キャリアの転機は「自分らしさ」の追求|最良のパフォーマンスを発揮できる環境を選ぼう
イングリウッド 取締役副社長兼CGO 三好 悠介さん
Yusuke Miyoshi・慶應義塾大学在学中にアメフトU19日本代表に選出される。2006年リクルートに新卒入社し、TOPGUN AWARD2度受賞など多数の表彰受賞。その後、リクルート住まいカンパニー執行役員、リクルートディビジョン長を経て、2022年より現職
合理性とやり切る姿勢を重視した環境選び
就職活動を思い出すと人とカルチャーを軸に考えていたと思います。
学生時代の部活選びも人を軸に考えていたためです。学生時代、小学校は野球、中学校はサッカー、高校からアメフトをしていました。いずれも当時その学校で一番盛んな強い部活を選んでいました。自分よりも凄い人やモチベーションが高い仲間と切磋琢磨していると自分も成長でき、チームみんなで頑張って、喜んだり、悔しんだりすることが純粋に楽しかったのだと思います。
なので、就職活動も業界や業種にこだわりはなく、優秀でモチベーションが高い人が多い会社に行きたいと考えました。リクルートも社員の方と会っていく中で、皆さん自分の仕事に誇りを持っているような方が多く入社を決めました。また当時からリクルートは年齢・年次関係なくフラットで実力主義と言われていたことも決め手でしたね。
私はいわゆる体育会育ちですが、合理的でない考え方や仕組みは苦手で、下級生の時も生意気なことを言ってしまうタイプでした。ただ、恵まれたことに先輩たちもチームが強くなるためならと提言を聞いてもらえることも多く、自分も言ったからには誰よりもやり切ろうというスタンスで取り組んでいました。結果的に高校では13年ぶりの関東大会優勝、大学では2部降格を何とか免れるというレベルから4年次は関東リーグ決勝進出まで躍進できました。
U19日本代表に選ばれた際にも、体育大学のメンバーから科学的なトレーニングを学んだり、ホームステイ先のアメリカ代表メンバーが非常に泥臭い努力をしていたりする姿を見て、一流と言われる選手たちは合理的・科学的な考え方を前提に最後は泥臭い努力を当たり前に突き詰めていると感じました。またチーム・組織は悲壮感漂う雰囲気で突き詰めるよりも、明るく常にポジティブなチーム・組織の方がパフォーマンスが最大化されるということも学びました。
これはビジネスというフィールドにおいても全く同じで、就職活動や転職の際にも重視しました。
他人との比較ではなく、”自身の変化“にフォーカスしよう
就職してからも若手のころから言いたいことは何でも言わせてもらい、言ったからにはやり切るという意識で仕事に取り組んでいました。
仕事なのでやりたいことではなかったり、不遇だなと思うようなタイミングもありました。ただ、意見や考えは伝えた上であとはどんな仕事でもやり切るスタンスで仕事に向き合っていましたね。
ちなみに人事異動希望は一度も叶ったことがありません。ただ、これも将来やりたいことや身に着けたい力を伝えていて、今となっては結果的に叶えられた部分が多いです。キャリアはなかなか計画通りにはいかないものですが、目の前の環境を活かしきる中で開けていくものだと思います。
私の場合、20代の時にリーマンショックや東日本大震災というどうしようもできない危機がありました。当時営業として自身の目標達成は絶対に無理という状況でしたが、とにかくクライアントが困っていたので、何とか少しでも役に立てるようにと取り組んでいたところ後から全社表彰などで評価されるというようなこともありました。
もちろん沢山の失敗もしていますし、同期や後輩にも優秀でかなわないなと思うようなメンバーも多かったです。ただ、あまり人と比べた評価というものは気にせず、自分ができなかったことができるようになったか、過去より成長できたかということを大事に考えるようにしていました。
評価は運の要素も大きく自分ではコントロールできないことも多いです。一方で自分自身の変化は自分でコントロールできる部分のためです。できないことができるようになることは大人になっても楽しいものです。失敗は未来の成長のためのチャンスなのです。
若手の頃の悩みは、実はやりたいことが特になかったことです。周りには「3年後には独立して起業したい」とか「新規事業を立ち上げたい」といった志を持つような仲間が多かったのですが、私自身は特にそういった考えはありませんでした。
色々な先輩や上司に相談していたところ「将来、やりたいことができた時に実現できる力を身に着けておけばよい」という考えに至りました。そのためには個人の能力を上げることはもちろんですが、それ以上に「人の力を活かせる、チームを創ることができる力」が重要だと考えました。実際に社会で活躍されている方は社内でも社外でもそういう人ばかりでした。
