「人としての在り方」で仕事の結果も楽しさも変わる! 成長したい人はスタートアップで重要な力を身に付けよう

Lumii(ルミー) 代表取締役社長 宮原 駿さん

Shun Miyahara・大学卒業後、動画マーケティング会社のプルークスに入社。メンバー3人の創業期を経験し、プレイヤーとして活躍後、最年少でマネージャーへ就任。大手企業やメガベンチャーを中心に多数の動画マーケティングプロデュースを務める。2018年にEXIDEA(エクシィディア)に入社。動画制作・マーケティングサービスの立ち上げに参画後、クライアントのグロースハックに携わる。外部CMOを兼任した後、YouTube事業責任者に就任。“クリエイターが活躍できる舞台を増やす"をパーパスに掲げ、Lumii(ルミー)を創業し、現職

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スタートアップは「基礎力」を身に付けられる。「仕事のスピード」と「量をこなすこと」を意識しよう

大学時代から「就職=ゴール」だとは考えていなくて、とにかく自分が成長できる環境で働きたいと思っていました。

サイバーエージェントで長期インターンに参加した時、周りの皆さんのレベルの高さを痛感し「ここに入社しても活躍できる気がしない……」と自信を失ってしまったんです。まだまだ実力を付けなければと、スタートアップに入社して修行することに。そこで見つけたのが、動画マーケティング会社のプルークスです。

当時は会社が立ち上げられたばかりで、メンバーは3人ほどの創業期。インターンを経て入社しましたが、仕事を教えてもらえる環境ではなく、ほとんど自分で考えて行動していました。とても厳しい環境のなかで必死に努力をしましたが、なかなか成果が出ずに悔しい思いをしましたね。でもその分、社会人の基礎となるような力が身に付きました。そのときに学んだのは、まずは「仕事のスピード」と「量をこなすこと」が何よりも大切であること

たとえ何日も考え込んだとしても、そこで導き出した答えは先輩たちにはおよびませんよね。新人にもとめられるのは、思考力よりも「素早く行動できるのか」「どれくらい量をこなせるのか」。それを意識することができたら、とても重宝されて活躍の場が広がったり、チャンスをもらえたりしますよ。

あとは「具体的な課題」を決めることも大切にしてほしいです。最初はどうしても「売上を上げるためには」などとざっくり考えてしまいがちですが、それでは答えも抽象的になってしまいます。

少なくとも「売上を上げるための営業手法とは」くらいまで落とし込んでおきましょう。具体的な問いにすることで、より解像度の高い答えが出てきます。やるべきことも分かるので、すぐに行動に移しやすくなり一石二鳥です。

最年少でマネージャーに就任。その秘訣は周りに頼ること

プルークスでは最年少でマネージャーに就任しました。それは私だけの力を評価されたのではなく、とにかく周りの力を借りて「総合力」を発揮できたからだと思います。

特にクリエイティブな業界では「総合力」をもとめられる場面が多いです。

クライアントの動画制作をする時、度々コンペに参加して選ばれる立場になります。そこではたとえば「価格が安い」だけではなく、「価格が安い・提案が良い・担当者とフィーリングが合う」というふうに、いろいろな強みがあってこそ選ばれます。どんどん周りの力を借りたほうが、総合力を養うことができ、仕事で結果を出せるのです。

実際に私は「この能力が自分に足りないな」と思ったら、遠慮せずに上司にも頼り、クリエイターにも頭を下げてお願いしていました。皆さんもまずは自分のもっている強みを把握して、足りない部分を補うために周りの人に協力してもらってくださいね

「イシュー」からはじめると、最速で答えに辿り着く

2018年、プルークスでお世話になっていた師匠についていき、EXIDEA(エクシィディア)に入社しました。最初のミッションは、動画・映像制作のサービスを立ち上げること。今まではプレイヤーとして活動していたので、イチから全部作り上げることは新たな挑戦でもありました。

