「会社が大切にしていること」を見極めよう|自分を信じることで明るい未来が創られる

大橋運輸 代表取締役社長 鍋嶋 洋行さん

大橋運輸 代表取締役社長 鍋嶋 洋行さん

Hiroyuki Nabeshima・大学卒業後、地元の信用金庫に7年勤務。その後、妻の祖父が創業した大橋運輸に1998年に入社し、同年11月に代表取締役就任。地域に根差した運輸業を提供しながら、健康経営や社員のモチベーション向上、ダイバーシティ経営にも取り組み、以降現職

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配属直後に営業成績トップを獲得。効率性を重視すると、圧倒的な成果を上げられる

大学卒業後は、地元の信用金庫に入社しました。「地域に貢献したい」という気持ちがあったこと、営業の仕事に適性があると感じていたことが決め手です。

入社後は、本店の営業部に配属されました。若手の頃に意識していたのは、社内の表彰制度で営業成績トップを目指すことでした。実際に目標を実現することができましたが、それ以降も「もっと2位との差を広げたい」「トップで居続けるためにはどうすれば良いのか」と考え、満足することはありませんでしたね。

圧倒的な成果を出すためには行動量を増やすことが必要だと思い、短期間で靴が擦り減ってしまうほど多くの取引先を訪問しました。さらに日頃から「どうすれば効率良く結果を出せるのか」を考え、行動していました。目標や意思が明確だったからこそ、これだけ頑張れたのかなと思います

また、自分のキャリアについても「こうなりたい」という想いに真っ直ぐで、臆せずに周りにも伝えていました。若気の至りかもしれませんが、営業部に配属されてすぐに「 将来は副理事長に就任する鍋嶋です!」と挨拶したんです。さらに半年に1度の人事評価のときには、面談シートに「こういう仕事がしたい」と赤字で記入し、自分の意思をきちんと伝えていました。

特に社会人1年目の頃は、失敗やミスをしても大きく評価が下がることはなく、「マイナスにならないけれどプラスはいくらでもつくれる」というチャンスに恵まれた時期です。ぜひ入社後すぐに高い目標を持って、自分なりに努力をしてみてくださいね。

鍋嶋さんからのメッセージ

ここぞという場面では、大きな決断や方向転換をしよう

大橋運輸 代表取締役社長 鍋嶋 洋行さん

信用金庫に7年勤めた後、妻の祖父が創業した大橋運輸に入社しました。まったく転職を考えていませんでしたが、妻から「祖母の会社で赤字が続いていて、倒産してしまうかもしれない」という話を聞き、何か力になれたらと思い転職を決めたのです。

実際に入社して会社の危機を肌で感じ、入社半年後に「自分がやるしかない」と腹を括りました。意を決して役員の方々に「このままだと会社が倒産してしまいます。私に経営を任せてくれませんか」と直談判。賛否両論ありましたが、社長に就任することになりました。

その後は売上を上げるために営業に奮闘し、約5年間は身を粉にして働き、なんとか経営を立て直すことができました。そのようななかで、経営者としてのターニングポイントとなる出来事がありました。

ある日、社員に対して給料を上げるために少し協力をしてほしいと伝えました。具体的には「1籠500円の果物をサイズ揃えて、きれいな箱に入れ1箱3000円にしよう」という提案や、「運輸業として身なりを整えて笑顔で挨拶しよう」という声かけ、そして安全確認のための指差呼称(安全確認のために指を指しながら名称と状態を声に出すこと)のお願いなどをおこないました。

これらなら社員の皆もできると考えましたが、社員からは「お金をくれるならやります」という返答があり、社員の意識を高めることは簡単ではないと強く感じたことを覚えています

この時に「下請け業務中心では良い人材は集まらない」と感じ、今までの経営を見つめ直してビジネスモデルを変えていきました。

具体的には、下請け比率を下げる事で、福利厚生や社員の成長支援など社員満足の向上に力を入れました。私自身入社5年は休みなく働いたことで体調を壊した経験や、人生100年時代といわれる時代背景から、今まで以上に健康に長く働くことを大切にしたいと思い全社的に健康経営(社員の健康に経営的に配慮し実践すること)に力を入れたのです。

