ゲームのように“はたらく”を楽しもう! 「疑問に持つ力」がこれからの時代の武器になる

エッジコネクション 代表取締役社長 大村 康雄さん

エッジコネクション 代表取締役社長 大村 康雄さん

Yasuo Omura・1982年生まれ。宮崎県延岡市出身。慶應義塾大学経済学部経済学科卒業後、米系金融機関であるシティバンク銀行(現SMBC信託銀行)入行。2007年、エッジコネクション創業。ワークライフバランスを保ちつつ業績を上げる様々な経営・営業ノウハウを構築、体系化し、多くの経営者が経営に苦しむ状況を変えるべく各種ノウハウをコンサルティング業、各メディア等で発信中。1400社以上支援し、90%以上の現場にて売上アップや残業削減、創業前後の企業支援では80%以上が初年度黒字を達成。東京都中小企業振興公社や宮崎県延岡市商工会議所など各地で講師経験多数

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理屈で説明できないことは世の中にはない! 経営学との出会いがキャリアの原点

世の中のすべてのことが誰かの戦略のうえに成り立っている」。このことに気づけたのが私のキャリアの原点です。

高校時代は宮崎県の進学校に在学しており、大学は慶応義塾大学経済学部に進学。せっかく志望校に入学できたのですが、一日4時間睡眠で勉強漬けの受験生活の反動で大学1年生は飲み歩いていた記憶しかありません(笑)。

大学1年の終盤ぐらいに振り返ってみたときに、「このままではまずい……」と焦りを感じたことが、大学生活を大きく変えるきっかけとなりました。

大学1年の空白を生めるようにとにかく本屋に通って、片っ端から興味のある本を読みあさりましたね。この時さまざまな本を読む中で、とくに経営学に関する本にハマりました。

世の中はすべて理屈で物事の説明がつくということを経営学を通じて初めて知り、のめりこみました。それと同時に、「自分も世の中を動かせるようなビジネスをしたい」と考えるようになったのです。

こんな自分でも社会に影響を与えられる。キャリアの土台となった起業経験

大学1年生の時飲み歩いているときに出会ったのが、MBA(経営管理士)を取得しているオックスフォード大学出身の留学生です。彼と一緒に、あんなビジネスはできないか……などと話しあっているうちに、だんだんと起業への想いが強くなっていきました。

そうして大学生で立ち上げたのが、ネクストサービスサプライヤーでした。「非力な自分でも社会にちょっとでも影響をあたえることができた」と実際に感じられたことが、この起業経験の中でも大きな学びでしたね。

たとえば、とある代官山のカフェに自分たちで考えた「カフェのコンセプト」を提案したところ、売り上げの増加につながりました。たった1つのカフェで得た成果になりますが、社会を少しでも変えることができたという成功体験は、後に再度起業を決意する要因の1つになったように感じます

大村さんからのメッセージ

ビールの輸入や携帯サイトの作成などさまざまなビジネスをおこないましたが、大学卒業と同時に就職を決意。起業した会社を続けなかったのは決してネガティブな選択というわけではなく、有限会社の立ち上げは親の支援がある学生時代のうちだからこそできた経験、と考えていたからでした。

新卒で入社したのは外資系金融機関のシティバンク銀行。今後のキャリアを考えたうえでも、やはり金融系が人材スキルとしては高く評価されるだろうと考えたのが、決め手でした。

いつかまた起業しようとは考えていましたが、社会人になってからの起業は学生のときとは異なり親の後ろ盾はもう存在しない。だからこそ、大手企業でしっかりと成績を出したうえで、会社からももとめられる存在となり、仮に起業に失敗したとしてもやり直すことができる環境を作ることを意識していました。

実際この選択は正解だったと思います。その後のキャリアでも大手企業の知名度は役に立つ場面もあり、大手志向も馬鹿にならないなと思います。

運は人が運んでくる。丁寧な働きぶりがビジネスにつながった

2007年にシティバンクの同期とともに学生のときに立ち上げた企業の商号変更をする形で「エッジコネクション」を設立。設立直後は完全成功報酬型の営業代行業をおこないました。当時は「成約したら〇〇円をもらう」というビジネスモデルだったので、はじめはかなりきつかったですね。

営業をおこなうには、まずは電話をかけてアポ取りをするわけですが、電話をする際は金融機関に勤めていた名残で、アポイントが取れた理由や取れなかった理由など、相手の言ったことすべてを細かくメモする癖がついていました。

それを目にした企業から「断られた理由まで残るならそれが貴重なデータなので、成約ではなく電話をかけるだけでお金を払うよ」という提案をいただいたことがきっかけとなり、現在も主力事業であるテレマーケティング事業が始まりました。これで経営が安定するようになりました。

