社会人には不正解なんてない!選んだ選択肢を正解にするために、課題解決を続けよう

47(よんなな)ホールディングス 代表取締役 阿久根 聡さん

47(よんなな)ホールディングス 代表取締役 阿久根 聡さん

Satoru Akune・2000年九州大学経済学部卒業。富士銀行(現:みずほ銀行)を経て、2004年、友人が起業したエス・エム・エスに入社。CFOとして管理部門全般に携わる。2013年47に入社し、2019年同社代表取締役に就任

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どんな仕事も社会貢献につながらないものはない

私が就職活動をしたのは、完全に就職氷河期の時代。「さぞや大変だったでしょう」と言われたりするんですが、実は当時その大変さにギリギリまで気づいていなかったんですよ(笑)。

アルバイトをしていても、自分の周りで不景気を感じることも少なく、世の中の状況を全く理解していませんでした。就職活動自体も出遅れて、周りがスーツを着だしたので、なんのコスプレかと思っていたほどです(笑)。ようやく重い腰を上げて会社説明会などに足を運び始めると、今度は「自分は会社員になれるのだろうか」と不安になりました。

正直、人の言うことを聞くのが苦手で、組織の中でちゃんと動けるかわからない。就職できたとしても、リストラ候補になるのではないかと、怯えてしまいましたね……。リストラの嵐が吹き荒れている、そんな時代でしたから。

だったらこのまま起業しようかとも考えましたが、世の中のことを知ってからだと思い直しました。結局1社目は、将来起業をする可能性も考えて、お金について詳しくなっても損はないはずだと銀行に就職しました。

その後は、友人の誘いに応じて医療・介護系IT企業に参画したり、不動産の分野で経営者になったり。業種・業界にこだわらずにキャリアを重ねてきました。

さまざまな業界を歩んで今思うのは、就職活動に際して、業種を絞る必要はないということです。よく若手社員から「社会貢献ができる業界・企業に入りたい」と言う声も聞きますが、どんな業種も仕事も、社会貢献でないものなんて一つもないと思うんです。小さな仕事が一つひとつ巡って、社会を動かしています。そのことを忘れないでほしいですね。

自分が輝ける場所を探そう

自分軸と直感を大切に

では、業界ではなく何を基準に就活を進めていけば良いのか。ぜひ自分がモチベーションを保てるものを思い返してください

「人のためになら頑張れる」なら、自分が接する先輩や上司、お客さんのために頑張れそうか。「楽しければやれる」なら、業務や会社の雰囲気をチェック。地元愛が強いなら、勤務地や転勤の有無が重要でしょう。自分をモチベートしてくれるものがあるかを見極めましょう。

自分のモチベーションに理由なんて必要ありません。説明できなくて良いので、直感を信じてみましょう。そして自分の軸をしっかりと持ちましょう。

さまざまなアドバイスを受けて参考にするとしても、最後に決めるのは自分。そして、一押ししてくれるのは本能的な直感だと思います。「これは良いな」という根拠のない感覚も大切にしてほしいです。

阿久根さんからのメッセージ

課題こそチャンス! 常に向き合うことで成長できる

47(よんなな)ホールディングス 代表取締役 阿久根 聡さん

銀行員として働いた後、友人に誘われて参画したのは、医療・介護の分野。そして現在経営するのは、オフィス仲介や内装・家具といったワークプレイス分野。どちらも昔から存在し、今後もあり続ける業界です。市場規模は非常に大きく、大手企業が高いシェアを持って牽引しています。

しかし、そうした環境下でも業界の中で課題がなくなることはありません。全く新しい市場を切り開くよりも、今までにある市場の中で、少しずつ改善し変えていけることを追求する方が、ビジネスとして成立しやすいと思っています。

小回りのきくスタートアップだからできることもあるはずだし、よりスピーディーに解決策を提示できる場面もあるはず。違った視点から解決策を提示することも夢ではありません。

