目標がなくてもキャリアは拓ける|失敗を恐れずに自分の決断を信じて進もう

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UZUZ 常務取締役 川原 敬史さん

Takashi Kawahara・大阪府出身。大学卒業後に上京し、ベンチャー企業に就職するも早々に退職。フリーター期間を経て、第二新卒として大手人材サービス会社に入社。求人広告の営業マンを1年半経験したのち、UZUZ(ウズウズ)に入社。法人営業やキャリアカウンセラーとして動きながら、新規事業の立ち上げや大阪拠点の立ち上げに尽力。大阪支店長を経たのち、2020年2月より現職

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キャリアは偶然の出来事に左右される。目標は必ずしも必要ではない

「明確な目標ややりたいことがなくても、キャリア形成においては何ら問題はない」。私がこれから社会人になる皆さんに一番お伝えしたいのは、このメッセージです。

偶然に巡ってきた目の前の仕事を納得いくまでやり込む。そのうえで好奇心を忘れず、かつ天狗になることなく柔軟にキャリアに向き合っていけば、どんな仕事に就いても、人生の充実感を得ることはできる。私はそう考えています。

目標を持つことを否定しているわけではありません。「何かをやりたい」「こうなりたい」といった明確な目標が定まっている人は、そこへ向かって迷わず進むのが最善です。夢の実現のためにスキルや経験値が必要なら、就職に際しては、まずそれらが得られそうな場所を選ぶといいと思います

ただ、世の中は実際のところ「特別にやりたいことが見つからない」という人が大半です。事実、私自身もそうでした。かなえたいゴールから逆算して仕事をしてきたわけではなく、「そのときどきで偶然に出会った目の前のことを、ひたすら一生懸命やる」を繰り返して、現在の自分がいます。

キャリアに対する私のこの考え方は、クランボルツが提唱している『計画的偶発性理論』にかなり近いです。これは「個人のキャリアの8割が、本人の予想しない偶然の出来事によって決定されている」というもので、明確にゴールを決めないキャリアの考え方です

私がそのような考えの持ち主であることをお伝えしたうえで、ここからは少し遡りながら、現職に就くまでのキャリアストーリーをお話ししたいと思います。

川原さんからのアドバイス

希望を胸に上京するも、1社目で大きな挫折を経験

大学までは地元の大阪で過ごし、ママチャリで西日本を旅したり、公園や居酒屋で知り合ったおもしろいおじさんと仲良くなったり、友人と音楽活動をしたりと、楽しい学生生活を過ごしていました。卒業後は教師になるつもりでしたが、諸事情で他の道を考えざるを得ない状況になり、ふと頭に浮かんだのは「先生になれないなら、社長になるかな」ということでした

今思えば、何の根拠も脈絡もないのですが(笑)、「とりあえずベンチャー企業に入って勉強させてもらおう」と思い立ち、20代の社長が立ち上げた通信系の企業を1社だけ受けて、上京を果たします。これが私の最初のターニングポイントです。

しかし蓋を開けてみれば、そこは大量に離職者が出るようなブラックな会社でした。大して調べもせず選んだ自分が悪いのですが、仕事の内容自体も心から賛同できないもので、「胸を張ってこの仕事はできない」と感じたことから、入社1ヶ月半で早々に離職をしました

貯金も尽きていったん大阪に戻り、そこからは1年半、フリーターをしていました。何をしていいか分からないまま、とりあえず日銭を稼ぐという「キャリア迷子」のような状態でしたね。

しかし、東京にいた大学時代の友人が「どうして腐ったままでいるのか。もう一度東京に来い! 」とげきを飛ばしてくれたことをきっかけに、就職先も決めないまま上京することに。ここが2つ目のターニングポイントです。周りのサポートに加え、「現状を何とかしたい」という焦りからくる意気込みも買っていただけたのか、第二新卒として、大手人材サービス会社に入社することができました。 

川原さんの人生ストーリー

結論からお話しすると、2社目はとても素晴らしい環境でした。先輩や切磋琢磨し合える仲間に恵まれ、初めて法人営業にもチャレンジしました。そのほかにもビジネスの基本的なことや目標数字の追い方などを学び、社会人の基礎はすべて、ここで身につけたように思います。入社半年後には全国3位の営業成績を出して表彰を受け、まさしく「充実した社会人生活」を満喫することができました。

次なるターニングポイントは、2社目に入ってから1年半後です。縁あって転職支援サービスを手掛ける現在の会社UZUZ(ウズウズ)に移ることを決め、自分自身の経験も活かせる仕事として、既卒やフリーター向けの就業支援サービスにかかわることになりました。

