就活は「人生」を考えるきっかけの1つ|挫折や失敗をバネに自分だけのワクワクを見つけよう
シニアジョブ 代表取締役 中島 康恵さん
Yasuyoshi Nakajima・幼少期から学生時代はサッカーに打ち込み、J1のジュニアユースチームで活躍。大学生の頃にプロの道を断念し、スポーツからビジネスの世界に興味を持ち、大学4年生のときに学生起業を実現。ITサービスをリリースした後、シニア向けのサービスへと移行。2014年にシニアジョブを設立し、現職
大きな挫折を味わい、スポーツからビジネスの世界へ
幼少期から学生時代まで、兄の影響でサッカーに打ち込んでいました。プロを目指して練習に励み、J1のジュニアユースチームに入団し、高校ではインターハイに出場。しかし、大学で周囲との実力差を感じ、プロへの道を断念することに。「サッカー選手になる」というずっと目指していた夢であり人生の目標だったものを失い、大きな挫折を味わいました。
今までのサッカー人生を振り返ると、常に個人としてもチームとしても目標を掲げて、そこに到達するためにはどうすれば良いのかを考え、適切な努力を繰り返してきました。さらに、練習中は少しでも油断すると帰らされたり、結果を出せないとすぐにスタメンから外されたりしたので、厳しい環境で生き抜く力や根性も身に付いていました。
このまま挑戦することをやめたくない。一度しかない人生のなかで、大失敗しても良いから前に進み続けたい。その一心で、スポーツと同じく厳しさもありながら、努力が直結しやすいビジネスの世界に目を向けました。
このタイミングでは、まだ一般的な就職を考えていました。そのため周りと同じルートで就活をして、インターンシップなどにも参加していましたね。
しかし、さまざまな会社の話を聞いても、正直これからの未来を変えるようなピンとくる企業に出会えず、どこかの企業に就職するという選択肢自体に迷うようになっていったのです。この頃から、起業を本格的に意識しはじめましたね。
そして大学4年生になり、学生起業を果たしました。最初は事業をするための「仲間」も「お金」も足りなかったので、まずはこれらをしっかり準備することからスタートしました。
勇気を出して行動を繰り返し、自力で2000万円と起業仲間を集める
まず仲間集めに関しては、自分よりもITなどに詳しい人を探そうと、他大学に行って学生に声を掛けました。なかなか話を聞いてもらえませんでしたが、ときどき興味を持ってくれる人がいて、最終的には起業に関心のある仲間3人と出会うことができました。
お金に関しては、就活をする振りをして最終面接まで行き、社長に投資をしてほしいと直談判をしていきました。
当時は優れたビジネスプランを考えられておらず、ほとんど断られてしまいましたが、16社目の社長が事業に賛同し、1000万円を投資してくれたのです。さらには知人の経営者も紹介してくれて、合計2000万円に。自分の行動によって道を切り開けるのだという自信になり、この期間で起業家としての自覚が芽生えていきました。
この資金をもとに、最初はITサービスを立ち上げました。しかしほとんど見切り発車で動いて作ったサービスだったので、あまり上手くいかなかったんですよ。ターゲットのニーズを確認せずシステム開発を進めてしまい、売り上げも立たず、結局調達できた資金も底をつきかけてしまいました。
そんな厳しい状況だった頃、現在の当社の主軸の事業となっているシニア向けのサービスにシフトするきっかけがありました。
当時はいよいよ高齢化社会だというタイミングで、シニア層が仕事に困っているというニュースがよく取り上げられていました。でも、周囲には「中高年層の人を採用したい」という企業も多く、双方の接点がないだけで実際にはお互いにニーズがあるのだと分かったのです。
さらに情報を集めるために、シニア層が多そうな地域に足を運ぶと、やはり仕事を探している人がたくさんいました。転職意欲がある方にはその場で履歴書を書いてもらい、周囲の企業をつなぎ、どんどん仕事を紹介していったのです。
