就活は世を知ることができる貴重な機会! 失敗から得た「できること」を探す企業選択の視点とは

ナリス化粧品 執行役員 人事部長兼秘書室長 守谷 太吾さん

ナリス化粧品 執行役員 人事部長兼秘書室長 守谷 太吾さん

Daigo Moriya・新卒でナリス化粧品に入社し、1年目に国内営業、2年目に製品企画を担当後、海外事業部に異動し、大型プロジェクトに参画。アジア各国に店舗を構える大企業向けの商品開発を手掛ける。子会社への出向や経営企画などを経て、人事部長に就任。その後秘書室長も兼任し、以降現職

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自分の背中で見せること。自分で決めたことをやり切れば周囲がついてくる

組織を率いるには「自分の背中で見せること」。これは大学時代から現在まで続けていることです。

大学では勉強はそこそこに、バスケットボール部とアルバイトに力をいれていました。バスケットボール部は部員が少なかったこともあり、キャプテンの候補がおらず、仕方なく私がキャプテンを務めることに。バスケットボールが特に上手いわけでもなかったので、プレイを通してチームを引っ張ることはできず、「こんな自分がリーダーシップを発揮するにはどうすれば良いのだろう……」と思い悩んでいました。

最終的に辿り着いたのは「キャプテンとして本気で部活に取り組む姿を見せる」ということでした。正直それまでは練習で手を抜くこともあったのですが、キャプテンになったからには誰よりも真面目に頑張らねばと考え、練習前に自主的にアップをしたり、毎日欠かさずトレーニングをしたりしました。その姿を通して、自分なりにリーダーシップを発揮できたのではないかと思います。

この経験は今でも活きています。現在は人事部長の立場で社員が働くうえでのルールを定めたり、職場環境を整えるという役割を担っています。そのときに大切だと思っているのは、指示を出すだけでなく、自分自身が誰よりもルールを守るということです。言行不一致では信頼を得られません。自らが決めたことを体現することで、みんなを率いていきたいというのは今でも変わっていませんね。

就活が上手くいかなくても立ち止まらないこと。「できること」に着目するのもおすすめ

ナリス化粧品 執行役員 人事部長兼秘書室長 守谷 太吾さん

自分が就活生の頃はいわゆる就活氷河期で、就職が難しいといわれていた時代でした。しかしどんな状況でもまずはチャレンジしようと、第一志望の業界を目指すことに。とにかく音楽を聴くことが好きだったので、レコード会社を志望することにしました。

ところが調べていくうちに、その当時レコード会社に就職するには「ツテ」が必要であることが多く、一般募集がほとんどないことがわかりました。やりきれない気持ちではありましたが、レコード会社への就職は諦め、第二志望のマスコミ業界での就活をスタートしました

マスコミ業界での就活は順調に運び、ある新聞社の最終面接まで進むことができました。正直自分でも手応えを感じていたので、おそらく合格しているのではないかと思っていましたね(笑)。

内定の場合は自宅の固定電話に連絡が入ることになっていたのですが、当時はまだ携帯電話がなかったので、指定された日時に自宅で待機していなければなりませんでした。

しかし合否連絡が届く日にどうしてもアルバイトを休むことができず、気になりながらも出勤。アルバイトが終わってから留守電を確認すると20件ほど着信履歴が入っていたので、おそらく合格の連絡だったのだと思います。しかし電話に出ることができなかったので、最終面接まで進んだ新聞社から内定をもらうことはできませんでした。

仕方ないとはいえせっかくのチャンスを逃してしまった……。やりきれない気持ちになりましたが、このまま立ち止まるわけにはいかないと、すぐに次のアクションを起こすことにしました。第一志望、第二志望の業界に行くことができなかったので、次は「やりたいこと」よりも「できること」に目を向けてみようと思ったのです。

外国語大学で英語を専攻していたので英語力とバスケ部でのキャプテン経験がアピールできるのではと考え、商社や海外取引のあるメーカーが選択肢として頭に浮かびました。いくつかの会社の面接を受け、そのうち当社ナリス化粧品に入社することになりました。

決して順調な就活ではありませんでしたが、自身の「できること」に注目し企業選びをおこなったことで、結果最適な企業に巡り合えたと今では思っています

守谷さんからのメッセージ

全力を出し切った先にしか「感動」体験はない

当社に入社した頃は、ルーチンワークも多くなんとなく仕事をこなすだけの平凡な毎日でした。しかし、ある出来事をきっかけに、自分の仕事に対する考え方が大きく変化しました。

入社3年目のときに海外事業部に配属となり、会社の代表として大型プロジェクトを担当することになったのです。1年目に国内営業、2年目は商品企画を担当していたので、その経験を活かせると抜擢していただいたのだと思います。

クライアントはアジア各国で多店舗展開をしている大企業で、先方ブランドの化粧品を開発し、アジア各国の先方店舗で販売するというプロジェクトでした。

大企業とのプロジェクトということもあり、先方窓口は役員クラスの方々がほとんどで自分とは比べられないほどの経験者ばかり。「本当に自分で大丈夫なのだろうか……」と不安に押しつぶされそうになることもありましたが、「やるしかない。頑張ってみよう」と腹を括りました。