そのとき意識していたのは、師匠の教えである「イシュー(課題)からはじめること」。何も考えずにやみくもに動き出すのではなく、課題を明確にして、ある程度進むべき方向性ややり方を決めてからスタートする方法です。

たとえば「東京から北海道に行きたい」と思っている場合、何も考えずに動くともしかしたら南に進んでしまうかもしれません。そこでまず「北に行くべきか、南に行くべきか」という重要なイシューを見出すことができたら「北に行くことは確かである」という重要な答えが分かるのです。

そこまできたら、過去の事例や周りの人の意見を参考にしながら「どうやら飛行機や新幹線を使って辿り着けるらしい」「大体これくらい時間が掛かるようだ」などと、さらに必要な情報を導き出すことができます。

これは仕事でも同じで、まずは課題をとらえておおよその方向性ややり方を決めると、最短ルートで答えに辿り着くことができます。これはシンプルですがとても役立つのでぜひ覚えておいてくださいね。

宮原さん流仕事の進め方

新しい挑戦は成長の機会になる! 小さな成功体験でモチベーションを高めよう

サービスを立ち上げた後、今までやったことのない仕事をすることになり、それは自分にとってさらに成長する機会になりました。

クライアントのグロースハック(商品やサービスを成長させるためにあらゆる施策を打つ手法)担当になったんです。クライアントの売上を伸ばすために経営面を含めてあらゆる施策を進めていきました。さまざまな人をまとめなければいけなかったので、最初はとても苦戦しましたね……。

今までの動画制作では、かかわるのはクライアントと制作チームのみだったので、比較的スムーズに進めることができました。しかし経営の領域ではクライアントのなかでも担当者の方、マネージャー、メンバー、外部のパートナーなどたくさんの人とかかわります。一人ひとりの感情や性格まで影響してくるので、なかなかやるべきことをやってもらえないことも。

そこで、みんなのモチベーションを高めるために、まずは小さくとも成功体験を積んでもらうことにしました。私たちもクライアントも「成果を上げたい」という思いは同じなので、まずは少しでも成果を上げることで、クライアントに「こうやって行動したら本当に成果が上がるんだ」とイメージをもってもらったのです。それによって少しずつ信頼を得ることができ、積極的に協力してもらえるようになりました。

宮原さんからのメッセージ

「クリエイターがもっと輝ける社会にしたい」。“誰かのために”という想いが原動力となり、起業へ

さまざまなクリエイターとかかわるなかで、クリエイターの社会に対する影響力や尊さをひしひしと感じていました。彼らは純粋な思いをもって、とにかく良いものをつくるために本気で作品づくりをしています。

そして、クリエイターは私たちにたくさんの幸せを届けてくれています。映画を観て人生が変わったという声はよく聞きますし、ドラマを楽しみに仕事を頑張れるとか、バラエティ番組で笑って嫌なことを忘れられるとか、日常的にも作品からパワーをもらっていますよね。それってとてもすごいことだと思うんです。

それにもかかわらず、クリエイターの働く環境にはたくさんの課題があります。仕方のないことかもしれませんが、クライアントは作品づくりを成功させたいからこそ、実績のあるベテランのクリエイターに依頼することが多く、若手にチャンスが巡ってきにくいのです。

その分若手にはベテランが断ったもの、たとえば予算が少ない、納期がタイトなど厳しい条件の案件が回ってくる。その結果思い通りの作品づくりができなかったり、無理をしなければならなくなったりして、クリエイターの道を諦めてしまう人もいます。

この状況を何とかできないものか。そう思い立ち、“クリエイターが活躍できる舞台を増やす”をパーパスに掲げ、Lumii(ルミー)を創業しました

クリエイターがもっと輝くための仕組みをつくれたらと「クライアントと直接つながれるプラットフォーム」を提供しています。直接マッチングすることで、制作会社が間に入らなくて済むので、報酬の多くをクリエイターが受け取れるようになります。今までよりも余裕をもって作品づくりができるのです。

