まずは100%振り切れ! そこで得た最高のバランス感覚でキャリアに臨もう

アシロ リーガルメディア事業部 執行役員 鈴木 貴暁さん

Takaaki Suzuki・大学在籍時にデジタルマーケティング会社を起業。幅広い業界・業種のビジネスを経験し、2021年6月にアシロに入社。豊富なデジタルマーケティングの知見と経営者としての知見を活かし、リーガルメディア「弁護士ナビ」のサービス成長や法律事務所の経営サポートを担当。2022年9月よりリーガルメディア事業本部執行役員に就任

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最大のモチベーションだった負の感情

自分が死んだ時、数十億人の人に知れ渡るような存在になりたいーー

人生の最終目標として、世界中に認知されるスケールの大きなサービスをつくりたいと思っています。

そうした思いを駆り立てるのはなにも「世界を良くしたい」といった前向きなモチベーションからだけではありません。

そのもとをたどると、兄へのコンプレックスから。周囲からしてみればつまらないことかもしれませんが、自分にとっては避けては通れない負の感情の一つ。私は人生の大半をコンプレックスとの闘いに投じてきたといっても過言ではありません。

劣等感は誰しも持っていて、目を背けたくなると思いますが、生きる世界を狭めないためには向き合い、自分を変えるべきだと感じています

コンプレックスを感じていた6歳上の兄は、東京大学に入学し、トップ10の成績に入るほどの秀才。大学側から留学を頼まれることもあり、「超」が付くエリートです。

一方で私は、兄と同じ中学・高校や地方の国立大の受験に失敗したりと出来が悪く、家族や周囲からも比較され、それが原因でいじめられることもありました。

このままではだめだ。兄に勝たないと自分の人生はだめになる。兄は大学時代に起業をしていました。兄に勝つ最後のチャンスだと思い、自分も起業をすることに。3年生のときにデジタルマーケティングの会社を設立し、兄の会社よりも成果を出そうと躍起になりました。

鈴木さんが仕事を決めた基準

コンプレックス克服

起業後はとにかく必死に働き、なんとか兄の会社の売り上げを抜くことができました。長年の劣等感を克服できた時は本当に喜びました。

しかし目標を達成した途端に今後も会社を経営する意味を見失いました。そしてその後はなんとなくの経営を続け、ビジョンも意欲も実力もなく、お金を稼ぐだけのいわゆる「フリーランス集団」になり果てました。

私含め社員の士気は上がることはなく、新型コロナウイルス感染症の影響もあり売り上げも停滞していきました。

売り上げを回復させるために、新しいビジネスを始めよう。そう決心し、これまで一緒に働いてきた従業員に声を掛けました。

ところが、応じる社員は一人もいません。お金稼ぎが目的の、もっと言えば「兄を抜きたい」という個人的な事情で振り回し、従業員の幸せに配慮できない人の下で働きたいと望む人は、誰もいませんでした。

今の事業を継続するのか、別の道を歩むのか悩んでいたところ、出会ったのがアシロです。大学生のときにインターンをしていた会社の共同オフィスにあり、当時の執行役員と親交が深かったことから、一緒に働かないかと声をかけてもらいました。

当時を振り返れば、兄の会社を抜いた際にコンプレックスを一時的に解消できたものの、実力不足を痛感したことで新たな劣等感が膨らみ、まったく毛色の異なる次のキャリアに踏み切ることになったのだと感じています。

限界を知ったら180度視点を変える「逆張り思考」で

社員にならないかと声をかけてもらった際、起業の選択肢を捨てて良いものかとても葛藤しました。当時は1人で年間5,000~6,000万円稼ぐことができていましたが、就職すれば年収数百万円に。地位も財力も格段に下がる未知の世界に、未来があるのか不安でした。

しかし、そこで社員ではなく経営の道を選んだとしても、社員として働いた経験がない人にマネジメントが務まるわけがないと考え直しました。経営する実力をつけるためにも、180度方向転換して社員として働きスキルを身に付け、かつ社員の真の望みを把握しよう。腹を決めました。

