青い鳥症候群に陥らないで! 「自分の持ち味」を生かせる仕事を探してほしい

サプリ 代表取締役社長 酒井 雅弘 さん

サプリ 代表取締役社長 酒井 雅弘 さん

Masahiro Sakai・1978年、東京大学教育学部教育心理学科を卒業後、日本リクルートセンター(現・リクルートホールディングス)に入社。人事教育事業を皮切りに通信事業、コンピュータ事業など数多くの事業責任者を務める。1995年、取締役に就任し、その後10年取締役を務める。2006年にリクルートを退任。長年の夢であった蕎麦屋の経営を経て、2017年、営業支援を行うサプリの代表取締役社長に就任。2021年、CTI認定プロフェッショナル・コーアクティブ・コーチ(CPCC)を取得しコーチング活動を開始

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「心理学」を学びたいと決めた高校時代。教育学部から縁あってリクルートに入社

大学進学を前にして、高校2年の頃に「心理学」という学問の存在を知りました。それまで、自分が興味がある学問は何なのかよくわからなかったので、図書館に足を運んでは色々な本を読んだことを覚えています。そこで気づいたのは、どうやら私は人間の気持ち、心の動きのようなものに興味があるということ。「心理学」という学問を学べる学部や学科があることも知って、自分の進むべき方向が決まりました。

兵庫県出身の私は「家を出たい」という気持ちが強くあったので、心理学を学ぶことができる東京大学の教育学部に進みました。学生時代に熱中したのは、男子だけの合唱クラブ、グリークラブです。学問がもっと好きなタイプであれば、そのまま学者の道を進むという選択肢もあったと思います。しかし、私はそこまで学問が好きではなかった。迷わず、就職の道を選びました。

当時は今と違って、就職活動といえば分厚い企業情報が載った就職冊子が送られてきていた時代です。就職活動の王道は、その冊子を読んで興味のある企業にハガキを送るというのが一般的なスタイルでした。ところが、なんと教育学部の学生にはその冊子が送られてこないんです。教育学部はどうやら企業からのニーズがないらしいな、と思ったときに、唯一教育学部の学生向けに案内がきたのがリクルートでした。

新入社員教育のモニターのアルバイトということなので気軽に参加してみたところ、実はそれは採用活動でした。1泊2日程度のアルバイトが終わった後に呼び出しがあり、「リクルートに来ませんか?」との誘いをいただきました。

とにかく1社でも内定をもらっておきたい。そう考えて、軽い気持ちで内定をもらいました。その後は卒論が忙しくなり、就職活動は一切せずにそのままリクルートに入社を決めました。結局、就職冊子は来ないまま。いわゆる業界研究や企業研究をしたり履歴書を書いた経験もないまま社会人としてのスタートを切りました。 

新人時代の営業での苦い経験が原点となり、営業支援がライフワークに

入社後、最初に配属されたのは、人事教育事業部の営業です。主に、社員教育のプログラムを企業に営業する仕事を3年間やりましたが、正直、まったく好きになれませんでした。思うように実績も出せず、見かねた上司の判断で情報システム部に異動となりました。

システムの仕事に就いてみると、一転してとても楽しい。実は、大学で心理学を学ぶ中でデータ解析はよくやっていたんです。プログラミングなども多少はやっていたので馴染みがあって、自分が希望した仕事ではないのにありがたいことにやりがいのある仕事に出会うことができました。

企業で働くことの良さの1つは、こういうところではないでしょうか。楽しいと思える仕事、自分に合った仕事と出会うのは簡単なことではありませんが、ある部門の仕事が合わなくても別の部門に移るだけで楽しく仕事ができる可能性があります。上の人は部下のことをよく見てくれていたりもするものです。

