーム事業を起業。23歳からは読売新聞販売店を経営し、27歳で本社直営店の代表に就任。ユニークな新聞販売店として存在感を発揮するなか、地域のシニア向け生活サポート「まごころサポート」をスタート。2012年には同事業に専任することを決め、MIKAWAYA21を設立し、現職。高齢者の方々の「ちょっと困った」を解決する「まごころサポート」事業のソーシャルフランチャイズを展開中

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「思いつきで事業を立ち上げてもいい」その感覚や勢いを海外で学んだ

キャリアにおける最初のターニングポイントは、フィリピンで目にした出来事がきっかけです。

高校2年生からバックパッカーとして東南アジアを回っていたのですが、失業率50%以上という地方の田舎を訪れた際、以前日本に住んでいた同級生が自宅に泊めてくれました。翌朝起きると、その人の父親が「自転車を買ってきちゃった。無職なのに奥さんに怒られちゃう、どうしよう」と焦っていたのです。そのうちに「よし、稼ぐために買ったことにしよう」と言い出し、後部座席に座布団をくくりつけて駅前に行き、自転車タクシーを開業していました。

笑い話のような本当の話ですが(笑)、ビジネスってこんなに簡単に始められるものなんだなと強く印象に残り、「自分も20歳になったら自分の会社を作りたい」と思うきっかけとなりました

高校卒業後は早速、起業をしようと考えたのですが、父親から「経営とは経理の“経”と営業の“営”のことだぞ」との助言をもらいました。どんな仕事をするにもまずは営業力が必要だという結論に至り、叔父がやっていた新聞販売店に基本給0円、すべてインセンティブという条件で雇ってもらうことに。フルコミッションで走り回った結果、2年間で営業力のベースを身に付けることができました。

私の実家では20歳で自立するルールもあったので、家を出ると同時に起業することに。工務店で見習いをしていた7歳上の先輩を誘い、一緒にリフォーム屋を開業。私が仕事を獲得してきて、先輩が技術部門を仕切るという形で、順調に軌道に乗せることができました。

次なる転機が訪れたのは、23歳のとき。新聞販売店時代に知り合った本社の社員の方から「前代未聞の店を作ってくれよ」との打診をいただいたのです。連れて行ってもらった高級ピアノバーの雰囲気に飲まれてしまったことも理由ですが(笑)、尊敬する人だったので「この人の誘いなら受けよう」と即答し、リフォーム店を先輩に譲って新聞業界に戻ることにしました。

青木さんのキャリアにおけるターニングポイント

どうせなら“楽しもう”! どんな仕事でも工夫次第で面白くできる  

とはいえ、翌朝はお酒の勢いで返事をしたことを激しく後悔しました。営業は大好きでしたが、過去の経験から、新聞業界が自分に合っているとは思えなかったからです。それでも「どうせやるなら楽しくやろう、日本一の新聞屋になろう! 」と決め、それまで誰もやってこなかった新聞販売店の改革に着手しました

まずは男性中心の仕事というイメージを払拭すべく、主婦層の方々をたくさん雇い、お店をきれいにすることからスタート。リフォーム屋のツテも存分に活かして、たこ焼き屋を併設したり、NYから輸入家具を仕入れてお店の1階にレストランを立ち上げたりと、ユニークなスタイルのお店に変えていきました。

当時は当たり前だった訪問営業も「スタッフたちがやりたがらないから止めよう」と決め、業界初のテレアポでの新聞勧誘をスタート。この狙いは当たり、最終的には400名体制のコールセンターを立ち上げ、広範な営業活動を展開することに。この改革によって前代未聞の結果を出すことができました。

ガンガン仕掛けていき、かつ成果も出せたことで、創業4年目には当初の10倍という大きなエリアを任せてもらう状況となりました。地域の読者からニーズが多かった携帯電話ショップ併設の店舗も作り、iPhoneの月間販売台数全国No.1を年に3回叩き出したお店もあります。

