過去ではなく「なりたい未来」がキャリアをつくる|自分の内側を見つめるより、これからの社会や世界に関心を向けよう

スタディプラス 代表取締役CEO 廣瀬 高志さん

スタディプラス 代表取締役CEO 廣瀬 高志さん

Takashi Hirose・慶應義塾大学法学部在学中の2010年にスタディプラスを創業し、以降現職。2012年に学習管理プラットフォーム「Studyplus(スタディプラス)」の提供を開始し、現在までに累計会員数800万人を超える学習管理アプリに成長させる(2023年6月実績)。2016年からは教育機関向け学習管理SaaS「Studyplus for School(スタディプラス フォー スクール)」なども手がけており、IT×教育の領域でサービスを展開中

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なりたい未来を決めれば行動がともなう。学生起業を果たせた理由とは

キャリアにおける最初のターニングポイントは、大学3年生のときに学生団体主催のビジネスコンテストで優勝したことです。コンテストへの参加は初めてでしたし、まさか優勝できるとは思っていなかったのですが、大学1年生の頃からベンチャー企業でフルタイムに近い働き方をしてビジネスの目線を培ってきたことが役立ったのかなと思います。

副賞として渋谷のオフィスを1年間無料で使えることになり、これはチャンスだと思いました。大学生の知人を集め、ビジネスコンテストで考えた事業計画をベースに起業を果たしたのですが、まもなくして想像以上に多くの出資を募ることができました。責任が重くなったことで「学生をしながら片手間にやっている場合ではない」と感じたことから、大学を辞めて事業に注力することにしました。

大きな決断ではありましたが、迷いはありませんでした。後悔もしておらず、今からもう一度大学生をやれたとしても、学生起業をすると思います。

「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」これはリクルートの創業者・江副浩正氏の言葉で、我が家の家訓でもあります。両親がリクルート勤めで、この言葉を聞きながら育った私は、小学1年生の頃から「将来は社長になる」と宣言していました。親も楽しそうに働いていましたし、社宅で育ち、近しい価値観を持った大人たちに囲まれて育ったことも影響していると思います。

廣瀬さんのキャリアにおけるターニングポイント

「社長になる」と決めた小学1年生の頃、私にはその能力も経験も資本も事業プランも、何1つ持っていませんでした。それでも社長になることができたことを考えれば、「未来は“その時点でできること”から決まっていくわけではない」「人は過去ではなく“なりたい未来”によって決まる」という自論を持つに至っています。なりたい未来を定めることで日々の行動が変わり、それによって未来が変わっていくという順番なのだろうと思います。

就職活動の自己分析では「それまでの過去に目を向けるといい」とよく言われますが、私の場合、その方法論だとポジティブな未来が思い浮かびません。バスケ部で活躍できなかった、大学受験に落ちた、ツメが甘い性分なのだな、などと連想して自分の限界を決めてしまうだけで、意味がないなと。

人それぞれの意見があるでしょうが、過去ではなく、自分のウィル(意志)に従い、なりたい未来から現在を見ながらキャリアを考えていくのは1つの方法だと思います

ITの領域で起業すると決めていた学生の頃も、プログラミングスキルがあったわけではありません。私が持っていたのは「成功したい」という思いだけ。それでも、社長になるなら何でもできなければ、といった気負いはなかったです。「自分にできないことがあるなら、できる人とチームを作ってやればいい」と考えていました。

「これからの時代」に目を向ければ、ワクワクしながら社会に出られる

2つ目のターニングポイントは、当社を起業して5~6年目の頃のことです。2012年に学習管理プラットフォーム「Studyplus」の提供をスタートし、着実にユーザー数は増えていたのですが、大学進学を希望する高校生がメインユーザーなので、ターゲット層は限られています。ユーザー数は毎年じわじわ伸びているものの、売上的には大きく成長しきれない状況でした。

「このままやっていて事業を成り立たせていけるのだろうか」という思いがよぎるようになり、ほかの事業にチャレンジしてみては撤退して、なんてことを繰り返していました。

それでもこの事業を畳みたくないとあきらめず粘っていたところ、「Studyplus」の累計会員数が100万人を超えたタイミングから広告の売上が出るようになり、以降は右肩上がりの成長曲線に入っていきました。今では大学進学希望の高校3年生の2人に1人が利用するアプリに成長しています。

