どうせ生きるなら、ドラマになる人生を。使命をまっとうした先で自分の作りたい世界を作る

インターホールディングス 代表取締役社長CEO 成井 五久実さん

インターホールディングス 代表取締役社長CEO 成井 五久実さん

Ikumi Narui・新卒でDeNAに入社し、デジタル広告業を経験。その後トレンダーズに転職し、PR・マーケティングスキルを身に付ける。28歳の頃にJIONを設立し、わずか5カ月で黒字化。設立の1年後には3億円で株式譲渡をし、当時の女性起業家として最年少、最短、最高額を記録した。現在はインターホールディングスの代表取締役社長CEOとして、世界唯一の真空特許技術を活用したshin-ku商品を展開。サプライチェーン全体に真空技術を実装することで、世界中のフードロス問題の解決を目指す

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新卒2年目にして減給処分を経験。挫折から始まるキャリア

新卒でDeNAに入社。順調にキャリアを築き、今では起業家」。

経歴だけ見るとまるで順風満帆なように感じられるかもしれませんが、私のキャリアは一社からしか内定をもらえなかったことに始まり、やっと入社した企業でも減給処分を受けて転職をしたりと、決して楽なものではありませんでした。

新卒の就活は、3年生の4月から始まりました。当時はPRの仕事に興味があり、マスコミやITベンチャーに焦点を当てて就活をしていたのですが、なかなか思うような結果が出ません。そのうえやっと最終面接まで進んだ企業からは、不採用通知を受けた際に「ほかの大学の人と競った結果、学歴で不合格となった」と言われたこともありました。

このときから、自分の実力も能力も知らない相手に審査をされ、合格・不合格の判断をされる環境に違和感を抱いていましたね。一刻も早く自分の力で勝負ができる、能力を発揮したうえで評価してもらえる場所に行きたいと思っていました

その点で、DeNAは若手にも裁量権を与えてくれる非常に良い環境だったと思います。しかし、大きな裁量権を与えられるからこそ仕事での失敗も大きなものになってしまったのです。DeNAでなら活躍できる。そう意気込んでいた分、小さなミスで企業に大きな迷惑をかけてしまい、当時のDeNAとしては初の新卒2年目にして減給処分を下されたという出来事が、自分にとっても非常にショッキングな事件となりました。

もちろん、自分がしてしまったことを悔やむ気持ちは大きかったです。しかしそれ以上に「誰かから評価をされないと何も得られない」という事実を改めて突きつけられ、よりいっそう精神的なダメージにつながりました。

このときからすでに起業を目標としていたのもあり、社内での信頼回復を待っていたらいつまで経っても理想の人生設計を実現できないと感じて、転職を決意しました。

成井さんのキャリアにおけるターニングポイント

起業を意識していたのは、就活を始めるよりも前からでした。両親が起業家なのも大きかったですが、決め手となったのは父親が経営する企業が中学2年生の頃に倒産してしまった出来事です。一時は生活も苦しくなりどうなることかと思いましたが、母親が自宅でカウンセリングルームを開き、その経営がうまくいったことで大学にも進学させてもらうことができました。

この母親の姿は、今の自分の価値観を形作る原体験となっています。他人や企業に依存するのではなく、自分自身で動いて収益性を握ることの重要性を実感しました。

使命は強み×社会貢献性で見出す。自分にしか果たせない役割を見つけよう

インターホールディングス 代表取締役社長CEO 成井 五久実さん

起業をするということは、私にとって一種の使命のようなものでした。だからこそ感じるのは、自分の人生に与えられた使命が何かを考え抜いて決断することの大切さです。この点は皆さんも就活をする際にぜひ意識してみてほしいと思います。

使命は、「自分が持っている強み」と「その強みを活かして社会にどのように貢献していけるか」で決まります。私の場合は、起業が比較的身近であったことが大きな強みでしたね。一つの企業を経営することは、社会に対して大きな影響力を持てるということ。つまり、自分の作りたい世界を作るための大きな一歩になるということです。だからこそ、自分が経営する企業を武器として社会に貢献したいと思いました。

