生き抜く力がある人は、社会で長く活躍できる|若手のうちは「信頼貯金」に徹するべき

高砂電気工業 未来創造カンパニー代表取締役社長 平谷 治之さん

Haruyuki Hiratani・広島県出身。高校卒業後は名古屋工業大学に進学し、さまざまなアルバイトを経験する。1991年に大学を卒業し、メニコンの研究職に就職。社内留学制度で東京女子医科大学に留学し、首席で卒業。アメリカのマサチューセッツ工科大学にも留学。その後研究者の道から一念発起し、名古屋商科大学大学院にてビジネススクールに通い、MBA(経営学修士)を取得。ビジネススクールで出会った高砂電気工業の社長の誘いで2018年に入社し、現職

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学生のうちに社会経験を積み、バイタリティを身に付けよう

学校の座学よりも、アルバイト経験で社会人として大切なことをたくさん学ぶことができました

広島県で生まれ育ち、幼少期から独立心が強く、ずっと実家を出たいという思いが強く、昔からやりたいことを実現しないと気が済まなかったので、高校卒業後は名古屋工業大学に進学してひとり暮らしをはじめました。

大学ではアルバイトに力を入れて、家庭講師や塾講師、レンタルビデオ屋、パン工場の夜勤……いろいろ経験しましたね。

責任感をもって働いていたので、周りに手を抜いている人がいたら「ちゃんと仕事しましょうよ」と注意して逆ギレされたことも(笑)。レンタルビデオ屋では店長を任されて、店舗に並べる商品を決めたりアルバイトを採用したり……。当時の時給は500〜600円でしたが、仕送りなしで生活しながら年間300万円くらい貯金しました。

良い大人にも悪い大人にも出会ってもがき苦しみながらも、生きていくための生命力や知恵を身に付けることができ、それは今になっても活きています。

プロのビジネスパーソンは、人間関係を攻略するべき

これは見落としがちなのですが、学生とは大きく異なり、社会では「仕事をするために人間関係を構築する」必要があります。「自分はこの人とかかわりたくない」「人間関係が嫌だから辞めたい」といった個人の要望は二の次にして、組織の一員として苦手な人とも協力しながら仕事をする必要があるのです。

プロのスポーツ選手もそうですよね。選手ではなく監督がレギュラーを決めますし、そのときどきのピンチやチャンス、外部環境に合わせて指示を出された通りに動きます。「今ホームランを打ちたいからバントは嫌だ」と言ってもダメなんです。どんな組織でもまずは自分の役割を全うする人こそ、プロのビジネスパーソンと言えるのではないでしょうか。

社会人ならではの人間関係を築けるように、学生のうちにアルバイトをして、いろいろな人とコミュニケーションを取る練習をしておくと良いですよ

アルバイト先に苦手な人がいたら、あくまでも練習だと割り切って「この人とどうやったら良い関係性を築けるんだろう」と考えてみてください。

次第にこれをしたら上手くいく、上手くいかないというパターンが分かってきて、相手に合わせて柔軟に対応できるようになっていきますよ。

平谷さんからのメッセージ

若手の頃は「信頼貯金」をして、応援される人になろう

今振り返ると社会人1〜2年目の頃はコツコツと「信頼貯金」をしていました。

新卒ではコンタクトレンズ総合メーカーのメニコンの研究職に就職。とにかく先輩の言うことを聞き、みんなが嫌がることも「僕がやります! 」と引き受けていました。すると先輩から「平谷これもやっておいてよ」「今度こういうことをやりたいんだけど」とどんどん頼られるようになったのです。

このように周りから信頼されると、自分が何かをやりたいときに応援してもらえるんです。3年目になって「先輩、この仕事やってみたいです! 」と相談すると快くやらせてくれました。

その後も、私が研究所のトップになれるようにと、研究所長が社費で医学留学をさせてくれたんです。「必ず結果を出してこい」と厳しくも送り出してくれて、期待に応えようと東京女子医学大学を首席で卒業。「所長、首席取りましたよ! 」と報告すると、今度はアメリカのマサチューセッツ工科大学に留学をさせてくれて、研究所のトップになるために必要な知識や技術を身に付ける機会をくれました。

ギブアンドギブの精神で尽くすと、必ずあとから返ってきます。最初から「やりたいことをやらせてほしい」ともとめるのではなく、まずは与えて信頼してもらってから自己主張するようにしましょう。

平谷さん流 充実したキャリアを歩むコツ

研究者からビジネスの道へ。13年間のオファーを経て、高砂電気工業にジョイン

研究者の道を進んでいましたが、アメリカ留学から帰国してキャリアチェンジを決意。というのも、留学中に世界トップクラスの研究グループで経験をして上には上がいることを痛感しました。研究者だけの道を進んでいても世界で勝負するのは難しいと思い、ビジネスを学ぼうと思ったのです