前職は大きな会社だったので、基本的には上から降りてくる仕事をこなすことが多く、担当する仕事の領域は限られていました。比べて、入社当時のUZUZは社員数が10人ほど(現在の1/10程度)で、採用や広報など、担当領域以外の仕事も幅広く経験できました。ビジネスの川下から川上まですべて見られたことで視座が一段高くなり、かつ視野が広がった実感を得ています

大阪進出を成功させ、入社6年目には最速で執行役員に昇格

UZUZ入社後は、法人営業をしながらキャリアカウンセラーとして就業支援をおこなう毎日が始まりました。その中では、おもしろい人との出会いもありましたね。

東京大学卒という輝かしい経歴を持ちながら、引きこもりになっていた求職者をサポートしたこともあります。彼に関しては就職後も良い交流が続き、プログラミング勉強会を開催したり、友人・知人を紹介しあったりしています。

入社の翌年にはキャリアカウンセラーとして全社1位を達成し、カスタマーサポート部門の責任者も兼任するように。さらに入社4年目には自ら手を挙げて、大阪支店の立ち上げにチャレンジしました。これが4つ目のターニングポイントです。

実は大阪進出は私の入社前にもチャレンジし、うまくいかず撤退した過去があったため、当初はトップ層も難色を示していました。しかし登録者数も増えてきていましたし、「今なら価値を提供できると思う! 」と宣言して、チャンスをいただいた形です。

大阪には単身で乗り込み、オフィスを借りて備品をそろえるところから、一緒に働くメンバーの募集、求職者の面談からチームづくりまで、あらゆる業務を担いました。3年ほど経つ頃には磐石な拠点に成長させることができ、この成果を認めていただく形で、2020年には執行役員に昇格。人に恵まれたからこその結果ですが、UZUZに入って6年、社内最速でこのポジションに引き上げていただきました

2021年1月には、再び東京に戻ることを決意。これが現状、最新のターニングポイントです。大阪拠点は好調だったのですが、東京拠点はコロナ禍の影響や離職者が続出したことにより、当時あまりうまく回っていませんでした。どうにかして東京本社を立て直したい気持ちがあったため、ここでも大阪支店立ち上げ時と同様自ら手を挙げ、強い覚悟を持って東京に戻りました

着任後は役職者の入れ替えから始め、並行して新しいメンバーを迎え入れたり、成果を出したメンバーを積極的にリーダーに抜擢するなど、社内の組織改革に注力。ナレッジシェアツールを導入し、口伝に頼らずノウハウ共有ができる体制も整えました。社員が萎縮せず、のびのび働ける雰囲気に変えられたことが功を奏してか、現在は売上・採用人数ともにV字回復を果たせています

「自分で意思決定をしたこと」でなければ、挑む力が湧いてこない

記事中写真

5つのターニングポイントに共通しているのは、「自分で決めた」という点です。キャリアにおける目標は定めてこなかった私ですが、誰かにやれと言われた仕事をしたことはありません。すべて自分で「これをやろう」と決めて取り組んできたからこそ、モチベーション高く取り組めている実感がありますね。

実は1社目を辞めてフリーターをしていた頃、親や親戚から「地方公務員になれ」と説得され、「それも良いかな」と思っていた時期がありました。しかし親のため、周りのためという動機では、まったく力が湧いてこない。「自分で決めたことでなければ、意欲的にはなれないのだな」と気づけたタイミングでした。

これから社会人になる皆さんも「自分で決めること」にこだわってみると良いと思います。「親がこう言うから」「周りの友達がそうしているから」「流行っているから」等々の理由で人生を選択してしまうと、高い確率で、のちのちしんどくなってしまいます

自分で意思決定をすることは、「失敗してもOK! 」ということが腹落ちできれば、怖くなくなるはずです。私自身、1社目で挫折し身をもって学んだことですが、失敗しても命を奪われるわけではありません。失敗したら再びチャレンジをすればいいだけのことです。

UZUZは全社員が第二新卒か中途採用なので、そもそも「失敗OK」の風土があります。そしてありがたいことに、そのようなメンバーが集まる会社でも業績を伸ばせている、という点を顧客にも評価いただいています。「最初からずっと優秀だった人、キャリアで失敗をしていない人だけが、社会で成功できるわけではない」ということは、当社の成り立ちを見ても自信をもってお伝えできる部分です

