やりたいことが決まれば、そこに向かって走るのみ! 目標設定と自己投資でキャリアを切り開こう

エコリング 執行役員 管理部門担当 平井 直大さん

エコリング 執行役員 管理部門担当 平井 直大さん

Naohiro Hirai・2004年3月兵庫県立大学環境人間学部卒。2004年4月に西松屋チェーン入社し2008年退社。2010年公認会計士試験に合格後、NTTビジネスアソシエを経て、2013年に太陽有限責任者監査法人に入職。その後2014年にエコリングに入社し、2017年にコンプライアンス部長に就任。2022年に執行役員となり、以降現職

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「これで飯を食っていこう」。公認会計士との出会いが人生を変えた

「若いうちに組織を動かす側に行ってみたい」。社会人1年目にこの思いが芽生えたことが、キャリアにおける最初のターニングポイントです。

就職活動の段階では、入社後のビジョンはまったく見えていませんでした。企業を見る軸にしていたのは、関西に本社がある上場企業という条件のみ。「大は小を兼ねる」という考えで、とりあえずまずは大きな組織を見てみたい、それなら新卒入社のタイミングがベストだろうと考えたのです

「大手に入って全国転勤を経験して、最後は地元にある本社に戻って活躍する」といったキャリアパスをイメージしつつ、一方で「1つの会社に長居しなくてもいいな、とりあえず大きな組織を見てみたい」という気持ちもありました。 

また上場企業にこだわったのは、就職氷河期だった時代背景が大きい気がします。今の学生には想像がつかないかもしれませんが、当時は「100社受けても受からない」なんて話をザラに聞く時代。私は20社ほどを受けてなんとか数社の内定をいただけたので、そのなかから西松屋チェーンに入社することにしました。

しかし、入社してすぐに「大企業で上り詰める」というキャリアはあまり現実的ではないことを痛感。若いうちから経営側へ行きたいと考えていたので、40〜50歳になって管理職に就くのは自分が希望する将来のキャリアではないな……と思ったのです。そんなことを思い始めた矢先に出会ったのが、会計士という職業でした。

きっかけは入社2年目に店長を務めていた店舗に会計監査が入り、公認会計士が職場に来訪したことです。そこで初めて「こんな仕事があるのか」と知り、調べてみると上場企業の経営者とかかわりを持てる職種とのこと。数字を扱うのも好きだったので「この職業で飯を食っていこう!」とすぐに決心しました。

平井さんのキャリアにおけるターニングポイント

失敗はやがて「強み」になる。発想の転換でポジティブにとらえよう

すぐにでも公認会計士の勉強を始めたかったのですが、「同社で3年は働こう」と決め、計画どおり丸3年で退社。そこからすぐに、公認会計士試験へのチャレンジを開始しました。ここが2つ目のターニングポイントです。

会計士試験には「一発合格」の目標を立てて挑みましたが、結果的には合格までに3年を要しました。この3年間はキャリアの中でいちばんつらかった時期ですね。特に2回目の試験は受かると信じ込んでいたので、ショックが大きかったです。

しかしあとになってみると、このときの経験は自分の強みに変わっていました。「失敗の先には成功がある」とわかったので、失敗を恐れずにチャレンジするマインドが身に付きましたし、失敗したときの仲間のつらさや痛みにも心から共感できるようになったからです。この2つは、人と協働しながら物事を成し遂げていくためには絶対に必要な要素だと思います。

就職活動中にも失敗や挫折を感じることがあるかもしれませんが、「この経験はあとから絶対に役立つ、神様が与えてくれたものだ」くらいに受け止め、必要以上に落ち込まないことをおすすめします。

失敗は失敗だと自分で思わない限り、そして諦めずに挑み続ける限り、失敗にはなりません。たとえ50社の採用試験で落ちても、51社目に受かれば成功に変わるわけです。50社落ちた経験やエピソードは、時間を経てば自分の「強み」に変わっていく。そのことはぜひ覚えておいてください。

「失敗した」と思ったときの発想の転換法

晴れて会計士資格を取得してからは、再び就職活動を始めました。大きな会社の会計の中枢を見たいと考えていたので、まず最初に考えたのが「ビッグ4」と呼ばれる4つの監査法人。日本の上場企業のほとんどの監査を担っているのがビッグ4なので、やりたいことを実現するには最適だと考えたのです