一念発起してビジネススクールに通いMBA(経営学修士)を取得。社内の役員に「経営企画をやってみたいです」と直談判しました。

直談判のかいもあり、全社の中長期戦略やマーケティング、企業の買収など幅広く担当。そのうち新規事業をやってみたくなり、社長に提案して最初は反対されましたが、粘り勝ちしてやらせてもらいました(笑)。

そして実は、ビジネススクールに通っていた頃に高砂電気工業の社長に出会い、面白いと思われたのか「うちで働かないか」と誘われていました。

前職でやりたいことがあったのでお断りしましたが、それでも定期的に食事に行っていて、なんと13年間も誘われ続けていたんです(笑)。そして50歳になり、前職での仕事をやり切ったと感じて入社することに。現在は「主体性をもった社員を育てること」を目指して人材育成に取り組んでいます。

私は今までもこれからも「プロフェッショナルなサラリーマンである」という自負があります。今後も独立は考えていなくて、与えられたポジションでパフォーマンスを出すことに全力を注いでいきます。

自分軸をもっていれば、力強く前進して、周りを巻き込んでいくことができます。皆さんも自分の思いを信じて、キャリアを作り上げてくださいね。

平谷さんのキャリアにおけるターニングポイント

「周りとの差別化」と「自信のある振る舞い」で選ばれる人になろう

就活でも社会でも大切なことは、周りとの差別化です。芸能界のアイドルもお笑い芸人も、キャラが被ると売れないとよく言いますよね。これは就活や社会でも言えることで、周りと同じだと先輩や社長から選ばれにくいのです。特に大企業には数百人、数千人と社員がいるので、活躍するためには「周りとは違う何か」は必ず必要です。

私の場合は、前職で「研究も営業もできる人材」のポジションを取りました。社内に営業だけ、研究だけの人はたくさんいましたが、どちらもできる人はなかなかいなくて。特に営業と研究は普段から距離があることが多かったので、双方の橋渡しができるという意味でも重宝されました。このように周りの状況を見て、目立つキャラクターを作っていくんです。

また「自信満々に振る舞うこと」も大切です。私も本当は自信なんてありませんが、それでも自信があるように見せてきました。そうすることで「この人なら諦めずにやり遂げるはず」「失敗してもまた前向きに進んで行くだろう」といった信頼にもつながります。

「飾らない自分」とマッチングする企業を選ぼう

就活のポイントは、自分を飾らずに臨むこと。恋愛も同じですが、最初にがんばって格好付けても、あとから苦しくなってしまいます。大手企業でどれだけ認められる人でも、スタートアップではまったく認められないこともありますし、その逆も然りです。「素の自分とどれだけマッチングするか」を重視しましょう。

企業とのマッチング率を高めるために、できるだけインターンシップに参加したり、そこで働いている人に会ってみたりと、実際の雰囲気を肌で感じてみると良いですよ。

そのうえで、どれだけ情報を集めても多少のギャップはあることも頭に入れておいてください。期待をしてしまうとギャップを感じやすいので「イメージと現実は違うものだ」と割り切っておくほうがおすすめです。

また、入社後も「自分を変えない強さ」をもち続けてほしいです。「周りに合わせなければ」と思うとストレスになって仕事を続けることが難しくなります。もしどうしても合わないと思ったら、部署異動や転職をして環境を変えるのも良いと思います。何よりも自分軸をもって選択を重ねてみてくださいね。

「創造力」と「バイタリティ」があればグローバル時代も活躍できる

これからの時代は、ゼロから新しいアイデアや企画を生み出せる人は価値が高まっていきます。自分の脳だけで考えられることは限られるので、社内外問わずいろいろな人とかかわり、新しい情報を得ながらクリエイトしていくと良いですよ。

特に自分とまったく違う人とのコミュニケーションを大切にしましょう。性別や年齢、国籍、バックグラウンドが違う人とかかわると刺激になり、新たな発想が生まれやすいです。

また、どんどんグローバル化が進んでいるので、これからは日本人だけでなく外国人も競争相手になります。彼らのバイタリティはすごいですよ。「将来社長になりたい」「自分で事業をやりたい」と前向きなエネルギーに満ち溢れているので、当社でも積極的に外国人採用をしています。

自分自身の内側から湧き出るような想像力とバイタリティを意識して、就活やキャリアにチャレンジしていってくださいね

平谷さんが贈るキャリアの指針

取材・執筆:志摩若奈

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