ロールモデルを見つけることでビジョンが明確になる|経営者に共感できる会社を選ぼう
g-wic(ジーウィック) 代表取締役 豊島 愛華さん
Aika Toyoshima・大学卒業後、新卒で通信系営業会社に入社。1年で昇進を経験し、その後ベンチャー企業である営業支援の会社に転職。さまざまな経験をするなかで「女性ならではの営業や、女性の強みを活かせる組織づくりがあるのでは」と考え、女性による営業支援チームを社内ベンチャーとして立ち上げる。同チームの活躍は、お客様から非常に高い評価を得て、事業を拡大するために独立。2011年、当時26歳でg-wicを設立し、以降現職
早く結果を出す秘訣は「できる人の真似をすること」と「誰よりも行動すること」
父親が経営者だったこともあり、高校時代から「父親を超える経営者になりたい」「20代のうちに起業したい」という思いを抱いていました。
高校卒業後は大学の経営学部に進学しましたが、当然実務を学べるわけでもなかったので、ヒップホップダンスに没頭しクラブで遊んでいる日々でした。しかし「これではいけない!」と思い、経営者の方々の本を読んでどのようなキャリアで経営者になられているかを調べてみることに。すると、皆さん共通して営業職からキャリアをスタートしていることに気づきました。
「そもそも営業ができないと起業して売上を立てることはできないし、その先の成功はない」。そう思い、いろいろな営業会社を調べ、なかでも実力主義を謳う会社に入社を決めました。入社後は朝から晩まで営業電話を掛け、ようやく獲得した商談に向かい、帰社後は終電近くまで提案書を作成する日々を送っていました。
もちろん早期に結果を出したいと考えていた私は、休憩時間も飲み会も、すでに結果を出している先輩と行動を共にしていました。先輩から仕事へのスタンスや思考など、すべてを吸収したいと思ったからです。
また、当たり前のことを誰よりも早く・多く・正確にやるという意識を持っていましたね。正直、入社直後はある程度仕事はできるだろうと思っていましたが、そう甘くはありませんでした。なかなか結果が出なかったとき、父に「おまえは賢くないから、人の3倍努力しろ」といわれた言葉を思い出しました。
それから「絶対に同期の社員の中で1本でも多く電話をしよう」と決意し、コツコツとアポイントを獲得し続けました。
入社して5カ月間は結果が出ず焦燥感に駆られる日々でしたが、半年経った頃に受注が次々と決まり始めました。そのときに先輩から「努力は裏切らない。神様は見ているんだよ」という言葉をもらい、泣きそうになるほどうれしかったことを覚えています。その後も成果を出し続け、約1年で昇進することができました。
努力に結果がついてくるタイミングは人それぞれ。皆さんも結果が出ることを信じて、日々の仕事を誰よりも早く・多く・正確に、できるだけたくさん行動してみてくださいね。
挑戦できる感謝を忘れず、素直さと謙虚さを持とう
起業に向けてさらに実力を身につけるべく、ベンチャー企業である営業支援の会社に転職。入社当初から「3年目で独立します」と宣言し、給与をいただいたうえで修行もさせていただけるという気持ちで仕事に励みました。
しかし、前職での知識はまったく通用せず、「外国に来ているのではないか」と思うほど会話についていけませんでした。そこで特にIT企業との取引が多かったため、IT用語やマーケティング語を理解するために単語帳をつくり、日々インプットとアウトプットを繰り返しました。そうした地道な努力を積み重ねることでようやく1年目にトッププレイヤーになることができ、2年目には部長に昇格、3年後の26歳の頃に、当社g-wicを立ち上げることができました。
当社の特徴は、全員が女性のメンバーで構成されている営業支援会社であること。このコンセプトに至った理由は、今までの営業経験の中で、「女性ならではの営業の強み」があることに気づいたからです。男性はロジカルでわかりやすく営業できる方が多い印象ですが、その一方で警戒されやすいという面もあると思います。
一方、女性は共感しながら相手の話を傾聴し、提案できる方が多いと感じました。また、女性ならではの物腰の柔らかさで相手に安心感を与え、本質的なニーズを汲み取りやすいという強みがあると考えたのです。
そこでまずは、社内ベンチャーとして女性による営業支援チームを立ち上げました。そうすると、想像以上にお客様から好評だったということもあり、半年後に法人化(独立)することが叶う結果となりました。
このように夢や目標に対する「強い想い」と「高い目標」さえあれば、常に高いモチベーションを保ち、結果を出すことができるはずです。
性別にとらわれない仕事選びを。誰もが自立できる社会を創りたい
女性ならではの強みを活かせる、女性がもっと活躍できる環境をつくりたい。当社を立ち上げた背景には、こういった考えもありました。独立前に働いていた前職も、さまざまな営業活動を通して知り合った企業様も共通して、営業職で産休・育休を経て復帰している女性の方がほとんどいなかったのです。