好きになれなかった「営業」の仕事がライフワークになった経緯

その後も色々な部門に異動し仕事をしてきましたが、現在に至るまでずっと、何らかの形で営業を支援することがライフワークとなっています。

今振り返ると、私の原点は、新人時代のつらかった営業の仕事にあると感じています

ライフワークにもなった営業の“醍醐味”とは

サプリ 代表取締役社長 酒井 雅弘 さん

リクルートを辞めて17年経った今は、サプリというオンラインの営業支援事業を行っています。28年働いたリクルートを2006年に退社し、途中趣味が高じて蕎麦屋をやって、結局またライフワークである営業を支援する仕事をしていることになります。

今、「自分はどんな仕事が向いているのか?」と考えている皆さんの中には、営業という仕事に抵抗感がある人も少なくないかもしれません。そんな皆さんに私は、営業はスキルをしっかりと身に付けれさえすれば恐れることはない、ということを伝えたいですね。システムをつくるのにプログラミングスキルを習得する必要があるのと同じように、営業もセオリーを学べば誰でもできるようになるのです。

ところが、多くの企業では「はい、頑張って営業行ってきてね」で終わってしまうことが多い。これだと、元々営業センスのある人しかうまくいかないのは当然ですよね。そうでない人はとにかく辛いし、会社にとってもうまく営業ができないのは損失です。

「営業って大変そう」「難しそう」と心配しなくても大丈夫です。営業もプログラミングを学ぶようにきちんと勉強すれば、誰でもある一定レベルの成績は出ます。どうぞ安心してください。

さらに、営業は、人の気持ちをキャッチして、その人が何に困っていて何を求めているかをわかるということが出発点の仕事です。営業を学んでいくと、知らず知らずのうちに人の気持ちを理解したり寄り添ったりといった配慮ができるようになるという大きな魅力があることを知ってほしいです

決断に迷ったら自分の意思ではなく、「天の意思」を考えてみる

今振り返ってキャリアのターニングポイントを1つあげるなら、東京大学を選び自分の意思で東京に出てきたことだと思います。

両親は地元の大学に進むことを期待していましたが、私はどうしても家を出て自分一人で生活してみたかったんです。あのまま地元の大学に進学していたら、リクルートとも縁はなかったでしょう。そして、まったく別のキャリアを築いていったはずなので、少々強引に上京したことがターニングポイントとなりました。

結果、リクルートで28年も働き、同期の中で一番最後まで残ったのが私です。当然ですが、壁にぶつかったことは何度もありました。

今でも覚えているのは、はじめて管理職の立場になったときのこと。なかなかチームをまとめられず苦労しました。思うように仕事ができない中、力を入れたのがアルバイトで働いている方たちの働く環境を良くすること。組織の中でどうしても弱い立場の人たちの味方になることで、結果とても感謝してもらって、それが逆につらい自分の大きな励みになったことを今でもよく覚えています。

この経験から私は、ちょっとしたことで他人から感謝されたり評価されることでパワーが湧いてくることがあること、それがきっかけで自信がついて仕事がうまく回り始めることもある、ということを学びました。仕事の原動力って、どこから生まれてくるかわからないものです。

リクルートで長く働くうちにたどり着いた信条は、「則天去私」=天にのっとり、私を去る

誰しも「自分がこうしたい」「こっちをやりたい」というのが必ずありますよね。その気持ちを一番優先して自分の考えに従って決めてきたこともあります。でも、そうやって「自分がこうしたい」の方を選ぶと、毎回壁にぶつかりました。

「どうやら、あの選択は間違いだったんだな」という経験を何度もしてからというもの、考え方を改めました。自分の意思ではなく、天の意思はどこにあるのかを考える。そう考え始めたところ、不思議とうまくいくことが多くなりました。

自分の気持ち、やりたい方を選ぶこともときには大切なことだと思います。しかし、天命に耳を傾けること、つまり周りの意見に耳を傾けることにも大きな意味がある、と若い皆さんには伝えたいなと思います。

