信用がキャリアをつくる|「与えられる」だけでなく「与える」意識を持とう

ニュートラルワークス 代表取締役 三木 五月さん

ニュートラルワークス 代表取締役 三木 五月さん

Satsuki Miki・19歳でタイやカンボジアに旅をし、それを機に年間の半分をバックパッカーというスタイルで多くの国へ出向く。インドでの原体験を経て価値観が大きく変化し、22歳でアメリカのカリフォルニア州へ2年半留学。帰国後はエイ出版社を経て文藝春秋に入社し、総合スポーツ雑誌「Sports Graphic Number(スポーツ・グラフィック ナンバー)」の公式サイト「Number Web(ナンバー ウェブ)」にてWebデザイナーとして4年間勤める。自分の人生にオーナーシップを持ちたいと感じ、2016年にニュートラルワークスを立ち上げ、以降現職

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若い頃の経験は財産になる。未知の体験で生き方をアップデートしよう

今までの人生を振り返ると、レールに従う人生ではなく「自分の道」を生きてきたように思います。

19歳でタイやカンボジアに旅をして以来、年間の半分はバックパッカー、もう半分は日本で過ごすという生き方をスタート。数多くの国に旅をしながら「これからどのように生きていこう」と考えていたんです。

特に印象的だったのは、インドのカルチャーです。あまりインフラが整っていないので、水を飲んでお腹を壊すのは日常茶飯事。今でもカースト制度の風潮は残っており、理不尽な生活を強いられている人もいます。列車の上には何百人もの人が乗っていて、定刻から10時間遅れも当たり前……。

今までに経験したことのないような文化に触れ、価値観が変化していきました。若いうちに日本では体験できない経験ができて良かったと思うので、皆さんにも一度は日本を出てみることをおすすめします。できればたくさんの国に行き、いろいろな価値観に触れ、「自分はどう生きたいのか」「どのような仕事がしたいのか」を考えてみてくださいね。

三木さんからのメッセージ

「後悔したくない」気持ちが背中を押した。失敗を恐れずチャレンジしよう

その後22歳のときに海外留学のチャンスに恵まれ、アメリカで2年半を過ごしました。

帰国後は日本でアルバイトをしていましたが、「そろそろ定職を探さなければ」と考えるように。将来について悩んでいたときに兄から「Webデザイナーをやってみたら? 」と言われたことをきっかけに、Webデザイナーの道に進むことになりました。

少しずつWeb系の勉強を進め、その後エイ出版社に入社、Web事業部で1年ほど勤務しました。退職後は文藝春秋に移り、総合スポーツ雑誌「Sports Graphic Number」の公式サイト「Number Web」にて、Webデザイナーを担当しました。

約5年間会社員として働いている中で、「ずっと会社員として働いていくこと」に疑問が湧いてきました。満員電車に乗っているときに周りの大人たちが疲れ果てているように見え、「自分はこうなりたくない」と思ったのです。自分の将来を考えることを機に起業に挑戦することを考えるようになりました。

しかし当時すでに結婚していたこともあり、いきなり起業するのはリスクがあると思ったのでまずは副業からはじめることに。仕事が終わってから1日に3件ほど営業する生活を3年間続けると、副収入(本業以外の収入)は月に50〜70万くらいにまでなりました。

ある程度収入を得られるようになったので、満を持して2016年にニュートラルワークスを起業。湘南を拠点とし、現在までに3,000社以上のデジタルマーケティングをサポートしてきました。

起業をするには多少勇気が必要でしたが、それ以上に「挑戦せずに後悔したくない」という思いが強かったのでチャレンジを決意できました。また、失敗するなら早めのほうが良いと考えていたことも、一歩踏み出せた理由だと思います。

若手のうちは、どんどんチャレンジして失敗したほうが良いです。失敗を通じて学ぶことも多くありますし、失敗しても大抵のことでは死にはしません。私も起業にチャレンジしたことで、いろいろな失敗を経験し、だからこそ成長することができました。学生の皆さんもある程度のリスク管理を意識しながらも、背水の陣でどんどん行動してみてはいかがでしょうか。個人的には起業する人が増えたら、もっと楽しい世の中になるのではないかとも思っています。

三木さんのキャリアの変遷

「信用」がご縁をつくる。まずは即レスでスピードを意識しよう

起業当時から今まで大切にしているのが「信用」であり、それはどのような仕事においてももっとも重要だと考えています。特に起業したてのころは大手企業に勤めていた経験や、密にコミュニケーションを取ることで着実に信用を獲得したことが事業を軌道に乗せられた要因の1つだと考えています。

信頼を得るために誰でもすぐにできるのは、即レスをすること。今主流のチャットツールはメールよりも手軽な分、スピード感をもとめられることが多いでしょう。そのためレスが遅い人がいると「早く返信してほしい」と思われますし、そこで仕事が進まなくなってしまいます。

即レスはお客様とのやり取りでも同じように重要です。たとえば他社よりも1分1秒でも返信スピードが遅れると、受注の機会を逃してしまうかもしれません。返信の内容も、何かを依頼されたとしたら「対応します」だけではなく、「いつまでに対応するのか」まで伝え、自分にも相手にも約束をするように心掛けましょう。

