自分の軸を見失うことなく歩め|運も人も自分で手繰り寄せよう

ジェイック 代表取締役 佐藤剛志さん

Takeshi Sato ・1986年、大学を卒業し大手経営コンサルティング会社に入社。札幌営業所長等を経て経営コンサルタントとして独立。事業は順調だったが、より大きな挑戦を考える中で元上司に誘われて1997年にジェイック取締役に就任。2000年には代表取締役に就任し、企業向けの教育研修事業や人材紹介事業分野の開拓、強化に努める。2019年10月に東証マザーズ上場

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就活に失敗はない。本気でやり続けよう

就活について言えるのは、本気になってやり続けることが重要だということです。就職率が10%、20%の世の中ならいざ知らず、就職率が9割の日本の現状で自ら諦めない限り就活に失敗することは基本的にありません。

ところが何度か企業にトライする中で、思ったように結果が出ないことが続くと、心が折れたり自信を失ったりして、就活が辛くなり、嫌になって諦めてしまう。それを失敗と勘違いしてしまうのではないでしょうか。

実際にはいくらでも打開策は見付けられるはずだし、採用を望む企業もあるはずです。失敗と決めつけてしまわず、本気でやり続ければ必ず道は拓けます

佐藤さんが考える就活を成功させる3つの考え方

もちろん「」が就活や人生を大きく左右することはあります。しかし運は手繰り寄せるもの。本気になって、直面する事態に立ち向かい続けていれば、チャンスとの出会いが訪れるものです。

運もそうですし人との「」も同様に自ら手繰り寄せるものだと思います。

就職に関するアドバイスを一つ挙げるなら「自分の思いに基づいて決断せよ」です。世間体や親の期待、友人との比較に基づく優越感や劣等感といった本質的ではない基準に左右されないこと。唯我独尊であって構わないのです。

自分が思い描くところを純粋に目指せばいい。そう思います。 

佐藤さんからのアドバイス

最近は減ってきた考え方だと思いますが、とにかく大手企業に就職したいという発想はナンセンスでしょう。

大手企業が成長し続ければ、それはそれで良い選択だったと言えるのかもしれませんが、企業とは本来どんどん変わっていくもの。

ですから未来がどうなるかは分からないのが現実です。だからこそ選択の軸は企業側ではなく自分の側に持っておくべきです。私自身はその軸を持てたことが現在のキャリアに繋がっていると感じています。 

佐藤さんの考える就活の進め方

経営の力を得るために選んだ就職先

私にとっての軸は、経営者としての力を付けることでした。

実家が都内で衣料品店を営んでおり、兄と共に実家を継いで家業の衣料品店を大きくするのが目標でした。そのためには経営を知らねばならないし、経営の力を蓄えなくてはならなかったのです。

そこで大学卒業時に就活の目標としたのは百貨店でした。衣料品販売ビジネスを実践的に学べると考えたからです。実際に大手百貨店への就職がほぼ決まっていました。

ところがある時、コンサルティング会社の求人募集のキャッチコピーに目が留まりました。そこには「事業家になるか、サラリーマンになるか、いま選択の時」とあり、興味をそそられました。 

経営コンサルティングという仕事があることすら知らない学生でしたが、胸にグッと来るものがあり、興味半分で会社説明会に行きました。

ところが軽い気持ちで行った説明会で、いきなり小難しいテストをやらされ、少々腹立たしくもあり頭も疲れたので、帰りがけに近くの喫茶店でタバコをふかして休んでいました。 

そこへ偶然、コンサルティング会社の専務がやってきて私に気付き「佐藤君だったね」と声を掛けてくれました。

それで言葉を交わし、第一希望の就職先についての話になり、家業を継いで経営者になる前提で百貨店への就職を考えていると打ち明けました

すると「百貨店に就職しても10年間は売り子。マネジメントにかかわれるのは20年後だよ」と助言され、続けて「うちの会社に来ればコンサルティングの仕事を通じて経営の疑似体験ができるのに」と誘われた瞬間に入社を決めました。 

しかし、周りは全員が大反対。当時はコンサルティングという仕事は世間的にもあまり知られておらず、逆に百貨店は人気の就職先でしたし手堅い業種だと考えられていましたから無理もありません。

親も親戚も大学のゼミの教授も反対しましたが、経営の力を鍛えるという自分の軸を優先しました

ただし、あくまでも自分の目的は家業を継ぐことにありましたから、当初からコンサルティング会社は10年間で辞めると公言し、実際にその通りにしました。

大失敗の結果が呼び込んだ新たな運命

経営コンサルティングの仕事を始めて5年ほどたつと札幌営業所を任され4年間ほど所長を務めました。ここで実績を上げて自分自身も自信が付き会社からも評価され、東京へ戻りマネージャーの仕事も与えられました。

しかし一方で10年間を区切りに家業を継ぐ予定は変えておらず、会社公認で実家のビジネスにもかかわっていました。 

父親が所属するボランタリーチェーンの視察に同行することもあり、大手衣料品店チェーンのシマムラやユニクロの内側をみせてもらう機会がありました。

そのマニュアルや物流システムを知れば知るほど「これは敵わない」と思わざるを得ませんでした。一方、同じような視察で訪れた中国は、改革開放政策が始まり市場経済が開花する前夜といった雰囲気に満ちていて大きな可能性を感じました。 

そこで父親と兄を説得し、中国でファッションビジネスを展開することを決め、サラリーマンをする傍ら中国事業を立ち上げました。ところがこれが大失敗。借金を抱えてしまいその返済に追われることになりました。

