運命の出会いがキャリアを導く|尊敬できるメンターから夢の叶え方を学ぼう
ベストリハ 取締役 山本 健太さん
Kenta Yamamoto・高校卒業後、ダンサーを目指すも断念。介護業界に就職し、店舗の立ち上げを経験する。2015年、ベストリハに入社。デイサービス事業所所長、エリア統括の部長職を経て、2018年2月より現職
全力だったからこそ方向転換ができた! 夢を目指した道のりは無駄にはならない
高校卒業後、ダンサーを目指して愛媛から東京に上京しました。クラブやイベントなどでグループで踊ることが多く、そのメンバーには今やメジャーグループの一員となった人もいました。彼らにはダンススキルやセンスはもちろん、圧倒的な華もある……。自分とは全く違う次元を目の当たりにして、ダンスで食べていくのは無理だと悟りました。上京後4年経った時のことでした。
ダンスを諦めて何をしようか…。そう考えながら地元に帰省していた時、友達から介護業界の仕事をすすめられました。
店舗の立ち上げや管理をおこなう仕事をする人を探しているという話で、私はその誘いにすぐに乗りました。迷いはなかったです。プロとしてダンスで食べていく道を諦める決断は、2日で固まりました(笑)。
あれだけ全身全霊をかけてダンスを極めようとしていたのに、あっさりと方向転換できるものだと驚かれるかもしれません。でも、全身全霊で向き合って、それでも越えられない壁を感じたから、諦めもついたのでしょう。どんなことも全力でやり切れば納得して次の道へ進めます。夢は叶わなくても、それを目指す道のりは無駄ではないのです。
出会いが新しい価値観を生む。新しい価値観がキャリアを切り開く
1年半地元で勤務したのちに、東京店の立ち上げに加わることになりました。当時はまだあまり多くなかったリハビリ型デイサービスの店舗で、その後の人生を変える出会いが訪れました。それがベストリハの代表 渡邉仁との出会いです。当時社員として一緒に店を運営する立場で出会ったのです。
彼は自分が今まで会ったことのないタイプの人間でした。一度独立起業しており、さらなる成長と再度起業するために働いていました。さらに本を読み、自らセミナーや講習に足を運び、常に自分を高めていたんです。
その頃の自分は、本なんて読んだこともなかったし(笑)、世の中について興味すら持っていなかったかもしれません。だからこそ、渡邉のその姿勢が衝撃で、自分の価値観が大きく揺さぶられました。
目標を掲げて、達成するまで進み続けられる人は多くはありません。私のように、納得した上で諦める人もいるでしょう。そもそも目標を持てない人だっているはずです。そんな人こそ、出会いを大切にしてほしい。自分から気になる人に出会ってほしい。
ぜひ生き方や考え方に影響を与えてくれるようなメンターを探してみてください。今日ではSNSをのぞけば、たくさんの人の考えや生活に触れられます。気になる人とコンタクトを取ることも容易です。自分の目指す道の少し先を歩んでいる人に、ぜひ会ってみてください。
私自身は今も、本を読むのと同じくらい、人に会うことを大切にしています。先日もジムの経営者に会い、介護業界にはない考え方を聞いて刺激を受けました。すぐにカスタマイズして当社にも取り入れていきたいな、と考えています。人と会うことで知らなかった世界に触れるチャンスが膨らみます。
自分に影響を与えてくれる人に出会ったら、さらに関係を深めていきましょう。さまざまな相談ができるような間柄になれれば良いですよね。本をいくら読んでもわからないことは、その道のプロや先輩に聞くのが最善策ですから……。
そのためには、準備や気配りといった「段取り」が大切です。目の前にいる人に喜んでもらったり、気持ちの良い状態を作ったりするためには、相手を知り、状況を考え、気を配って備えることが不可欠。この繰り返しによって、信頼が生まれ、関係性が深まっていくと思います。
私が渡邉から学んだのも、この「段取り」でした。「志は高く仕事は緻密に」と言われており、大きな目標を掲げるのに加えて、そこへ至る日々の細かな作業を重要視していました。会社に於いてはKGIやKPIを定めて分析や改善を怠らない姿勢が、成長へと繋がっていくし、人間関係においては自分に振り向いてもらえる間柄づくりへと結実します。考え、備え、気を配ることが、成功の最初のステップだと思います。
難しそうに聞こえるかもしれませんが、周りにいる人が気持ちよく過ごせて、前向きに動けるような環境を自ら作っていくというシンプルなことです。かくいう私もまだまだ詰めが甘くて、先日BBQをした時にタレを用意し忘れたんですよ。会場やメインディッシュについては気を遣っても、タレのことに気づかなかった! 参加する人の立場を思いやり切れていなかったんですね。まだまだ修行の道は長いです。
ファーストキャリアは「5年後の展望」が見えるかが重要
ファーストキャリアは、まず5年後の未来が描けるかどうかで、判断してみてはどうでしょう。その業界、企業に身を置いて、自分は5年後どうなっているのか。その会社自体は成長していく可能性があるのか。遠い未来は描けなくとも、5年後であれば、展望も描けるのでは。
もう1つの観点は、会社のカルチャーです。考え方、雰囲気、姿勢といった明文化できない部分が自分にマッチするのか。この部分を見極めるのも大切かもしれません。
当社も医療・介護業界の企業ではありますが、たくさんの新卒者に応募いただいています。話を聞くと、DXに積極的で、医療介護らしからぬ革新的な雰囲気に惹かれたという人も多いです。インターンなど、今なら会社の社風を感じられる場面はたくさんありますよね。明文化できないけれど、できないからこそしっかり自分の感性でチェックしておくべきことだと思います。
ITリテラシーと専門性が無ければ生き残れない
介護業界でキャリアを積もうと考えている人もいるかもしれません。心身に負担の大きい業種だという印象もあるでしょう。しかし介護業界こそ、今後は専門性や経営感覚が強く必要とされる分野になっていくという予感があります。今は多種多様な事業所が乱立していますが、経営基盤が脆弱な事業所は淘汰され、専門性が低い場所は選ばれません。
生き残るためには、DXによる合理化は必須です。単純な比較はできませんが、中国では看護師1人が300人の患者を担当する病院もあるそうで、ITやAIをフル活用して、とことんまで合理化を進めています。一方日本の医療・介護業界は、経験や勘に頼る部分もまだまだ多いのです。
医療・介護にとどまらず、日本の産業界は、デジタルネイティブ世代の皆さんがびっくりするほど、デジタル化されていない部分が多いと思います。どんな業界に進むにしても、ITスキルはまだまだ武器になるし、その先はITスキルが必須能力に変わると思います。だから苦手意識を持たず、リテラシー向上に努めてほしいですね。
もう1つは専門性。これからの時代、専門性のない人は今以上に厳しい状況に置かれるかもしれません。医療や介護の世界で言えば、専門性の高い優秀な人材は活躍の場が広がり、複数の場所でシェアされるようなことも起こると思います。どんなジャンルでも良いので、専門性を高めていってほしいです。
私自身は、会社が成長して社会資源として活用されるような存在になることを目指して、さらに規模の拡大と質の充実を図っていきたいと思っています。ホスピスなど地域包括ケアを支えるような事業を展開し、介護のインフラとして頼られるような存在を目指したいですね。夢は大きいですが、不可能ではないと思っています。皆さんも大きな目標を定めた上で、地道に緻密に一歩一歩あゆみを進めてみてください。
取材・執筆:鈴木満優子