わからないことは頭を下げて周りの人に聞きながら、当社の開発部門の皆さんに協力してもらいました。何度も商談を重ね、紆余曲折を経てなんとか新商品の発売までこぎつけたのです。

そして、新商品の売れ行きを観察しようと発売当日に店頭に出向いたときのこと。開店直後に入店した2人のお客様が、その商品を手に取り、二言三言会話を交わしてレジに進み、購入していきました。

「自分が一生懸命手掛けた商品をお客様が買ってくれた!」。今までに感じたことのないような感動を覚えたことを今でも覚えています。同時に、仕事でこんな気持ちになれるんだととても驚きました。

プロジェクトはとても大変でしたが、仕事に対する充実感を感じられたことで「またこういう経験ができるのなら、これからも頑張って成果を出していきたい」と思ったんです。このプロジェクト以降仕事に対する本気度が変わり、どんどん仕事が楽しくなっていきました。

仕事の本質は周りからの期待に応えること。「考えるよりも行動」で経験値を高めよう

人事部長と秘書室長になった今、当社の企業理念である「for others〜人様のために〜」に、より共感するようになりました。

「人様のために」は、人のために自己を犠牲にするということではなく、「周りの人の役に立てるように実力を身に付けよう」という意味です。これからも周りの人から期待されること、もとめられていることに応え続けたい。もし期待に応えられる実力がなければ、実力を身に付けるために努力をしたいと思っています。そうすれば必ず周りの人や世の中に貢献できると信じています。

きっと新入社員であっても、入社後に周りの社員やクライアントから期待されること、もとめられることが必ずあると思います。期待に応えられるようになるためにも、まずはどんどん行動して経験することを大切にしてください。事前によく考えることも大切ですが、石橋を叩いても渡らなければ何も始まりません。失敗しても成功しても経験値を高めることができ、結果成長につなげることができるので、まずは行動を積み上げてほしいですね。

たとえば自主的に本を読んだり、いろいろな先輩の話を聞いたり。普段の業務をルーチンワークにするのではなく、1つでも新しい工夫や取り組みを心掛けるのもおすすめです。

守谷さんのキャリアにおけるターニングポイント

新卒の就活は世の中を知るチャンス。広い視野で柔軟な姿勢を持とう

就活ではまず業界や会社を広く見て、選択肢を広げることがおすすめです。

私もいろいろな会社の面接を受けたことで「こんな事業をやっている会社があるんだ」などと、たくさんの気づきを得ることができました。新卒の就活はいろいろな会社を回り、正々堂々と企業について質問できるチャンスです。新卒の特権を活かし、あらゆる会社の説明会や面談、インターンなどに参加して話を聞いてみてください。そして多くの選択肢のなかから、最終的に企業や業界を絞り込んでいただけたらと思います。

また、最初から会社の知名度や規模感だけで決めてしまうのではなく、中小企業も含めて考えてみてください。日本の99.7%は中小企業といわれていますし、そのなかには大企業に負けない強みや魅力を持った企業がたくさんあります。

もちろんすでに志望業界や会社がある方は、そのまま就職を目指すのも良いと思いますが、途中で思い通りにいかなくなることもあるかもしれません。そんなときでもいくつかの選択肢があれば、すぐに切り替えてまた前に進んでいけると思うんです。だからこそ、業界や企業を絞りすぎず、広い視野をもっておくことがおすすめです。自分で自分を追い込むことなく、余裕をもって柔軟に就活に取り組んでください。

大事なのは最初から決めつけないこと。食わず嫌いせずにまずはやってみよう

就活生や新入社員の頃は好きなことや嫌いなこと、興味のあることや興味がないことなど、自分のなかでいろいろな気持ちが生まれ、自分の価値感を見つけていく時期でもあると思います。ただ、最初から自分の気持ちを決めつけてしまうのはもったいないと思うんです。「好きなことだけをする」「慣れ親しんだことだけを繰り返す」というスタンスではなかなか成長することが難しいでしょう。まずはどんなことでもやってみて、自分で経験してから好き・嫌い、向き・不向きを判断するのでも遅くありません。

そして、経験を通じて好きなことや興味のあることが出てきても、それは変わりうるものだと思っておいたほうが良いでしょう。そのときどきによってどんな仕事がしたいのか、どのような人とかかわりたいのか、どんなふうに成長したいのかは変化します。いつも自分の心の声に従い、変わることも受け入れながら選択や行動を重ねていってください。

余裕のある就活をする3つのポイント

就活で大変に感じるときもあるかもしれませんが、最終的に自分の軸が見つからなかったと感じても大丈夫です。誰もが確固たる思いをもって就職できるわけではありませんから、「ちょっと面白そう」というくらいで仕事を選んでも良いのです。

最終的にはなるようにしかなりません。やるだけやってもダメなときはダメなので、就活が思い通りにいかなくても気に病む必要はありません

大事なのは、後悔しないようにできることはやり切ること。何事もこだわりすぎず、「遊び(余裕)」をもってのびのびと就活に臨んでください。

守谷さんが贈るキャリアの指針

取材・執筆:志摩若奈

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