好奇心と継続力のある人が、次の社会を創る|失敗も許容しながらチャレンジを続けていこう

ブイキューブ 代表取締役会長 グループCEO 間下 直晃

Naoaki Mashita・1977年東京都生まれ。在学中の1998年にブイキューブインターネット(現:ブイキューブ)を設立し、同社CEOに就任。当初のWebソリューションサービス事業からビジュアルコミュニケーション事業へと転換し、2008年以降はWeb会議市場において国内シェアNo.1を連続達成。2013年マザーズ市場に上場、2015年には東証一部へ市場変更し、2022年4月よりプライム市場へ。海外展開にも注力し、シンガポールに現地法人を持つ。経済同友会副代表幹事、規制・競争政策委員会委員長も務める

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アルバイトの代わりで始めた仕事がうまくいき、そのまま起業

大学生の頃に起業した会社で、24年にわたり代表を務めてきました。ただ人生において、明確に「起業をしたい」「社長になりたい」と思ったことは一度もありません。アルバイトの延長でインターネット関連のビジネスを始め、そのままの流れで現在に至っています

私が学生だった1997年頃は、ちょうど企業が自社のWebサイトを持ち始めた時期で、世の中の需要に対して、供給がまったく追いついていない状況がありました。現在と比べてサイト自体も文章が主体で、全体的な技術レベルが低く、プロフェッショナルを名乗る人とアマチュアの差もほとんどない状態。

学生とはいえ、きちんとした品質のものを作っていたことに加え、標準価格に比べて格安で引き受けていたので、順調に顧客を獲得することができました

1人で始めた仕事でしたが、人手が足りなくなり、友人や知人のツテでメンバーを増やしていくなかで、20名程度の組織に成長。

当時は各自が自宅で仕事をする、今でいうリモートワークのような勤務体制でしたが、2年ほど経ってオフィスを持つことに。2001年には正式に法人化し、本格的にビジネスを拡大させるフェーズに入っていきました。

大学院まで修了しましたが、卒業時にも就職活動はしていません。「今のところ食べられているし、目の前の仕事はたくさんある。続くかどうかわからないけれど、このままやってみよう」と進路を決めました

間下さんの学生時代の企業からの経緯

受託事業から始まった当社ですが、その後は「自分たちが欲しいと思う、世の中に必要なもの」を開発するフェーズへ。 特許を獲得した技術もありますし、Webオンラインカレンダーの仕組みなどはGoogleやYahoo! より先に考案し、約10万人のユーザーを獲得するに至りました。

幼少期に海外で暮らした経験もあって海外志向が強かったので、2003年には海外への販売もスタート。

アメリカに拠点を持ち、日米を往復する生活をしていたので、社員とのコミュニケーションがままならなくなり、そこで思い付いたのがインターネット回線を活用した安価で高品質なWeb会議のシステムです。

当時は高額なTV会議システムか質の悪いWebツールくらいしかなく、「これはマーケットがありそうだ」と確信しました

そこから社内で忌憚のない意見を交わし合いながら開発し、品質面をブラッシュアップすることに注力。

Webカレンダーなどの携帯アプリの開発の際は、ビジネスモデルを考えていなかったので、ある程度まで広がりはしたものの、しっかりと収益化できなかった反省がありました

そこでWeb会議サービスの開発ステップでは、マーケットやビジネスモデル、その後の展開などもきちんと考えながら事業化していきました。

風が吹かなくても、漕ぎ続けていれば「上昇」はできる

自信を持てるプロダクトが完成した後は、「営業力の強い組織をつくること」に注力をし始めました。

それまでは顧客の課題を解決する“コンサルティング営業”をしていましたが、自分たちで作った新しいものを世の中に売っていくには、市場をつくるメンバーが必要だと考えたからです。

中途採用で営業力に優れた社員を迎えつつ、新卒採用もスタートし、シェア拡大に向けて地道に営業に励む日々が始まりました。

法人向け販売を開始したのが、2004年。そこから2020年のコロナ禍までは、ひたすらコツコツと営業活動をしていた期間になります。常に立ちはだかっていた壁は、「変わらない日本社会」。

年輩の方々は特に「人と会わなければビジネスにはならないよ」という持論の方が多くいらっしゃいました

2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災などのタイミングでは、社会の流れが多少変わりそうな気配はあったのですが、影響期間が短く、すぐにもとに戻ってしまいました。

コロナ禍となり、長期にわたって働き方を変えざるを得ない状況になって、ようやくその壁を突破することができました。たとえるなら、自分たちで地道に凧を飛ばしていたら、突然大きな風が吹いて、一気に高いところまで上がれた……という感覚です

とはいえ、仮に風が吹かなかったとしても、会社のメンバーが食べていけるくらいには市場を広げてこられていました。

2016年には総務省の「テレワーク先駆者百選 総務大臣賞」に選出されましたし、2018年には公共空間に設置する個室型ワークブースを広めるべく、グループ会社・テレキューブも設立。

コロナ禍まではブレイクとは言えない状況でしたが、「これからの社会に必要なサービスだ」という自信があったからこそ、普及を目指して、コツコツと取り組んでこられたように思います

Web会議サービスがブレイクするまで

今回のように、ビジネスでは突然大きな風が吹くこともありますが、これは「運」としか言いようがない出来事です。風はこちらでコントロールできるものではないので、「風が吹くまで忍耐強くやり続けられるかどうか、倒れずに生き残る力を持てるかどうか」という部分のほうが、経営者としては重要だと考えています

