AI時代には「本質力」を身に着けよう|主体性と頼る勇気が成長のカギ

マイスターエンジニアリング 代表取締役社長 平野 大介さん

マイスターエンジニアリング 代表取締役社長 平野 大介さん

Daisuke Hirano・早稲田大学第一文学部卒業後、米国ハワイ大学人類学修士、米国コロンビア大学経営学修士(MBA)を取得。新卒でみずほ証券に入社し、債券マーケット関連業務およびM&Aアドバイザリー業務に携わる。その後、ビジネススクール留学を経てマッキンゼーに入社。さまざまな経営領域におけるコンサルティング業務に従事する。2016年にマイスターエンジニアリングに入社し、ファシリティ事業部長、経営企画部長を経て、2018年4月より現職

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いつからだってキャリアは変えられる。「今」やりたいことに正直になろう

大学院までは学者を目指していましたが、心機一転ビジネスの道へ進むことを決意しました。

高校時代に哲学に興味を持ち、大学は文学部に進学。学者になることを目指し大学院まで進学しましたが、その途中で「学校教育で一般的なレールに沿って生きること」に疑問を抱くようになりました

また、大学院で人類学を学んでいる際、学者として一線で活躍している教授たちに出会いました。言うまでもありませんが、皆さん専門領域への熱量がとても高く、加えて優れた研究・思考能力を持っていて、自分はその領域に達することは難しいと感じたのです。研究していた分野は応用的な内容でもあり、学者ではなくビジネス方面で社会に貢献しようと思い、方向転換することを決めました。

新卒ではみずほ証券の投資銀行部門に入社し、法人営業を担当することに。若手の頃はとにかく一生懸命仕事をまっとうし、人に助けてもらい成長することができました。

若手の頃、とにかく一生懸命営業をしていると「そこまで熱心なら話を聞きますよ」と、ある取引先がチャンスをくれ、最終的に大きな契約を成立させることができたのです。それは社内でも10年振りのことで「あの取引先との契約を決められたんですね!」と大騒ぎに。ほかにも評価を得ることがいくつかあり、社内転職とも言える、債券マーケットの仕事からM&Aアドバイスを手掛ける部署への異動にもつながりました。

このような結果を出すことができたのは、何よりも一生懸命仕事をするという姿勢と、それを見てくれてチャンスをくれた方がいたおかげです。これから社会に出る学生の皆さんは不安もあるとは思いますが、「精一杯頑張っていたら結果はついてくる」というのは伝えたいですね。

平野さんのからのメッセージ

「本当にやりたいこと」は何か。自分の本質を見極めよう

マイスターエンジニアリング 代表取締役社長 平野 大介さん

みずほ証券でM&Aアドバイザリーの仕事を経験するなかで、事業会社の経営にかかわってみたいと思うように。そこで思い切ってビジネススクールへ留学をして、その後マッキンゼーに入社しました。

コンサルティング業務を経て、本質的な問題解決能力を培うことができました。そもそも本質的な問題は何なのか。どのように物事を認識するべきなのか。コンサルティングでは徹底的に考え抜くことがもとめられ、そこで学び得たことは今の経営にも活きています。

このように「本質をとらえる」という視点は、就活にも役立てることができます。「やりたいことは何なのか」を自分に対して徹底的に問いかけてみてください。ここをきちんと設定しておかないと、給料など最優先ではない条件で比べてしまい本質を見失ってしまうかもしれません。

とはいえ、やりたいことがわからないという人も多いと思います。その場合は「自分が何にモチベーションを感じるのか」を考えてみてください。仕事の意義やミッションを大切にしたいのか、目の前の仕事一つひとつを楽しみたいのか、自分に向いていることを極めていきたいのか。ご自身はどこに心が動きそうでしょうか。

ちなみに当社は最初に挙げた「仕事の意義やミッション」に長けている会社だという自負があります。半導体や自動車などのメカトロ事業と、あらゆる建物のメンテナンスなどのファシリティ事業があり、どちらもインフラ領域なので社会にとって欠かせない存在です。すなわち自分自身も社会的に必要な存在になれるため、仕事の意義やミッションが明確なのです。

どのような仕事や会社であれば自分の気持ちがワクワクするのか、掻き立てられるのかをぜひ考えてみてくださいね

「本質力」を就活で活かす

社会が変わっても活躍できるのは「主体性」がある人

その後当社マイスターエンジニアリングに入社することになったのですが、きっかけは私の知人で当社の社外取締役になっていただいていた方から「平野さんが会社に入ったほうが会社全体のためになるのではないか」と提案を受けたこと。

当時は社長が短い期間で交代することが続いており、実質創業者である私の父からの事業承継に課題がある状態でした。子どもの頃から当社に入社することはない前提でしたが、いろいろな状況が変わってきたこと、またもともと経営を志してはいたので、腹を括って挑戦することを決意しました。

今まで5年にわたり社長として多くの社員とかかわり、活躍する人に共通することが見えてきました。それは、当社の経営理念でもある「至る処(ところ)に主体となる」という姿勢を持っていることです。ただ言われたことをやるだけでなく、自分は何を達成するべきなのか、仕事の目的は何なのかを認識するということです

逆にそのような姿勢がないと「ただ作業をこなしている人」になってしまい、将来的に危険だと考えています。というのも昨今はAIが進化しているので、そのような作業的な仕事はすぐに取って代わられてしまうからです。どんどん仕事が合理化されていくなかで、人間にしかできない仕事を習得し、自身の市場価値を高めていくことが重要です。

人間にしかできない仕事の1つは、やはり「本質的な問題をとらえること」。これは人間の高度な頭脳でないとできません。お客さんでさえわかっていないことも多いので、代わりに本質的な問題を抽出し、問題解決に導くことができるようになると重宝されるでしょう。そして、そのような人は将来的に長く活躍することができるはずです。

平野さんのキャリアにおけるターニングポイント

成長環境のある会社選びを。自己完結せず周りの人を頼ろう

会社選びのポイントは「自身が成長できる環境があるかどうか」です。

会社によっては何年も同じような仕事しか任せてもらえず、「5年、10年経ってもこれだけしか経験を積めなかった……」という事態になりかねません。年齢関係なく若手からどんどんチャレンジできる会社がおすすめです。

そうなると、スタートアップ企業などが候補に上がると思います。ただ、その分会社の安定性が低い場合もありますが、第二の創業をおこなっている当社はスタートアップ企業のような成長環境もありながら経営面も安定しています。若手の育成にも力を入れており、一人ひとりが裁量を持ち、使命を果たすために仕事に励んでいる環境です。

成長環境に身を置いたうえで、仕事ではどんどん周りの人に頼ることが大切です。社会で壁にぶつかったときに自分で考えることも必要ですが「自分だけで完結しよう」とはしないこと。常にオープンな心で尊敬する先輩やメンターを持ち、アドバイスを受け、1人では辿り着けない領域まで成長していきましょう。

平野さんが贈るキャリアの指針

取材・執筆:志摩若奈

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