情熱に勝る能力はない! 自分の価値を感じられる環境を選ぼう

村上木材 代表取締役社長 佐原 謙次さん

村上木材 代表取締役社長 佐原 謙次さん

Kenji Sahara・大学卒業後、大手IT企業でSEとして働く。1995年、村上木材に入社。ネットワーク構築から、営業職などを経て、2016年より代表取締役社長

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ファーストキャリアでミスマッチを経験。「働きたい環境」で企業を選ぼう

新卒で選んだのは大手IT企業。SEとして仕事を始め、出向先で1人で個室にこもって作業する日々でした。ずっとこんな形で働くとは思わないものの、自分にあった環境だとは思えず、さらに上司に意見をしてもなかなか受け入れてもらえなかったので、悶々としていました。

そんなとき妻の父が経営する会社で、LANを構築するために情報系の知識がある人を雇いたいということで声がかかりました。これはまさに“渡りに船”だと思い転職しました。

まだSEとしての経験は浅かったものの、社長がもとめている内容はそれほど難しいものではなく、さらに実際のネットワークの構築は外部業者が行い、自分はクライアントとしてその対応を行うことがメイン業務だと聞かされて、できそうだなと思いました。その上、給料も良かったので、迷いはなかったですね。

最初の会社でSEとしての仕事のイロハを叩き込まれたからこそ、その後転職して仕事ができたのだと感謝はしています。

しかし、新しい会社に身を置いてみると、やっぱり前の会社は自分には合わなかったと痛感しました。ネームバリューや一部上場という分かりやすい価値だけで選んで失敗したと思っています。自分はどんな環境で働きたいのか、そしてそんな環境があるのか、もっと本質的に考えるべきでしたね

名前や外聞の良さに満足しかけているときには、ぜひ一度自分が本当にもとめるものを問い直して齟齬がないか、見直してほしいです

佐原さんのキャリア変遷

自分がいる価値を感じられる環境をもとめよう

ひょんなことから入社した村上木材は、とてもアットホームな会社でした。

社員寮に賄い付き、入社したばかりでも社長と直接話せるー。「中小企業だから」といえばそれまでかもしれませんが、前職では部長と話すことも稀だったので、とても新鮮でした。さらに最初から裁量権も大きく、どんどん仕事を任せてもらえました。自分で考えたことを実行できるのもうれしかったですね。クリエイティブな仕事ができていると実感でき、やりがいを感じられました。

時代は変わりましたが、自分が社長となった今も、この社風だけは変えまいと思っています。

1〜2年目の社員にプロジェクトリーダーを担当してもらうこともありますし、3年目の社員と社長が語る会も設けています。「給料を上げてくれ」とか、ガンガン言われてますよ(笑)。若手も当然のように意見を言い、リーダーとしてプロジェクトを引っ張る、上司や社長にも意見があれば言う。それがスタンダードです。

もちろん上司や先輩にとって歯痒い場面もありますが、尊重して見守り、受け止めます。こうやって自律した人材を育てる風土を守っています。

佐原さんが転職をして感じた居心地の良さ

自分がやりたいこと、意見を発信できて、それを受け止めてもらえる会社は働く人にとって居心地が良いですよね。若手だろうと、ベテランだろうと、平社員だろうと関係なく、やってみる価値があればチャレンジする。学生の皆さんもこの観点で、企業を眺めてみることをおすすめします。

しかし、社風は外側から見ただけではわからないもの。一番実態が分かるのは、現役社員の生の声でしょう。なんとかして現在働いている人にコンタクトして、先輩社員に話を聞いてみてほしいですね。インターンシップやOB訪問、SNSを通じた交流など、昔よりも社員を捕まえるのは容易なはず。手間を惜しまず、入社や面接の前に社風を少しでも体感できると良いですね。