これまで使命を果たす方法をさまざまに考えてきましたが、今はSDGsの領域に力を入れています。社会に大きな影響を与えるには、それだけ市場規模が大きい必要がありますよね。なかでも特に社会貢献性が高いものを考えたときに、フードロスや地球温暖化といった社会が抱える大きな課題に向き合うSDGsの領域が最適だと考えたのです。

インターホールディングスでは、世界唯一の真空特許技術を活用し、shin-ku商品を展開しています。超高真空技術で食品の鮮度を保つことでフードロスを減らすことができ、さらに容器を軽量化することによってCo2排出量を抑えることにも貢献できる見込みです。食品物流における新たなインフラを生み出し、社会課題を解決すること。それが今果たしたい使命ですね。

しかし、誰しも直接的に社会貢献につながることが使命であるとは限りません。人を楽しませることであったり、美味しいものを作ることであったり、作品を生み出すことであったり──。与えられた使命は、人それぞれです。自分にとっての使命とは何なのかを早いうちに意識することで、就活の際にも目指すべき方向性がわかるのではないでしょうか

そのために、まずは自分の強みを見つけてください。サークル活動やゼミ、アルバイトなど、集団のなかで何かしらの役割を与えられて動いた経験から考えるのがわかりやすいでしょう。その役割を与えられたときにどのように自分の能力を発揮できたか、能力を発揮した結果どのような結果を残したのかを考えてください。

能力を発揮することで課題を乗り越えたり、成功を収める過程であるなら、何か大変なことがあったとしてもさほど苦ではないはずです。またその結果が評価や成績につながれば、上昇志向も生まれますよね。そのもととなる能力が、あなたの強みと言えます。

目指すのは自分から人、社会、世界へと価値を波及させるキャリア

かく言う私も、初めから社会貢献という使命を掲げていたわけではありません。現に何年か前までは、社会貢献よりも自分のやりたいことに重きを置いていました。

価値観に変化があったのは、働く目的が変わったからです。20代の頃は、自分自身にベクトルが向いていました。社会に変化を起こして、存在証明がしたい。何者かになりたい。その欲求が強かったのですが、起業やM&Aの経験を経て欲求が満たされたと感じられた時、新たなステージに進んだのだと思います。つまり、視座が一つ上がったということですね。

自分のやりたいことと社会貢献、どちらに重きを置いたとしても間違いはありません。最終的には、あなたが何を目的にするかでゴールは変わってきます。ただ一つ言えるのは、多くの人の役に立っている実感を得るのは、自己実現につながるということ。仕事の目的は人それぞれですが、ビジネス活動ほどわかりやすく存在意義を感じられるものもあまり多くはないと思います。

ある程度自分のために働くことができたら、次は人のため、社会のため、世界のために働くこともぜひ視野に入れてみてください。世界にとって必要な仕事にかかわり、成果を残すことで、初めて見られる景色があるはずです。自分のやりたいことと社会から求められていることがリンクした瞬間に、何にも代えがたい達成感や自己実現の実感が得られます。皆さんにも、ぜひそんな瞬間を味わえるようなキャリアを歩んでもらいたいですね。

価値を「自分」から外の世界へ波及させるキャリア

道標は理想の未来。逆算思考で今やるべきことを見出そう

人生は、逆算思考でしか目標達成がありえない。

これは私がキャリアを築くうえで常に意識してきたことです。最終的なゴールが起業にあったからこそ、そこから逆算して必要なスキルを身に付けることができる環境を選んできました。身近なところで言うなら、大学受験ですね。皆さんも、受験の日から逆算し計画を立てて勉強をした経験があると思います。

ゴール地点と今の立ち位置の距離感を確認し、その距離を埋めるために何をすれば良いのかを考えてください。今しなければならないことと、いつまでに達成すれば良いのかを明らかにすることで、進むべき道を見失うことなく目標に向かって前進していくことができます。