酒井さんが「則天去私」を信条とする理由

「自分の持ち味を活かせる仕事は何か? 」という視点をもって働こう

これから社会人になっていく皆さんに伝えたいのは、「自分の持ち味」を見つけることの大切さを知っておいてほしいということです。これから、色々な仕事と出会い挑戦していくと思います。今は昔と比べて働き方も多様化していますから、なおさらです。

自分の力を生かせる仕事は何だろう? と、色々な仕事にトライするのはいいことだと思います。しかし、「もっといい仕事」「もっとかっこいい仕事」を追い求めるだけでなく、「自分の持ち味を生かせる仕事は何か?」という視点を持って働き、どこかのタイミングでその「持ち味」を見つけてほしい、と願っています。

酒井さんからの大切なメッセージ

「もっといい仕事は?」「もっと自分に合う仕事は?」とずっと青い鳥を探し続けて、そのせいで今の仕事に打ち込めない人が結構いるなと感じています。青い鳥症候群という言葉があります。青い鳥を探し続けているだけではだめですし、いつまでたっても見つけられないと、いう人が多いのも事実です

社会からもとめられているのは、まずは目の前の仕事を一生懸命やってみて、どこかのタイミングで「自分の持ち味を生かせる仕事はこれなんだ」と決められる、見つけられる人だと私は考えています。目の前の仕事を一生懸命やらないと、持ち味を見つけようにもなかなか見つからない。このことをぜひ知っておいてほしいと思っています。

不得意分野ではなく得意分野に目を向けることで成果を生み出そう

自分の持ち味を見つけるためには何をしたらよいか、私なりにもう少し具体的なアドバイスをしたいと思います。それは、できないことではなくて、できることに目を向けてほしいということです

たとえば、私は営業向けの研修をやっていますが、研修を受けると誰もが、いかに自分ができないかということを思い知ることとなります。そうすると、どうしても暗くなるんです。それはしかたがないこと。でも大事なのは、できないことではなくて、できることを探すこと。「営業として自分はこれならできる!」という点に目を向けていくことが大事です。

不得意分野ではなく得意分野を見つける。そして、その得意分野に着目しながら前を向いてやっていくと、多少なりとも成果が出るようになっていきます。すると周りからも認められ、自信がついてくる。そんな風にいい循環が回り始めます。この循環が回ってくると、どんどん結果が出るようになります。これは私の実体験からのアドバイスです。

自分の得意領域を見つけるためには、自分のことをある程度理解しなくてはいけません。自分は何が好きなのか、どういうときに頑張れるのか、何のためであれば必死になれるのか、といったことを知ることです。そのためには、人とのかかわりが必要。学生時代にはぜひ、サークル活動などに積極的に参加しましょう。「面倒だからやらない」ではなくて、「大変だけどやる」を自分で選んでいくという姿勢が大切ですよ。

企業選びは「3年頑張れそうな会社」を基準に考えよう

最後に、企業選びについてです。企業を判断する際の基準として、「3年頑張れると思える会社」を選びましょう、とアドバイスしたいと思います

今はネットで検索すれば色々な情報に触れることができますから、逆にどこに着目すればよいのか、何を信じればよいのかわからなくなってしまうのではないでしょうか。

逆説的ですが、企業の本質を知るという意味では入ってみないと絶対にわかりません。企業側は良いことしか言いませんし、よく見せようと必死です。どれだけリサーチを重ねて「ここが自分にとって一番いい職場だ」と選んでも、入社前に得られる情報は実は薄っぺらいものである、と理解しておいた方がよいかもしれません。

皆さんがファーストキャリアでどんな仕事に就こうとも、自分自身の持ち味を生かせる仕事を見つけられるよう願っています。

どうか、青い鳥症候群に陥らないように。自分にあった仕事を探そうとするばかりに、今の仕事に打ち込めないでいるのはもったいないです。自分の得意なことに目を向けて、皆さんのキャリアの良い循環が回り始めるよう応援しています。

酒井さんからのメッセージ

取材・執筆:小内三奈

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