ただし会社には10年で辞めると告げており、かといって迷惑をかけた父や兄の手前、実家に戻ることもできない。

借金返済も待ったなしですから、すぐに仕事をして稼がなくてはならない。つまり追い込まれた状況でコンサルタントとして独立、開業したわけです

そんな事情に押されての独立でしたが数カ月で一定数の顧客が付き仕事は順調。すぐに収入もサラリーマン時代の2倍になりました。

しかしコンサルタントの仕事は、顧客企業の朝の役員会議に参加し、夕方から営業研修をおこない、土日を使ってマネージャー研修といったスケジュールで、平日の日中がヒマな時間として空く毎日でした。 

前職では目が回るほど忙しい毎日でしたから、最初は働く時間が減って収入が倍増とは嬉しい限りでしたが、1年ほどすると「このまま一生を終わってしまうわけにはいかない」という思いに悶々とし始めました。

そんなときにふと前職で尊敬していた上司の顔が浮かび、悩みを聞いてもらいたくなり連絡を取ってみました。 

それがターニングポイントの一つになりました。その元上司はすでに自分の会社を経営しており、そこでジェイックのビジネスを始めようとしていたタイミングでした。

それで、取締役として一緒にやらないかと誘われました。しばらく迷いましたが、結局はお誘いを受けてジェイックでのキャリアをスタートすることになったわけです。 

佐藤さんの実際の人生と想定人生の比較

本気で尊敬できる対人関係の大切さ 

コンサルティング会社時代に、サラリーマンの傍ら実家のビジネスの中国展開の手伝いが会社に認められた点について、周りからよく不思議がられます。

よく許してもらえたものだと。自分でも不思議ですが、会社の幹部から好感を持たれていたのかもしれません。 

というのも私自身が会長や社長を大変尊敬し憧れていたからです。ジェイックに誘ってくれた元上司の常務にも憧れていました。

本気で純粋にこの人たちは「すごい」と考えていました。そういう気持ちが相手にも伝わったことが関係しているかもしれません。 

いまになって自己分析すると、本気で人を尊敬したり慕ったりするのは次男気質のせいかも知れません。

ただし何かの目的があってすり寄るような真似は決してしませんし、できません。もともと指示されるのが苦手で、迎合するのは大嫌いな性格ですから、逆にすり寄りや迎合ではなく、本気の尊敬だということがわかりやすかった面もあったのかもしれません。 

自分の経験から、人に支持される性格資質キャラクターは、仕事やキャリアにとっても極めて重要な要素なのだと感じています。 

佐藤さんからのメッセージ

ピンチを乗り越え成長した自分を実感


人生もキャリアも良いときだけではありません。私は中国ビジネスで手痛い失敗もしていますが、ジェイックの社長になってから人生最大のピンチがありました。2008年のリーマンショックの頃です。

その2年ほど前から会社は新規上場の準備をしていました。そのための財務面の見直しに伴い財務的なゆとりが少なくなっているタイミングでリーマンショックに見舞われてしまいました。 

あてにしていた銀行融資が受けられなくなり資金繰りに窮し、最悪の事態も想定されました。妻にはもう駄目かもしれないと話したこともあります。

小さな子供がいたので家族をどうしたらいいのか、また従業員の生活もかかっている。そんなギリギリの状況に追い詰められました。

そこで折れずに立ち向かい、神経がひりひりするような時期を乗り越えられた原動力が何だったのか、正直なところ無我夢中だったので明確には分かりません。

ただ負けん気は失っていませんでした。「このまま負けて終わってたまるものか」という怒りに近い感情も抱いていたようにも思います。もちろん自分に対する誇りも。 

結果的に絶体絶命のピンチを脱することができた後、自分自身について一皮むけた、覚醒したという感覚を持っています。

経営をしていると危機は周期的に訪れますが、あの時に比べればたいしたことはないと考える余裕も持てるようになりました。

もちろんピンチに遭遇したくはありません。ただそれを乗り越えれば、苦しい経験を大きな財産にできるのだと思います。 

自分で判断する力を養うべき

就職先選びは、自分の人生で何を求めるのかに強く関係しています。人の役に立ちたいのか、自分が成長したいのか、お金を儲けたいのか、困っている人を助けたいのか、自分の存在感や力を誰かに見せつけたいのか。

それが何であれ良いのですが、そこをじっくり考えないまま就職先を「大手企業だから」とか「勢いのあるベンチャー企業だから」といった理由で選択するのはお勧めできません。 

逆に企業側の立場で、これから必要とされる人材像、あるいは今後成功する人材の要件を挙げるとしたら、自分で判断ができること。言葉を変えると自分を持っていることです。

変化のスピードが増す社会では、指示を待つのではなく主体的に判断して自ら率先して動き出す人材でなければ企業の戦力になりません。

また仕事には向き不向きがあり、自分を知り自分を持つことが、力を発揮するための最適な場所を見つけることにつながるからです

人と違うことへの社会的な許容範囲は以前よりは広くなってきていますが、自分の考えを持ち押し通す難しさは残っています。何でも個性があればそれで良いわけではありませんが、自分がなくては話になりません。

そもそも企業は社会の変化に伴いどんどん変わっていくものです。また企業が変わらなくても、最近は転職する人も多く職場が一生同じという人は少なくなっていくでしょう。

そうした変化する世の中だからこそ、自分自身を知り自分の軸を見失わずブレないことが大切になるわけです

私は実家を継ぎたいという強い思いがあり「経営」という軸をブレることなく持ち続けられました。

結果的に実家を継ぐことにはなりませんでしたが、現在、経営に携わり充実した仕事人生を歩んでいられるのも、軸をブレさせなかったおかげだと思っています。

佐藤さんが贈るキャリアの指針

取材・執筆:高岸洋行

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