「自分」を突き詰めた先にキャリアが築かれる|仕事の本質は相手のニーズを満たすこと

AppBrew 代表取締役 深澤 雄太さん

AppBrew 代表取締役 深澤 雄太さん

Yuta Fukazawa・東京大学工学部に入学し、社団法人を立ち上げ「東大無料塾」を開業。その後、freeeにてシステム開発に携わる。2016年2月にAppBrewを創業。翌年には美容プラットフォーム「LIPS」をリリースし、以降現職

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自分の欲求<相手のニーズ。挫折経験から得た今につながる価値観

学生の頃にプログラミングに触れたのが、今のキャリアの始まりでした。中高一貫の学校で物理部に所属し、自分でゲームを作ったり、ロボットを動かしたりしていました。好きなことに熱中して学生時代を過ごしたので、高校卒業後の進路を考える時期になってもこれといってやりたいことはなく、周りに流されるように東京大学の理科一類に入学しました。

大学に入学してからも、学業よりは自分のやりたいことを優先し続けていたように思います。その結果の1つが、友人と立ち上げた教育系の社団法人である「東大無料塾」です。その頃は「日本の教育を変えたい」という一心で、ただ知識を教えるだけでなく、生徒にやりたいことを追求してもらう教育をしたいと思ったんです。

塾を立ち上げてからは累計100名以上の方にサービスを利用していただきましたが、次第に社会のニーズとのズレを感じるようになりました。実際にはみんな受験勉強で手一杯だったり、親御さんの承諾を得てもらう必要があったりと、なかなか継続的に利用してもらえなかったんです。いくつも経営面での課題があり、サービスを運営していくことが難しく、閉業することになりました。

この経験から、「社会のニーズを捉えること」の重要性を実感しました。経営者を目指している方はもちろん、1人の社会人としても覚えておいてほしいのは、「人は自分のニーズありきで動いている」ということ。ユーザーやクライアント、ステークホルダーなどが求めていることがあり、それを満たすからこそ、ビジネスとして成り立ちます。

仕事の本質はニーズを満たすこと

特に学生時代までは、人の心の動きを見分けるのが苦手だったのですが、それでも「相手の求めていること」にアンテナを張ることで、少しずつニーズを捉えられるようになっていきました。相手が求めていることのなかで、自分が「できること」や「得意なこと」を提供していくという意識を持つようになってから、ビジネスやキャリアが開かれていったように思います。「どの市場や業界で仕事をしたいのか」という大枠の部分は自由に選べますし、そのあとは何よりも相手のニーズを優先し、自分の欲求は抑え、ひたすら「ニーズを満たすこと」に専念するほうが良いと考えています。

キャリアには柔軟性が必要。そのときどきの「最適解」を見出そう

AppBrew 代表取締役 深澤 雄太さん

大学での起業を経て、クラウド会計ソフトのfreeeのインターンに参加し、システム開発に取り組みました。自然とエンジニアの道を選んでいたのですが、今振り返ると「自分が好きな仕事のやり方」が基準になっていたように思います。仕事をするとき、自分はどちらかというと「人を巻き込んで進めること」よりも「機械を活用して進めること」のほうが得意で、好きだったんですよね。それで、改めてエンジニアの道に進んでいったのだと思います。

こうして自身のキャリアを振り返ると、そのときにやりたいことをまずはやってみるという感じでしたね。「これだ!」と思ったものがあれば、それに向かって一気にエネルギーを注ぐ。それを繰り返していくなかで、キャリアが積み上がっていきました。

ただし、そのときどきの「やりたいこと」を優先するキャリアには注意点があります。たとえば中途半端な気持ちで起業を選んでしまうと、結果的には半分雇われているような状態になり、今までとあまり変わらない、といった状態になることも考えられます。

本当にやりたいことであれば、周りが何と言おうと、どんな状況であっても自然と体が動くものです。それくらい熱量があるものがあるのなら、ぜひ迷わず前に進んでください。そうして何かを突き詰めていった先に、自然と行き着くキャリアや人生があるはずです。

多くの人はファーストキャリアでできるだけ自分に合った会社を選び、ある程度の納得感を持って入社するかと思いますが、その後も「柔軟性を持ってキャリアを選択し続けること」を大切にしてください。変化の多い世の中だからこそ、日々自分自身に問い続け、そのときどきの最適な選択を重ねていくという意識を持っておきましょう。

深澤さんからのメッセージ

「自分ごと」として仕事に向き合い、オーナーシップを養おう

仕事をするうえで重要なのは「自分自身が主体となって生きていく」というオーナーシップです。どんな仕事も「自分ごと」として捉え、仕事に向き合っていくことが大切です。

オーナーシップを身に付けるには

自分は経営者という立場なので、どんな気持ちになろうと「やるしかない」と前進することができていますが、最初からそうだったわけではありません。まずは目の前の仕事を「自分ごと」として捉え、目標を持つことから始めました。「このためだったら何があっても頑張れる」「自分はこれがしたいから何があっても関係ない」。それくらい強い気持ちと紐付くような目標があれば、何があっても乗り越えられると思います。

結局、最後に効いてくるのは自分の気持ちなんですよね。たとえば目の前に課題が浮かび上がってきた時、「自分なんてもうダメだ……」と思うのではなく、「まだ努力できることがある」と捉える。自分の仕事を評価してもらったり、昇進の機会が訪れたりしたら、それをためらうことなく受け入れる。そのように目の前のことを前向きに捉え、とことん向き合い、最後までやりきってみてください。

もし何かしらで落ち込んでしまうことがあるとしたら、視野が狭くなっている可能性が高いです。そういうときは高い視点で物事を見てみましょう。自分のことだけでなく、会社全体、社会全体を見てみると「こんなことでくよくよしてる場合じゃないな」と我に返れることもあると思います。さらに、会社が掲げている目標や、社会で求められていることも見えてきて、結果的に自分も会社も満足のいく成果を出すことにつながっていきます。

何よりも「その場で立ち止まること」は避けた方が良いので、目の前の壁を乗り越えたいときは「物事の見方を変えること」や強い気持ちを持ってもう一段階「押してみること」にチャレンジしてみてくださいね。

ファーストキャリアは「やりたいことの有無」で選択しよう

ファーストキャリアは、「やりたいことがある人」と「やりたいことがわからない人」によって、方向性が大きく変わってくると思います。

というのも、「自分はこれがやりたいんだ」という自己確信が強い人は、すでにそれをやっているか、就活でも迷わず仕事を選んでいると思うんです。自身のキャリアを振り返っても、そのときどきでやりたいことが思い浮かんだら、迷うことなくまっすぐ突き進んできました。ただ、自分のやりたいことを優先するということは、かなり強いエネルギーを使って、その道を切り開いていく必要があります。

だからこそ、まだやりたいことがわからない人や、なんとなくやりたいことはあっても「確信」にまでは至らないという人は、無理にやりたいことを見つけようとせず、まずは「成長率が高く、将来性のある業界」を選んでおくのも1つの手だと思います。今はキャリアの築き方がかなり自由になってきて、1社目でやりたいことが見つかったらキャリアを転換するというのも決して不可能ではありませんから。

まずは本当にやりたいことがある状態なのかどうか。そして、それに対する熱量はどれくらいあるのか。そこを見極めてから、ファーストキャリアを選択してみてくださいね。

深澤さんが贈るキャリアの指針

取材・執筆:志摩若菜

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