目の前の仕事に「誠実」に向き合うことで道は拓ける丨仲間と興味を大切に挑戦しよう

スタディスト 代表取締役CEO 鈴木 悟史さん

スタディスト 代表取締役CEO 鈴木 悟史さん

Satoshi Suzuki・明治大学大学院を卒業。新卒ではインクスに入社し、3DCADの機能仕様検討業務や設計システムの開発に従事。製品開発プロセス改革のプロジェクトリーダーを歴任する。その後同社のパートナー職を経て、2010年に退職。同年3月にスタディストを設立し、現職

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「仲間と切磋琢磨すること」で目の前のことに夢中になれる

学生時代は、仲間と共に建築デザインに夢中になっていました。

中学生になったときに実家を建て替えることになり、「どんなクローゼットにするのか」「壁紙の柄や色はどうするのか」と細かく決め、それが実際に建物になっていく様子を間近で見ました。それがとても面白く、インテリアや建築に関する本を読むようになり、「将来は建築の道に進もう」と決めたのです

そのような想いもあり、明治大学の理工学部建築学科に入学しました。大学では、先輩がパソコンで3DCAD(スリーディーキャド〔3Dデータの作成をおこなうツール〕)を活用し、かっこいいデザインを作っている様子に感銘を受け、さっそくMacBookを購入。3DCADを使いはじめました。

大学の研究室では建築デザインコンペに出ることが多く、コンペで提示された課題設定を読み解き解決策を建築デザインとして提示すること、競争に勝つことを考え、とにかく夢中になって取り組んでいました。何かに夢中になるためには「仲間がいること」が大切です。仲間がいれば切磋琢磨できることはもちろん「周りの人に負けたくない」という気持ちが芽生え、目の前のことに打ち込みやすくなります。

学生時代であれば、ビジネスコンテストに参加することもおすすめです。皆さんもぜひ「仲間と共に夢中になる」という経験を積んだり、就活では「好きなことや興味のあることで切磋琢磨できる環境」を探したりしてみてくださいね。

会社の決め手はビジョンへの共感。どんな仕事も「まずはやってみる」精神でトライ!

スタディスト 代表取締役CEO 鈴木 悟史さん

ある会社のビジョンに突き動かされ、学生時代までとはがらりと変わり、まったく違う業界からキャリアをスタートしました

就活の序盤は建築業界の面接を受けていましたが、当時はあまり3DCADなどの新しいツールに好意的な業界ではなかったため、別の業界に目を向けるように。最終的には金型業界に革命を起こしたともいわれるインクスに入社を決めました。

入社の決め手になったのは、「コンピュータの力を使って革命を起こす」というビジョンとの出会いです。「この会社は社会に貢献できそう。挑戦したい」と思いました。当時はまだ30人規模の会社で、自宅からも遠かったのですが、いろいろな条件を超えるほど強く惹かれたのです。

入社後は3Dエンジニアリング部門に配属されました。今まで学んできた3DCADのデザインではなく、3DCADのデータを作ることになり、最初は「やりたいことができないのか……」と残念な気持ちになりましたね。それでも「まずはやってみよう!」と切り替え、仕事に打ち込むことを決意しました。

すると、学生時代からコンピュータが好きで3DCADの経験があったため、みるみるうちに熟達することができたんです。周りと比べても早く正確に仕事を進められていたので、どんどん自信が湧いていきました。

おそらく入社後すぐに好きな仕事ができるというのは稀だと思います。どんな仕事であっても、最初から好き嫌いで判断せず、まずは任された仕事をやり切ってみる。そのような姿勢があってこそ、次の仕事につながったり、自分の得意なことに気づけたりするのではないでしょうか。

鈴木さん流 キャリアを軌道に乗せるステップ

ピンチのときこそ「挑戦」を選び、道を切り拓く

プロジェクトリーダーを任されるようになったり、大手製造業のコンサルティングに携わったりと、順調にキャリアを歩んでいた矢先のこと。

リーマンショックによって業績が悪化し、インクスは民事再生(経営を続けながら会社を再建すること)を申請することになりました。それによって会社全体の活力がなくなっていく雰囲気を感じ、「このままではダメだ」と思うように。ピンチのときこそ挑戦するべきだと思い、当時の副社長にお声がけしてビジネスプランをお話ししましたが、当時の経営状況では新しい挑戦どころでなかったため、自ら挑戦することにしてスタディストを起業することになりました。