まずは、中長期的な未来予想図を描くことから始めましょう。3年後、5年後、10年後と未来を設計していき、その未来を実現するために必要なスキルを洗い出します。企業選びの際には、そのスキルを身に付けられるであろう企業を選ぶのも良いですね。

この逆算思考は、自分の使命をまっとうするためにも重要なことです。やりたいことややるべきことが見つかったとして、それをぼんやりと頭のなかに置いておくだけでは実現できる日は一向にやってきません。実現するためにはどうすれば良いのか、今何をするべきなのかを常に考え続けることが、あなたにとってベストな道を選び取るためには必要なのです

成井さんからのメッセージ

そして、身を置いた環境では当事者意識を持ち続けましょう。それこそ、その企業の社長になるつもりで目の前の仕事に向き合ってください。自分で考える力を養い、そのうえで行動を起こせるほどの裁量権を得られる場所を選ぶこと。企業選びでは、その視点が重要だと考えています。

同じ大手企業で働いている人を見ても、自ら考えて事業を生み出す体験をした人とそうでない人では、5~10年後のキャリアに大きな差がついています。社会に出るうえで何らかの目標を持っていたり、何者かになりたいと思っている人は、まずは自分の働いている企業を自分の力で動かし、変える意識を持ち、高い視座を持って仕事に取り組んでみてください。

目標達成への執着心が自分の視座を押し上げる

仕事に対しての当事者意識は、社会人になれば自然と生まれるものではありません。大切なのは、目標達成に対しての執着心です。目標を達成するために、一つのことに夢中になって打ち込む経験を積んでください。

目標を達成するまでには、多くの課題が発生することがあります。周囲との摩擦や思わぬトラブルに直面し、それを乗り越えるための試行錯誤を続け、ようやく目標を達成する。この一連の流れを経験した先に、自分の強みや実現したいこと、使命が見えてくることもあるのです。

そのうえで、一つ目標を達成した際にはぜひその時点で得た学びについて振り返ることも大切にしてほしいと思います。その学びを次の目標達成の際にも活かすことができれば、スキルが身に付いた実感を得られモチベーションが上がりますよね。

目標達成に執着することで仕事が好きになる

このサイクルを回せるようになると、目標達成の快感と成功体験による高揚感が仕事に結びつき、仕事が好きになります。好きなことには、よりいっそう打ち込む姿勢が生まれ、当事者意識も醸成されていくはずです。この繰り返しが、あなたの使命を果たし、視座を一つ押し上げるきっかけになりますよ。まずは目標を達成することに対して執着心を持ち、夢中になって打ち込む経験を積んでください。

主演・脚本:自分。生きる意味を見出せる最高のストーリーを

あなたが歩む人生において、主役はいつであってもあなた自身です。目標を掲げることは、あなたが主役のストーリーをドラマチックにする、ひいてはハッピーエンドにする一つの方法だと思っています。

世の中には多くの物語があり、主人公となる人物も実に多様ですが、多くはドラマチックな人生を歩んでいる人々が主役として登場しますよね。いかに自分を主人公然とした存在にするかは、あなたが歩む人生によって変わります。人生というストーリーにおいて、主演も脚本も自分であることは忘れないでください。

単調な人生も、決して悪くはないでしょう。しかし振り返ったときに生きる意味を見出せる人生というのは、何かに熱中し、ときに挫折し、成功を収め、使命を果たし、その先に自分の価値を感じられる人生であると思うのです。

まずは小さな目標を立て、それを地道に達成し続けてください。一つ小さな目標を達成すれば、次の目標は自然と大きくなります。目標達成を繰り返した結果、振り返ってみれば自分の背丈を優に超える大きな山を乗り越えた経験がある。そんな人生を歩んでほしいですね。

生きる意味は、誰にでもあります。これから先の長い人生をかけて探していくことになるわけですが、仕事という人生の大半の時間を割く経験のなかに見出すのも、決して悪いことではないと思いますよ。生きる意味をどこに見出し、どのようなストーリーを描きたいのか。それを常に考えながら、進むべき方向を定めてください。

成井さんが贈るキャリアの指針

取材・執筆:瀧ヶ平史織

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