いつからでもなりたい自分になれる|想像を超えるキャリアをつくる秘訣とは
共同エンジニアリング プラント事業部 事業部長 兼 マルチテック 取締役
Daisuke Nakamura・高校卒業後は専門学校に入学し、フリーターを経て運送会社に就職。その後IT系のベンチャー企業に入社し、役員や子会社の代表に就任。独立を経て、共同エンジニアリングに入社し、現職
一瞬の感情で逃げないこと。困難を乗り越えた先に楽しさが待っている
今までの人生を振り返ると、学生時代には想像もできないキャリアを歩んできたと思います。
高校生の頃は旅行代理店の仕事に興味があり、旅行関係の専門学校に入学しました。旅行に関するアルバイトもはじめたのですが、実際にやってみるとイメージと違い、自分には合わないと思うように。それ以降、旅行関係の道に進むことを断念し、惰性で専門学校に通うようになってしまいました。
専門学校卒業後はフリーターになり、どの仕事も1年は続かず仕事を転々とするように。そうしているうちに20代中盤になり「そろそろきちんと就職しなければ」と思っていたところ、運送会社の仕事を見つけて就職しました。しかし旅行代理店のときと同様にイメージしていた仕事とは違っていて、最初の2〜3カ月は「もう辞めてしまいたい」と思うことも多かったですね。辞めることもできたと思いますが、そこでぐっと食いしばって仕事を続けてみたんです。
すると、仕事に慣れてお客さんに評価されることも出てきて、やりがいを感じるように。たとえ嫌なことがあってもそれを乗り越えると意外と楽しいと感じられることも増えていき、最終的には7年ほど仕事を続けることができました。
一瞬の感情で逃げることや甘えることは簡単なのですが、それを乗り越えた先には楽しさややりがいが待っていることもあります。特に仕事をはじめたばかりの頃は慣れないこともあるかもしれませんが、その先に明るい未来があるかもしれないという視点も持ってみてくださいね。
何かを得るには何かを捨てるしかない。覚悟をもって飛び出そう
運送会社に勤めて7年経ち、年齢的にも30代に差し掛かったころ「このままこの仕事を続けるのだろうか……」と考えるようになりました。現状に不満はなかったものの、自分にとってもっと面白い仕事があるのではないかと思ったのです。
当時はインターネットが広まりつつある時代。私もパソコンでゲームをする中で「いつかゲームを作る側になってみたい」と漠然と思っていました。そんなとき仕事の移動中たまたま聴いていたラジオから、地元の札幌市の取り組みで「IT人材を増やすために3カ月無料の短期講座をする」という内容が流れてきたんです。
「これだ!」と思いすぐさま応募して、まだ講座を受けられるかもわからない中その日のうちに上司に仕事を辞めるという意思を伝えました。
そして運送会社を退職し、無事に短期講座に参加できることに。3カ月間でITについて学びながら資格を取得し、30歳の頃にIT系のベンチャー企業に入社が決まりました。
実は運送会社の頃と比べて給料は半分以下になってしまったのですが、それ以上に仕事が楽しくなった喜びのほうが大きかったですね。「不満はないけれど惰性で働いていた」という状態から「自分の意思でやりたいことを仕事にした」ということに満たされ、とても楽しい毎日を送ることができました。
この経験から学んだのは「何かを実現するためには何かを捨てないといけない」ということ。私の場合は長年働いていたという安定性、そして給料の面は一旦置いておき「やりたい仕事に挑戦する」という選択をしました。あれもこれも手に入れたいというマインドではなかなか上手くいかないのではないでしょうか。何かを捨てる覚悟を持ち、思いを実現するためにすぐに行動に移してみてくださいね。
キャリアアップの秘訣は「楽しむこと」と「決断力」
IT業界に身を置いてからは「仕事が楽しい」という思いによって、キャリアアップを実現してきたように思います。
とにかく仕事に対する熱量を高くもって楽しんでいると、上を目指したいという思いがなくともどんどん結果が出たんです。ベンチャー企業ということもありますが、入社2年後には執行役員になり、給料は約5倍に。その後も子会社の代表を任せてもらえたり、会社の上場も経験できたりしました。「仕事が楽しい」という思いにあとからすべてがついてきたような感じです。
そして、自分で仕事をしてみたいという独立心も湧いてきました。会社で勤めていながらも周りから「こんな仕事をやってみないか」と声が掛かることもあったのですが、当時は副業が一般的ではなかったので、せっかく周りが誘ってくれても引き受けることができなかったんです。どうしても独立していろいろな仕事をしてみたいと思い、40代前半で独立し、声が掛かっていた5社くらいの仕事を受けながら自分でも事業を興しました。
しばらくは悠々自適に仕事をしていたのですが、あるとき当社共同エンジニアリングの知人から連絡があり「当社に入社して仕事を手伝ってくれませんか」と頼まれたんです。共同エンジニアリングは国内外にグループ会社をもち、社員数は約3,500名の大企業。これほど大規模な会社に入社するチャンスはなかなかありませんし、ましてや40代後半という年齢を考えると「このチャンスを逃すわけにはいかない」と思い、入社を決断しました。
社会では「主体性」がもとめられる。ありのままの自分で就活に臨もう
就活では「素直さ」と「主体性」を意識してほしいですね。
新卒の方の面接をしていても思うのですが、なかには面接向きの言葉で話している人も多いなと思うんです。しかしそうではなく、本音で自分の思いに向き合い、面接でも本音を話すことのほうが大切だと思います。取り繕った自分を評価してもらって内定したとしても、入社後にギャップを感じてしまいます。最初から本音で話してわからないことは聞き、ありのままの自分に合う会社に入社できると良いのではないでしょうか。
また、社会人になると主体性がもとめられるので、就活のときから主体性をもって取り組めると良いですね。具体的には「会社に期待しすぎない」ことが重要です。受け身な姿勢で「会社にいろいろ教えてほしい」「あまり残業はせず高い給料がほしい」などと要望を多く持てば持つほどに、入社後のギャップや不満が増えてしまうでしょう。最初からあまり期待しすぎず、むしろ「自ら仕事を楽しもう!」という心掛けが大切です。
もちろん会社として社員にいろいろ教えることは義務ですし、会社で学べることがたくさんあるというのは事実です。ただ、それを当たり前だと思わないほうが企業も学生もお互いに気持ちよくかかわり合えると思います。
また、社会人になったら「臆せず自分を表現すること」も大切にしてほしいです。たとえば誰もやったことがないことに積極的にチャレンジするのも良いでしょう。私もベンチャー企業に勤めていた頃、おそらく当時の札幌ではどの企業も実施していなかった「学生向けワンデーインターン」を開催したことがあります。東京では当たり前のことでしたが、札幌でインターンを実施する企業はなかったのですぐに話題になり、有名大学のゼミ生なども参加してくれる人気のインターンになりました。
このように周りの空気に流されずに自分の意思で新しい取り組みをすることで、結果につながることも大いにあります。ぜひ社会人になったら、その環境での「出る杭」になることも意識し、周りの先輩にも助けてもらいながら、キャリアアップを実現していただけたらと思います。
取材・執筆:志摩若奈