夢の叶え方はいくつもある|「熱意」と「向学心」をもって自分流のキャリアを歩もう

プラスゼロ 代表取締役社長 COO 森 遼太さん

プラスゼロ 代表取締役社長 COO 森 遼太さん

Ryota Mori・東京大学大学院の新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻にて博士課程修了。産業技術総合研究所CBRCで統計や人工知能を活用した生物情報解析に従事。また、能力テスト理論開発や個人ゲノムに基づく疾病リスク推定、自動査定の画像認識などのプロジェクトを主導。ベンチャー企業を経て、2018年にプラスゼロを設立し、現職

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正解は1つじゃない。「研究者」の常識を超えベンチャー企業へ!

高校生の頃から、将来は「研究者になりたい」と思っていました。製薬会社や金融機関に職場見学をして「企業研究をするならこんな感じなんだな」と情報を集めていましたね。そのうえで、研究するなら大学のほうが自由に進められそうだと思い、大学の研究者になることを決意しました。

そのためには大学院で博士号を取得する必要があり、東京大学に進学。研究をやってみると、すごく性に合っていると思いました。論文を書くのは大変でしたが、それ以外のプロセスは全部楽しくできたんです。気になることは実際にやってみて、自分に合っているかを判断する、ということはおすすめしたいですね

最初はどんな研究をしたいかまでは考えられていませんでしたが、東京大学に進学していろいろと学ぶうちに、バイオインフォマティクス(生物学の課題を情報科学で解く分野)が気になるように。

大学院生になってからは研究所での研究にも携わるようになり、AIや統計を活用した情報解析をおこないました。そんななかで、あるベンチャー企業のアドバイザーとしてアプリ開発のサポートをすることに。アプリの収益化に苦戦していたので、AIを活用して改良すると一気に問題が解消され、みるみるうちにビジネスとして成立していったのです。

一般的に研究は社会に応用されるまで5年、10年掛かることも珍しくありませんが、機会さえあればすぐに活かせることを知りました。「こんなにも役に立てるんだ! 」「もっとこういう体験をしていきたい! 」 と衝撃を受け、そのままベンチャー企業に入社しました

森さんからのメッセージ

成果を出すには「目的」を見失わないこと。何事も食わず嫌いをせず経験してみよう

ベンチャー企業に入社してからは、今までの経験を活かして子会社を設立し、AIの技術開発や提供をしていくことに。「どんどんお客さんのサービスに活用してもらうぞ! 」と意気込んでいたものの、現実はそんなに簡単なことではなくて……。意気込みとは裏腹に、当初は成果が出ずもどかしさを感じる日々が続きました。

その理由はお客さんに対してただ一方的に技術の導入方法を伝えていたからでした。

何よりもまずは、目の前のお客さんが技術を導入して叶えたいこと、実現したいことを把握する必要があったのです。これはお客さんによってまったく異なるため、とにかく密にコミュニケーションを取り、目的意識をすり合わせていきました。

お客さんのもとめていることを第一に考えることで、お客さんの目的を叶えるためにAIを最大限活かせるようになりました。そうすることで今までよりも結果が出て、お客さんに喜ばれるようになったのです。

また、大学院までは1人で黙々と研究することが向いていると思っていましたが、皆で力を合わせて働くことの面白さも知りました。自分だけではできることに限りがありますが、チームであれば想像できないくらいの価値発揮につながることも。どちらにも良さがあると思うので、食わず嫌いをせずに経験してみてくださいね。

森さんのキャリアにおけるターニングポイント

「対話的なコミュニケーション」で仕事の質をぐっと高めよう

ベンチャー企業での経験から「AIの技術にはもっと可能性があるのではないか」「いろいろなことに活用していけるのでは」といった思いが強くなりました。コミュニケーション1つで技術の影響力が変わるとも知ったので、多種多様な人が集まるチームを作り、あらゆる課題を解決していきたい。そのような思いから、2018年にプラスゼロを設立しました。

前職で重要性を目の当たりにした「対話的なコミュニケーション」は今でも大切にしています。コンサルタントというよりも、「ディスカッションパートナー」のような立ち位置で、お客さんの課題や目的に合わせてAIを開発しています。一方的に知識や技術を押し売りするようなコンサルティングではなく、お客さんと対話を重ねて解決策を見出すことを意識していますね。

