全力を注いだ経験こそがブレない自分をつくる|本心を追求して理想のキャリアを描こう

メディカル・ケア・サービス 執行役員 社長室長 森田 智行さん

メディカル・ケア・サービス 執行役員 社長室長 森田 智行さん

Tomoyuki Morita・大学卒業後、三菱重工業に入社。経理、広報、事業企画や経営企画などさまざまな業務を経験したのち、レノバへ転職。コーポレート本部兼人材開発室としてバックオフィス業務全般に携わる。その後介護事業に携わりたいと考えメディカル・ケア・サービスへ転職。社長室長、総務部長を歴任し、2024年10月以降現職

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自分自身に嘘をつかない。本心を追求して積み上げてきたキャリア

何が好きか、何がやりたいか。自分の心の声に噓はつかない。それが、キャリアを積んでいくうえで大切にしてきた考え方です。

ファーストキャリアは、宇宙ビジネスに携わりたいという一心で決めました。就職活動をするにあたって自己分析をしたときに、「社会課題を解決することが自分のやりたいことだ」とわかったのです。そして当時の自分は、社会課題の解決は宇宙開発の進展によって実現できるはずだ、と考えていました。今から考えれば、学生らしい未熟な考えだったのだと思います。当時は自分のやりたいことをそういうふうにとらえていました。

宇宙開発への携わり方にもいろいろあったと思うのですが、当時の自分は宇宙開発=ロケットというイメージが強く、そのままロケットを作っているメーカーに就職を決めます。ただ、希望業界だけを受けていたというわけではありません。当時お世話になっていたリクルーターがいたのですが、その人にもっと視野を広げたほうが良いと言われて、志望している分野とは異なる業界も受けていました。

結果として、いろいろな業界で選考を受けたことは良かったと思っています。なぜなら、それがあったからこそ自分が心から宇宙事業を志望していたとわかったから。志望していない業界の面接を受けた時、志望動機がうまく説明できなかったんですよね。どうにか説明はしていたものの、とても苦しかった。だからこそ、逆に自分がやりたいことに間違いはないのだと確信することができました。

森田さんのキャリア変遷

その後のキャリアも、自分の心の声に従いながら進んできました。2社目を選んだのも、「もっと社会課題の解決につながる仕事を、手触り感を感じてやりたい」という自分の気持ちに正直に従ったから。3社目である現職はそれまでの2社とはまったく違う介護事業ですが、それももっと解決すべき社会課題があると感じたからこそ選んだ道でした。常に心から取り組みたいと思える仕事ができているからこそ、全力を注げています。

これから就職を考えるみなさんは、希望している業界以外の企業を受ける場合もあるでしょう。そういった経験も、選考対策としては大いに役立つと思います。でも、まずは自分の心に耳を傾けて、本心でやりたいことや行きたいところを目指してほしいですね。自分の心を誤魔化してしまうと、どこかで無理が生じますから。

森田さんからのメッセージ

「何を経験してきたか」が自分を作る。常に成長を見すえた行動を

就職してからは、常に「現時点で経験しておいたほうが良いことは何か?」という観点で行動を選択するようにしていました。1社目で経理を希望したのも、自分が今後働いていくうえで事業の全体を把握しておいたほうが良いと考えたからです。

お金の流れを把握しておくことで、会社がどんな形で利益を上げて、どこにお金を使っているのか、といったことが理解できるようになります。メカニズムを理解できていれば、自分の行動がどのように会社に作用していくのかも明確になり、動きやすくなります。

その後は広報として働くか、もしくは経営企画として働くかという岐路に立ちました。どちらも非常におもしろそうだったのですが、より大変そうな経営企画を選択しました。大変そうだったからこそ、より自分の経験値を増やす機会になると考えたのです。

自分が大きく成長できる道を選ぼう

会社の統廃合や新規事業の戦略立案など、そこでの経験は今から考えてもとても勉強になりましたし、刺激的でした。学生のみなさんも、今後の人生で自分のキャリアを決める選択をしなければならないことがあると思います。そのようなときは、ぜひ「より自分が成長できる場所はどこか」を考えてみてほしいと思います