たとえば現在経営している47ホールディングスでは、ワークスペースの提案をしています。コロナ禍前は、「ワークスペース=オフィス」といっても良いぐらいでしたが、現在ではリモートワークが一般化し、働く場所・環境はもっと幅広い意味合いを含んだものになりました。

オフィスではないワークプレイスをどう設けるのか、家で働くとしたらどんな課題があるのか、場所の課題、設備の課題、環境の課題、利便性、快適さ……。こうした課題が生まれ続ける限り、ビジネスの可能性が生まれます。

市場の中で存在感を示す方法

キャリアにおいても、課題を乗り越えること自体が道筋になります。課題はなくなることはなく、常に向き合い乗り越えていくしかありません。しかし、その試行錯誤こそが大切です。課題があるからこそ、成長できる。課題に向き合うことが、ビジネスになる。課題こそチャンス! という気持ちで進んでほしいですね。

社会人には正解がない代わりに、不正解もない

エス・エム・エスに入社したばかりのときは、細かな会計処理から組織づくりまで、全部自分でやらなければならず、本当に大変でした。でも何もかも初めてのことばかりで、かえってワクワクしていましたね。しんどさも面白いと感じましたし、一銀行員としては得られなかった大きな手応えを感じることができました。

従業員数名から数百名へと、ものすごいスピードで成長する会社の中で、自分が貢献できているという実感もありました。しかし、マザーズ(現:グロース)にも上場を果たしたあとで、「会社のこれ以上の成長や展開のためには、自分がいない方が良いだろう」と感じたんです。

自分がボトルネックになっている、ここから先はもっと適任者がいるのではという気持ちで会社を去り、転職の道を選びました。会社が大好きだったからこそ、“今の会社に必要なのは自分ではない”と判断したのです

47ホールディングスでも、社長になって悩むことが多かったです。自分がいざトップに立ってみると、「本当に自分が社長で良いのか」と思ってしまったんですよ。おそらく自分の中に理想の社長像があったのだと思います。同時に能力不足も感じていました。だから最初は理想の社長像に必死に“寄せて”いたのですが、当然無理が出てきました。

でもそのとき気づいたんです。能力が足りないなら、能力のある人にやってもらえば良い。自分は自分らしくあることで、会社を率いていこうと。自分が向き合う課題は、自分がどうやって能力を上げるかではなく、どうやって能力のある人を生かすか、だと。観点を変え、問の立て方を変えたことで、社長としての歩みを進めることができました。

こんなふうに自分の歩んできたキャリアを振り返ると、決してわかりやすい正解ばかりではなかったと思います。でも、結果的には正解にできていると感じています。

学校の授業には明確に○と×がありますが、社会人にはありません。正解のキャリアを選ぶのではなく、選んだキャリアを正解にするんです。正解を探そうとせず、自分の選択に自信を持って正解にする気持ちで歩んでいきましょう。

すべての選択肢を正解にするために

落ち込む時間を短くして、できるだけ未来を向こう

自分のキャリアを選び続け、課題に挑み続けるのは、ハードな日々でもあります。当然落ち込んでしまうこともあるでしょう。一生懸命に課題に向き合う限り、困難にぶつからないわけにはいきません。でも、落ち込む時間を短くすることはできるはず。意識的に落ち込む時間に制限をかけてみるのはどうでしょうか。

落ち込むだけ落ち込んだら、次は未来のことを考えます。ネガティブな状態で無理にポジティブな状態へ持っていくのは難しいので、成功した未来でなくても良いんです。今より先の変化した状態を考えれば、少し光が見えてきませんか。ちょっとした改善、少しの進歩を目指せば、きっと困難な状況から抜け出すヒントが得られるはずです。

100人いれば100通りの答えがあるのがキャリア。気楽に直感にしたがって選択し、その選択を正解にするために、ポジティブに未来へ進んでいってほしいですね。

阿久根さんが贈るキャリア指針

取材・執筆:鈴木満優子

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