そういう方々は「〇〇さんが言うならついていこう」「〇〇さんのことは応援したい」と言われるような人間的な魅力が高い方が多く、ビジネスパーソンこそ感謝・思いやりといった人間性が実は大事なのだと教わりました。私も事業責任者といった立場になった時は、縁あって一緒に働く仲間になったからには、限られた時間だとしても「あの時、あの仲間と一緒に働けて良かった。人生やキャリアにとっても良い時間だった」と思ってもらえるような組織や事業を創っていきたいと考え向き合いました。
面接は自分らしさをぶつけ、お互いを理解する場
リクルートは本当に良い仲間に恵まれ何の不満もありませんでした。それでも転身を決めた理由は成長を続けてきたイングリウッドをより進化させ、仲間と世の中を変革することが何よりのチャレンジだと感じたためです。
転職は本当に全く考えていませんでしたが、共通の知り合いの経営者の紹介でイングリウッドの社長と会い、1カ月かからずに意思決定しました。この時も人とカルチャーを軸に決めました。経営陣はもちろんのこと、現場のメンバーや新卒社員にも会わせてもらい色々な話を聞きました。
その中で私が入社した頃のリクルートに似たカルチャーを感じました。成長意欲の高い若手社員が多く、チームで成果を出すことにコミットしている。みんなで一生懸命働き、遊ぶときも一生懸命。ペイフォワード、圧倒的スピードといったところです。
副社長兼CGO(チーフ・グロース・オフィサー)という役割を担っていますが、私の役割は今のイングリウッドの良いカルチャーを残したまま、圧倒的な事業成長を牽引することです。そのためにも「組織・人材開発」には注力しています。新卒でも中途でも最終面接は基本的に私が担当しています。
当たり前の話ですが就職や転職は大事な選択なので、とにかく良い選択をして欲しいと思っています。良い選択というのは「自分らしい選択」のことだと私は考えています。面接では、過去の選択について深く聞かせていただいています。どんな選択をしてきても良いと思っていますが、なぜその選択をしてきたのかは詳しく知りたいと思っています。その中にその人らしさが現れるためです。
もちろん優秀な方を採用したいのですが、どれだけ優秀でもその人らしさがイングリウッドには合わないような場合は他社をお勧めしたりもしています。お互いを理解するためにも、面接では質問時間をかなり長めに取っています。
面接では自分らしさをぶつけて、自分らしさが発揮しやすい環境なのかを確かめるという意識を持たれている方が良い選択をされていると思います。
理想の環境とは「好きな人と好きなことを仕事にできる」こと
今は人生100年時代と言われますが、私は死ぬ直前まで何らか仕事をしていたいと考えています。以前は若い時はハードに働いて、アーリーリタイアしてのんびり暮らしたいと思っていたこともありました。そこから仕事は一生続けたくなるほど面白いものになりました。
人間は好きな人と好きなことができていれば幸せだと思いますが、正直今そのような状況です。普通は好きな人と好きなことをしていてはご飯を食べていけないと思われると思います。ところが仕事を頑張ってビジネスパーソンとして力を着けると社会に価値を創出することが楽しいことになり、そのために「好きな人=良い仲間」を集めるということが仕事になっていくのです。
もちろん仕事をしている中では、辛いことや悩むこともたくさんあります。ただ仲間がいれば乗り越えていけます。なので良い仲間がいる環境、良いチームを創ることができる力が大切になってくるのです。
良いチームを創る力はマネジメントにおける肝なので、マネジメント経験を早く深く積めるチャンスがある環境を見つけることは大事かもしれません。ただし、この力はマネジメントの立場にならなくても、入社後すぐにでも培っていけます。というのも、どんな仕事でも1人で完結する仕事はないと思います。
小さな仕事だったとしても、事務の方の力を借りたり、他部署の方と連携したりするはず。そのときに「こいつの為なら頑張ってあげよう」と思ってもらえるような人間性が将来の自分のためにも大切になってくるのです。
日本の良さを世界へ! 仕事を通じて社会を良くしたい
私は子どもが三人いるのですが、子どもが大人になる20年後や30年後により良い社会にしておきたいと考えるようになりました。就職活動していた頃の自分が聞いたら正直びっくりするかもしれません。当時は自分が成長したいとか、面白いことをしたいというモチベーションが強く、「社会の為」みたいな話は綺麗事のように捉えていたので大きな変化です。
私は海外に行くことも多いのですが、行けば行くほど日本ほど良い国はないかもなと感じます。日本ほど安心・安全・清潔で、「お財布落としても帰ってくる」みたいなカルチャーの国はなかなかありません。
一方で世界における日本のプレゼンスはどんどん落ちています。イングリウッドは小売というモノづくりに携わる企業として日本の素晴らしいモノづくりやカルチャーを世界に拡げていくビジョンを持っています。
イングリウッドの場合はマーケティングやITを武器にビジョンの実現を実現し、社会に貢献しようとみんなで頑張っています。ぜひ皆さんもどこかのタイミングで社会にどう貢献できるのかと考えてみてもらえると良いかもしれません。
取材・執筆:志摩若奈