普通にやればおもしろくない仕事でも、どうにかしておもしろがる。この姿勢のルーツは、小学生時代にさかのぼります。

“おもしろい”を追求するクリエイティブパワー!  アルミ缶拾いで得た価値観

私は4人兄弟の3番目で、何もかもをお下がりで済まされる立場でした。音楽の授業で皆が白いリコーダーを吹いているなか、私だけが1世代前の黒いリコーダーを使っていて、しかも袋にはリコーダー掃除棒の代わりに母親が菜箸を入れていた……なんてエピソードもあります。

この子は周りとも上手くやっていけるから、お下がりでも大丈夫」という親の見立てと信頼があってのことでしたが、さすがに女の子向けのキャラクターが描かれたピンクの自転車に乗れと言われたときは、受け入れ難い抵抗感を覚えました(笑)。

そこで自分で青い自転車を買おうと思い立ち、友だちと相談して町中に落ちているアルミ缶を拾って換金することに。そのときに思いついたのが、アルミ缶蹴り落としゲームです。

「私の自宅前の溝に落としたらゴール」というルールにして同級生に流行らせたところ、10人以上の同級生が毎日30個前後のアルミ缶を落としてくれる状況を作ることができ、最終的には6,000円を稼ぐことができました。

普通にアルミ缶を拾い集めていたら、かなり地味で切ない作業になっていたことでしょう。「買ってもらえないからと拗ねるのはカッコ悪い。どうせやるなら肯定的に、おもしろおかしく拾えばいいじゃん」と逆転の発想でお金を生み出そうとする姿勢は、小学校1年生の当時から今まで変わっていない気がします。

地味な仕事をいかにおもしろくするかいかにおもしろそうに見せて仲間を集めるか。そんな視点とクリエイティブなパワーを持てると、どんな仕事でもおもしろくできるということは、学生の人にもぜひ伝えたいメッセージです。

青木さんからのメッセージ

ギャップを生み出せる業界か? トップの顔が見えるか? 社員は本当に生き生きしているか? 

就職の際にあえて人気のない業界に飛び込んでみるのは、ひとつの方法論だと思います。元からキラキラしている人気業界に入ってしまうと、多少の工夫をしたところで大きな変化は出せません。

一方、人気のない業界であれば、皆が「そういうものだ」と諦めていることに対して小さな改革を試みるだけで、クリエイティブなギャップを生み出せますし、かなり目立つことができます。

企業を比較検討する際は、2つのポイントを見てみてください。1つは企業の規模に関係なく、社長の顔がよく見える会社を選ぶこと。具体的には「社長の情報がどれだけ世の中にたくさん出ているか」をチェックしてみると良いと思います。情報を集めてみると、その社長が「人として地に足がついた人物かどうか」といったことも見えてくると思います。

ただそれよりも重要なのは、たくさん情報が出ているイコール、顔と名前を世間に出すリスクを取っているリーダーであるということです。会社はリーダー次第でいかようにも変わるので、社長の姿勢はそのまま企業の姿勢につながります。

「リーダーにリスクを取る覚悟があるかどうかは、会社のチャレンジ姿勢とも共通する」というのが私の持論です。新聞販売店に携帯電話ショップを併設する際、ソフトバンクを選んだのは孫正義さんの顔が浮かんだことも大きな理由です。

もう1つのポイントは、その会社で働く社員たちのリアルな姿を知ることです。面接にはその会社のエースが出てくるので、面接だけでは判断しないほうがベター。面接に出てきた人がキラキラしていても、バックヤードを覗いてみて疲れた表情の社員が多いようならば、そちらのほうがリアルに近い可能性があります。

BtoCの事業をしている会社ならば一度は店舗に足を運び、リアルに働いている人たちの顔を見に行ってみてください。店内の空気感を含め、自分の五感で確かめてみるのがおすすめですよ。

