ゴール設計がキャリア開拓の礎となる|行動して失敗は人生のネタにしよう!

Tokyo Creative(トウキョウ クリエイティブ) 代表取締役 中川 智博さん

Tokyo Creative(トウキョウ クリエイティブ) 代表取締役 中川 智博さん

Nakagawa Tomohiro・滋賀県出身。2011年同志社大学卒業後、ワークスアプリケーションズ、電通アイソバー(現:電通デジタル)を経て、2018年Tokyo Creative(トウキョウ クリエイティブ)に参画。現在は地域創生事業、海外向けのデジタルマーケティングを推進。若い世代への教育に携わるため、2022年より杏林大学地域総合研究所客員研究員にも就任

この記事をシェアする

成長できる環境を選ぶ

学生時代はサッカーやフットサルに明け暮れていました。大学になっても真剣に取り組んでいたので、靭帯断裂によってドクターストップがかかったときは、ショックでしたね。アスリートが、自分の進む道に早くから専念して研鑽を積む姿に憧れを抱いていたので、自分はこの先何をしたらいいのか途方に暮れました。

失意のなか、周囲の面白い人はみんな海外経験があることに気づき、カナダへ留学しました。すべて手配を整えて、両親には事後報告。直感と勢いで踏み出した留学でしたが、これまで付き合ってきた人とは違った言語やバックグラウンドを持った人々の集まる環境で、多様な価値観に触れられたのはとても良い経験になりました。

何かに集中的に没頭する経験を学生時代にできたことは、やって良かったと思えることの一つです。圧倒的に行動すれば取り組む課題も目指すべき道も見えてくる。そう気づけた経験は、今でも大切な財産です。

その後は、汎用性の高いスキルとして「問題解決能力」を身につけたいと考え、ソフトウェアビジネスを展開するワークスアプリケーションズという会社に入社しました。「最高難易度の仕事を与える!」と言っているこの企業なら、毎日ルーティーンワークにはならず、市場価値を高められると考えていました。

また、あえて厳しい環境に身を置きたいという思いもありました。学生時代にホテルでアルバイトをして、接客業の精神的・身体的な厳しさを体験したのですが、そのおかげで他のアルバイトは難なくこなせたんです。だからこそファーストキャリアはハードワークが予想される環境を選んだら、後が楽だと思っていました。

予想は当たって、厳しい環境で必死に自分を磨くことができ、その後のキャリアの糧となる問題解決能力も身に付きました。AI(人工知能)やロボットがどんどん導入されていく今後の社会では、ルーティーンワークのスキルよりも、さまざまな問題を抽象化・一般化し、順序立てて解決していく問題解決スキルが必要とされていくと思います。今後も価値が下がらないスキルは一生の武器になるので、それが身に付けられるか、という観点でキャリアを選択するのも一つの指針になると思います

ファーストキャリアで身に付けたいスキル

自分の強みは行動を通して客観的に把握する

ワークスアプリケーションズでは学ぶことも多かったのですが、ソフトウェアビジネスはいかに効率化するかがゴールになります。ただ、自分の過去を振り返った際に、効率化よりも「ゼロからイチ」をつくることや、売上をどうプラスにするかということに興味関心が向いていることに気づき、転職することにしました。

次に何をしようかと考えたときに浮かんできたのが、クリエイティブディレクターという言葉です。当時、クリエイティブディレクターとして有名な佐藤可士和さんがメディアで取り上げられることも多く、めちゃくちゃカッコイイなと、その言葉の響きに憧れたんです(笑)。

クリエイティブのクの字も知らなかったので、とにかく一からクリエイティブを勉強しなければと思いデザインの学校に入りました。絵なんて描いたこともなく、デザインの意味もわかっていませんでしたが、ここでも留学と同じように直感で踏み出していました。授業の初日で周りの学生は素晴らしい作品を仕上げる一方で、自分は子どもが描いたような絵をなんとか提出するような状況で絶望したことを覚えています。

しかし、そこで「教室の誰よりも絵は下手だけど、企画とプレゼン力なら誰にも負けないかもしれない」と、気づけたんです。さらに周囲の人とのコミュニケーションなどを通じて「自分は客観的な分析力も長所かもしれない」と気づきました。自分の強みである分析力や企画力、プレゼンテーション力が活かせて、目指すキャリアに近づけるのは広告代理店だと考え、その後入社したのが電通アイソバー(現:電通デジタル)です。

自分の強みを客観的に把握できると、行動することにも自信がつきます。新しいチャレンジにも踏み出しやすくもなります。ときには自分と向き合い、周りの人との強みの違いを考えてみる時間をもつことも大切かもしれません。

中川さんからのメッセージ

道を決めるときには、先にゴールを設定してみる

Tokyo Creativeの経営に至るまで2つの会社を経験したわけですが、どちらに入社するときも「何年でこうなりたい」という明確なゴールの設定をしていました。後のキャリアを発展させるうえで、明確なゴール設定は重要だと思います。時間とゴールを設定すると、日々が漠然としたものではなくなり、やるべきことが見えてきます。毎日の行動もゴールに近づいているか? と振り返ることもできます。

電通アイソバーの仕事は非常に面白く、やりがいも大きかったです。アイソバーでは「デジタルマーケティングの入口から出口までやり切る」ということをゴールに設定していました。ゴールに向かってひたむきに取り組み、ある程度やり切ったタイミングで形となってきた次のゴールは、「事業を創ってみたい」というもの。この思いが日に日に強くなっていたある日、友人から誘いを受け、Tokyo Creativeの創業にマーケティング・営業責任者として加わったことが、今に続く道の始まりでした。

