就活は自分というピースに合う企業を探すパズル|成功や成長は今できることをやり切った先にある

PR Table 執行役員CFO 津田 祐実さん

PR Table 執行役員CFO 津田 祐実さん

Yumi Tsuda・新卒でスタートアップに入社。営業職として勤務。その後スタートアップ企業への投資をおこなうベンチャーキャピタルへ入社。その後は海外留学や金融系投資ファンドでの勤務を経てPR Tableに参画。2023年12月より現職

この記事をシェアする

「このままだとやばいよ」。その指摘がグサッと刺さり、転機となった

新卒ではこれまでの経験も信用も通用しない、シンプルに成果を求められるスタートアップという環境へ飛び込むも、結果を出せずに挫折。これがキャリアのなかでの最初のターニングポイントとなり、自分や仕事に対する考え方を大きく変えることができました。

学生時代に経験した海外インターン経験からオープンな環境や社風に惹かれ、スタートアップを中心に就活をおこないました。「インターネットだからできることで社会に価値をもたらす」というビジョンに惹かれてクラウドソーシング事業を展開する企業へ入社。

入社当時、プライドと自負だけあった自分は、学生気分の延長でビジョンを語り、あるべき論ばかり考えていました。しかし、スタートアップは営業が売上を作れないと会社が潰れるかもしれない世界。そのシビアな環境で自分がお給料を受け取っていることの重みを十分に理解せずにいました。

そんな考えでしたから、もちろん、入社後も営業職として大きな成果をあげられていませんでした。

あれが足りないから、環境が整っていないから……。だから私は成果があげられないんだ。当時の私は成果が出ない理由を周りに探していましたが、そもそもそんなことはスタートアップという企業の特性上、当たり前。それなのに、成果が出ない理由を自分の営業スキルではなく商品や会社のなかに探してしまっていました。

今振り返ると成果を出せなかった理由は明確で、成果を出せるだけのスキルもなければ、成果を出そうという執念もなかったからです。

キャリアの転機になったのは、人事責任者からの「このままだと本当にやばいよ」という指摘。自分がいるスタートアップという世界は不完全ながらに価値を生み出していなければならないのに、いつのまにか傍観者になってしまっていたとそこで初めて気づかされたのです。

指摘されたことをきっかけに、不完全な環境や状況でも自分で価値を生み出していくためにはどうすべきなのかを考えました。あらゆるところに課題はある。その中で、自分にできることは何か、自分はどんなことを解決できる人材になりたいか。そういったことを考える中で、一度外に出て修行をしてみたいと思うようになりました。

新規事業立ち上げを担当していながら、なかなかうまく進めることができないことを課題に感じていたこともあり、「ゼロからビジネスを立ち上げることに挑戦してみよう」と転職を決意したのです。

自分で動けば成長が生まれ、成長すればその先が見えてくる

PR Table 執行役員CFO 津田 祐実さん

新卒での就活の軸は、自分が共感できるビジョンがあるか。転職では、そこに加えてスキルや経験が得られる企業であるかどうかといった、より実際的な視点を軸としました。

目指すものをはっきりさせて臨んだ転職活動でしたが、かなり苦労しましたね。新卒の就活とは違い、転職市場ではポテンシャルはそこそこに、まずは「新卒から1年半という短さで辞めた人」という見られ方になります。実績も武器もない自分の価値の低さを感じ、ここでも挫折を味わいました。

そんな中で出会えたのが2社目のベンチャーキャピタルの企業でした。ベンチャーキャピタルとは、スタートアップ企業に事業立ち上げ資金を供給する投資家のことですが、この会社でさまざまなスタートアップ経営者と直接対峙し、事業成長のために何ができるかを一緒に汗をかきながら試行錯誤する経験を得ることができました

投資先はスタートアップですから、まだまだ経営は安定していません。そんな中でお客様に選んでもらうために「サービスにどんな付加価値が必要なのか?」「魅力的な人材に興味をもってもらうために何ができるか?」、はたまた管理業務は適法に実施されているかなど、投資先の経営チームの皆さんと議論しながら、次の資金調達に向けて走っていきます。

ここで得られたものは非常に大きかったですね。自分が求めていた新規事業を立ち上げるための考え方のヒントが得られたことはもちろんですが、自分の所属企業の名前でなく、自分を信用してもらって投資機会をいただくという、「自分自身で勝負する」ということを経験したことが大きかったです。

無駄なプライドを捨て、生身の自分にできることを愚直にやり続けることで、ビジネスパーソンとして生きていく自分がこれからどこに向かって走れば良いかが見えてきた感覚がしたのです。できない理由を探しても何も生まれない、だから自分で考えて自分で動くこと。主体的に動くことで、おもしろいねと背中を押してくれる人が出てきたり、協力者が出てきたりと、何かが動き出します。そうした中で得意不得意もわかってきて、その先のキャリアも見えてくるのだと思います。

経験したからこそ、その先にある「自分らしさ、自分の強み」を知ることができた

ベンチャーキャピタルを5年ほど経験する中で、「金融」をもう少し踏み込んで学びたいと思い、留学で一度学問の世界に戻りました。その後、ベンチャーキャピタルとは異なるタイプの投資ファンドの世界へ飛び込みました。