すると、「ずっと仕事を探していたから本当に助かった」「給料をもらえたから、孫にお年玉をあげられて良かった」などと、いくつも感謝の声が届きました。本人だけではなく、その先にいるご家族にも喜んでもらえる。これは社会をより良くするようなビジネスだと確信し、シニア層向けの人材紹介サービスを立ち上げたのです。
このときの想いは今でも変わっていません。どうせやるのであれば、人々に喜んでもらえる、人として正しいビジネスを提供していきたい。どんなに儲かることでも、社会貢献や明るい未来につながらない仕事や事業はやりたくないと思っています。
キャリアの根幹には、今も昔も変わらない想いがある
正直、起業当初は「周りからどう思われるんだろう……」「失敗したらどうしよう……」という不安や恐れでいっぱいでした。だから実際に起業に踏み切るまで、実は半年くらい掛かっているんですよ。
でも、一度しかない人生なので、たとえ大失敗したとしても挑戦することに価値があると思ってここまで進んできました。大きな挫折を経て、「挑戦」を選んで本当に良かったと思います。
これから企業としては、起業当初から掲げている上場を実現させたいですね。事業としては、やはりシニア層の方々が活躍している世界を作ることを目指しています。その軸はぶらさず、人材紹介だけでなく婚活や教育など、あらゆる領域で支援できればと思っています。
また、以前から学生起業の相談を無料で受けているのですが、それは今後も続けていきたいですね。というのも、自分が学生起業をしたときに身近にロールモデルがなく、相談できる人もおらず、心細い思いをしたからです。だからこそ経験者として積極的にアドバイスやサポートをしていきたいですね。
就活は「人生」にフォーカスして、ワクワクする仕事を選ぼう
就活は、人生で最初に「生き方」について悩む時期かもしれませんね。大学生までは日々やるべきことが決められていて、ある程度レールが引かれていると思うんです。でも社会人になってからは、すべて自分でどんな生き方をするかどうかを決めなければなりません。
だから学生のうちに、どんな風に生きたいのか、どんな人生を送りたいのかをぜひ考えてみてください。それは仕事やキャリアのことに限らず、お金を稼ぎたいだったり、夫婦でのんびり暮らしたいだったり、それぞれが大切にしたいことで大丈夫です。自分の未来をイメージしたうえで、逆算をしてファーストキャリアを選択しましょう。
特に押さえておいたほうが良いのは、自分が何にワクワクするのかということ。今までの経験からも思いますが、「これが好きだ」と仕事を楽しんでいる人には誰も敵わないんです。最初はあまり能力がなくても、楽しんでやっていたら、いつの間にか努力していて能力が上がっていくもの。だからこそ、最初にワクワクできる仕事を選べると良いと思います。
また、就活で第一優先にするのは「内定をもらうこと」ではなく、「自分に合う企業を見つけること」にしましょう。就活は早いと4カ月くらいで終わりますが、その先のキャリアは40年くらいあります。ありのままの自分で就活に臨んで、自分に合う企業に就職できたら、きっと仕事でも良いパフォーマンスを出せると思いますよ。
これからもとめられる人物像は、相手が何をもとめているのかを考えられる人です。これは営業でも、エンジニアでも、八百屋の店長でも同じこと。目の前の相手がもとめていること、サービスの先にいるユーザーが考えていることを想像したうえで仕事ができると良いと思います。仕事の質が変わりますし、自身の成長速度も速くなりますよ。
社会人になったら、若いうちこそどんどんチャレンジをしてほしいですね。今まで私もいろいろな挑戦をしてきて、チャレンジしたことによる経験や、共に乗り越えてくれる仲間との時間はかけがえのないものでした。
もちろんチャレンジをする分、趣味の時間や友人と遊ぶ時間は減りますが、失うものよりも価値があったなと思います。挑戦の先にある経験や、将来の自分のためにも、時には勇気を振り絞って行動に移してみてくださいね。
取材・執筆:志摩若奈