また、事務職を探す女子学生さんが圧倒的に多いことにも課題を感じました。もちろん事務職も素晴らしい仕事ですが、AIなどの技術革新がある中、大きく収入を上げられる職種かというと難しい側面もあるかと思います。離婚家庭が3組に1組ということを考えると、男性に経済力を依存するのではなく、女性にこそ営業職という選択肢を知ってほしい、そして多くの女性の方に経済的な自立を目指してほしいと考えるようになりました。
実際、このように日本のジェンダーギャップ指数(男女の違いにより生じる格差)は146カ国中125位と、G7の中では最下位です。女性活躍は進んでいるような報道がありますが、「実はそうでもない」と言えるのではないでしょうか。教育は47位と比較的上位なので、学生時代までは特に男女格差を感じることはないけれど、社会に出るとギャップを感じやすいという見方もできます。
当社として実現したい未来は、「女性が生涯、真に活躍できるリーディングカンパニーとなる」ということ。ライフイベントを迎えても、子育てとキャリアを両立できる。私達が活躍していくことで、ひいては社会に影響を与えられる、そんな存在になっていきたいと考えています。
イキイキとしたキャリアにつながる4つの心掛けとは
今までのキャリアにおいて意識してきたことが4つあります。「夢を持つ」「ポジティブ思考」「素直になる」「行動する」。この4つの心掛けこそ、イキイキしたキャリアにつながると思っています。
私自身、起業後6期目のタイミングで第一子を出産しました。その際マネジメントがうまくいかず役員メンバーが退職してしまったことで、ほかのメンバーが体調不良となり離職、新人メンバーしか残っていない状況となったこともありました。
第二子も妊娠しておりましたが、事業を立て直すために出産1週間前まで商談に同行し、出産2週間後からオフィスに出社し仕事をするなどして踏ん張りました。結果的に2年後の業績はV字回復できたのですが、当時は1人でもついてきてくれるメンバーがいると捉え、ポジティブ思考で乗り越えられましたね。
一方で、「自分の夢が何かわからない」という方も多いと思います。自分の夢を持つためには、まずはロールモデルになる人を決めてみると良いかもしれません。身近な憧れの人でも、芸能人やタレントでもかまいません。当社のメンバーの1人は母親をロールモデルにしていて、「母親のように経済力のある人になりたい。母親を超えていきたい」と話してくれています。
私も最初は「父親を超えたい」という原動力からはじまり、そこから営業職を経て起業をし、「自分で考えたビジネスで社会に影響を与えられるおもしろさ」を知りました。最初から具体的な夢や目標がなくても、ロールモデルさえいれば、次第に夢や目標が見つかっていくこともあります。
ロールモデルの存在というのは、日々の仕事でも力になってくれます。何かに迷ったり悩んだりしたときに「憧れのあの人だったらどうするだろう」と考えるだけで答えが見つかったりします。自分の考えだけで行き詰まったら、憧れの人や尊敬できる方の考えをインストールし、選択や行動をしていくこともおすすめですよ。
業界の先入観にとらわれず、経営者のビジョンも参考にしよう
就活では、OB・OG訪問や可能な企業には職場体験を積極的にしてみてくださいね。海外では8割の求職者が採用時に職務内容について書類や口頭で説明を受けているのに対し、日本では4割未満に留まっているというデータもあり、日本では実際の働く環境や仕事内容を知らずに入社を決める学生も多いのではないでしょうか。
しかし、自分がどんな環境でどんな仕事をするかを知らずに企業を選んでしまうと、入社後のミスマッチにつながりかねません。弊社も選考で1日職場を体験していただける体験入社というフローを作っており、こういった実際の働く環境を知れる機会はぜひ積極的に活用してほしいですね。
また、業界のイメージだけで決めるのではなく、実際の職務の理解や適性を捉えるために、何人かの社会人に壁打ちをするということも良いかと思います。どうしても1人だけに聞くと、その方の主観に偏ってしまうかと思うので、数人の方にお願いし、どのような傾向があるかを認識してから仕事を選ぶと、前向きにキャリアを歩みやすいのではないでしょうか。
企業選びで大切なポイントは、経営者のビジョンや価値観に共感できるかどうかです。経営者の思想というのは、そのまま会社の風土につながると考えています。そこに共感できないと、仕事を楽しめなかったり、働きにくいと感じたりしてしまうでしょう。
たとえば当社は、メンバーのことを家族のように考え、メンバーの持つポテンシャルを最大限引き出すことを意識しているので、仕事でもプライベートでも深いつながりのある組織になっていると思います。また、「お互いのスキルを惜しみなく共有していくことで、最大限のパフォーマンスを創出する」というポリシーがあるので、普段からチームワークを発揮してお客様に最大限の価値を提供しています。
誰と働くかが大事といわれますが、このように経営者の思想は、「どのような働き方をするのか」「働いていてワクワクできるか」にもつながるかと思います。事業はいかようにも変化させることは可能ですが、一緒に働く人は変わらないので、ぜひ自分が経営者の考えに共感できるかも志望先を決めるうえでは大事にしてほしいですね。
取材・執筆:志摩若奈