私の場合は、明確なゴールを定めて101%の努力を重ねていくと、次に進むべきステップが何となく見えてきました。自分のキャリアで新たな道を選ぶときは「何となくの直感」で意思決定しています。その直感へと導いてくれたのが、ゴールをクリアしたら次のステップへという「ゴール設定」をしたことだったのかもしれません。

行動して何度でも失敗したらいいし、失敗は良いネタに変えればいい

Tokyo Creativeはインバウンドをターゲットとしたプロモーションをおこなう会社です。唯一無二の事業価値があると自負しています。これまでインバウンドやプロモーションにこだわりがあったわけではありませんが、市場も成長する分野であり、そこでこれまでのキャリアと経験を活かすことで、インバウンドプロモーションにおける第一人者になれるかもしれないという可能性を感じました。

これから社会に出る皆さんも、選ぶ企業が、成長産業なのか衰退産業なのかは気にかけても良いかもしれません。成長産業に身を置いたほうが任される仕事も多く、個人としても成長しやすいです。そのうえで、若手のビジネスパーソンであるうちは、任せられた仕事は食わず嫌いせず、素直になんでも取り組んでみることをおすすめします。そうすることで、打席に立つチャンスも回ってきやすくなります。練習しないとスポーツもうまくならないのと同じように、仕事でも練習の「質」を高めつつ「量」から逃げないことも重要です。量と質にこだわって仕事することで、自分の強みに気づけたり、周囲からの信頼も厚くなったりしてチャンスも回ってきやすくなります。

素直に取り組むことで可能性を広げよう

自分自身のキャリアを振り返っても、面白そうならすぐに行動することで道が開けていきました。失敗は気にしなくて大丈夫。むしろ若いうちにたくさん失敗しておくことをおすすめしたいぐらいです。他責ではなく、自責マインドで仕事に取り組み、自分でやってみて、転んでみて、立ち上がっていくことが成長の近道です。失敗しても1つネタが増えたくらいのノリでOKです。

個人で目指すは「台風の目」。チーム力で大きな成果を出す

Tokyo Creative(トウキョウ クリエイティブ) 代表取締役 中川 智博さん

失敗の話をしましたが、もちろん自分自身も何度かピンチに陥ることがありました。会社員時代には、うつ病寸前の状態にまで追い込まれたこともあります。当時を振り返ってみると、「自分しかこの仕事はできない」という思い込みがあって業務を抱えていました。自分が休むことになり、いざ業務を全部はがされると自分が抱えていた仕事は滞ることなく、世界は回っていたのです。そこで、自分しかできない仕事ほとんどないんだということに気づき、チームで働くことの重要性について学ぶことができました

Tokyo Creativeの代表になった後も大きな困難がありました。代表になった時、当社の業績は大赤字。めぼしい売上がない状態でした。それでも当社のサービスは独自性があり、必要とされる事業だと確信していたので、粘り強くチームで取り組みました。その結果、黒字転換し今でも事業を継続できています。どんなときもチーム、会社、事業、そして自分の力を信じ、試行錯誤しながら、行動を重ねてこれた結果かなと思います。ついてきてくれたメンバーには本当に感謝しかありません。

今はどんどんチームで「影響の輪」をどこまでも広げていきたいと思っています。メディアを通じて社会へ与える影響もありますし、実際に外国人観光客が当社のプロモーションで現地に訪れて、地方にはお金が落ちるなど、良い影響すべてが輪のようにかかわり合いながら広がっていっています。

所詮自分はちっぽけなアリのような存在でも、集団になればゾウをも倒せます。個人では大きな力を発揮することは難しいですが、自分は真ん中で「台風の目」のようにメンバーを巻き込んでいくような役割を果たして大きな成果を出せるようにしたいなと思っています。

自分の選んだキャリアは自分で正解にすればいい

就職活動は、自分と社会を見つめる良い機会だと思います。やりたいことが決まっている人は、会社のビジョン、ミッション、バリューと、展開できる事業内容に共感できる会社を選択していくと良いのかもしれません。

見極めておきたい企業のビジョン・ミッション・バリュー

  • ビジョン:実現したい未来

  • ミッション:日々果たすべき使命

  • バリュー:大切にする価値観・行動基準

もし、やりたいことが明確でないのなら、やりたくないことを明確にするというのも手です。これだけは嫌だというものが明らかになっていれば、その要素がない業界・業種・業務内容を選べば良いだけですよね。

また就活に対してもゴールを設定すれば、達成感や納得感を持って仕事を始められると思います。私は就活時に「最終的に自分で選べる状態にする」ということをゴールとして決めました。複数社の内定をもらったときこそ、最後には自分で決めたという納得感がどうしても欲しかったからです。

人口減少が続くと予想される日本社会では、今後経済的に大きな成長は望めないことが見込まれます。売上が右肩下がりになる会社も多くあるでしょうし、淘汰される職業もあるでしょう。ただ、反対にこれからも必要とされて生き残るビジネスもたくさんあるはず。「大企業だから安心だ」そんな時代はすでに終わっています。変化が激しい時代だからこそ、今見えている安心や規模ではなくて、自分が本当に力を注げる、成長できる場所を見つけてほしいですね

最後になりますが、自分が選んだキャリアを自分で正解にできるよう、この記事を読んで前向きに行動いただけると嬉しいです!

中川さんが贈るキャリア指針

取材・執筆:鈴木満優子

この記事をシェアする