宮原さんのキャリアにおけるターニングポイント

自分次第で気持ちよく働ける。まずは素敵な人が多い企業を選ぼう

就活では「将来どうなっていたいか」を考えるようにしましょう。できるだけ長期的に考えるほうが良いと思いますが、働いてみないことにはイメージしづらいと思うので、まずは3カ月、1年先くらいでも大丈夫です。「今よりもコミュニケーション能力を身に付けたい」「みんなで協力して働けるようになりたい」という基本的なことでも構いません。それを叶えられそうな業界や職種を選んでみてはいかがでしょうか。

もしそこで「とにかく成長したい! 」という思いが浮かんできた人は、いろいろなチャンスを与えられやすいスタートアップを選びましょう。

さらに「自分で答えを見つけ出す仕事」がおすすめです。動画制作もそうですが、決まりきった答えはなく「こうしたら確実なのではないか」「これが正解に近いのでは」と試行錯誤しながらつくり上げていきます。その過程で培われる「答えを見つけ出す能力」はどこでも通用します。今の時代、何度か転職する可能性が高いと思うので、いずれまったく知らない業界や企業に行っても必ず役に立つでしょう。

宮原さんからのメッセージ

あとは、自分が素敵だなと思う人が多い企業がおすすめです。今までの経験上、素敵な人には素敵な人、素敵な仕事が集まります。さらに空気感も良く、素晴らしいアイデアが浮かびやすいです。

日常的な話でたとえると、コンビニの店員さんが無愛想だったら、自分もつられて無愛想になることはありませんか。それは自分だけではないはずなので、店員さんからすると無愛想なお客さんばかり来ていることになるんです。

一方で、コンビニの店員さんが笑顔で接客してくれたら、自分もいつもより笑顔になっているのではないでしょうか。店員さんの在り方によってお客さんの良い面を引き出すのか、悪い面を引き出すのかが変わるのです。

これは会社でも同じで、自分次第でお客さんの質も変わり、仕事の良し悪しにも影響します。まずは素敵な人が多い企業を選び、そこで前向きなエネルギーを感じながら、自分自身も「素敵な自分でいよう」と心掛けて、良い仕事にしていくのが良いと思います。

「人としての在り方」が重要になる時代。失敗は受け入れて将来の糧にしよう

これからの社会で大切なのは「人として正しく在ること」です

現代はあらゆるテクノロジーが発展していて、どんな問いに対しても凄まじいスピードで答えられるようになってきていますよね。さらに進むと、人間が失敗することさえほとんどなくなり、人間に生産性や確実性はあまり問われなくなると思うんです。そうなったとき「この人と一緒に働きたいのか」「この人を応援したいか」といった人間力がよりもとめられるのではないでしょうか。

これは私もずっと大切にしていて、周りからもとめられる人間で在るために、毎朝のルーティンで「今日意識すること」を書き出しています。若手の頃は「スピーディーに対応する」「常にご機嫌でいる」などとシンプルなことにしていました。皆さんもぜひ自分をマネジメントするつもりで取り組んでみてくださいね。

社会人になったら、日々いろいろなことがあると思いますが、失敗したときはきちんと向き合うことがとても大切です。

私も若手の頃を振り返ると、失敗したときに人のせいにして逃げてしまったこと、結構あったんですよね。「これは自分のミスではなくて、お客さんがこうしたからだ」と。そうやって怒ったほうが楽だとは思うんです。

でも、それをしても本当に何も良いことがありません。どんどん自分の考え方がひねくれていきますし、成長することもできず、周りも嫌な気持ちになってしまいます。最初は少しつらいと思いますが、まずはきちんと受け入れて、何がダメだったのかを冷静に反省し、未来の自分につなげてもらえたらと思います

宮原さんの贈るキャリアの指針

取材・執筆:志摩若奈

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