キャリアの中で一番苦しかったこの時期に意識していたのは、頭のなかに考えをとどめず、紙に書き出すという行動です。大学生の頃、単位を取り戻すため授業に出まくっていた時期にある教授から教わった「書くことは考えること」という言葉が心に残り、それ以来少しずつ習慣化させてきました。頭のなかがふわっとした状態でも、書き始めると整理されて思考が深まっていき、アイデアが次々と湧いてくるからです。「何を書くか」よりも、最初の一歩として「書き始めること」が重要だと考えています。

書くことと同様、読むことも大切にしています。学生時代はとにかくたくさん本を読んでたくさんメモを取る、ということを習慣づけていましたね。特に「これから時代がどうなっていくのか、社会がどう変化していくのか」について知りたかったので、起業家やビジネスリーダーと呼ばれる人たちの本を読み漁っていました。

「これからの時代がどうなるか」を理解して初めて、その中で自分はどうしたらいいかというキャリアのビジョンが見えてきます。この観点から、学生時代にやるべきことは自己分析より、外の世界や社会を知ることだと思います。自分の内側を掘り下げるよりも、自分の外側にある社会や世界にベクトルを向けてみるのがおすすめです。

廣瀬さんからのメッセージ

これからの時代の変化が見えると、社会に出るにあたってワクワクした気持ちになれるはず。少なくとも私は、「これからITの力で、めちゃくちゃ産業が変わっていく時代なのだな」とワクワクしましたし、社長になりたい気持ちに加えて「ITの分野で起業したい」という気持ちが芽生えました。

私が学生だった2007〜2009年頃は、スマートフォンやクラウドなどが登場した時期。『ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる』(梅田望夫著)などの書籍は特に印象に残っていますが、これからの時代はとにかくインターネットなのだなと確信を持ちました。

Tech(テック)領域で事業をやろうと決め、そこに予備校や高校時代に課題を感じることが多かった教育の分野を掛け合わせ、「IT×教育の事業をやろう」という具体的なビジョンを固めていきました。

10人の社長の話を聞き、直感的にすごいと感じた順に1〜10位を付けてみよう

スタディプラス 代表取締役CEO 廣瀬 高志さん

ファーストキャリアを選ぶ際には、3つのことに目を向けてみると良いと思います。

1つは大企業かベンチャーかにかかわらず、成長している会社かどうか。成長企業という言葉からはベンチャー企業をイメージしがちですが、成長し続けている大企業もあれば、停滞しているベンチャー企業もあるので、実際の業績や動向はきちんと確かめてみてください。

これからの日本で伸びていく産業はそう多くないと思うので、まずはそうした産業をピックアップすることが重要です。そしてその業界内で伸びている企業や今後も伸びていきそうな企業を選べば、企業の成長過程でいろいろな仕事を経験でき、自分も一緒に成長させてもらえると思います。

2つ目は、その会社が向かおうとしている方向や進もうとしている世界に共感できるかどうかです。理念やミッション、パーパスなどに提示されている内容を読んだり、経営者の話を聞いてみたりすれば、大枠は見えてくるはず。会社の「WHY」の部分に賛同できるかどうかは、働くうえでのモチベーションに影響しますし、仕事が大変なときの支えにもなると思います。

上記の2つでスクリーニングをしたら、最後は「誰と働くか」に注目をしてみてください。キャリア1社目で出会う人たちからは、良くも悪くもかなりの影響を受けます。最初の刷り込みになり、自分のビジネスパーソンとしての「型」ができるので、その後のキャリアも少なからず左右します。良い影響をもらうためにも、社長や社員と会ってみて、直感的に「この人(たち)と一緒に働きたい、と思えるかどうか」を確かめておくのがおすすめです。

ファーストキャリア選びで持ちたい視点

  • 規模にかかわらず成長している会社か

  • その会社が向かおうとしている方向に共感できるか

  • その会社の人たちと「一緒に働きたい」と直感的に言えるか

私が今から就職活動をするとしたら、社長がすごいと思える会社を選びます。

学生時代は経験が少ないので判断が難しいかもしれませんが、 客観的な評価をする必要はありません。ポイントはできる限り、いろいろな人の話を聞きまくること。さまざまな説明会や講演会に参加して、相対的に「この人すごいな」と自分が感じるかどうかで決めてOKです。

一例ですが、10人の話を聞いてみて、自分の主観ですごいと思った順に1位から10位までを付けてみると、そこから1番から3番までの会社を受けてみよう、といった絞り込みができると思います。