投資ファンドの世界は非常にプロフェッショナルで、個々のレベルがとても高かったですね。ここで学んだスキルや同僚の仕事への姿勢・立ち振る舞いは、大きな刺激となりましたし、今の仕事にもとても役立っています。

同時に、おぼろげだった自分の強みや志向性もはっきりしてきました。自分にとっては、そんなプロフェッショナルで確立された世界より、不確実であっても目指したい未来に向かってそれを実現する方法を考えることのほうが、より力を発揮できることがわかり、その強みをより活かせる場所を模索することにしました

ベンチャーキャピタルとは異なる投資の世界に飛び込んだもののやっぱり合わなかったというところは、客観的には失敗に見えるかもしれませんね。それでも、その世界で活躍されている方々と交わることでそのすごさを理解できましたし、同時に、より自分らしい自然な強みを発揮できる環境はどんなものかがわかったことには大きな意味があったと感じます。

津田さんのキャリアの変遷

「自分らしさや自分の強みを発揮できる環境はここだ」とすぐに答えを出すことは簡単ではないはずです。実際、キャリアの中では、自分の居場所や自分の強みに迷うことが多々あるでしょう。それでも、すべての経験から得られるものがあります。さまざまな人が、さまざまな形で自分に向き合って変化をもたらしてくれます。

それらのうち、何を学びとして吸収するか、どう次のヒントにしていくかをぜひ前向きに考えていってもらいたいです。世界は広いので、あなたに合う場所が絶対あります。腐らずにそこを探していく、というマインドこそが大事なのではないでしょうか。

キャリアはパズル。自分というピースが当てはまる企業をいつか見つければいい

キャリアとはパズルのようなものだと思っています。パズルを一度もミスなく完成させられる人はいないはず。根気強く、あれでもないこれでもない、とマッチするもの同士を見つけていく作業が必須です。

キャリアもパズルと同じこと。一発で自分にぴったり合う企業が見つかることはあまりありません。だから就活生の皆さんも、時間をかけて自分というピースが当てはまる企業を見つけていけばよいという気持ちをもっていてほしいです。そのためには、ぜひ自分の視野を広げて選択肢を広げてみてほしい。皆さんが思っている以上に世界は広く、さまざまな業界や企業、そして仕事があります。自分の知っている範囲だけでなく、知らない世界にも積極的に飛び込んでみてください。

放っておいたら自分では絶対に飛び込まないだろうな、という世界を覗いてみるのがおすすめです。実際、私も学生時代の海外インターンでの縁をきっかけとして、スタートアップで働くという選択肢を持つことができました。

どこに飛び込めば良いのかわからない場合は、世の中で人気があるが自分としてはピンとこない分野に飛び込んでみるのもおもしろいかもしれません。熱狂があるところには必ずその理由があります。自らの観点だけで物事を見るのでなく一歩踏み出してみると、視野は広がっていくはずです

就活はさまざまなプレッシャーがかかることと思います。選ぶ立場でもありながら選ばれる立場でもある中でファーストキャリアを決めるのは、心的な負担も大きいでしょう。でも、すべての機会が意味を持っていて、その機会がいつか必ずあなたの役に立つと思います。ぜひ柔軟に、肩ひじ張らずにその時々の環境を楽しんでもらいたいですね。

津田さんからのメッセージ

受け身で成長機会は得られない。“自分”という素材でどう世の中に価値を生み出せるかを見つけよう

いろんな人がそれぞれ強みを持っていることを悟ったからこそ、今後は「自分がきれいなキャリアを描いていく」ことよりも、「自分という素材で何ができるか」を考えて、与えられた役割を果たしていきたいという思いが強くあります

PR Tableは現在設立してから10年ほど。今はCFOとして、財務や会社としてのインフラを守りながら、次の10年につながる基盤を作るというところに注力しています。まさにここで話をさせていただいているようなトピックにも近い、働く人へのキャリアの提案ができるようなサービス作りをしていますが、これは非常にやりがいがあります。

企業には、それぞれ目指す世界や良しとするバリューがあります。そしていろいろな強みを持つ人が集まってその企業が成り立っています。同じピースが何個もあってもパズルが完成しないように、自分にはできないようなことを強みとして持つ人が組織には数多くいるでしょう。

そうすると、周りと比較して劣等感を覚えることもあるかもしれません。でもそのような時こそ、「今組織に足りていないことは何か。その中で自分にできることは何か?」を考えて動くことが重要だと思います

会社は、社員一人ひとりがもつさまざまな強みによって成り立っています。自分の強みを見つけ、尖らせることができれば自身の成長につながりますし、社員が成長すること・各々の強みを発揮することは会社の成長にもつながりますから。

受け身で待っていても、成長機会は与えられません。なんでもいいから成果を出すという思考でやり続ける。それが重要です。成果を出す執念があれば、おのずと成長していけると思います。

津田さんが贈るキャリアの指針 (1)

取材・執筆:茂手遥

この記事をシェアする