強い思いは人生の軸になる|仕事も就活も「人とのつながり」が上手くいく秘訣
しまなみ 取締役 村上 雄大さん
Yudai Murakami・愛媛県出身。大学卒業後、県内を中心に展開する地方銀行に就職し個人営業や法人営業を経験する。2022年、父親の経営するしまなみに入社後、取締役に就任し、以降現職
純粋な思いをキャリアの軸に。壁を乗り越えるには「先人の知恵」を頼ろう
「地元に貢献したい」。学生時代からの強い思いは今でもキャリアの大きな軸になっています。
愛媛県で生まれ育ち、高校卒業後はそのまま地元の大学に進学しました。就活では「地域に貢献したい」という軸で企業を探し、伊予銀行に就職。営業として6年間のキャリアを重ねました。
伊予銀行を選んだ理由は、地域に根づいた会社であり、「ここなら多くの人の力になれるのではないか」と思ったからです。また、仕事だけでなくプライベートも大切にしたいと思っていたので、土日祝休みでワークライフバランスを保てることにも魅力を感じました。
入社後は県内の支店に配属され、営業として個人宅や企業を訪問するように。お客様に融資や投資信託をご提案するのですが、何もかも初めてですし、慣れるまではとにかく大変でしたね。また、地元で有名な銀行だからこそ「伊予銀行」という看板を背負うことに責任を感じることがよくありました。今まで先輩方が積み重ねてきた努力があると思うと、「自分の仕事でブランドの価値を下げないようにしなければ」とプレッシャーに感じることもありました。
その状況を乗り越えることができたのは、とにかく周りの人に積極的に「聞く」「相談する」ことを徹底したからだと思っています。特に若手の頃は仕事そのものに対して大きな責任を感じたり、わからないことだらけで悩んだりすることも多いのではないでしょうか。そんなときは、自分だけで解決しようとするのではなく、経験豊富な先輩や上司に聞いたほうが近道になることのほうが多いです。そのうえで、「一度聞いたことは二度は聞かないようにする」「できるだけ自分で調べる」といった心掛けを大切にして、周りの人を頼りながらも自立心をもって成長していきましょう。
挑戦への恐れはいつか溶ける。まずは一歩踏み出してみよう
入社して3年後、大きな転機が訪れます。初めて地元を離れ、広島に転勤することになったのです。今までとは打って変わって、仕事をするうえで看板になっている場面も多かった伊予銀行を知らない人も多くいる。そのような環境のなかで法人営業を担当することになりました。
社長を相手にすることが多く、かつ飛び込み営業がメインだったので、常に緊張感を持ちながら自分の気持ちを奮い立たせてその場に向かっていましたね。相手に受け入れてもらうために入念に準備をしたり、工夫してコミュニケーションを取ったりしても、門前払いされてしまうこともざらにありました。
最初は大変な思いをすることもありましたが、いつの間にかあまり物怖じしなくなり、度胸がついてきました。そのなかで意識していたのは、「仕事で失敗してもなんとかなる」というマインドです。考えすぎると動けなくなってしまうので、とにかく自信を持って仕事に挑戦する気持ちを大切にしていました。
誰でも初めてチャレンジすることには不安を感じるものですが、大抵のことは取り組んでいるうちに慣れてくるものです。まずは根拠のない自信でも大丈夫なので挑戦してみる。そのなかで成功体験を積み重ね、次のステップに進んでいってくださいね。
視野を広げたからこそ見えたもの。それは目の前にある存在の大きさ
銀行での営業を通してあらゆる会社の社長と出会い、そのなかで世の中にはどのような業界があるのか、人々はどのようなことを求めているのか……といったことを知る機会が多くなりました。
その影響もあり、次第に父親が代表を務める当社しまなみに対する興味がどんどん湧いてきました。
しまなみの事業である道の駅の運営や船の運航、飲食業、観光業などは、愛媛県で伸びている業界であることに加え、将来的にさらに多くの人々に求められていくのではないかと感じたからです。さらに、このような仕事をしている自分をイメージするとワクワクしましたし、就活生の頃から自分軸として持っていた「地域に貢献すること」も叶えられるとも思いました。