社員との接点も、できるだけたくさん持ってみてください。できるだけ社会で活躍している人、本当に優秀なビジネスパーソンからリアルな話を聞いてみるのがおすすめです。少なくとも良い影響をもらえるはずですし、人によっては働くことの価値観すら大きく変わると思います。多くの接点を持つほど、人を見る目も会社を見る目も養われてきますよ

私にとっては、学生時代にインターンで働いた会社がファーストキャリアの位置付けと言えるかもしれません。学生やアルバイト扱いではなく、広告営業としての仕事をすべて任せてくれたので、ビジネスの基本的なことをひと通り身に付けることができました。

いろいろな社長に会う機会もいただきましたが、幼い頃から「社長になる」と決めていたこともあってか、良い意味で「社長も普通の人なのだな」と思ったことを覚えています(笑)。

廣瀬さんからのメッセージ

結果を出すには学習が必須。学び続ける人・変わり続ける人を目指そう

社会で活躍する人の共通項だと私が思うのは、時代を問わず「学び続けている人」「変わり続けている人」です。当社は学習アプリを提供している企業ですが、「Dive to learn」をキーワードに自分たちも学習者として学び、変化し、成長しようという意識を大切にしています。 

学び続けるためには、まず「自分の仕事で結果を出すぞ!」と心から強く思うこと。「仕事で結果を出したい、そのためにはどうしたらいいか? それなら学習しよう!」となり、自然と今の自分に必要なインプットを探す目線になれると思います。

目的なく漫然とインプットするよりも、「今の仕事にどう活かしていくか」を考えながら目的意識を持ってインプットしたほうが頭に入りやすいです。

そしてインプットも大事ですが、仕事で問われるのは、インプットしたものをスピーディーに、かつちゃんとアウトプットできるかどうかです。そのためには“やり切る力”が必要ですが、“やり方”をゼロから発明する必要はありません。先人たちがいくらでも方法論を提示してくれているので、そのやり方を使ってインプットからアウトプットにつなげていくのが、結果を出すための早道だと思います。

仕事で結果を出すための「学習習慣」とは?

意思決定においては「本質はなんだろう?」という目線を大切にしています。物事の本質をできるだけ考え、奇をてらった小手先の判断ではなく、王道を選択する。端的に言えば、正しいことをちゃんと正しくやっていこう、ということです

当社の事業で例を挙げるなら、「教育はもともと学習者のためのもので、学習者にとっての課題解決が大事である。学習者にとっての一番の課題は『学習の継続が難しい』ということで、それなら、学習を継続させることにフォーカスしたサービスを作るべきだ……」というストレートな意思決定をしています。

少子化のフェーズに入ったことで、教育業界はいっそう変革の必要性が高まっています。そして多くの課題が叫ばれながらも、なかなか変わってこられなかった教育業界全体が、この10年間、テクノロジーによってようやく変わりつつあります。

GIGAスクール構想(生徒1人に対して1台の学習用パソコンと高速ネットワークを提供する文部科学省の取り組み)も始まり、国としてもエドテック(テクノロジーを活用した教育)を活用しようという姿勢になっていますし、ITで変えられる可能性がまだまだたくさんあることにおもしろみを感じています。

もう1つ、私が感じている教育業界の魅力は、若くても自分自身が見聞きしてきた経験値を活かせること。学生時代、勉強に感じていた不満や課題を解決することができ、その変化を主導していける醍醐味があります。社会貢献のやりがいも大きく、多くの人にエドテックに興味を持ってもらえたら嬉しいですね。

学生起業してから「社会に対して一定の価値が出せている」と思えるようになるまで、10年くらいはかかりました。創業13年目になりますが、やればやるほど事業は奥深いなと感じていますし、ゆくゆくはグローバル市場にも興味を持っています。世界で結果を出しているファーストリテイリングの柳井正さんのような実業家の姿は理想ですね。

これからのキャリアのなかで叶えたいビジョンは、経営者としてより高みを目指すことです。経営は「波が起きては乗り越える」ということの繰り返し。1つの波を乗り越えて「これでまたしばらく事業を続けていける!」という安堵感に満たされる瞬間が、キャリアのなかで一番充実を感じるタイミングかなと思います。

廣瀬さんが贈るキャリアの指針

取材・執筆:外山ゆひら

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