情熱に勝る能力はない! 一生懸命に打ち込んでいれば、仕事は楽しくなる

村上木材 代表取締役社長 佐原 謙次さん

素人の自分が、ここまでキャリアを続けてきて、社長にまでなれたのは、「情熱」があったから。たまたま木を好きになることができたからだと思います。

木材のことは何も知らずに入社したのですが、仕事を進めていけばいくほど、木材の魅力にハマっていきました。種類はもちろん、品質によって値段がつけられていく木材は、商材としてとても魅力的でした。わからないなりに勉強し、周りから話を聞き、現物や顧客に向き合って覚えていく…。一生懸命打ち込んでいるうちに、気づかずに好きになることってあると思うんです。夢中になるというか。皆さんもそんな経験を積んでほしいです。

佐原さんからのメッセージ

情熱に勝る能力はないと思っています。何事にも冷静で熱くならないのは、楽だけれどつまらないと思いませんか。必死に時間や力を注いで頑張ってみた先に情熱が生まれることもあると思います。

好きなものがない、やりたいことがないと嘆く前に、まずは目の前のことに熱中してみてはどうでしょう。

佐原さんが考える、情熱の育て方

情熱と評価は循環する! 経験の積み重ねで成長を勝ち得よう

情熱と評価は循環するもの。経験を積み重ねて成長しよういくら情熱を持って頑張っても、報われなければ情熱も冷めてしまうこともあるでしょう。

社会人であれば、やはり頑張れば頑張っただけ、それに見合った報酬や地位がほしいもの。その点でも当社は十分な待遇を確保していました。だから、また頑張れたんです。現在でも決算賞与という形で、社員の頑張りをそのまま還元しています。

情熱と評価待遇の好循環

若手社員と話すと、給与や昇進より、休日や残業時間などが気になるようです。寝食を忘れて没頭するように働いたら、その分待遇も良くなり、また頑張ろうという気持ちになるー。

そんな当たり前のサイクルが、信じられない社会・時代なのだと思います。でも、頑張れば報われるのが王道。少なくとも当社はそうありたいんです。社員ファーストの先に、カスタマーの満足があると信じて、私はまずは社員の幸せのために奮闘しています。

頑張れば形になる。成長すれば待遇が良くなる。やっただけ報われる。そんな経験を積み重ねながら、成長を続けていってほしいです。

他人のために働けることが「強さ」につながった

成長の途中には困難や奮闘があるでしょう。私もただの社員から役員へと責任や役割が大きくなる中で、周囲と意見が合わなかったり、自分の考えを受け入れてもらえなかったりして、悩むこともありました。そんな中でも心折れずに続けられたのは、社員や会社のためだという想いがあったから。

自分のエゴだけでなく、社員のため、その先のお客様のためだと思うと、心が強くなります。意外に自分のことだけを考えている時って、諦めてしまうものなんですよ。自分のやっていることの意義を感じられれば、より強い意志を持って貫くことができますよ。 

辛い、しんどいと思うときには、なぜこれをやっているのか、一度思い返してみると良いかもしれません。そこに誰かへの想いがあれば、きっと壁を乗り越えていけるはずです。 

柔軟性と尖った個性で世界へはばたこう

これからの時代、日本にとどまっていたら成長はないと思います。当社も海外へ製品を輸出しようと奮闘中です。グローバルな感覚を持った人は、活躍の範囲を広げられるでしょう。コロナ禍が明けた今、そんな将来を展望して、学生時代に少しでも海外の風を浴びてみるのはどうでしょう。

海外に出れば日本とはずいぶん違う環境にさらされるし、日本にいても今後は絶えず変化の波が打ち寄せるでしょう。だからこれからは、柔軟性もキーになってくると思います。変化に柔軟に対応し、前向きに取り組める能力が必須になりそうです。そのためには、アルバイトやボランティア、さまざまな取り組みを通して、社会を知り柔軟に対応できるようなマインドを育んでおきたいですね。

さらに尖った個性があると、なお良いと思います。

たとえば日本の家具や木製玩具は、とても人気です。さらに当社では、日本の木造住宅も輸出しようと考えています。海外の市場にとって日本の木工品や木造建築は個性があるから、魅力的なのだと思いますし、誰にも持ち得ない、唯一無二の個性を持った尖った人材は、きっと日本だけでなく世界でも評価されます。

柔軟で個性的な人材が、国を超えて羽ばたいていくのを期待しています

佐原さんが贈るキャリア指針

取材・執筆:鈴木満優子

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