青木さんがおすすめする企業選びのポイント

回りまわって大きな利子が返ってくる! 自分のリソースを利他的に使おう

良いキャリアを歩んでいくためには、自分から積極的に人との出会いをもとめていく姿勢も肝心です。

運が良い人とは、イコール「素敵な人と出会っていくなかで人生が上向いていっている人」だと私は考えているので、この人と仲良くなりたい、この人に覚えていてほしいと思ったら徹底的に執着します。

以前料理屋の大将に惚れ込んだときには、月に1回来る客よりも24時間で3回来た客のほうが印象に残るだろうと考え、18時に食事して22時に再訪店し、さらに翌日の18時にもお店に足を運んで、仲良くなることができました。

社員たちにも「素敵な人がいたら、膝下にしがみつけ」とよくアドバイスしていますが、「この人だ」と思える出会いがあったら人に執着することも大切。同様に、いつでも素敵な人と反応し合える自分の状態を作っておくことも大切だと思います。「また会いたいと思われる人になりたい」ということは、私の人生のテーマです。

私が思う素敵な人の共通点は、利他的であること。時間・お金・体力やエネルギーなどの自分が持っているリソースを、自分を満足させるためだけに使わず、どれだけ人のために使えるか。これは当社のサービス「まごころサポート」でも一番大切にしているポイントです。

短期的には損しているように見えても、人生をトータルで見れば、費やした以上の利子がついて返ってくる実感がありますね。私自身、これまで何度もピンチの状況がありましたが、必ずどこかから救いの手を差し伸べてもらっています。会社の資金調達においても、事業計画をアピールして投資家の方々を説得したことは一度もありません。

これらはすべて、私なりに若いうちから自分のリソースを利他的に使い続けたからこその恩恵だと実感しているので、よければぜひ参考にしてみてください。

青木さんのメッセージ

目指すは21世紀の「三河屋」さん。お客様に心から喜んでもらえることが一番のやりがい

MIKAWAYA21(ミカワヤ21) 代表取締役社長 青木 慶哉さん

とはいえ、私もキャリアのスタート時点から、利他的な考え方ができていたわけではありません。初めて新聞販売店を任された頃には、他紙の購読者を奪うことに燃えていた時期もありました。 

当時は商売は生きるか死ぬかくらいに思っていたのですが、「商売人が持つべき真心とは何か? 」と考えたときに、目の前の人が心からの笑顔や涙を浮かべて「ありがとう」と言って喜んでくださる姿を見ることほど、商売人冥利に尽きることはないという結論に至ったのです。

現在のサービス「まごころサポート」を始めたことがきっかけなのですが、次第にライバルを蹴落とすことや、きらびやかな場で全社表彰をもらうことなどに興味がなくなり、20代後半から商売人としての生き方が定まった気がします。

新聞屋は天職だと思っていましたが、その過程でスタートさせた「まごころサポート」は片手間ではなく、志を持ってチャレンジすべき事業だと思えたことから、2010年にこの事業をフランチャイズで全国に広めていく新たなキャリアをスタートさせました。

MIKAWAYA21という当社の社名は、アニメ『サザエさん』に登場する三河屋のサブちゃんに由来しています。サブちゃんはインターフォンも押さずお客様宅の勝手口を開けて入って行きますが、これは強力な信頼関係がベースにあってこそできることです。

近年、CRM(顧客関係管理)ということが盛んに言われていますが、我々がお手本にすべき究極のCRMは、三河屋さんの姿ではないかと思うのです。お客様の家の行事やご家族のことがすべて頭に入っていて、地域の皆から信用をされている。「21世紀の三河屋さんを目指そう」という志を社名に込めています。

今後も、お客様やそれを取り巻く人々の生活が変わっていくような世にないサービスを生み出し、提供していくことがキャリアを通じての目標です。「世にないものを生み出している」と感じられる瞬間に強烈にワクワクしますし、充実感を覚えます