最終的な成果だけでなく、自分たちの働きぶりを評価してもらったことを起点にビジネスモデルが変わり、そして徐々にビジネスの幅も広がるようになったわけです

大村さんからのメッセージ

友人か、仕事仲間か。挫折経験から学んだ「組織」の在り方

仕事がしんどい時にも踏ん張ることができたのは、一緒に働いていた創業メンバーの存在が大きかったと思います。ひとりでは抱えきれない悩みも、共有できる仲間がいれば乗り越えられる。仲間の重要性は起業したからこそ痛感しましたね。

一方で仕事をするうえで、友人と仕事仲間との一線は引いておくべきとも感じています。

創業メンバーで当社に残っているのは、今では私一人です。決して喧嘩別れのようになったわけではありませんが、起業をするうえで各々の“立ち位置”というのが明確化できていなかったことが原因で、最終的には私一人が会社に残ることになりました。

創業メンバーの中で私一人が会社に残ると決めた際、当時15人程度いた社員が5人まで減少。今まで積み上げてきたものがオールリセットされ、ほぼもう一回起業するような形になりました。振り返れば、この出来事が人生のターニングポイントでしたね。

それからはスピーディーに組織内における各々の立ち位置を明確化し、そして運のいいことに優秀な社員にも恵まれ、今のエッジコネクションに至ります。

仕事は高次元のゲーム! 辛いもうれしいも楽しめるマインドが大切

仕事をゲームのように楽しめる状態が理想だと私は思います。ゲームをやっていれば、必ずしも楽しいシーンだけではないですよね。強いボスに負ける、地道にレベルを上げなくてはならない、など。

でも、ゲームならやりながら失敗しても「じゃあどうやって次は攻略しようか」と、どんどんアイディアが出てくる。仕事もそうやって楽しみながら進められれば、レベルアップしていくことができるのではないでしょうか。

仕事をゲームのように楽しむためには、上司が良いお題設定を与えてくれるか、そして良いアドバイスをくれるかも重要になります

たとえ自分にとって難しいお題に直面した際も、「もう少し早くジャンプすれば乗り越えられるよ」などと適切なタイミングで適切なアドバイスをしてくれる上司に巡り合うことができれば、それは仕事をゲームとして楽しめる環境であるといえるのではないでしょうか。

大村さんが考える、仕事を高次元のゲームとして楽しむ意味

ただし、良いお題設定をしてくれる上司に巡り合えない場合もあるでしょう。そこで知っておいてほしいのが、自分から上司にゲームのゴール設定やお題のおねだりをして、良いお題を引き出すアクションをとることも大切である、ということです。

たとえば「次の人事評価までにどのような行動をすればA評価をもらえますか?」や「あの仕事を自分も挑戦してみたいです!」など、積極的に自分が仕事をゲームとして楽しめる環境を自ら作りに行ってみてください。

ですが、そもそもその質問にすら答えてくれない上司では、自ら環境を作ることも難しいかもしれません。学生の皆さんにはぜひ面接で質問をした際に、真摯に受け答えしてくれるのかという点を見てほしいと思います。

率直な疑問に対して真摯に受け答えしてくれる企業であるなら、入社後も一人ひとりとちゃんと向き合い、適切なお題を出してくれる可能性は高いですよ

人の心は人にしか動かせない。AIにも勝てる「疑問に持つ力」を持とう

最後に学生の皆さんに伝えたいのは、AIに勝てる人間になって欲しいということです。暗記量や正確性は、やはりAIには勝てません。では何で勝つのか。主に2つだと私は考えています。

1つは「人の心を動かすこと」。たとえば文章の作成であれば、AIも言葉のルールやマナーを守った、立派な文章を作成することができますが、人の心を動かすことができるという点においてはまだまだ人間の方が優れていると考えます。

もう1つは「疑問を持つこと」。ChatGPTを利用する際も、はじめは人間が疑問に思ったことを入力する必要がありますよね。だからこそ、常に自分の頭の中で、はてなマークを浮かべられる人が今後もとめられる人材になると考えます。

大村さんが考える、Aiに勝てる人材の特徴

疑問に持つ力を身に付けるためにも、学生の皆さんには、疑問に思ったらすぐ調べるという癖をつけるようにして欲しいです。気になったら調べるという行動パターンが身に付けば、おのずと疑問を持つ癖、疑問を解決する癖を養うことができますよ。

これからは、企業に就職したら一生安泰という世界ではありません。だからこそ、自分が将来どのようになりたいのかという「」「目標」を常に抱き続けるようにしてほしいです。もしまだ夢や目標が見つかっていなかったとしても、目の前の仕事に一生懸命取り組んでいれば、自ずと見つかってくるでしょう。

夢や目標が無く企業選びに悩んだ場合は、給料を1つの指標にしてみても良いと思います。昇給を目指す中で仕事に一生懸命取り組んでいれば、その経験を積む過程で、夢や目標を見つけることができるはずです。

これからキャリアを選ぶ上で、ぜひ受け身ではなく自分自身の目標や価値観を信じ、どのようにステップアップしていきたいのかを学生のうちから考えるようにしてくださいね

大村さんが贈るキャリアの指針

取材・執筆:柳瑛紘

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