川原さんからのメッセージ

「自分で決める」ということは、仕事以外でも大切にしています。日頃付き合う相手などもそうですね。社内の付き合いも大切にしていますが、社外の人ともどんどん出会いたいと思い、積極的に動いています。基準としては「自分に良い影響を与えてくれる人」か、あえて「居心地悪い人」と一緒にいることを意識していますね。居心地の良い馴れ合いの関係よりも、多少緊張感がある目上の相手や初対面の相手と付き合うほうが、結果的に得られるものが多いと感じるからです。

人と会うこと」に加え、「読書」も大事にしている習慣です。壁にぶつかったときは読書をするか、人と会うか、どちらかの解決手段に頼ります。悩みや課題を抱えているときに本を読んだり、人に会ったりすると、いつも以上にたくさんのことを吸収できる実感があります

読書の習慣を身に付けたのは、学生時代です。人生の師匠とも呼べる方の自宅に出入りし、哲学や仏教関連の書籍を読み漁っていました。読書を通じて得られた先人たちの知恵は、仕事のうえでも大いに役立っています。

たとえば営業職では、ついつい目先の売上だけを見て周囲と競い合ってしまいがちですが、「人生は長期戦。1回の失敗で腐る必要はない」という考えが頭にあったことで、好調不調の波があっても、疲弊せずに取り組むことができたように思います。「幸せや成功の定義は一人ひとり違う」「人生には勝ち組も負け組もない」といったことも、当時学んだ考え方です。

川原さんからのメッセージ

素直に学び続ける人」「人を巻き込める人」が活躍する時代に

変化のスピードが激しいこれからの時代に活躍できるのは、3つの要素に当てはまる人だと思います。1つ目は、どんな環境からも、あるいは年下の相手からでも「素直に学ぼう」という気持ちがある人。2つ目は継続的に新しい学習をして「アンラーニング」をしている人。そして最後に、他社のリソースも上手に活用できる「人を巻き込む力」がある人ではないかと私は思います。

私自身、これらを常に意識して動いてきたわけではないですが、視野を広げることは常に意識してきました。おかげで自然と新しい出会いが広がり、結果的にいろいろな人を巻き込めてきた実感はあります

新しい学習については、目下コーチングスクールに通っています。「組織における人間関係の悩みを解決するプロになりたい」と思ったのが動機ですが、そうした学びも活かしながら、社内のメンバーが誇りを持って働ける会社にしていきたいと考えています。当社にかかわる人全員が幸せになれる状態を作ることが、今現在のビジョンです

結果の見えない新しいことにチャレンジしているとワクワクする性格なので、今は「自分で意思決定ができる環境にいて、課題を見つけて拾い、それを解決する」というサイクルのなかから、キャリアの充実感を得ているように思います

川原さんがキャリアの充実を感じるサイクル

 新卒はゴールデンチケット。「むしろチャンス」と考えて楽しもう

これからファーストキャリアを選ぶ皆さんは、新卒の就職活動の機会をぜひ有効活用してください。インターンシップ(インターン)も含めてですが、いろいろな会社の中を堂々と見せてもらえるというのは、転職では決してさせてもらえない経験です。

「就職活動はイヤだな、早く終わらせたい」と思う方もいるかもしれませんが、私自身は「新卒というゴールデンチケットをもっと活かせば良かった! 」という大きな後悔があります。「二度とないチャンス」と捉えて、後悔のない就職活動をしてほしいなと思います。

また「幸せは自分の価値観と結びついている」と考えてみてください。自分の価値観を満たせる企業を選べるほど、幸せに働ける確率が高くなると思います。

そのためには先に自分の価値観を明確にしておく必要があるので、就職活動を始める前には、これまでの過去を深掘りし、「自分は何が好きか」「何がうれしくて、何が不快と感じるか」といったことを詳細に洗い出してみることをおすすめします。そうして見つけた「自分の価値観」と「企業側の価値観」をすり合わせること=就職活動、という意識で臨んでみてはいかがでしょうか。

幸せに働ける企業の見つけ方

また成長意欲が強い人には、若いうちにベンチャー企業に飛び込んでみる選択肢をすすめたいです。ベンチャーの場合、実績を出せると、早々に身の丈以上のポジションに引き上げてくれます。

実力以上の役割をもらうと「そのポジションと自分の実力差を埋めなければ」と感じ、必然的に一生懸命に勉強をするようになるので、成長スピードが速くなります。「立場が人を作る」ということは私も常々実感しているので、「一日でも早く実力を付けたい」と思っている人は、一意見として参考にしてみてください

川原さんが贈るキャリア指針

取材・執筆 外山ゆひら

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