「今」やりたいことがなくたっていい。「未来」の選択肢を広げるために成長環境を選ぼう

Micoworks(ミコワークス)取締役COO(最高執行責任者) 八重樫 健さん

Micoworks(ミコワークス)取締役COO(最高執行責任者) 八重樫 健さん

Ken Yaegashi・学生時代に公認会計士試験に合格。アクセンチュアに新卒入社し、経営・マーケティング戦略立案、全社デジタル化支援、M&A、新規事業立上等を経験した後に、Supershipホールディングスの立ち上げに参画。同社経営戦略の立案、10社超のM&Aの戦略立案・実行・事業グロースまでを一貫して推進し、役員として成長を牽引。また、大手クライアントに向けたマーケティング戦略の立案のプロジェクトのリードを歴任。2022年、Micoworksに入社。取締役COOとして戦略、S&M、CS、人事領域を管掌

この記事をシェアする

未来の可能性を最大化するための選択を取る。成長環境に身を置くことが自己実現の秘訣

キャリアについて最初に考えたのは高校生の時。公認会計士という職業を知り、元々数字にも興味があったこともあいまって、公認会計士の仕事をしてみたいと興味を持ちました。大学進学後はWスクールで資格取得のための勉強に注力して、大学3年生のときに論文式試験に合格。在学中も監査法人でフルタイムの非常勤として働かせてもらいました。

しかし監査法人の仕事を経験するなかで、「自分はお客様の近くで価値提供ができるビジネス寄りの仕事のほうが楽しい」と感じる発見があり、就活をしようと決意。同期は自分以外全員が監査法人に就職したので、周りとは違うキャリアを選択した形になりました。この決断をしたことが、最初のターニングポイントかなと思います。

ただ、いざ就活となると「自分が何をやりたいのか」が明確には浮かびませんでした。それなら3年後や5年後、やりたいことの輪郭が見えてきたときに、それを実現するためのスキルを身に付けられる環境に行こう、と考えました。さらに「やりたいことはアップデートされていくはずだから、1社目は幅広い経験ができるところに行ったほうがいい」と考え、いろいろな先輩の話を聞きながら業界を絞っていったところ、残った候補の1つがコンサルティング業界でした。

当時はリーマンショック直後で採用市場はかなり厳しく、身近でも内定取り消しや就職浪人という話を当たり前に聞いていました。今では毎年数十人〜数百人採用しているブティックファームや、大手の総合コンサルティング会社も、数名、数十名しか新卒採用枠を設けていなかったタイミングでもありました。ありがたいことに内定をいただいたアクセンチュアに入社しましたが、結果的にコンサルティング会社の中でも同社でファーストキャリアをスタートしたことは非常に良かったと感じています。

理由としては、2つあります。1つは実行までを伴走しお客様の成果にコミットする姿勢があること、もう1つはコンサルティング会社として成長するための経営システムが優れていることです。また、経営システムの仕組み、プロジェクトごとの収支管理、グローバルでのナレッジを共有する仕組みなど、同社の優れたところに自分が経営に近い立場の仕事をするようになってから改めて気づかされましたね。今の仕事をするうえでも、同社の経営システムは大いに参考にさせてもらっています。

八重樫さんのキャリアにおけるターニングポイント

私もそうでしたが、ファーストキャリアを選択する際にやりたいことが明確に見つかっていない人は少なくないでしょう。強烈な原体験でもない限り、学生時代に思い浮かべている“やりたいこと”は、実際にやってみると想像と異なることも多々あり、経験してみることでしかわからない場合も多いと思います。 

そう考えれば、ファーストキャリアでは「やりたいことが見つかった未来」に向けて成長できる環境を選ぶというのは1つの考え方ではないでしょうか

ではどんな環境なら成長できるかと考えたときに、一番重要なのは仕事における「当たり前」の基準が高い環境であるかだと思います。私は自分自身が怠惰な人間であると思っているので、昔から迷ったときは「厳しい環境」のほうを選ぶことを意識しています。厳しくない環境の中で自分に厳しくするのは難しいので、会社であれば当たり前の基準が高い環境を選ぶのが一番だと思います。

1社目に選んだアクセンチュアは、入社してすぐにプロフェッショナリズムが求められる環境でした。新入社員研修でも「翌月からは担当クライアントがあなたに月数百万円のコストを払う。そのコストと同等の成果を出すのでは収支としてトントンであり、あなたがいる意味がない。最低でもいただいている金額の3倍の価値提供をする意識で働きなさい」といったマインドを徹底的に叩き込んでもらいました。お客様への価値提供やプロフェッショナリズムの意識は、今でも自分の仕事のベースになっていると感じます。