一方で、我々が取り組んでいる健康経営もダイバーシティ経営(多様な人材を採用し、相互作用を生み出す経営)も短期では成果は出ません。継続することで社内の知識も高まり職場内の意識も変わっていくものです

そこで、会社の一体感を生むためにビジョンやミッションが必要だと思い、「地域とつながり続けること」や「挑戦し続けること」などを掲げました。さらに、売上を上げることを追いもとめすぎて自身の体調を崩した経験もあったため、「健康経営」を掲げて一人ひとりの活力や生産性、コミュニケーションの活性化を意識しましたね。

今経営者として最もやりがいを感じるのは売上が上がったときよりも、仲間と良い仕事をできたとき、社員の成長を感じられたときです。だからこそこれからも、社員が輝ける環境づくりに力を入れ、より良い雰囲気や体制を目指していけたらと思っています。

鍋嶋さんのキャリアにおけるターニングポイント

「大切にしていること」に共感できる会社選びを。頑張りすぎず、仲間と支え合うことを大切に

会社選びをするときは、「何を大切にしている会社なのか」をチェックしましょう。

個人的には、売上だけを全面的に打ち出している企業はおすすめしません。いくら売上が上がっていても、社員が疲弊しながら働いていたとしたら、元も子もないと思うのです。それよりも社員の頑張りやプロセスに目を向け、モチベーションやマインドの向上に力を入れている企業のほうが良いと思います。

このようにいえるのは、当社はもともと売上重視の体制で、そのビジネスモデルの脆さを感じて方向転換をしたからです。

社員の健康やモチベーション、ダイバーシティを大切にするようになり、とても働きやすい会社だといわれるようになりました。実際に経済産業省の「新・ダイバーシティ経営企業100選プライム」を受賞したり、7年連続で厚生労働省の「健康経営優良法人」を受賞したりと、社外からも評価を得ています。

あとは、社会貢献できそうな会社を選ぶのもおすすめです。特にこれからの日本は、人口の減少や高齢化、経済の縮小など、社会課題が山積みだと思います。だからこそ逆説的かもしれませんが、社会貢献することで喜んでもらいやすく、仕事にやりがいを感じられるのではないでしょうか。

また、仕事をするうえでは「周りと比べて頑張りすぎないこと」を大切にしてほしいです。周りと比べるとどうしても、自分に対してネガティブになりやすいと思います。「自分にとって満足のいく仕事ができたのか」や「自己ベストを更新できたのか」を意識して、前向きに仕事に励んでください。

みんな人間なので、頑張れないとき、モチベーションが落ちるときもあります。最初から気負いすぎず、チームワークを発揮して支え合いながら、日々の仕事に取り組んでみてくださいね。

鍋嶋さん流 会社選びのポイント

「夢と共に眠り、目的と共に目覚める」。自分の可能性を信じ、大きな目的を持って仕事をしよう

最後に伝えたいのは、皆さんにはぜひ自分自身にもっと期待をして、大きな目的を持って社会に出てほしいということ

今までの過去を振り返って、たとえば「勉強ができなかったから自分の未来はこんなものだろう」などと、自分の可能性を小さく見積もらないでください。今までやってきたことで人生が決まるのではなく、自分自身の可能性を信じるからこそ、未来はどこまでも広がっていくのです。

そして、仕事に対する目的というのは、エンジンのような役割を果たしてくれます。小さなエンジンだと坂を登るときに苦しくなりますが、大きなエンジンであれば軽やかに登ることができます。どのようなことでも大丈夫なので、大きな目的をもったうえで社会に出てみてくださいね。

皆さんに贈りたい言葉は、「夢と共に眠り、目的と共に目覚める」。寝る前には良い夢を見て、朝起きたら目的を持って行動しようという意味です。この習慣を取り入れると毎日が充実するだけでなく、想像を超える未来の自分につながっていくはず。

自分の可能性を信じて大きな目的を持つこと。その目的や夢を抱きながら眠り、日常的に心掛けて努力をすること。これらを大切にして、自分の未来を創り上げてくださいね。

鍋嶋さんが贈るキャリアの指針

取材・執筆:志摩若奈

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