特に新卒の頃は経験やスキルがないのは当たり前なので、その分すぐに返信する、依頼に対してすぐに対応するなど、スピードを意識すると良いですよ。

周りから信用されるようになると、普段は会えないような尊敬できる方を紹介される機会にも恵まれます。紹介者の方は自分を信用してその方を紹介してくれているので、このようなつながり方の場合、良い関係性を築きやすいです。

そして、実際に尊敬できる方とお会いしたときは、その方の所作や会話、考え方など、あらゆる角度から吸収するようにしましょう。私もいろいろな方にお会いしてきて、「どうやったらここまで成功できるのだろう」とアンテナを張り、その方の生き様からたくさんのことを学ばせてもらいました。

成功者の方は必ず苦労していますし、成功するコツを知っているもの。しかしそれは世の中の成功本やメディアではわからないことも多く、直接会うからこそリアルな体験談やヒントを得ることができ、自分の成長につなげることができます。

加えて重要なのは「自分が得る」という視点だけではなく、「相手に何を与えられるか」を考えて行動することです。普段の人付き合いでもそうですし、自分とは天と地の差のあるような方にお会いしたときは特に「どうしたら楽しんでもらえるか」「どのようにしたら好かれるのか」と常に気配りを忘れないようにしています。

ぜひ皆さんもビジネスで人とかかわるときには、「自分は相手に何ができるのか? 」という視点を忘れず、ご縁を大切にしてくださいね

三木さんが考える信用の仕組み

キャリアに正解はない。「どう生きたいか」を見つめ柔軟に考えよう

ニュートラルワークス 代表取締役 三木 五月さん

就活では、まずは「どんな生き方をしたいのか」を見つめてみましょう。私は海外経験を通して、自分の生き方が確立されていったように思います。きっかけは人それぞれですが、今はいろいろな価値観が認められているので、柔軟に未来のビジョンを描きやすいのではないでしょうか。副業や起業、フリーランスなどあらゆる選択肢があると思うので、自身の可能性を模索しながら、生き方を考えてみてほしいです

そのうえで、ファーストキャリアは大手企業がおすすめです。私も大手企業での勤務経験を経て独立をし、そこで「日本では企業ブランドによって個人の信頼度が変わる」ことを実感しました。そのため、まずは大手企業でしっかり成果を出し、いつか転職するときにそこでの経験やキャリアを存分にアピールすると良いのではないでしょうか。

大手企業ならではの魅力もたくさんありますよ。会社の仕組みが整っているので、その成り立ちを肌で感じながら知ることができます。最初は与えられた仕事をやることがメインになりますが、意欲次第では会社のお金を使ってチャレンジすることもできるようになります。ほとんどリスクを負わず、失敗しながら成長できるというのは恵まれた環境ではないでしょうか。

もちろん私みたいに「型にはまりたくない」という方にはベンチャー企業もおすすめです。ベンチャー企業では任される業務の幅が広かったり、スピード感をもって成長することができるので、早くからいろいろ経験したい人には合っているでしょう。

どのようなキャリアを選んでも、一度は本気になって頑張ることが大切です。いつまでも成長意欲は持っておいてほしいですね。

「ストレス」は「幸せ」に変えられる。勇気をもって行動し続けよう

これからの時代に活躍できる人は、失敗を恐れずにどんどん行動できる人です。たとえば筋トレもそうですが、最初は苦しくて大変でも、ある程度すると慣れてくるもの。だからこそ、まずは最初の一歩を大きく踏み出せることが重要です。

私自身今でも怖いことや不安なことはありますが、その気落ちに蓋をしても残り続けるだけ。恐れや不安を減らすためにも、勇気を出して行動し続けるしかないのです。行動すればするほど、必ず何かしらの恩恵が跳ね返ってくるので、ぜひ行動できる人になってほしいですね。

具体的な行動としておすすめなのは、休日こそ勉強をすることです。世の中の95%の人がやらないからこそ、休日に自己投資の時間を作ることで、周りよりも成長することができます。私は学生時代にずっと遊んでいたからこそ、社会に出てからあらゆる時間を自己投資に充て、そのおかげでスピード感をもって成長することができました。

そして、自分が幸せを感じることも大切です。まずは自分が幸せでないと、周りを幸せにすることはできません。多くの社会人は「ストレスがある」と言いますが、それも捉え方次第で、自分を幸せにするものに変わります。というのも、ストレスに感じるようなことがあるからこそ、それを乗り越えるために頑張ろうと思えたり、自分の本心を知ったりできるからです。ストレスを感じたときには「自分を知る」もしくは「行動を起こす」チャンスとして、自身の糧にしてくださいね

最後に改めて伝えたいのは、どのような会社でも、どのような仕事でも、「信用」が最も大切だということ。仕事やキャリアに迷いが生まれたときは「信用を得るためにはどうすれば良いのか」を判断軸にしてみてください。それを考えながら行動し続けることで、良い方向に進んでいくはずです。

三木さんが贈るキャリアの指針

取材・執筆:志摩若奈

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