失敗した経験が自分の視座を上げた

キャリアのなかで当然ながら失敗も経験してきました。でもその経験があったからこそ、視座を上げられたと感じています。

社会人10年目のとき、あるプロジェクトに携わることになりました。全社的なプロジェクトで大きな案件でしたが、そのリーダーを任せてもらえました。そのとき、「リーダーにもかかわらずチームをまとめ切れない」という大きな失敗を犯してしまったのです。当時は若く、人の気持ちよりも論理を優先してしまいました。

たとえば、一見合理的ではないように思えるけれど、さまざまな経緯があってそのやり方になっている、といったことは仕事ではよくありますよね。そういった背景や事情を汲まず、「正しいのはこちらだよね」と言うなど、今振り返ると嫌な奴になっていたと思います。自分の言動を深く反省しましたね。

メディカル・ケア・サービス 執行役員 社長室長 森田 智行さん

その後、同じ失敗をしないためにはどうすれば良いのかじっくり考えました。結果、自分のロジックにもっと確固たる裏付けをしたり、人に動いてもらうための知識やコミュニケーションの取り方を身に付けたりしなければならない、と思うようになりました。そのために足を運んだのが、経営を体系的に学べる「グロービス経営大学院」です。

そこでは経営の知識と、何より「考え方」を学ぶことができました。徹底的なロジカルシンキングやリーダーシップの取り方などは、今の仕事にも活かせています。また、グロービスの受講生は経営者や企業の中核となって働いている方が多かったので、そういった面でも刺激になりましたね。

いつか点と点がつながる日が来る。全力の「今」を積み重ねよう

振り返れば、経理、広報、人事、経営企画など、さまざまな業務を経験してきました。そのなかで、どの企業・どの業界でも活かせるポータブルスキルが身に付けられたのはとても良かったと思っています。こういった能力は、一社に骨を埋めるという時代ではなくなってきた今、ますます重要になってきているのではないでしょうか。

より良くスキルを身に付けるために、意識すべきことが2つあると考えています。1つ目は、どのようなスキルを身に付けたいかから逆算して考えてみること。そうすれば、どういう方向性の経験を積んでいけば良いのか、今やるべきことや身に付けるべき能力は何か、が見えてくると思います。そういうことを意識して仕事をするのと、そうでないのとでは身に付く力や速度が大きく異なるでしょう。

2つ目は、目の前の仕事に全力で取り組むことです。どんな仕事であろうと、自分の持ちうる限りの力を尽くして仕事に取り組んでいれば、いつか点と点がつながって、線になる時が来ます。中途半端にやっていたら何も残りませんが、全力で取り組めば、どんな経験であろうと役に立つのです。

ときには自分がやりたいと考えていることと、目の前の仕事とが噛み合っていないこともあるかもしれません。そういったときは、「目の前の仕事」を優先させてください。目の前のことに一生懸命になれない人は、周りの人に評価されません。すると、回ってくるはずのチャンスも回ってこなくなってしまいます。だからこそ、まずは「今」目の前のやるべきことに注力してほしいですね。

全力で取り組むからこそポータブルスキルが身に付く

仕事のなかで、「自分のやりたいこと」を引き寄せたいと思ったときは、公言するのがおすすめです

私は仕事を誰にお願いしようかと考えるとき、「本人がやりたいかどうか」はとても重視しています。人が高いパフォーマンスを発揮するのは、やはりやりたいことをやっているときです。だから、基本的には熱量高くやりたいという人がいるならば、その人に任せたいと思っています。公言しておくと、任せてもらえるチャンスが増えていくのではないでしょうか。

学生のみなさんも、キャリアを積んでいく途中でなかなか自分のやりたいことができずに悩むこともあるかもしれません。そんなときは、まず目の前の仕事に全力投球してみる。そして、自分のやりたいことを公言する。そうすれば、いつか打席に立つチャンスが回ってくるはずです。自分の心に噓をつかず、進むべき道を考え抜いて、自分自身の信じた方向に進んでみてください。道は必ず開けるはずです。

森田さんが贈るキャリア指針

取材・執筆:久保鞠奈

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