しかし、残念ながらビッグ4から内定をもらうことができませんでした。それならば大きな事業会社に入ろうと考え、NTTグループ全体の間接業務を担う会社へ入社することに。同社では会計監査を受ける側の立場から、監査業務について知ることができました。

「大企業の会計がどんなものかを2年間見たら、監査法人に行こう」と決めていたので、2年後には予定どおり、監査法人へ転職しました。会計士として経験を積むなかで「大きすぎる組織では、狭い領域の仕事しかできない」とわかったので、IPO(初めて株式市場に株式を公開すること)やM&A(企業の合併・買収)など、会計監査以外にもいろいろ仕事を経験できる、準大手の監査法人(ビッグ4以外で多数の上場企業の監査をしている監査法人)に入ることにしました。

10年間憧れ続けた企業へ転職。安定したキャリアを捨てて選んだ道とは

エコリング 執行役員 管理部門担当 平井 直大さん

準大手の監査法人に入社してから2年後、当社エコリングへの入社を決意します。ここがキャリアの中で最大のターニングポイントです。

実はエコリングの存在は、2001年の創業時から知っていました。私の妻が学生時代に創業時のエコリングでアルバイトをしていたためです。彼女は「仕事が楽しいから、卒業後もここでバイトを続ける」と言い、就職活動をしませんでした。当時はまだ3〜4名の会社だったので私は内心「なんて親不孝な選択だろう」と思っていましたが(笑)、今では500名規模の会社に成長し、妻は役員の1人になっています。

ともあれそうした関係性だったので、エコリングの仕事がどんなに楽しいか、そして代表である桑田一成氏がどんなに人間的魅力にあふれた人間かを、10年にわたり妻伝いに聞き続けていました。特にリーマンショック時に倒産寸前まで傾いた経営を3カ月で立て直し、約束どおり社員を呼び戻したエピソードを聞いた際は「こんなに人を大切にする社長がいるのだな」と感心したことを覚えています。

妻はいつも生き生きとしていて、安定感あるキャリアを選び続けてきた私とは違う充実感を持って働いているように見えました。ある種の羨ましさを感じていて、「いつか自分もエコリングに入りたい」という思いをひそかに温め続けていたのです

そうして社会人10年目、満を辞して桑田社長に直筆の手紙を書いてアプローチし、ジョインさせてもらうことになりました。

このキャリア選択の背景には、会計士の同期や2社目・3社目の同僚たちの優秀さを目の当たりにするなかで「自分は彼らと差別化できるフィールドにいこう」と決めたことも関係しています。実際、エコリングでは数字の仕事をほとんどしておらず、こういうキャリアを歩んでいる会計士はかなり珍しいと思いますね。

行き先がわからなければ走れない。常に「目標」を設定しよう

いくつかの会社で経験を積んできましたが、キャリアを通じて一貫させてきたのは、「目標を立てて、それに向かって仲間と行動する」というスタンスです

学生時代から、この傾向はあったように思います。中学時代は野球、高校時代はサッカーやバンド活動、大学ではバンドやスポーツなどいろいろな活動をしていましたが、必ず「〇〇人クラスのライブハウスに出よう」などと、その時々の実現目標を決めて取り組んでいました。

1社目では「1年目で店長になる」と決め、入社後半年で店長に就任。以降はひたすら店舗の予算達成を目標に励んでいました。会計士試験も同様です。3年かかりましたが、最初に「1年で合格する」と決めて勉強に打ち込んでいなければ、何年も資格浪人をしていただろうと思います。

大きな目標だけでなく、毎日の小さな目標も必ず立てるようにしています。To Doリストにも近いかと思いますが、その日の目標を紙に書き出し、それらをすべてやり切ることを心がけていますね。

自分の経験から社会に出て活躍したい人にアドバイスできることがあるとすれば、「やりたいことを明確にして、そこへ向かって努力をしよう」という1点のみ。シンプルですが、これに尽きると思います。

どこへ向かって走っていいかがわからない状態では、具体的にどんな努力をするべきかも見えてこないので、まずは目標を明確にすることが肝心です。常に「今自分が何をしたいのか」を突き詰めていれば自分が選んだ会社で必ず活躍できると思いますし、逆にそれが不明確だとどんなに良い会社に入っても活躍できないと思います。

