嫌なことがあっても頑張れるモチベーションを大切に|経験を重ねながら自然に成長しよう

ニチイホールディングス HR本部 ダイレクター 後藤 英樹さん

Hideki Goto・福祉系大学を卒業後、2001年ニチイ学館に入社。秘書課や株式事務などコーポレート系部門を経て、新規事業開発に携わる。その後業界団体に出向。2016年経営管理統轄本部経営管理本部人事部長を経て、2018年より現職

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配属ガチャに失敗は無い? 希望していない部署・職種からも学びがある

大学で福祉系の勉強をしていたので、就職先も関連した業界を目指すことにしました。2001年当時は介護保険が導入され、ちょうど民間企業も介護業界に参入し始めたところ。周囲の福祉業界に就職する人たちは主に社会福祉法人などに就職していきましたが、自分は民間なら新しい事業の展開もあるだろうと考え、当社に就職しました

最初の部署は総務。その後も秘書課や株式事務の仕事など、コーポレート系の仕事が続きました。介護の業界を選んだからには、事業自体にかかわりたいという思いはありましたが、当時は就職氷河期。とにかく就職できて、仕事と給料がもらえていることをありがたく思っていたので、いわゆる「配属ガチャ失敗」とまでは思っていなかったですね。

経営層に近い場所で、会社全体を見通して仕事をするのは、良い経験になりました。事業全体が理解できたし、入社前に思っていた以上に、しっかりとした母体や理念を持った会社だと実感できました。

自分が望んだ職種や部署ではなくても、学びや気づきはたくさんあります。学生の時点で見ている社会は、狭く限定的であることも多いです。「この仕事!」というこだわりを捨てて、まずは経験してみてはどうでしょう。意外な発見ややりがいが待っているかもしれません。

“ワクワク”した仕事の経験はその後の糧になる!

コーポレート系の仕事は充実していたものの、せっかく介護業界に入ったのだから、事業をやりたいという気持ちは変わらずにありました。同級生に会うと、小売や飲食店勤務の友人は店長になっていたり、銀行勤めの友人は大きな金額を扱っていたり。営業職の友人が営業成績について話しているのも、かっこよく羨ましく思えました。

そこで自己申告で異動希望を出しました。希望はすんなりと叶い、入社してだいぶ経ってから、はじめて見積もりをしたり、営業をしたり、新鮮な気持ちで取り組めました。その流れで今度は新規事業を開発する部門に移ることができ、高齢者住宅の立ち上げのため、コンセプトや価格などを作り込んでいきました。

新たな事業を作っていくのは骨が折れましたが、本当にワクワクする経験でもありましたね。いまだに当時のプロジェクトメンバーに会うとこの話をしますし、施設の入居者の顔も思い出せます。自ら入居募集や入居者からの生活相談も受けていましたからね。

自分が望んで手を挙げた仕事、自分が作り出した仕事、そして良い仲間と一緒にした仕事は、キャリアの宝物になります。仕事である以上大変なことも多いですが、一つでも多く、ワクワクしながら仕事をできたら良いですよね。

後藤さんからのメッセージ

私たちの奮闘むなしく、新規事業はそれほどうまくいきませんでした。企業が事業として展開するからには安定した収益が必要ですし、新規事業であればコンスタントな成長も望まれます。成果を出さなければビジネスは継続しないということを、理屈ではなく、肌で感じた経験でした。

客観的に見れば明らかな失敗ですが、私はこの失敗を通してはじめて、リアルな事業というものを感じられました。

データを見てあれこれ言ったり、理論をもてあそんだり、そうしたことだけではわからないことがあります。むしろ失敗からしか学べないこともあると思います。実際に自分でアイデアを出してみて、お客さんとぶつかって、トラブルがおこったり、計画した通りに進まなかったり、結果も出なかったり……。その過程の中で気づき、学び、考えたことはしっかりと身になります。

失敗を恐れていては学びもありません。私のこの失敗は小さいとは言えませんが(笑)、小さな失敗は成長の原動力になります。ぜひ失敗を恐れず挑戦し、どんどん失敗して学んでください。

大手企業だから経験できること! 異動により経験値を上げられる

教育系の業界団体への出向もキャリアの岐路になりました。

そこは官公庁の外郭団体に近い組織で、役所の人とも話をする機会を得ることができ、それまで国というレベルで考えたことがなかったので、視野が大きく広がったと感じます。

また目先の利益を目的にせず、全体の底上げについて取り組んだことも、貴重な経験でした。事務局長として事業の運営にも携わり、いち会社員とは違う視点を得ることができたのが大きな収穫です。

大手企業だからできる多彩な経験

大企業の有利な点は、異動が転職にも匹敵する経験になることだと思います。コーポレートの仕事から、新規事業開発、そして業界団体へ。転職しなければ得られないような多様な経験を、異動によって積むことができます。さまざまな経験を積んで成長したいと考える人には、実は大手企業が適しているのかもしれません。

「嫌なことがあっても、きっと耐えられる」と思える就職先を選ぼう

就職活動で学生から話を聞いていると「会社が自分をどう成長させてくれるのか」と受け身の学生が多いと感じています。ただそのような考えだけだと、自分の成長だけを中心に据えてしまうため、「仕事だから」と割り切って働けない場面も多くなるのではないかと心配しています。

正直にいうと、仕事は楽しいことだけではなく、決して受け身の姿勢だけでは働くことはできません。嫌なこと、理不尽なこと、面倒なことが次々襲ってきます。それでも耐えられる、と思える業界・会社・職種を選んでほしいのです。

「嫌なことが多くても、きっと頑張れる」と思えるのはなぜか。それは、自分がやることの意義を納得している、信じているからではないかと思います

自分の仕事が誰かを助けている、自分がやることで世の中がちょっと良くなる、大変な部分を乗り越えればもっと楽しくなる、など。大変さの先に意味があると思えれば、きっと仕事に注力できるでしょう。

後藤さんが考える、就職先を選ぶ際の心構え

私はまたコーポレート職である人事部門に戻っており、実際の当社のエンドユーザーに触れる機会は非常に少なくなりました。それでも、自分が採用しサポートした人たちが当社の事業を推進して、顧客の質の高い生活を作り、女性の活躍支援を支え、社会保障をも支えていると考えると、モチベーションが高まります。

嫌なことがあっても頑張れる、それでもやりたいと思えるなら、その先に自然に成長があるのではないでしょうか。汎用的なスキルアップだけを成長と考えず、モチベーションを持った経験蓄積の結果として、成長できると考えてほしいなと思います。

後藤さんが贈るキャリアの指針

取材・執筆:鈴木満優子

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