大きな風が吹くまで粘れたという点で、「営業力の強い組織を作る」という方向性は正解だったと思っています。

プロダクトでもサービスでも、良いものを作らなければ長くは続かないし、良いものを作っても、それを広める営業力がなければ世の中には残りません。

「プロダクトの品質」と「営業力」の両方を重視してきたことが功を奏して、ようやく目指していた状態、ミッションに掲げる「Evenな社会の実現」に近づけた実感があります。

また、「次のあたりまえをつくる」というバリューを掲げているとおり、当社は時代の三歩先くらいのサービスやプロダクトを考えていることが多い会社です。

世の中に新しい課題やチャンスを見つける「好奇心」、それを形にし、時代が追いつくまでやり抜く「忍耐力」の両方が必要という考えから、採用においては、一貫して「好奇心があって、忍耐力がある人」という軸を掲げています

このあたりは生来の性格的な部分も大きいとは思いますが、「好奇心を育てて、仕事のなかで発揮したい」という人がもしいるならば、訓練はできると思います。

日常生活のなかでいろいろなことに疑問を抱き、問題意識を持ってみる習慣を付けてみてください。些細なことでもいいので、何か課題を見つけ、それについて考え続ける力(=ソリューション力)を磨いていると、社会人になってからきっと役立つはずです

間下さんからのアドバイス

チャレンジを続けるなかでは、時に「思い切った整理」も必要

海外展開に関してはその後、シンガポール、マレーシア、インドネシア、香港、中国といったアジア圏の国々へも進出しました。

国ごとに異なるオポチュニティがあるため、基本的には現地採用で運営をしており、国によっては非常にうまくいっていたところもあります。「国内は大赤字で、海外だけが儲かっている」という年もあり、海外事業に支えられた時期もありました

一方で、いろいろな国の状況にアジャストしなければならない点は、かなり大変でした。

人件費が安い国は「ソフトで効率化しよう」といった観点になりにくかったり、先進国に比べるとプロダクティビティに対する感度が低かったり等々、日本とはまた違った壁がありました。最終的に撤退した国もあれば、現地法人に売却をした国もありますが、シンガポールの拠点などは今も続いています。

海外事業に限らずですが、ビジネスでは毎日、本当にいろいろなことが起きます。事業が伸びていれば万事順調というわけでもなく、事業の成長にともなって社内に問題が発生するなど、永遠に課題は現れてきます。

「嫌なことは寝たら忘れる」程度には楽観的でないと、経営者は続けられないかもしれません(笑)。

課題が出てきたときは、基本的には「諦めること」を選択肢に入れずに考えます。うまくいかないときは、うまくいく方法を考えるのみ。壁が出てきたら、乗り越える方法を考えるのみ。考え続けていれば、どこかで必ず解決策は見つかりますし、助けてくれる人が現れてくれることもしばしばあります

しかしながら、チャレンジしたことの何もかもを諦めない、というわけではありません。チャレンジをしていると、必ず澱(おり)のようなものは溜まってくるので、時代に合わせて定期的に見直しをおこない、掃除をするタイミングも出てきます。

直近では、2019年に幾つかのプロダクトを辞め、大きな事業の整理をしました。

間下さんからのメッセージ

「澱がまったく出ない」というのは、チャレンジをしていないことの表れ。すべてのチャレンジがうまくいけば最高ですが、それは現実的にありえないので、何年かに一回は「諦めも肝心」と一気に整理をしています

「思いやビジョンに共感でき、自分が成長できる会社」を選ぼう

私が仕事において一番、充実していると感じるのは、「こんな世の中になって欲しい」と、まだ形になっていない未来の社会のイメージを考えているときでしょうか。

世の中に要らないものは作りたくないし、子どもに誇れない仕事はしたくない。合理的に効率化をすればいいというわけではなく、「人に役立ち、社会を豊かにする」という観点も持って、プロダクトやサービスを生み出していきたいと考えています

こうしたゼロからイチを考える部分が自分の役割で、イチから先へ大きくしていくのは、自分以外のメンバーに任せることが多いですね。

就職をした経験がないので、キャリアに関してはなかなか助言ができないのですが、長年、経営者をしてきた経験から「ゼロからイチを生み出す仕事がしたい」という若い方にアドバイスをするとすれば、「思いを形にしていれば、人は後から付いてくる」ということは伝えられるかと思います

間下さんからのメッセージ

事業を大きくしていく段階では「チーム」が絶対に必要になりますが、事業の形ができてくれば人は自然に乗っかってきますし、事業が動き始めれば「人を巻き込んでいくこと」はそう難しくありません。

私は生徒会長や学園祭実行委員などの経験はありますが、人を褒めるのも苦手で、いわゆるリーダータイプの人間ではないと思います。ただ向かうべき方向性や将来の夢を提示するのは得意で、そこに共感してくれたメンバーが付いてきてくれたことで、今の当社があると感じています

現在の社長はアルバイト時代から残っているメンバーのひとりですし、いったん就職してから当社に戻ってきてくれたメンバーもいます。

当時は一人ひとりが経営者のような状況であり、自分たちでなんでも考えて決めていける主体的な組織だったことも、多くのメンバーを巻き込めた理由かもしれません。

「会社が目指す方向」と「自分の考えや価値観」がリンクしなければ、仕事は楽しく感じられないし、楽しく働くことができなければ、長く頑張ることもできないと思います。会社を選ぶ際には「その会社が目指しているビジョンや思いに共感できるかどうか」をぜひ検討してみてください

あわせて、会社にすがる時代でもなくなってきているので、「歯車にならず、主体的に取り組んで自分自身を成長させられる会社かどうか」といった視点も持って、企業を見ていくといいと思います。

間下さんが贈るキャリアの指針

取材・執筆:外山ゆひら

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