「目標を明確にすること」が重要な理由

面接に臨む際も、今その時点での目標で構わないので「自分の人生で何がやりたいか」を具体的に話せるようにしておくのがおすすめです。

あくまで私の考えですが、仕事の目標だけでなく「30代で家を持ちたい」「いずれ海外で働いてみたい」といった人生全体のビジョンを聞かせてもらえたら嬉しいですね。会社としてもその目標に対して選択肢が提供できるかを考えられますし、同じ目標に向かって頑張るチームの一員として「その人の“人となり”をできるだけ知りたい」と思っているからです。

「面接では良いことを言わなくちゃ」と思っているかもしれませんが、多少嫌なことを言っても私は構わないと思います。これまで多くの面接を受けてきましたが、自分の想いをしっかり伝えて等身大で臨めたときには合格に至ることができる気がしますね

人生初めての就職活動に等身大で挑むのはなかなか難しいかもしれませんが、できるだけ自分らしく臨むことを意識してみてください。会社側が「なんでも聞いていいよ」というフルオープンで学生に向き合ってくれるところであれば、等身大で臨みやすいと思いますね。

等身大で臨んだ結果、「こことは合わない」と気づくこともあるでしょう。その場合は取り繕って入社して結局ミスマッチを起こすより、最初から入らない選択をしたほうが長い目で見て自分のためになると思います。

平井さんからのメッセージ

目標設定のほかにも「土日のどちらかを自己投資に使う」ということも、23歳の頃から習慣づけてきました。机上の勉強だけでなく、外出して人に会う、といったことも自己投資です。そこで得たインプットが仕事に大いに役立ったので、「継続は力なり」だと改めて実感しています。

ちなみに社会人1年目に取り組んだのは、「日経新聞を読めるようになる」ということでした。当時は今ほどインターネット上の情報が充実していなかったので、図書館に行って専門用語を調べながら、記事の内容を理解できるような基礎知識の習得に努めました。

今は長年苦手だった英語をマスターすべく、「今月はこのレベルまで行く」というスモールステップを設定しながら取り組んでいます。

「皆で学んで強くなろう」というエコリングの社風にも、大いに影響を受けていますね。社長を筆頭に私の周囲には読書や学習を欠かさない人がたくさんいますし、活躍している人は必ずと言っていいほど社会人になってからも学び続けている印象です

最初のうちは大変だと思いますが、慣れれば当たり前にできるようになるので、自己投資の習慣は若いうちから身に付けておくのがおすすめです。

人とのご縁は財産。共感できる企業・仲間を見つけよう

私は基本的に「自分がこうしたい」よりも「人と一緒に大きなことを成し遂げたい」と考えるタイプ。「1人じゃ何もできない」というのが持論で、「自分がこうしたい」というモチベーションで動くことは滅多にありません。社会に出て以来、「良い仲間とともに組織を動かしていきたい」という充実感をもとめて歩んできました。そのモチベーションはこれからもずっと変わらないと思います。

キャリアで一番の財産だと思っているのも「人との縁」です。今のエコリングの仲間たちはもちろん、今までのキャリアでかかわった人たちからも定期的に刺激をもらっています。

私がこれから成し遂げたいことは、会社が目指すものと完全に一体化しています。現在は人事の仕事をメインに組織づくりに取り組んでいるので、「どう人をモチベートし、より良い組織にしていくか」を考えることにやりがいを感じていますね。

また会社は事業活動を通じて社会やお客様に貢献し、利益を生むことを使命としますが、「会社=数字」ではなく「会社=人」という目線を持っている企業でなければこれからの時代は生き残れない気がします。

当社も利益追求ではなく「本気で社会に良いことをしよう、社会で役立つ企業になろう」という使命感をもって事業を展開している企業です。現在は「公益性の高い事業を社会のインフラにまで持っていく」「海外進出を果たしてアジアNo. 1の総合商社になる」といったビジョンに向かって走っています。この組織の中で自分の役割を通じて貢献し、良い企業にしていくことがこれからの私のキャリアビジョンです。

私にとっての当社のように、ぜひ就活生の皆さんにも「自分が心から共感できる企業」を見つけてほしいと思います。そして、同じ志を持つ仲間と出会い、同じ方向に向かって走っていってほしいですね。

平井さんが贈るキャリアの指針

取材・執筆:外山ゆひら

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