「得意をどう活かす?」から未来が始まる|仕事は周りとのつながりによって成り立つことを自覚しよう

おとうふ工房いしかわ 取締役 石川諒さん

おとうふ工房いしかわ 取締役 石川諒さん

Ryo Ishikawa・高校卒業後、東京農工大学に入学。新卒では食品メーカーの営業職に就職し、その後実家のおとうふ工房いしかわに就職。営業を経て営業責任者となり、取締役に就任。以降現職

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苦手分野に「得意なこと」で立ち向かう。その経験は将来の糧になる

若手の頃はあえて苦手なことに取り組み、社会人としての経験値を高めることに専念していました。

当初は家業である豆腐屋を継ぐことは考えていませんでしたが、大学入学を機に上京し、世の中の仕事やさまざまな働き方を知って視野が広がっていくにつれて「家業を発展させていきたい」と思うように。さらに友人などから「おとうふ工房いしかわの豆腐は本当においしい!」といった感想をもらったり、「日本の農業を応援する」という会社の理念に共感してくれたりして、そのような声にも背中を押されて、将来的に家業を継ぐことを決意したのです。

その後はまず自分の力をつけるために経験を積もうと決心し、食品メーカーの営業職に就職しました。

結果からいえば、この営業職での経験は、自身の成長をうながし、苦手な部分を克服できるものになりました。もともと人とのコミュニケーションが得意なほうではなかったですし、みずから大きな壁を乗り越えるための挑戦でもあったわけです。もちろん最初はうまくいかずに苦戦することも多かったのですが、周囲の人とのコミュニケーションを通じて「営業にはいろいろなスタイルがある」というのを実感したり、自分らしく仕事をすることもできるのだなと感じられ、それはキャリアにおいても大きな気付きになりました。

たとえば、おしゃべりが得意で人を笑わせるような人もいれば、すっと懐に入っていけるような人もいる。口下手ではあるものの、自分のようにいろいろなデータを活用してお客様の価値になることを提案するというやり方もある。営業に限らず、どんな仕事においても「自分に合うスタイル」を見つけることがとても大事で、それに加えて、自分の得意分野を活かしていけば苦手な分野でさえも乗り越えられると知れたのです。この気づきは、現在取締役として組織運営に携わるうえでも大いに役立つ、大切な財産となっています。

石川さんからのメッセージ

「今に集中すること」と「組織を意識すること」で飛躍する

営業職で自分の苦手意識を克服し、人とのかかわり方に自信が付いたころ、ちょうど当社に入社するタイミングがやってきました。そこから現在までのキャリアを経て思うのは、今の瞬間にどれだけ力を注ぎ、成果を上げていくかが重要だということ。一生懸命に働く姿勢が、結果的に大きな成果を生むことがあるのです。

当社に入社したばかりのころはみずから営業として奮闘し、営業所の責任者も担いました。その後本社勤務となり、営業企画部のポジションで部下もでき、これまでの「個人プレイヤー」から大きく状況も変わっていったことを覚えています。そうした変化を受けて、「個人の力だけでは会社は成り立たない」という新たな認識が芽生えました

というのも、本社は工場と一体となっているために、作る人、支える人たちを身近に感じられます。普段からその姿を見ていると、会社は一人ひとりが集まることで成り立っていて、個人ではなく全体として会社を成長させていくことが重要であると感じたのです。組織全体を統括する立場になるにつれ、全員が共有する目標を設定し、正しい方向に進むための視点を持つことが不可欠だと気付きました。

石川さんのキャリア変遷

仕事は周りの人との「つながり」があってこそ成り立つもの

おとうふ工房いしかわ 取締役 石川諒さん

仕事での成果や成功は、周りの協力と支えがあってはじめて生まれるもの。特に管理職などへの昇進を望んでいる人は「周りの状況を気遣うこと」が重要です。

ましてや食品製造という仕事は本当に多くの人がかかわり合う仕事です。1つの商品をとっても、お客様の手に届くまでの間にさまざまな人の手を通ることになります。その全体像を理解することがとても大切で、それを多くの人に知ってもらうための農業と消費者を結ぶ活動も、当社が担う重要な役割だと考えています。