そして「しまなみの、父親の後継者になりたい」と思い、みずから父親に連絡。ゆくゆくは経営を担うことを前提に、2022年に入社しました。
他己分析で「好き」や「得意」の解像度を高めよう
私が学生時代から思い続けていた「地域に貢献したい」という考えのもとファーストキャリアや当社への入社を決めたように、これからキャリアを決断していくときは、いつでも自分の原点に立ち返ると良いのではないでしょうか。人生は一度きりですし、自分の信念に見合った仕事や、楽しい仕事にかかわっていけると良いと思います。
そのためにもまずは自分の「好き」や「得意」を認識することからはじめましょう。
とはいえ最初から自分のことをよく知っている人は少ないと思います。そんなときにおすすめなのは、「他己分析」をすることです。就活における自己分析はご存知だと思いますが、他己分析は「他者から見た自分」を知るということ。周りの友人や家族に「私ってどういう人だと思う?」「何が得意そうに見える?」などと聞くことで自分についての理解を深めていく方法ですね。
実際に自分が就活生の頃に友人や家族に聞いてみたところ、自分では気づいていなかった自分を知ったり、想像以上に奥深くまでみてくれていたりと、いくつもの発見がありました。
あらゆる角度から自分を認識しておくと、「好き」や「得意」の解像度が上がり、自分にぴったりの会社を見つけやすくなると思います。
また、会社選びでは「自分の理想や夢を叶えられるかどうか」も重要です。たとえば私の場合、就活生の頃は「地域に貢献したい」「プライベートも大切にしたい」といった思いから、地元の銀行に就職し、その思いを叶えることができました。このように、前もって自分の理想とする暮らしや働き方を見つめておくと、それに合った環境と引き合うことができるのでおすすめです。
仕事の本質は「周りの人と共にお客様の役に立つ」こと
将来的に会社を経営することを見据え、現在は会社全体の仕事を把握するべく、あらゆる事業にかかわっています。
ときには道の駅の接客を手伝うこともあり、そこで大切なことに気づかされる機会がよくあります。結局のところお客様と直接かかわり、「ありがとう」「おいしかったよ」などと感謝の言葉をもらったときに「仕事をしていてよかった」と実感するものだと常々思いますね。
たとえお客様と直接かかわることが少なくても、どんな仕事であっても「誰かの役に立っている」からこそ成り立っているので、ときどきその本質に立ち返り、自身の仕事を見つめてみることも大切です。
また、仕事でどんどん成長していきたいという方は、若手の頃から自分だけのことではなく、周りのことも見るようにすると良いでしょう。会社に入社したばかりの頃は、どうしても自分のこと、たとえば営業成績などのほうが気になってしまう場合も多いと思います。
私自身も最初はそうでしたが、今こうして取締役の立場になって改めて思うのは、道の駅や船の運行などに携わっている従業員の方々がいてこそ、お客様の笑顔が生まれているということ。自分だけの力で結果や売上に繋がっているわけではないんですよね。
だからこそ、自分だけに目を向けるのではなく、会社やチームなど、所属している組織について考えることも重要です。組織の一員であるという意識があれば、周りの人を大切にしようとする気持ちが湧いてきたり、協調性を大切にしようと思えるはずです。自身の言動がひと回りもふた回りも磨かれたものになり、結果として自分も成長できると思います。
このように「周りの人と共にいる」という意識を持つことで、自分自身が助けられる場面もたくさんあります。特に社会に出たばかりの頃は、自分の知識や経験では対応しきれないことや、キャパオーバーになってしまうようなことも起きるかもしれません。その後何年経っても、おそらく一生涯にわたっていろいろな壁は立ちはだかるものです。私も社会人になって8年が経ちますが、それでもわからないことだらけですし、1人では対応しきれないことだってあります。
だからこそ、若手の頃から周りの人に相談したり、助けてもらったりする感覚を身に付けておきましょう。1人で抱え込むことなく、周りの人と協力して助け合いながら、あなただけのキャリアを歩んでいってくださいね。
取材・執筆:志摩若奈