ほかにも、成長できる環境がある会社かを見極めるには業績や成長率に注目してみてください。「成長率を開示しているか」「開示されていないならば、聞いてみて教えてくれるか」といったところから、ある程度の選別はできるはずです。

成長している会社は1年前と今でやっていることが変わるので、社員に求めることがどんどん変わっていきます。そういった環境では、新しいスキルや高いクオリティが必要な仕事を毎年のように経験することができます。一方、成長が停滞している会社は必然的に前年と同じことをやる機会が多くなるので、社員の成長機会も少なくなりがちです。

環境に加え、成長するためには「どんな仕事でも全力で取り組み、相手の期待値を“少しでも”超えていこう」という自分自身のマインドも必要です。やりたいと思えない仕事に携わる時間は絶対にあるものだ、ということも心得ておいてください。やりたい仕事に多くの時間を使える状況になっていくのは、実績や周りからの信頼を得てからです。

そう考えれば、若い頃は選り好みをしないほうが良いと思います。やりたい仕事の中にも、一部やりたくない仕事が含まれているものですし、やりたくないと思っても「この仕事ができるようになれば、おもしろいと思えるかも?」と考え、まずはやってみるというマインドを心がけることをおすすめします。

会社選びで重視したい観点

  • プロとしての仕事を求められる厳しい環境があるか

  • 成長機会が豊富にある企業であるか

  • 社員が考えることを是(良し)としてくれるか

あわせて、会社選びでは「考えることを是とする会社か」にも注目してみてください。自分自身、新人の頃から「君はどう思う?」と必ず聞かれ、自分の意見を持つことを常に求められる環境に身を置いたことで、自分の頭でとことん考える習慣が身に付いた実感があります。

就活では「仮説立て」が必要。自分に必要な情報を取りに行こう

業界や会社をある程度絞ったら、次は「就活でどう動くのが最善か」という話になりますが、私は就活を進めるうえで一番重要なのは「仮説立て」だと思います。どんな情報があれば自分は判断できるのかを考え、仮説を立てたら、自分の足を使って検証する。その仮説が正しかった・違っていたということを確かめながら、考えをブラッシュアップしていく。

この繰り返しをしながら就活を進めていけば、高い確率で「自分が成長できる」と思える会社を見つけられるはずです。新卒時の就活は大半の会社からオープンに情報を出してもらえる貴重な時期なので、ぜひ有効活用してほしいですね。

また私が意思決定のときに大事にしているのが「後戻りできる選択か、後戻りできない選択か」です。後戻りできる選択ならばスピード重視で決めて、違ったらやり直すことも可能ですが、後戻りできない選択はあらゆる側面から物事を考えて判断することが重要だと思います

それでいうと最初の就活は後戻りできない選択と考えて、徹底的に取り組んだほうが良いと思います。

日本の採用市場における新卒入社は特別な仕組みでもあると思いますし、企業側の情報開示含めてこの時期にしかないチャンスが多くあります。だからこそ、必要だと思う情報は本気で取りに行き、納得のいく意思決定をしてほしいですね。

就活でもPDCAサイクルを回そう

また社風やカルチャーとの相性を考えるうえでは、会社のビジョンやバリューに注目してみてください。「ビジョンを明確に打ち出しているか」、「共感できる部分があるか」という2点で絞り込みができるはずです。そして何よりも大事なのが、それらが行動に繋がっているかです。面接等で「こういうシチュエーションの場合、御社はどういう意思決定をしますか?」や、「経営チームやメンバーの方々の行動でバリューが体現されていると感じる具体的な行動はありますか?」といった質問をしてみても良いと思います。

良い会社は、総じてビジョンやバリューをしっかり提示しています。そしてそれらが行動に紐づいている。成長し続ける企業は、そのビジョンや目的に対して正しい選択なのかという観点から、フラットに意思決定をします。偏ったバイアスを入れず、フラットに意思決定ができる企業や社員が活躍している会社であることも、良い会社の条件の1つだと思います。

学び続け、成長し続けられる環境をもとめてチャレンジをしたい

Micoworks(ミコワークス)取締役COO(最高執行責任者) 八重樫 健さん

私が選んだファーストキャリアも上述した「良い会社」の条件を満たしていましたが、キャリアのなかで一番壁にぶつかった時期は、同社にいた社会人2〜3年目の頃になります。

当時の私は「ひと通り仕事が回せるようになった」という手応えを得て次のプロジェクトに入ると、まったくできない自分に気づかされました。本当に考え抜き、思考する力がついていたのではなく、ただ仕事に慣れて作業ができるようになっていたからでした。初めて本当に考え抜くということが求められる環境になって、苦しみながらも、「思考する」力がついていったように感じます