今年で33期目を迎える当社は、町の豆腐屋からスタートし、一貫してものづくりからお届けまでを軸としてきました。これまでの歴史や経緯を大事にしながら、豆腐のおいしさや安全性を追求し、社外・社内ともに「つながり」を大切にしてきています

当社の社訓でもある、「旨い 安全 安心 そんな豆腐が造りたい 日々努力 日々勉強」を実現し、お客さんに喜んでいただける「食」を提供することが私たちの目指す姿です。これからも「あってうれしい」と感じていただける仕事を追求していきます。

「個人」と「組織」のバランスを考えた就活を

仕事においては周囲とのつながりを大切にするという姿勢を持っているとお伝えしましたが、就活においては「周囲とのつながりの中で自分には何ができるか」、つまりは「行動」をベースに考えることをおすすめします。その意味で言えば、「好き」にこだわりすぎる必要もないと思います。

たとえば、「食が好きだから食品メーカーに入りたい」「キラキラした世界が好きだから広告業界」など、そのような少し漠然とした理由で就職先を選ぶ人も多いと思います。でも「自分が得意なことってなんだろう?」「その得意をどう活かせるだろうか」という視点を持ち、それをもとに仕事を選ぶと、もっと自分にフィットした会社と出会えると思うんです。なぜなら社会では、自身の好きなものではなく行動こそが価値となり、それでこそ仕事として成り立つからです

そうした視点を持ちつつも、ファーストキャリアを選ぶときは「その環境で何をつかみとるのか?」をぜひ意識してほしいです。会社が教えてくれることは限られているからこそ、外からの情報を積極的に取り入れ、それを自分の成果にしていく能力はどんな環境でも求められます。自分のがんばりによって成長や活躍につながっていくことを思うと、やはり個人が自由に発言できる会社や、チャレンジしやすい社風のところが良いのではないでしょうか。

また、当社が大切にしていることでもありますが、会社のメンバーと共に同じような目標やビジョンを掲げていることが大切です。メンバーみんなが同じ方向を向いていれば、一緒に組織や仕事を作り上げていくことにも前向きになり、充実したキャリアを歩めると思います。

ただ、目指す方向性は同じであっても、一人ひとりの性格やキャラクターまでも同じである必要はありません。むしろ組織というものは、同じような人だけでは成り立ちません。たとえば変化が好きな人だけでなく、適切にブレーキをかけられる人も必要です。自身がどのような役割として会社に貢献できるのかを考え、自分の性格を考慮して仕事を選ぶと良いのではないでしょうか。

「個人」と「組織」のバランスを考えた就活

就活の手段はいくつもある。「本質」をとらえて社会を歩もう

 また、今の社会で活躍できるのは、これだけ情報が増えているからこそ、「本物の情報を見極める目」を持っている人です。そのためには、実際に足を運んで知るような一次情報に触れ続けることが大事です。情報を見極める力があれば、仕事に役立つ情報を迷わずキャッチし、自身の成長や活躍につなげることができるのではないでしょうか。

そして、あらゆる情報に触れるなかで気になる会社が見つかったら、就活サイトの活用はもちろんですが、直接連絡をしてみるのもおすすめです。その熱量が会社に伝わり、好意的に受け入れてくれることも多いと思います。「ここだ!」と思ったときにはあらゆる方法で接点を持つようにしてみてください

最後に就活生や若手社員に伝えたいのは、ときには逃げることも大事だということ。ただやみくもに逃げるのではなく、逃げ方はきちんと考えましょう。壁にぶつかったときは、ひと呼吸おいて冷静に考える。そして、ほかの人の手助けを借りるのか、外部の視点を取り入れるのか、最適なアイデアを見つけていきましょう。

石川さんが贈るキャリア指針

取材・執筆:志摩若奈

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