明確な事業が決まっていたわけではありませんでしたが、何よりも最初に着手したのは、新しい会社のビジョンやミッションの策定。前職に入社した理由もビジョンに惹かれたことでしたし、会社というのは何をしているのか以上に「どんな使命を抱いているのか」「どんな旗を掲げているのか」が重要だと考えました。そして、「知的活力みなぎる社会を作る」というビジョンと「伝えることを、もっと簡単に。」というミッションが生まれました。前職時代にコンサルティング支援を通じて感じていた誰かに何かを伝えることの負荷やムダ。そんな伝えることに関するロスをなくし、よりクリエイティブなことに時間を使える社会にしたいという思いが由縁です。

キャリアを歩んでいるなかで、思いもよらないことが起こることもあるかもしれません。そのようなときこそ挑戦することを選択し、自らの意志と行動で道を切り拓くという気持ちを大切にしてくださいね

鈴木さんのキャリアにおけるターニングポイント

「誰よりも早くやる切る」ことで選ばれる存在になろう

スタディストを起業して半年経つと、コンサルティングに関する仕事の依頼が絶えない状況になりました。現在のようにミッション・ビジョンに紐づくプロダクトを作れていた時代ではないですが、ゼロの状態から依頼が絶えないところまでもっていくことができたのはよかったと感じています。そこに至るまでに大切にしていたのは、「どんな仕事にも誠実に取り組む」「誰よりも早くやり切る」ということです

起業後の最初のご依頼はある企業経由の個人の方からで、「趣味のサイトを作ってほしい」というものでした。今までにやったことのないことでしたが、自分なりに本気で取り組み、喜んでもらうことができました。すると、その企業の方から次の仕事を紹介してもらうことができたのです。

ただ、それは大手企業からの委託案件で「6,000枚の図面のデータをまとめる」というものでした。正直、やりきれるか不安ではありましたが「せっかく相談してもらった仕事なのだから、やりきろう」「この仕事をとにかく早くやり切ったら、次の仕事にもつながるかもしれない」と気持ちを新たにしたのです。

実際にとにかく早く納品すると、「なんでこんなに早くできたんですか? 」と驚かれ、次はもっと面白い仕事を任せてもらえたのです。そこからどんどん事業が軌道に乗っていきました。

「早く正確に仕事をする」ためには、闇雲に頑張るのではなく工夫することが大切です

人と同じように進めるのではなく、「どうやったら早くできるのだろう」「なぜ時間が掛かってしまうのだろう」などと、ときには立ち止まって考えるようにしましょう。特に新卒の方は、「今まではこうしていた」という固定概念がない分、より良い仕事の進め方を見つけやすいと思います。

鈴木さんからのメッセージ

企業選びでは「ビジョンへの共感」と「チャンスの有無」をチェック

企業選びではビジョンやミッションに共感できること。それを実践している会社であることが重要だと思います。

「実践しているか」というのは、言葉だけではなく社員の姿勢にも浸透しているかということです。就活で社員と話す機会があれば、「どのように仕事に取り組んでいるのか」「会社のビジョンやミッションに共感しているのか」を確認するようにしてみてください

また、「若手にチャンスが巡ってくる会社」がおすすめです。新卒入社したインクスも、自分の能力を超えるくらいの大きな仕事を任せてもらったからこそ、大きく成長することができました。最初にチャンスが与えられてこそ、それを乗り越える過程で成長でき、次のチャンスを掴むことができるので、前提としてそのような環境に身を置くことが大切です。

これらのポイントを押さえられていたら、あとは少しでも好きだと思える仕事で、切磋琢磨できる仲間がいれば大丈夫だと思います。

これからの行動次第で理想のキャリアは切り拓ける

大学時代の最初はあまり勉強をせず、将来のことを考えきれていなかった私でも、ここまでキャリアを積み上げることができました。現時点で何かこれだというものがない学生でも、これから道を切り拓いていくことは必ずできます。

社会に出たばかりの頃は、思ったような仕事ができなかったり、なかなか結果が出なかったりすることもあるかもしれません。そんなときは、「まずは目の前の仕事に向き合ってみる」「諦めずに3年は継続してみる」ことを意識してみてください。その過程のなかで少しずつ、自分の得意なことや使命を見つけていけると良いのではないでしょうか。

仕事で悩みや葛藤を抱えることがあれば、自分だけで解決しようとしなくて大丈夫です。きっと周りには、すでに自分の悩みを解決したことがある人がいます。大抵のことは何とかなるので、積極的に周りの人に相談してみてください。経営者である私でさえ、社員のことを頼りますし、かなり助けられています。

いつでも心のどこかでは前向きな気持ちを持ち、周りの人にも頼りながら、チャンスをものにしていきましょう!

鈴木さんが贈るキャリアの指針

取材・執筆:志摩若奈

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