プロダクトアウト(会社の作りたいものを基準に商品開発をすること、プロダクトを作ってから販売方法を考えるスタイル)のスタイルでは、自分は喜びを感じられないと自覚しているので、マーケットイン(お客様のニーズを把握したうえで、それを満たすサービスを提供する)のサービスをやっていこう、ということも決めています。

将来不安を解消するには自分を徹底的に鍛え上げること、良い仲間を作ること

最近は、不満よりも「今のままの自分で、この会社にいて将来はあるのか? 」という将来不安から転職をする人が多いと聞いています。親世代とはまったく違う価値観でサバイブしていかなければならなくなった今の時代、将来不安を減らすためには2つの方法しかないと思います。

1つは、圧倒的に自分を鍛えること。スポーツに似ていますが、自分を徹底的に鍛え上げることで「ここまでトレーニングしたんだから、人生の金メダルが取れるはず」という自信を獲得していく方法です。常に自分を成長させる意識を持っておくことが肝心ですね

もう1つは、自分を支えてくれる仲間を持つこと。家がなくなったら泊めてくれるくらいの間柄の仲間が複数いれば、「最悪、生きてはいける」と思えて不安が軽減します。社会人1〜2年目にはそういった濃い人間関係ができやすい時期なので、ぜひ良い仲間を作ってほしいです。

将来不安を解消する2つの方法

ドキドキ、ワクワク、ヒヤヒヤしているときほど人間の脳は活性化されるので、あえて安定をもとめない生き方を意識してみても良いと思います。

ルーティンばかりで脳が楽しくないと叫んでいたら、次のチャレンジを探しに行ってください。ゲームでいうところの「次の面(ステージ)に行きたい」と思えるような仕事をするには、社員にどんどん新たなチャレンジをさせてくれる会社に行くのがベストです

また、活躍したければ「土日も考えたくなるような仕事を選ぶ」という目線も有効だと思います。身体的にハードワークである必要はありませんが、長時間思考ができる仕事であることは必須です。体は休めていても、思考だけは回しておこうと思える仕事、つい考えたくなるような仕事というイメージですね。

また、とりあえずで入社しないことも、大切だと思います。仕事で壁にぶつかったときに「辞めてしまおうか」という選択肢を自分の前に置いてしまうような企業には、最初から入らないほうが良いと私は思いますね。入社後に「自分はあれをやりたくて入ったんだよな」と思い返せる程度の目標は定めておくべきだと思いますし、信じた道のなかで壁が出てきても「前進あるのみ」と粛々と取り組んでいける仕事を見つけてほしいです

20年前後生きているならば、1つくらいは自分がもとめるキャリアのテーマが見つかるはず。学生時代は特に見つかるように行動すべきですし、まだ見つかっていない人は、ぜひ残りの時間を有意義に活用してみてください。

自分に合ったキャリアを選ぶための視点

キャリアのテーマを見つけるためには、「三現主義(現地・現物・現人)」を心がけることがおすすめです。

本やネットで良い記事を読んで満足して終わらず、気になったらその著者に会いに行くなど、プラスαの経験値をもとめてみる。いろいろな経験をしていて引き出しが多い人、人間としての厚みや深さがある人は、取引先にも「仕事を任せたい、また会いたい」と思われる人であることが多いです。

そしてぜひ、良い大人と出会ってほしいです。違和感を覚える大人とは距離を置き、古い価値観を押し付けられないよう自己防衛してください。若い人たちが持っている感性こそが次の日本を作っていくと思いますし、その感性に寄り添って実現のサポートをするのが大人の役割だと私は考えています。

当社もまさにその意識で事業を進めていますが、本気で持続可能性を考えて動けることなどは特に、若い世代にしかない強みだと感じます。「自分の感性は間違っていない」と信じ、その価値観を実現するために必要な知識やスキルを蓄積させ、大きな花を咲かせてください。

青木さんが贈るキャリアの指針

取材・執筆:外山ゆひら

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