また、新たな領域に行くたびにアップデートが求められ続け、だからこそ「学びに終わりはないのだな、ずっと学び続けなくてはいけないのだな」ということも痛感させられました。この価値観を形成できた点で、この時期の経験がキャリアのなかでのとても大きなターニングポイントと言えるかと思います。その時々の実力以上に厳しいお題をいただき、自由にやらせてもらえる環境を与えてもらったからこそ、学び続ける大切さを知り大きく成長できた実感がありますね。

そして入社5年目になり、それまで担当したなかでも最も深くコミットした案件を「最後までやり切りたい」という気持ちが芽生えてきました。コンサルタントはプランやアイデアを提示するのみで、最終的な意思決定はしない立場ですが、当時担当していた案件については「全力でやり切って成果を出したい」「成長に伴走して、最後まで責任を持ちたい」と思ったのです

その思いに基づき、プロジェクトとして支援し、立ち上げたKDDIの新規事業会社に転職することに。転職後は10社超のスタートアップ企業のM&AやPMI、大手企業との資本業務提携及びジョイント・ベンチャー設立などをリードさせていただきました。

4年目からは役員も務め、経営の難しさと楽しさも感じましたが、入社から7年ほどが経ったころ、自分の成長角度が鈍化しているという危機感をもつように。自分が成長できる環境に再度チャレンジをしようと考え、同社の退職を決意しました。

やり切ったと言える仕事をたくさん持ちたい。本気で共感できる「人」「事業」を選ぼう

新たな道に進むことにしましたが、次のチャレンジもスタートアップ企業で、ということは決めていました。スタートアップ市場はこの10年でかなり成熟し、10年前とはまったく違った状況になっています。資本調達がしやすくなったことで報酬水準も高まり、優秀な人がどんどん流入してきているだけでなく、経験できる仕事のクオリティも格段に上がっています。

相対的に若手にとっての成長環境も充実してきていると感じるので、私が今学生ならば、スタートアップ企業への就職を考えると思いますね。

スタートアップ企業の良いところは「誰と働くか」「仕事のイメージ」という部分で入社前後のギャップが少ないことです。大きな企業の場合、OB・OG訪問や就活で会った人と一緒に働ける確率や、聞いたとおりの仕事をする確率はかなり低くなりますが、スタートアップ企業はその部分の誤差が圧倒的に少ないです。

八重樫さんからのアドバイス

スタートアップ企業のなかでも当社Micoworksにジョインすることを決めたのは、「顧客志向で、かつ大きな成長可能性を秘めたプロダクト」と「成長意識が強い経営陣」の両方に魅力を感じたことが理由です。

背景としては、キャリア2社目でビジネスの起点をどこに置くかの重要性に気づき、「次は顧客志向を貫き通せるような仕事がしてみたい」という気持ちが芽生えたことがあります。コロナ禍でも、本質的に顧客志向であることは生き残る会社の条件である、と改めて実感しました。顧客志向がないプロダクトやサービスは短命に終わりやすいです。顧客への価値提供にこだわり、顧客の事業に絶対に欠かせないインフラになれた企業だけが生き残っていく、とも考えています。

また、以前はデジタル広告の領域で仕事をしていましたが、Googleなどの圧倒的に強いグローバル企業がいるなかでは、「スタートアップという立場で本当に勝ち切れる領域とはどこなのか」をちゃんと考え、そこにフォーカスしなければ勝ち続けることは難しいという学びもありました。この観点で、市場の見極めにおいても当社のプロダクトは非常に優れていると感じ、大きな成長可能性を感じました。

そして最後の決め手になったのは、経営陣の成長意識が非常に高いことです。代表を筆頭に「圧倒的に成長しよう、学び続けよう」という気持ちがあり、具体的な努力やアクションを続けている。「こういうチームで仕事ができる環境に身を置きたい」と感じました。

Micoworksは2030年のVISIONとして「Asia No.1 Brand Empowerment Company」を掲げており、そのチャレンジを代表の山田と一緒に成し遂げることが、私自身の現在の目標です。

自分自身のキャリアに関しては、人生が明日終わるというときに「やって良かった」と思える仕事を何個作れるかな、ということを考えます。どんなにプロセスがつらかったとしても、終わってみれば「やって良かった」と思えている仕事は多くあり、一緒に頑張ったメンバーたちは皆大切な仲間になっています。そうした「本気でやり切る」という仕事経験を1つでも多くしていくことが、今後のキャリアビジョンです。

八重樫さんが贈るキャリア指針

取材・執筆:外山ゆひら

この記事をシェアする