今となってはこの決断をして本当に良かったと思っています。社員としてもたくさんの失敗を重ねたからこそ、マネジメントをする立場になっても社員の不安や悩みに心から共感できるようになりました。

上手くいかないときこそ今までと180度異なる方法を取る「逆張り」をする。つまり、全力を尽くして自分の限界を知ったら、反対の側面の限界を知るようにしなければ物事の本質は見えない、そう実感した経験です

ファーストキャリアは地獄を見る気で。長い社会人人生を生き抜く精神力を付けよう

仕事もプライベートもどちらも充実させたいと思う人は多いと思いますが、同時に頑張るのではなく、時間軸をずらしてそれぞれ頑張ればいいと思います。

つまりどちらも100%振り切ることがおすすめです。仕事を本気で頑張る期間がなければ、プライベートの重要性がわからず、また100%から50%に調整はできても、その逆は難しいのです。つまり、極限を知らなければ、結果的に仕事もプライベートも中途半端になってしまいます。

数十年後のライフ・キャリアプランを描いたうえで、そこに到達するためにまずは3年間くらい全身全霊を傾けて働いてみましょう。どんな仕事であれ、経験しなければならないストレスは同じなので、今後何十年と続くキャリアに耐える精神力を身に付けることが重要です。

とはいえ誰しもが楽をしたい、最初から効率的な方法を知りたいと思いますよね。しかし、そんな上手い話はないのだということを身をもって実感しています。

量をこなせば効率的な方法は見えてきますが、最初から効率化しか考えなければ量の重要性はわからず、行動をしません。結果、効率化もできません。

仕事の本質は量と効率のバランスで、どちらも最大限知ること・経験することで相乗効果で生まれ、成果を出すことができます

まずは全力を挙げて量をこなさなくては真の効率化はできず、成果を出すことも難しいと思います。

仕事で成果を挙げる方程式

コンプレックスから逃げない。失敗し、自責思考で軌道修正して成長しよう

仕事を100%やり切ったと言い切るためには、自分の仕事だけでなく、副次的に発生している事象まで自責思考で捉えることが必要だと考えています

自分の仕事はもちろんのこと、たとえば上司が苦労している仕事があるのなら、自分にできることはないかと自責で考える。

上司の仕事に関心や意欲を示せば、いずれその仕事を任せてもらえるチャンスがやってきます。

ただ、当然従来の仕事よりも難易度が高くなるため、失敗は避けられません。ですがその失敗こそがチャンス。失敗と軌道修正を繰り返すことで成長し、成功にたどり着きます。

軌道修正をする過程では、どんな立場の人の意見も受け入れる素直さと自己分析が欠かせません。コンプレックスを突かれ苦しくても、素直にそれを受け入れなければ、結局は同じ場所に踏みとどまったままになってしまいます

私も含め大多数の人は天才ではありません。ですが社会ではそういった天才にも勝っていかなくてはいけないシーンがたくさんあります。

勝つためには泥臭く失敗して、軌道修正し、一歩一歩成長していきましょう。その失敗や成長の数を重ねて初めて、天才にかなうスキルや知見を備えた強い人材になれるのだと考えています。

また、失敗を多く重ねた人は、他人の失敗にも寄り添うことができます。

仮にマネジメントをする際、100人部下をひきつれるのであれば、100通りの失敗をしていなければ部下に寄り添うことはできません。失敗のつらさに心から共感できないからです。

部下も人間なので、表面的な共感は見透かされます。自分の失敗を通して相手の不安やつらさに深く寄り添うことで、部下からの信頼を得られるのだと思っています

たくさん失敗し、自責思考で軌道修正する。自分の目指す姿を見据えて、どんな失敗も恐れず挑戦してほしいなと思います。

取材・執筆:赤松真奈実

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