お客さんと対話していくと課題や目的が見えてくるだけでなく、お客さんのことがどんどん分かってくるんですよ。そうすることで、ただ闇雲に解決策を提示するのではなく、より細かく現状に合わせたアプローチを提案できるようになるんです

2つのコミュニケーション

お客さんの細かいニーズをとらえていくことで、よりお客さんの期待に添う提案ができていると実感しています。ビジネスが成功してお客さんに喜んでもらえると本当に嬉しい気持ちになりますし、社員ともよく「喜んでもらえて良かったね」と話しています。

仕事選びのコツは「熱意」と「向学心」。就活の“落とし穴”に気をつけよう

プラスゼロ 代表取締役社長 COO 森 遼太さん

キャリアを振り返ると、そのときどきでやりたいことをやってきたように思います。研究者になるという夢はあったものの、それ以外に「こういうふうになりたい」「こんな仕事がしたい」と緻密に計画を立てることはありませんでした。やっていくなかでやりたいことも変わっていくと思うので、それくらい大まかで良いと思うんです。

変化の多い世の中で具体的に将来について考えることはなかなか難しいので、「今やりたいことをやる」と考えるほうが時代に合っているのではないでしょうか

やりたいことの見つけ方としては、まずは周りに惑わされないこと。人気のある仕事だから、給料が良いからといった基準ではなく、「自分は何がやりたいのか」を考えるようにしましょう。

やりたいことが頭に思い浮かんだら、もう1つ考えてほしいことがあります。それは、熱意をもって学び続けられるかどうか。

就活の落とし穴かもしれませんが、「好き」や「楽しい」だけではなかなか上手くいかないと思っていて。熱意をもって学び続けてこそ、自分のキャリアやスキルが磨かれると考えています

たとえば「ゲームが好きだからゲーム業界に行きたい」と思っても、ゲームをただ楽しむだけでなく、学び続けられるかどうかが重要です。そこをクリアしていたら、学び続けた先で新たにやりたいことができて、さらに道が開かれていく……という充実したキャリアになるのではないでしょうか。

森さんからのメッセージ

キャリアに失敗はない。「やってみたい」に従って気軽に仕事を選ぼう

好奇心旺盛な方は、新しい業界や領域に足を踏み入れてみるのはどうでしょうか。少なくとも数年間はどんどん新しい考え方や技術、人が集まってきて盛り上がると思いますし、いろいろな変化があって面白いと思います。

特に世の中でまだ話題になっていないところがおすすめです。みんながすでに「これが面白い」と言いはじめているところに就職すると、実はちょっと遅かったりするので、まだまだこれからの領域であれば自分の手で世の中の流れを作れたり、業界に対する貢献度が高くなると思います。

最先端の情報にアンテナを張りながら「次に流行るのは何だろう」と予測をして、飛び込んでみるのも面白いかもしれませんね

一方で落ち着いて仕事がしたい方は、すでに成熟している業界や大手企業を選ぶと良いと思います。それぞれの志向に合わせて柔軟に選択してくださいね。

ある程度就職先が定まったら、ぜひその業界や企業で働いている人にどんな人が活躍しやすいのかを聞いてみてください。漠然と成長しようと思うと難しいですが、目指す方向性を決められたら、経験やスキル、考え方を磨いていきやすいからです。

ちなみにAI業界では、AI自体がものすごいスピードで人間の能力に差し迫っていて、知識やスキルの移り変わりが速く、永久的にマラソンを続けなければいけません。どんどん新しいことを吸収していきたい、学び続けることが好きといった知的好奇心の強さはマストですね。

どんな業界や企業もこれから先はどうなるか分かりませんし、転職も当たり前になってきています。だからこそ、「やってみたい」という思いさえあれば、割と気軽に仕事を選んで良いと思います。どんな選択をしても失敗や間違いはありませんし、お先真っ暗になることもありません。あまり気負わずに、今やりたいことを選んでみてくださいね。

森さんが贈るキャリアの指針

取材・執筆:志摩若奈

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